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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
20:★玉川雄一 2004/01/17(土) 22:54 吾粲の眼(4) イベント開始に向けて準備の追い込みに入るという顧雍と別れて、二人はいよいよ参加者集合場所へとたどり着いた。 「うわ、こんなに来てたのか…」 吾粲の想像も付かないような数の中等部生が集まっていた。もちろん全員が入部志望者のはずだ。 彼女らはこれから先輩達のデモンストレーションを見て、志望チームを決めることになる。 様々なウォータースポーツを中心とした運動部の連合体である長湖部には、それぞれの競技を行う数多くのチームがあった。 入部した生徒は基本的にそれらのいずれかに属して活動を行うことになる。 あるいは顧姉妹のようにマネージャーとして部の運営に携わる者もおり、著しく規模を拡大しつつある長湖部においては その方面でも力を発揮する道が開けていたのだった。 一方で現役部員としても来るべき新入生獲得に向けて今日のイベントには力を注いでいるとみえ、 控えの方からは打ち合わせの声やら威勢の良い掛け声やらが漏れ聞こえていた。 「うん、ここならよく見えるでしょう」 ようやく歩みを止めたところで顧邵が目の前を指し示す。確かに絶景。よくもまあこんな特等席が… というのも当然で、何せ顧邵は顔が利く。上級生相手ですらあの様子なのだから、同級生には言わずもがな、 会う人会う人から声をかけられてその都度挨拶を交わすハメになった。 そして彼女はその一人一人に、吾粲のことを紹介してくれたのだ。 吾粲にとってはそのほとんどが初対面であり、正直言って一度では覚えきれるものでもなかったが、 顧邵の紹介ということでおおむね好意的に迎えられたようだった。 わずか数十分間で、吾粲の中の人名録は不完全ながらも一気に数倍に膨れ上がったのだ。 −その中には、後に心強い仲間となる少女が数多く名を連ねていた。 やがて一年、二年と時が過ぎ、無二の親友が既に部を去った後も、 この時の出会いは吾粲にとって掛け替えのない宝となったのだった。 (あれ、さっきのは……?) そんな中、吾粲は珍しく知った顔を見つけた。 ダークパープルの髪をショートカットにしたその少女に声をかけてみようとしたのだが、 それより先にまたもや顧邵のもう何十人目かとなった“お見合い”が始まってしまい、 それきり声をかけるチャンスを逸してしまったのだった。 (でも、なんだか目つきがとても怖かった…) その少女とは特に親しいわけでもなかったが、確か同じ呉棟で何度か見かけた記憶がある。 元々鋭い目つきをしていたような気がするが、今のその瞳は明らかに殺気を宿していた。 (気のせいだといいんだけど…) 吾粲の胸に、微かな不安の灯がともった。 「ねえねえ孔休さん、こちらは張敦さんと卜静さんっておっしゃるんだけど… あら、そういえば同じ呉棟だったわね?」 彼女の密やかな心配をよそに、顧邵はますます絶好調だった。 人の波もそろそろ落ち着きを見せ始め、そろそろ開幕の時間を迎えようとしていた。 吾粲がふと視線をやった先には、長湖部の幹部連と思われる女生徒が整列している。 周囲もそれに気付いたようで、ヒソヒソとかわされる囁きが耳に入ってきた。 「ほら見て、周瑜先輩がいるわよ」 「四天王の皆さん、カッコいい…」 「何言ってるのよ、周泰さまが一番に決まってるじゃない!」 彼女らにとって憧れの先輩かはたまたアイドルか、数ヶ月後にはそれどころではない苛酷な日々が待ち受けているのだが、 今日の日は“夢”を大きく膨らませるためのイベントだからこれでも良いのだろう。 しばらくすると、その前に小柄な女生徒が姿を現した。マイクを片手に何事か周囲と打ち合わせを重ねていたが、 やがて最終確認を終えたのか、背後の幹部連に一声かけるとこちらを向き、それに合わせて一同が整列した。 ホスト席が姿勢を正したのを見て、観客席のざわめきも波が引いたように静まってゆく。 誰が音頭をとったわけでもないが、集団行動の素養は日頃から身に付いているのだろう。 小柄な少女はそれを見て満足げに頷くと、一歩前に進み出る。 (あれ、あの娘って…?) 違和感を覚えたのは、少なくとも吾粲だけではなかったはずだ。 色素の薄そうな巻き毛と遠目にも分かる青みがかった瞳、何よりどう見ても高等部生とは思えない幼げな雰囲気。 訳知りらしい中等部生は周囲にヒソヒソと何事か説明していたようだが、 残念ながら事情通とは対極に位置する吾粲には事情が掴めない。さすがの顧邵も場を弁えてか、おとなしく黙っている。 しかしあれこれ思い悩む間もなく、くだんの女生徒がマイクを握りしめると大きく息を吸い込んだ。 いよいよ、長湖部主催体験入部イベントの始まりである。 続く
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