【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
220:雑号将軍2007/01/27(土) 17:32AAS
■やまない雨なんてない■

「ほんとにいいの?」
 白塗りの部屋で透き通るソプラノ声が響く。見舞いに来ていたライムグリーンの髪をした少女―盧植―はベッドに横たわる朱儁に尋ねた。
「うん。まだ、肩治ってないしね。多分これじゃあ、まともに動けないだろうし…。だから、子幹と建陽の二人で楽しんできてよ」
 そう言って朱儁はぎこちなく笑った。無理矢理笑顔を作っているのは誰の目にも明らかであった。
 今日は蒼天学園最大の行事の一つである「旭記念日祭」通称「旭祭り」の最終日だった。
だからこそ、盧植と傍らでつまらなそうに座る小柄な少女―丁原―は朱儁を祭りへと連れだそうと入院中の朱儁を訪ねてきたのである。
「でもでも!こーちゃん(朱儁)、毎年、旭祭り行ってるじゃない。あたいたち今年で最後なんだよ?」
 ついに場の荘厳な雰囲気に我慢出来なくなった丁原が朱儁に詰め寄るように言った。

 
丁原の言う通り、朱儁は高等部に入学してから、旭祭りに参加しなかったことは一度もない。ましてや彼らはもう三年である。これが最後の機会なのだ。
しかし、朱儁は気持ちを入れ替えることはなく、ただ、力なく首を横に振った。
「ごめん。建陽。でも行けない…」
「こーちゃん…」
 場に重々しい空気が立ちこめる。個室であることも影響してか、外部の音が全く聞こえてこない。まるで、この空間だけ孤立してしまったかのように…。
 それから、少ししてからだろうか。
 盧植はパイプ椅子から腰を上げた。
「・・・・・・わかったわ。ごめんなさいね。無理に誘ったりしちゃって。じゃあ、わたしたち、行くわ」
 そう朱儁に言ったときの盧植の顔は苦笑が浮かんでいた。
「ありがとう。子幹…」
 朱儁が呟くようにそう言うと、またも盧植は困ったように笑った。そしてそのまま踵を返し、病室から出て行った。
「ちょ、ちょっと待ってってば!お〜い!しーちゃん(盧植)!じゃ、じゃあ!こーちゃん、また来るから!」
 丁原はそれだけ言うと、力強く地面を蹴り上げ、矢のような速さで病室から飛びだしていった。
 場がまた静寂に包まれる。
「はあ・・・つまんないの」
 朱儁は寂しそうに目を細めてそう言うと、自らをまどろみの中へと押し込んでいった。
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