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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
124:海月 亮 2005/01/19(水) 20:05 「開けろおらぁ! 居るのはわぁってんらお〜!」 「逃亡者はお持ち帰りらぁ〜出て来いやぁ〜!」 鉄製の扉を執拗に蹴り続ける激しい音と、酔った魯粛と甘寧の声がする。蹴っているのは恐らく甘寧であろう。慌てた陸遜達は、下駄箱やテーブルでバリケードを固めて抵抗した。 「な、何、なんで? 何で居るのがバレたのよっ!?」 「そんなの知らないよっ!」 小声でやり取りする朱拠と吾粲。 「まさか…」 築かれたバリケードの上から、可愛らしいカエル柄の散りばめられたパジャマに着替えた陸遜が小窓から外の様子を伺った。そこには、制服のスカートとジャージのズボンをそれぞれの手に握り締めながら、物凄い形相で蹴りを入れてくる甘寧の姿が見えた。 「やっぱり…二人の匂いを嗅ぎつけたんだ…」 「んな馬鹿な! 犬じゃあるまいしそんなこと」 当然の物言いをする吾粲。しかし、陸遜は真顔で、 「承淵から聞いたことがあるの。興覇先輩って、匂いだけでどんな料理を作っているのかは愚か、材料まで完璧に言い当てるって…私も最初は信じられなかったけど…そんな嗅覚なら、人の匂いを嗅ぎ分けるくらい出来るかも」 「うそ…でしょ?」 その言葉に顔面蒼白になる朱拠。陸遜が授業で使っている竹刀を持ち出してきた諸葛瑾も姿をみせる。 「開けたら一巻の終わりよ…私、窓のほう見てくる。ここ三階だから多分大丈夫かもしれないけど…」 「いえ、酔ってるあの人たちに、常識なんて通用しません! 私も行きます! 孔休、子範、此処は任せた!」 「承知!」 必死の形相で、かつ強い語調の小声で、陸遜が指示を飛ばす。 二人がベランダのほうへ行くと、なにやら声がする。ギョッとして駆け寄れば、その声の主が潘璋と凌統であることに気がついた。鍵をかけているベランダの戸がガタガタと乱雑な音を立てる。 「公績ぃ、石かなんか持ってない〜? こりゃ割るっきゃないっしょ〜?」 「そだね〜てかアンタの部屋から何かもってくりゃいいじゃん?じゃん?」 「や〜よ、ヒトのならともかく、あたしのモノでガラスなんて割りたくないも〜ん」 そんな物騒な会話に、二人は息を飲んで顔を見合わせる。 「…忘れてた…確かこの隣りって、文珪の部屋だった…ベランダ伝いで来れたかも」 「というかあの二人まで来てるなんて予想外だったわ…まさかあたし達狙いだったなんて」 二人は入ってくる様子はない。何か言っては二人でげたげたと笑っているが、それは中に立てこもる少女達の背筋を凍らせるには十分すぎる内容だった。 しばらく考え込んでいたが、陸遜が意を決したように立ち上がった。 「…こうなったら先制攻撃あるのみ!」 「え、ちょっと伯言!?」 諸葛瑾から竹刀を奪い取り、陸遜はベランダの鍵を開けて外に踊り出る。 「お♪ 伯言みっけ…」 「先輩、御免なさいっ…たぁっ!」 それに気を取られた潘璋と凌統の一瞬の隙をつき、ベランダの手摺を使って宙に舞った彼女は正確に二人の脳天を打ち据えた。パジャマの上着の裾を鮮やかに翻して着地すると、凌統と潘璋は折り重なるようにして倒れた。 この年度に入って、部下として宛がわれた丁奉に感化され、陸遜も剣術道場に通うようになったのだが、その成果がきっちり現れたらしい。一瞬の出来事にぽかんとする諸葛瑾が、感心したように呟く。 「……お見事」 「感心してないで下さい…とにかく、のびてるうちに動きを封じましょう」 「え…ええ、そうね」 運び込むと、タオルを持ち出してきて、なれた手つきで手かせ足かせにしていく。その上で毛布をかけてやると、気を失っていた二人は何時の間にか寝息をたて始めた。その様子をみると、陸遜と諸葛瑾もほっと一息ついた。 その決着がつく頃には、玄関のほうも静かになっていた。朱拠が恐る恐る小窓を除くと、どうも酔い潰れたらしく、外の二人は抱き合うようにして大いびきをかいていた。 酔っ払いという名の狂嵐が去って、その翌日のこと。 「昨日はすいませんでした先輩…この通りです」 「いや、それはむしろあたしたちの台詞だ…本当にごめん伯言」 「ごめんなさいぃ〜平にご容赦をぉぉ〜」 陸遜の部屋では、一晩寝て正気を取り戻した凌統と潘璋、そしてその二人をのばした陸遜がお互いに土下座している珍光景が展開されている。 そこには明け方、それぞれ衣服を取り返し、それに着替えた朱拠と吾粲、そして明け方自分の部屋に戻って私服に着替えてきた諸葛瑾の姿もある。皆、陸遜が用意した朝食代わりのインスタントスープを啜っている。 甘寧と魯粛はというと、潘璋の部屋に放り込まれ、未だ高いびきをかいていた。 一通り平謝りしあうと、沈んだ表情で頭を抱える陸遜。 「今回の件…学園管理部にどうやって説明しよう…」 「ってか…バレたらむしろヤバいのあたしら卒業生とリタイア組だから…握りつぶしてもらえると助かるかな」 「…それは善処しますよ」 潘璋のひとことに陸遜も苦笑する。 「てか、あたしらがこの有様だったんじゃ…部長はどうなったろうな」 「他の子達も心配だし…早めに見に行ったほうがいいかも」 「そうだな。興覇と子敬はどうする?」 「あのまま寝せとけばいいよ。子敬はともかく、子明抜きで興覇を無理やり起こせる自信、ある?」 潘璋の言葉にお互いの顔を見合わせ、頷いた一同、衣装を調えると会場へと駆け出していった。
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