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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
152:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:37 続き・・・・・・パート2 「よかったねぇ〜義真」 朱儁は祈るようなポーズをとりながら、張角の姿にうっとりしている。 彼女の眼は潤んでさえいた。 それほどまでに張角の歌は人の心を震わせる力があるのだ。 「ああ、見事としか言いようがない。どうやら彼女は数々の奇跡が重なり合って、生まれてきたようだな」 さすがの皇甫嵩もいつもより幾ばくか、頬をほころばせていた。 そして、二人が、張角の二曲目に聞き入ろうとした。 そのとき――― そのときである。 最前列に座っていた数人の観客が一斉にステージに上ってきたのである。 「な、なんですか?あなたがたは?」 張角が観客の異様な雰囲気に、後ずさりする。しかし、観客はすでに張角を取り囲んでおり、逃げられない。 「今日は学園きっての祭りと聞いて、かわいい女の子がいると思ったら、両目が色違いの萌えっ娘に逢えるたあ、俺はついてるなあ〜」 そう言った途端、張角を囲んでいた観客は来ていた服装とカツラを取り払った。 なんと張角を取り囲んだ者たちは男であったのだ。 それを見た周囲の動揺は凄まじいものだった。会場の観客は我先へと、逃げ出していく。 それもそのはず、この「華夏学園都市」は男子禁制であるため「男子=怪物」の公式が立っているのである。 この学園の生徒が男子生徒に出会うことは、人が山の中で熊に遭遇したのと同じような状況なのであると言えば理解して頂けるであろう。 もっとも、中には逃げない者もいるのだが・・・・・・。 「大変だよ!早く助けないと!義真!『義を見てせざるは勇なきなり』って学園長も言ってたよ!」 そう言って、朱儁が皇甫嵩の左腕を掴もうと手を伸ばしたが、その手は彼女をとらえることはなかった。 それもそのはず、皇甫嵩はすでにステージを駆け上がっている所だったのだ。朱儁は微笑を浮かべると、皇甫嵩の後を追った。 「なあ〜これから俺と付き合ってくれよ」 さっきの男が張角に詰め寄る。 張角はそれから逃れるように後ろへ下がるが、別の男がその行動を阻んだ。 「お、お断りします!」 張角は健気にもそう言ったが、この言葉が彼らの興奮を煽った。 「そんなこと言うなよ!いいとこに連れてってやるからさあ!」 男は強引に張角の腕を掴んで、自分の方へ引き寄せた。 張角は必死に抵抗するが、残念ながら、腕力の差がありすぎた。 「は、離してください!こんなことが許されると思っているのですか?」 と、そんなとき、どこからか、声が響いてきた。 「やめておけ。そのような下衆共に道理を説いても無駄なだけだ」 男たちが、あわてて辺りを見回すと腕を組んでいた長髪の女が一人、スピーカーにもたれかかるようにして立っていた。 皇甫嵩である。 「なんだあ、お前も相手して欲しいのか?」 「せっかくのお誘いを断るのは心苦しいのだが、私はこれからそこにいる彼女とデートでな。悪いがお前らは、養豚所にいる雌豚の相手でも、していてくれんか?」 彼女の言葉には、あきらかな皮肉と侮蔑が込められていた。 「んっだとう!俺を烏丸高校(蒼天学園の北側にある男子校の一つで、過去から何度も蒼天学園に嫌がらせを繰り返している)の蹋頓と知ってそんな口をきいているのか!」 馬鹿にされた男は、あからさまに敵意をむき出しにしている。 その殺気は尋常ではなかった。幾度も死線をくぐり抜けてきた眼だった。 並の女子高生だったら、すぐさま詫びを入れていただろうが、幸か不幸か、皇甫嵩は並の女子高生ではない。 「養豚だと!はっはっはっは!やはりお前には養豚所の雌豚がお似合いだ。なんなら、私が紹介してやろうか?」 皇甫嵩はウソ丸出しに驚くと、これまで以上の皮肉を込めて言った。 「な!俺は蹋頓だ!お前ら!このアマをやっちまえ!」 ついにキレてしまった蹋頓は近くにいた数人の男たちと共に、皇甫嵩を取り囲んだ。そして、バットケースに手を入れると、あろうことか、バットではなく摸造刀を取り出したのである。 それを皇甫嵩に向けて突きつけた。しかし、皇甫嵩はぴくりとも動かない。 「最近のガキは面白い玩具を持っているらしい・・・・・・なっ!」 皇甫嵩はそう憎まれ口を叩いたその刹那、真横から斬りかかってきた男のみぞおちに豪快なストレートをきめ、気絶させると、その手から模造刀を奪い取った。 さらに、彼女は不敵な笑みを浮かべると、こう言い放った。 「『剣とは敵を破る物にして、自己を護る物に非ず』この言葉を知っているか?まあ、しわの少ない貴様らの脳みそでは、知っていたとしても本来の意味など理解し得んだろうが・・・・・・」 ここでも、皇甫嵩は彼らをさんざんに侮辱する。 男たちは、顔を真っ赤にして、斬りかかってきた。 皇甫嵩はまったく動じず、右手で自然に振り上げた形に左手を添えるようにして、上段に構えた。 次の瞬間、正面にいた男めがけて、刀を振り下ろした。男は刀を胸の前に突き出すようにして受けを取ったが、それがいけなかった。 二本の太刀が激突した瞬間、男の太刀が男の胸に跳ね返ってきたのである。 男は地面へとたたき落とされ、胸の痛みにもがき苦しんでいた。 蹋頓はこの型を見て、さっき皇甫嵩が言った言葉を思い出した。 「お、お前ら一斉にかかりやがれ!」 蹋頓は驚きを隠しきれずにいたが、周りにいた男共に指示を出す。 「ほう・・・・・・しかし、養豚所の豚にやられるほど私は甘くはないぞ!」 皇甫嵩はニヒルな笑みを浮かべて言い放つと、左右から斬りかかってきた男たちの胴を薙ぎ払った。 さらに正面から拝み打ちを放ってきた男の太刀に自分の太刀を合わせると、そのまますくい上げるように刀をはじき飛ばし、容赦なく、男の右肩から袈裟切りにしてみせた。 残った、蹋頓たちは後ずさりしている。 もう、彼らは生きた心地がしなかったことだろう。 そのとき、別の方でもうめき声が聞こえてきた。 「義真〜!張角さんは助け出したよ〜!」 朱儁だった。彼女は両手を大きく振って、皇甫嵩の方を見ている。 皇甫嵩の作戦通りである。皇甫嵩が主力を引き付けている間に、朱儁が張角を助ける。見事であると言えよう。 完全に、いいところなしの蹋頓は歯ぎしりして、朱儁と合流を果たした皇甫嵩たちと対峙した。 そのとき、数十人の男とたちがステージに上ってきたのである。 「なんだあ、蹋頓。女二人にやられやがって!」 「丘力居の従兄(あにき)!面目ありません」 どうやら、この男が親玉らしい。丘力居は手慣れた手つきで男たちに命令をし、皇甫嵩たちを包囲した。 このとき、皇甫嵩には誤算があった。張角を逃がせなかったことである。 (どうするの、義真!二人だけだったらどうにかなるけど、張角さんがいたんじゃあ) (うろたえるな、公偉。何か策があるはずだ) 二人はそう言うと、張角を守るように挟み込んだ。 「もう、やめてください!私が行けばすむだけですから!」 柔らかくも、切実な張角の声が、二人の耳に響いた。 「行く必要なんか無いよ!」 「公偉の言う通りだ。君にはもっと、格好のいい人がお似合いだ。あんな豚の相手をする必要はない」 皇甫嵩は彼らにも聞こえるような声で、張角に言った。もちろん「豚」を強調することも忘れてはいない。 「どうやら、置かれてる立場が理解できていないようだな」 皇甫嵩の言葉に顔を引きつらせた丘力居は、ひび割れ寸前の声で言った。 「置かれた状況・・・・・・そうだな、エサを求めてのさばり回る顔の悪い野良犬といったところだろうか・・・・・・」 「そうね。付け足すなら、弱虫のってところかな」 皇甫嵩の揶揄に朱儁が完璧なタイミングで答える。こんな状況でも口が減らないのがこの二人である。 二人の言葉に、ついに彼らが完全にキレてしまった。 「もう、詫びぃいれたって、ゆるさんからな!おい!お前ら、腕の一本ぐらい、へし折っちまってもかまわねぇ!二度と喋れないようにしちまえ!」 丘力居はそう命令すると、男たちは模造刀を振りかざして、一斉に飛びかかってきた。
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