下
【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
217:弐師 2007/01/20(土) 22:29 「お疲れさまだったね。」 「いえ、伯珪さまこそお疲れさまでした。」 これまでの人生で一番緊張したが、何とか大過なく踊りきることが出来た。死ぬほど嬉しかったが、寿命が縮んだ気さえする。まあ、何だかんだ言って、最高だった。 そういうわけで、ダンスは無事に終わり、私達は寮へ帰り道を二人きりで歩いていた。 範さまは片付けがあるらしく(あたしも手伝おうとしたのだが、見事に断られてしまった)、単経さんと田揩さんは二人で別にもう帰ってしまっていた。 昼間降っていた雪は、今は止んでいる。が、また何時降り出してもおかしくはない。厚い雲が、あたしたちの頭上に広がっていた。 「これで旭記念日も最後か。うん、今までで一番楽しかったよ。ありがとうね。」 ――――――――最後。 わざと、意識しないようにしていた。 もうすぐ、伯珪さまとは違う学校に行くことになる。当然と言えば当然のこと、「出会いが有れば別れもある」のだ。だけど、そんな悟ったようなことを言っても、淋しいものは・・・淋しい。 だけど、目の前の伯珪さまは何というか・・・実にあっけらかんとしている。 「・・・伯珪さまは、淋しくないんですか?これが・・・最後なんですよ?」 思わず、非難するような口調になってしまった、と反省する。しかし、伯珪さまは特に気分を害された様子もなく、むしろ、少し驚いたような顔をしている。 「そうだな・・・私も、もちろん淋しいさ。だけど、淋しさに身をゆだねるより、残り少ないみんなと・・・貴女と過ごせる時間を大切にしたい。だから、私は出来るだけ笑っていたい、淋しそうな格好も我慢する・・・変かな?」 「いえ・・・あたしの考えが足りませんでした・・・」 「いや、私も素直じゃなかったかもしれないね。出来ることなら、みんなとずっと一緒にいたいし、これが最後だということを淋しくも思う。」 しばし、沈黙が二人の間に流れる。 気が付けば、雪がひとひら、またひとひらと降っていた。幽州はこの学園内でも最も寒いと言われる。今も手が寒くて仕方ない。せめて手袋でもあれば良かったのだが、今日に限って忘れてしまっていた。そんな自分の間抜けさを恨みつつ、真っ赤になってしまった手に息を吐き掛ける。 「士起、寒くないか?手が真っ赤だよ。」 「え、あはは・・・」 あたしが誤魔化すように笑うと、伯珪さまも少し頬をゆるめた。 そしていきなり、あたしの手を握った。いきなりの事態に混乱する、が、さっきの伯珪さまの言葉を思い出し、あたしは何も言わずに握り返した。 冷え切った手に、伯珪さまの暖かな感触が伝わってくる。 雪が、ひらひらと、あたしに――――――あたしたちに、舞い降りる。 もう、言葉は何もいらなかった。 ただ、お互い側にいる。 それだけで、最高に幸せだ――――――――――――――――
上
前
次
1-
新
書
写
板
AA
設
索
【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】 http://gukko.net/i0ch/test/read.cgi/gaksan2/1074230785/l50