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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
170:★教授 2006/01/20(金) 00:18 ◆◆ A CONVERSION! 〜転換〜 ◆◆ ■■ TROUBLE ■■ 「で…どうすんのよ、この状況」 「知らないよ。こんな漫画みたいなシチュエーション、私にどうしろって言うのさ」 成都棟内、階段踊り場付近でへたり込む女子生徒二名。 一人は赤いボサボサ髪の眠たそうな少女、もう一人は薄紫の艶やかな髪をした目線厳しい少女。言わずもがな、簡雍と法正だ。 二人は埃まみれの上に手足に擦り傷や痣を作っている。よくよく見てみると法正はそれほど傷を負ってはいなかった。それを痛がるような素振りを見せてはいないが、端から見るとやはり二人とも痛そうな状態だ。場所と状況を見れば二人が階段から仲良く池田屋ヨロシク転げ落ちたものだと推測する事に容易だろう。 「正直…困ったわ。憲和、何とかしなさいよ」 大きい溜息を一つ、簡雍がじろっと法正を一瞥して言う。 「冗談。何とか出来るような狡い知恵を孝直が搾り出して欲しいもんね。そーゆーの得意でしょ」 肩を竦めて法正が言葉を返した。 「狡いはともかく、私の範疇なら幾らでも考えるわよ」 「ま、こんなワケ分かんない状況は…医者にもどうにもならないんじゃない」 法正は立ち上がるとスカートの埃を大雑把に払う。それに続いて簡雍も立ち上がって着衣の乱れを整える。 「とにかく、ここは離れて会議室行こうよ。あそこなら一人くらいは分かると思うんだ」 法正は服を少し着崩して簡雍に提案する。着崩している法正を見て、簡雍が慌ててその着衣を戻そうとする。 「私のイメージダウンになるような事しないでよっ」 「あー…はいはい」 法正は思い出したように声を出して着衣を整える。安心したような表情の簡雍…二人とも様子がかなりおかしい。 「ともかく、それでいいと思うわ。問題はこの状態を信用してもらえるかってトコだけど」 「信用してもらわなきゃなんないよ。このままってワケにはいかないんだし」 二人は喧々諤々と廊下を歩いていった。 ■■ PANIC ■■ 「はー…で、そっちが孝直で…こっちが憲和って事なわけやな」 劉備が簡雍と法正を交互に珍しそうな目で見る。 「流石の憲和ちゃんも困ってるんだ。何とかなんないかな」 「いや、アンタは孝直やろ」 「だーかーらー…私が憲和なんだって」 「あ、そやったな」 劉備と法正が漫才じみたやり取りを横で見ている簡雍。疲れたような困っているような複雑そうな顔をしている、が堪り兼ねた様で口を挟んだ。 「総代…私、真剣に困ってるんですけど」 悲痛な思いが混ざった声に、さしもの劉備も咳払いを一つして漫才を止める。 「すまんすまん。でもな…この時間でここにおんのはウチと孔明くらいやで。孔明のトコには行ったんかいな?」 「一番行きたくないトコですが?」 「愚問やったな」 劉備、簡雍、法正の3人ともが一人の狂科学者の顔を思い浮かべる。何を置いても研究と萌えだけは手放さない、地球が滅びても一人生き延びそうな少女の顔を。 「まあ居場所は分かるから…最後の手段として」 法正はどかっとソファーに座ると、手近にあった本を開いた。 「ああ、エリア51な…」 劉備はノートパソコンを開いて信用できる口の堅そうなキレ者をピックアップしながらつぶやく。簡雍は劉備の横でサポートしながら頷いた。 エリア51。 それは諸葛亮孔明が自分の研究を誰にも邪魔されたくない為に、築き上げた専用研究室の事である。 その怪しい研究室は成都棟の旧校舎の中に設けられており、ただでさえ古い校舎というだけで不気味なのに危険な音を流して更に不気味さを演出していた。その為、一般生徒は怯えて近づかないのだ。当然、苦情も劉備の元に何十何百と寄せられてきた。こうなっては総代として動かざるを得ない劉備も張飛や馬超、趙雲といった歴戦の兵を率いて孔明に注意をしに行った。音には物怖じすらしないタイガーファイブに襲い掛かる侵入者排除システム。しかし、アスレチック感覚でそれを返り討ちにされていく。そして先導しているのが劉備では孔明も流石に最終防衛システムのスイッチを押すわけにもいかずお手上げ状態。結局、白旗を挙げた孔明と劉備のタイマン談義によって音は鳴らさない、侵入した一般生徒に危害を加えないという条件で研究室存続を許されたのである。 しかし、危険な音や侵入者排除システムは解除されたものの、今までの事もありやはり誰も近づこうとはしなかった。 そして一般人の近づけない絶対領域、成都の秘密研究施設と呼ばれ…現在の呼び名であるエリア51として呼ばれるようになったのだ── 劉備はあかんと一言言うと、ノートパソコンを閉じる。 「みんなそこはかとなく口が軽そうや。こういう事情なら尚更やなぁ」 「やっぱ、あそこ行くしかないのか? つーか、あそこしかない」 法正は髪をくるくると指先で弄びながら早くも最終手段を口にした。簡雍もまた同意したように強く頷く。 「今日中に何とかしないと。個人情報が危険に晒されてるもの」 早速とばかりに部屋を出ようとする簡雍。しかし、後ろからキツイ一言が襲い掛かった。 「ホント…貧しい胸だこと」 振り返った簡雍にぺたぺたと自分の胸を触りながら哀れみに近い溜息を吐く法正の姿が映る。 「う、うるさーい! 何さ、でかくたっていい事ない…な…の?」 逆上して同じ事をする簡雍。しかし、そこには未だかつて体験した事のない夢幻世界が広がっていた。気にして初めて分かった事…なるほど、自慢したい気持ちは分かる。むしろ、このままでもいいかも…なんて気持ちになってしまった。 「これはこれで…」 悦に浸り気味の簡雍から本音がポロリと出た。 「よくねー!」 それにツッコミを入れる法正。 そしてそれを新鮮そうな眼差しで見つめる劉備がいた── ■■ MAD and GENIUS ■■ 「ほう。経緯は理解できましたが…何とも萌え要素とお約束を混同…あ、冷めた目で見られるのは辛いのでやめてほしい」 白羽扇を手に本音感想を述べる諸葛亮に劉備、簡雍、法正の冷たい目線が浴びせられた。 「で、どないなんや? 何とかなるんか?」 「ははは。私に出来ない事は何一つないのです! この素敵現象を終わらせてしまうのはいささか残念ではありますが……これこれ、輪ゴムを撃たない」 簡雍が太い輪ゴムを何発か撃ち込んで諸葛亮を黙らせた。彼女には素敵要素満載なのかもしれないが、簡雍にしてみればこの上なく嫌らしい。 諸葛亮はこほんと咳払いをすると、こちらへどうぞと部屋の奥に案内をし始めた。三人は互いに見合ったが、詮索すると却って長引くと判断して後に続く。その途中、どこかで見た事がある猫型ロボットや自動歩行する城の模型が目に留まったが、敢えて無視する。そして、目的の場所に到着。 「こんな事もあろうかと、秘密裏に製作しておったのです」 「うっわー…お約束もいいとこだねぇ」 目の前に広がるその光景。椅子が二つと頭にかぶせるのだろう、色んな突起物とパイプが伸びているヘルメット。そして、その後ろにはこれまた何処かで見た事のある機械が鎮座していた。更にその横には『秘密結社○ョッカー』と書かれた手術台があったが、諸葛亮を除く三人が協議した結果、見なかった事になった。 「つまりは…私達二人があのヘルメットをかぶって椅子に座ればいいという事なのね」 「論理的な説明をしたかったのですが、平たく言えばそういう事ですな。後は、こちらで操作しますので」 ささ、ご両人と簡雍&法正を椅子に座らせる諸葛亮。渋い顔で椅子に座ると法正と簡雍はヘルメットをかぶった。ここに来て劉備が『ウチ、必要ないんとちゃうんかいな』と思った。 「では、お二方。覚悟完了でよろしいか?」 諸葛亮はリモコンを手に簡雍と法正に向き直る。 「覚悟完了ー…って! ち、ちょっと! それテレビのリモコンじゃん!」 「のーぷろぶれむ」 「棒読み!? ち、ちょっと覚悟不完了!」 「腹を括ってその時を待ちなさい、お二方」 逃げようとする二人を見て、諸葛亮がリモコンのスイッチを押す。と、椅子からベルトが飛び出し二人を拘束した。 「うわー! やめてー!」 「離してよ! うわっ! 何か生暖かい!」 法正と簡雍、絶体絶命。それを眺めてニヤリと諸葛亮。 「では、エキセントリックな世界へご招待!」 「「するなーっ! っぎゃー!!!!」」 馬耳東風の勢いで嫌がる二人を尻目に諸葛亮がリモコンのドクロマークスイッチを押した── ■■ an EPILOGUE ■■ 簡雍と法正は並んで夜道を歩いている。二人とも疲れきった表情で何を話すでもなく帰路を進んでいた。 今から約2時間前、諸葛亮の機械で幸いにも元通りに戻る事が出来た。その時に彼女の言った言葉『ヒトによる臨床実験初成功』に心底青褪める思いもした。 「まー…無事に戻れたからいいか…」 普段見せないような疲れ顔で呟く簡雍。 「贅沢も我侭も言わないわ…自分の体が一番よ」 自分の肩を叩きながら法正も同意した。 しかし、胸をちらりと見てやっぱり勿体無かったかな…と溜息を吐いた。 それを見ていたのはお月様だけでした。 ■■ RECOLLECTION ■■ 「待てーっ! そのカメラこっちに渡しなさーい!」 「やなこった! 折角のスクープ、台無しにしてたまるもんかー!」 毎日が日課。いつもの鬼ごっこを繰り広げる簡雍と法正。勿論、簡雍が法正のせくしぃショットを盗撮したのが原因なのだが。 廊下を走り、教室に逃げ込み引っ掻き回し…他人の迷惑を顧みず展開される鬼ごっこも終盤に差し掛かった時だった。 「あ! しま…」 階段を駆け下りようとした時、簡雍の足が縺れた。簡雍の体が吸い込まれるように階下に消えていく、が── 「憲和!」 法正の手が素早く伸び、簡雍の手を掴んだ。しかし、詰めが甘かった。勢いの付いた簡雍の体を支えるのに非力な法正の力が足りようはずもない。おまけに両手で掴んだ為、手摺に掴まる事も出来なかった。 「く…」 目を閉じ、来るべき衝撃に慄く法正。そして最初の衝撃…存外に痛みを感じなかった。その代わり、自分が抱きかかえられている事に気付いた。 「憲和!?」 更に二度三度と衝撃が続く。痛みをそれほど感じない法正は必死で自分の盾になってる簡雍を振り解こうとするが…現状ではどうする事も出来なかった。そして最後の衝撃が── 「いたっ!」「あいたっ!」 火花が散った。もがく法正と頭へのダメージを防ごうとした簡雍の無我夢中の動作がごっつんこだったのだ──
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