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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
182:北畠蒼陽 2006/01/21(土) 21:47 [nworo@hotmail.com] >7th様 う、うぶぶぅ…… ナースで! 超ナース! ピンクナース! ……はふん(照
183:海月 亮 2006/01/22(日) 00:06 最初の頃は、どうにも気に食わない小娘だと思った。 ちょっと小利口なところを"あの方"に認められたからって、そのあとも身の程を弁えずに"あの方"の周りをうろちょろする目障りな犬っころ…そうとまで思ったこともあった。 きっとあの一件がなければ、あたしはあの娘を、一生受け入れることなどできなかったであろう。 -フローズン・ハートは笑顔に融けて- あたしの主人…本初(袁紹)お嬢様が冀州学区に腰を落ち着けた頃のことだった。 幼い頃から本初お嬢様の側近くに仕え、いろいろ目をかけていただいたという恩義の分を差し引いても…お嬢様は聡明で寛大さ持ち併せ、何よりも魅力的な方だった。 名族・袁氏の血筋云々ではなく、生まれ持った気品、気高さのようなものがあった。 そして何より、お優しい方だと思う。 妹のように可愛がられていたあの曹操などは、言うに事欠いて「優柔不断で鷹揚なだけのお嬢様」などと陰口を叩いているらしいが…そんなことすら、ただ微笑んで気に留めずにもいた。 何時も「あの娘はただ、私にかまって欲しくて、わざと憎まれ口を叩いているのよ」と、言って。 そういうお嬢様だからこそ、私はこうして、側近くに仕えることができることを誇りにすら思っていた。 だからこそ…怖かったのだ。 あたし以上に優れた娘が、今あたしのいる場所を、いつか奪い去ってしまうのではないかと。 今思えばその娘は、かつてのあたしにとってそういう存在だったのかもしれない…。 「…元図さん?」 どのくらい時間がたっていたのだろう。 彼女…逢紀は、はっとして目の前の少女のほうへ視線を戻した。 「あ…す、すみません、あたし…」 袁氏生徒会の本拠地・冀州学区はギョウ棟の執務室内で、逢紀はその主・袁紹とただふたりきりで、向かい合ってソファに腰掛けている。 数日前、易京の地において宿敵・公孫サンの勢力を打ち払い、そのことにより華北四校区の覇者となった袁紹。逢紀は中学三年生ながら、その功績と才覚を認められ、華北四校区における会計事務の総括を任されるまでになった。 ある、少女と共に。 「あなたでも、周りを忘れてしまうくらい考え込んでしまうこともあるのね」 「う…」 咎めるでもなく、にっこりと微笑む袁紹の言葉に、申し訳ないやら恥ずかしいやらで俯いてしまう。 この日、彼女がこうして呼ばれたのには、ある重大な理由があった。 彼女と共に華北四校区の会計を総括するもう一人の少女についての、あるウワサ。 いわく、その少女が華北四校区の会計総括を任されたのをいいことに、その予算をこっそり横領し、なおかつ一般生徒に対して横柄に振る舞っているというものだ…。 「…私はどうしても、あの娘がそんなことをするような娘には見えないわ。けれど、こうして話題に上ってしまうということは、何らかの原因があると思うの…」 そう話す袁紹の表情は、とても悲しそうに見えた。 それはそうだろう。その話題に上った少女は、袁紹が直々にその才能を認め、取り立てたほどの逸材だったのだから。 事実、彼女はその鈍臭そうな見た目に反して、非常に頭の回転が速く、しかも武の面でも"ソードマスター"顔良が認めたほどの才能を秘めている。 そして、彼女はお嬢様の為に全力で尽くすことを…お嬢様の側に居れる事を、何よりも望んでいることを、逢紀は知っていた。 「あの娘には確かに素晴らしい能力があるし、何よりも一生懸命な娘だと思ってた。でも、こんな事態になっては、このまま彼女に大役を任せるのは厳しいような、そんな気がするの…」 俯く袁紹。 逢紀は、その言葉を噛み締めながら、何時か自分がその少女に対して行ってしまったある事件のことを思い出していた。 半月ほど前、逢紀とその少女が華北四校区の会計総括を任されて、間もなくのころの話だ…。
184:海月 亮 2006/01/22(日) 00:07 「何か、御用ですか?」 人気のない、ギョウ棟体育館の裏手。 数人の少女に取り囲まれながらも、その少女は気丈にも、その首魁と思しきロングヘアの少女…逢紀をを見据え返している。 双方の背丈の差もあるが…明らかに逢紀は、その少女に対して見下すような格好である。 「…あなた…はっきり言って目障りなの」 その冷たい言葉にも、目の前の少女は怯む様子をまったく見せていない。 むしろその言葉に、更に強い視線できっと見据え返してくるほどだった。 「何故ですか!? はっきり言いますが、私はあなたに恨まれる様なことをした覚えはありませんよっ!」 その態度に、逢紀は自分の神経を逆撫でされたような不快感…いや、憎悪すら覚えた。 「新参者の分際で、お嬢様にべたべたとまとわり付くその態度が、目障りだって言ってんのよッ!」 感情に任せるまま、彼女は振り上げた平手を思いっきり少女めがけて振り下ろす。 しかし、その"制裁の一撃"は、何処かあどけなさを残したその少女の顔に届くことはなかった。 「…ッ!?」 振り下ろした左手は少女が振り上げた右手に弾き返されてしまい、それどころか逢紀の身体もその衝撃の余波で後ずさりする格好になった。 取り囲んでいた少女達も、その様子に驚愕の色を隠せない。 「…そうやってあなた達は、今までもやってきたんですか…?」 少女の眼差しに、凄まじいまでの怒りの色がほどばしる。 「あなた達がこんなつまらないことをすれば、かえって本初様を悲しませることになるってこと、どうして解らないんですかっ!」 「何ですって…」 「私達が本初様のことが大好きなように、本初様だって私たちのことを大好きでいて下さってるんです! それがこんな醜い争いをして、傷つけあっているのを知ったら…きっとものすごく悲しまれます!」 少女の凛とした態度、声…いや、それ以上に、まるで解った様に主のことまで語るその少女の言葉に、逢紀どころか周囲の少女も顔を憤怒で紅潮させていた。 「っ…言わせておけばッ!」 憤怒が頂点に達した逢紀が少女の顔に向けて拳を振り上げる。 少女が跳ね除けようとするよりも早く、少女の両隣にいた少女が、素早くその両手を掴み、その動きを封じた。 一瞬の出来事に驚愕した少女は、その痛みを覚悟するように目を閉じた。 だが、その拳が少女の顔を捉えることはなかった。 「やめておけ」 振り上げた拳を後ろから掴まれ、逢紀は憤怒を露に後ろを振り返る。 「っの、邪魔を…っ!?」 その人物の姿を見た瞬間、彼女の顔から一気に血の気が引いた。 同学年の少女達よりも背の高い逢紀よりも、更に長身の、亜麻色の髪をポニーテールにした少女。 そして、その後ろにいたライトブラウンの髪をショートカットにした少女が、 「やれやれ…女の園の嫉妬による私刑とは…まったくもって美しくないですねぇ…」 大仰な仕草で、そう吐き捨てた。 「顔良先輩…儁乂さん」 再び目を開けた少女が、呆然とつぶやいた。 顔良は逢紀の手を掴んだまま、やれやれと言わんばかりに頭を振った。 「まったく…本初様からお前達の様子がおかしいから見て来いと仰せつかったから、嫌な予感はしていたんだがな…」 そして、少女の手を掴んでいる少女達に一瞥くれると、反射的にその両手を開放した。 「元図、正南の言うとおりだ。お前らがお互いにつまらん言いがかりをつけ合っていること、どれ程本初様を悲しませているか、少しは考えろ。本初様の側に仕えて長いお前であれば、そのくらいのこと解らぬわけではあるまい?」 「くっ…」 開放され、所在のなくなった拳を振り下ろし、その場から立ち去る逢紀。 急激に冷めていくその心の中には、何故か敗北感だけが残った。 思えば、この時からだっただろう。 あたしの中で彼女…審配に対するイメージが、それまでとはまったく違うベクトルに傾き始めたのは。 彼女はあの時、「私達」と言った。 つまり彼女は、本初お嬢様だけではなく、あたし達のことまで考えていたということに。 あたしは"新入り"のあの娘がお嬢様と親しくしていたことに、不快感と敵意をむき出しにしていたというのに。 彼女は、それ以降もあたしと馴れ合うようなことはなかった。 だがそれでも、彼女は与えられた責務を全うし、あたしが帳簿記入の上でやらかしたミスも、あたしのいないうちにこっそり直してくれたり、他にもさりげなく、あたしがやりやすいように取り計らってくれたことを、あたしは知ることとなった。 彼女は、本初お嬢様そのものは当然として…お嬢様を取り巻くすべてを、好きでいてくれるということに気づいたとき…あたしはその時から、彼女のことをもっと良く知りたいと思うようになっていた…。
185:海月 亮 2006/01/22(日) 00:07 逢紀は穏やかに微笑んで、袁紹のほうへ視線を戻した。 「愚問ですよ、お嬢様」 「え?」 「そんなの、どうせ彼女の立場をやっかんだ郭図か辛評あたりが流したデマでしょう」 逢紀の答えに、袁紹は驚いたのか目を丸くした。 逢紀は更に続けて、 「あの娘があなたを慕う気持ちは本物ですし、大体あれほど一生懸命で正義感の強いあの娘がそんなことをするはずなんてありません!」 そう言い切った。 袁紹は想いもよらぬ逢紀の言葉に、戸惑ってさえいる風でもあった。 「…あなたは、あの娘のこと…その、嫌いだったんじゃ、なかったの…?」 「確かにあの娘が嫌いだったこと、否定はしませんよ…でも、私事は私事、公の事は公の事。流石に華北四校区の会計総括ともなれば、いくらあたしでも一人では荷が勝ちすぎます。今あの娘が…正南がその役目を外されたら、あたしが困りますから」 逢紀は悪戯っぽい笑顔で微笑む。 幼い頃から袁紹の側に仕え、令嬢専属のメイドとして厳しいくらいの教育を受けていた逢紀が、こういう笑顔を見せるのは袁紹の前だけであった。 袁紹も彼女の真意を汲み、微笑む。 「そう…あなたがそう言ってくれるなら、私も心配はないわ。この話については、聞かなかったことにしましょう」 「ええ、それが上策です」 そして逢紀は徐に立ち上がると、つかつかと執務室のドアに向かい、それを思いっきり開け放った。 「入りづらい雰囲気だったのは酌量の余地はあるけど…立ち聞きはいい傾向じゃないと思うわよ?」 「あ…」 扉の前にいたのは、飴色の光沢がある髪を、二本の赤いリボンでスタンダートなツインテールに纏めている、年相応の幼い顔立ちをした小柄な少女。 鳶色の瞳をわずかに潤ませ、ばつが悪そうに俯いてしまったその少女こそ、その話題に上っていた審配、字を正南そのひとであった。 袁紹に促されるまま、審配は袁紹、逢紀と向かい合う形でソファに座らされていた。 その手には、一通の手紙がある。 こうして彼女がやってきたということから、その内容は袁紹にも逢紀にもなんとなく予想がついた。 「え…えっと、その…私っ」 ふたりの視線を感じながら、彼女は親から仕置きを受ける子供のように、不安で震えていた。 「私…この生徒会の一員として日が浅くて…それにたいした能力もないのに、突然重要な役目を与えられた所為で、結局本初様の御期待を仇で返す結果になってしまいました…だから、私…」 「…悪いけど、それじゃ大いに困るのよ」 「え…?」 思いも寄らぬ方向から声が飛んできて、審配は驚いてその人物…逢紀のほうを向いた。 「生真面目なのもいいけどさ、そうやって思いつめて周りを振り回すのがあなたの悪い癖よ」 「あ…」 そうして、呆気にとられる審配の手から、その手紙を難なく取り上げる逢紀。 その中身を一瞥すると、果たして彼女の考えたとおりの内容であった。 この不始末を償うための、職務辞退の請願書。その末尾には、自分を認めてくれた袁紹への感謝の言葉と、同僚である逢紀に対する謝罪の言葉で締めくくられていた。 そのことに逢紀は何故か、嬉しくすら感じていた。 「なんだか…無碍に破り捨てるのも気が引けますから、とりあえずあたしが預かっておく、という形で宜しいですか?」 「ええ、あなたの良い様に計らって、元図さん」 逢紀の言葉からその内容を悟ったらしい袁紹は、鷹揚に頷く。 「ということだから…まぁ気にしないこと。また明日から、ちゃんとふたりで協力し合って、頑張って頂戴ね」 呆然としたままの審配。 何時の間にかその隣に腰掛けていた逢紀が、その背中を軽く叩く。 「は…はいっ!」 飛び上がるかのように立ち上がり、勢いよく深々と頭を下げる審配の姿に、逢紀は苦笑しながら、袁紹は穏やかに微笑みながらその顔を見合わせ、頷いた。 「と言うわけで、このお話はこれで終わり。もう大分良い時間になってしまったし…どうかしら、折角だから今日の夕食、正南さんも一緒に…どうかしら?」 「え…?」 驚き、戸惑う審配を他所に、袁紹は傍らの逢紀に目をやる。 「手配なら、今からでも間に合うと思いますが…」 「どう? 何かご予定があるなら、また別の日にでもいいけど」 その言葉を受け、審配は一瞬、逢紀のほうへ目をやった。 「景気づけ。お嬢様直々に、生徒会随一の働き者のあんたへのご褒美だってさ。受け取って吉だと思うけど?」 その笑顔に、自分がようやく受け入れてもらったことを感じ取り、審配の表情に笑顔が戻る。 「は、はいっ、是非とも!」 そして再び勢いよく頭を下げるその少女の姿に、今度は袁紹すらも苦笑するしかなかったという。 この日を境に、それまで不仲と専らの噂であった審配と逢紀は行動を共にするようになり、やがて無二の親友として、共に袁紹の為に身命を賭す事を約束しあったという。 しかし、それから間もなく行われた、春休みを跨いで行われた官渡公園決戦において袁氏生徒会は曹操率いる蒼天生徒会より総敗北を喫し、ふたりは凋落する袁氏生徒会のために奮戦するも、滅びの道を辿ることとなる…。 (終わり)
186:海月 亮 2006/01/22(日) 00:17 なんだか今年はえらく予想外のキャラで萌えまくったので、勢いで逢紀視点中心で話を書いてみた。反省はしていない。 えーまぁつまりはなんだ、結局こういうお話は海月さんってば大好きなんですよ。 そして何気に目立ってんだか目立ってないんだか張コウとかもこっそり出てるとかな。 で、袁紹や顔良、張コウはともかく、審配と逢紀は海月のオリデザしかない(ハズ)ので、とりあえずこれを見てイメージ補完しといてくださいな。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~flowkurage/data/create003_a.jpg(審配) http://www5f.biglobe.ne.jp/~flowkurage/data/create003_b.jpg(逢紀) ご覧になられた方も居られるかも知れんが、参考程度に。
187:7th 2006/01/23(月) 23:00 巫女服。 白の小袖に緋色の袴。正月の神社でよく見るアレである。 女性にも割合好まれる服装であり、そのためか正月の巫女の求人は狭き門となっている。ある意味、女性の憧れと言っても良い服装である。 正月にはまだ早いが、別に正月でなければ着てはいけないと云う決まりも無い。むしろ可能ならば一年中愛でていたい衣装、それが巫女服。 長い髪を赤いリボンで束ね、手にはお払い棒を持った法正。 髪はそのままに、右手に玉串、左手に神楽鈴を持った簡雍。 両人とも、即席巫女とは思えぬほど様になっている。 「うんうん、インパクトにはちぃとばかし欠けるけど、巫女服は王道やしな。やっぱし外す訳にはいかんやろ」 「ほんとですね。私も腕を揮った甲斐がありました」 満足げに頷く劉備。その傍ら、衣装提供者兼プロデューサーの趙雲もまた、会心の笑みを浮かべている。現役の巫女に太鼓判を押される程なのだから、やはり大したものなのだろう。 「…やけに本格的な仕立てだと思ったらコレ本物!?」 「なんつー無駄なことを…」 趙雲提供と云う事は、当然この服は彼女の実家、常山神社のものである。この時のために、わざわざサイズが合うのを持ってきたらしい。 しかし、こんな目的に神聖なはずの巫女服を使用していいのだろうか。 「いえいえ、お二人ともよくお似合いですよ。お正月には是非、うちの神社でバイトしてみませんか?」 どうやらアルバイトの勧誘と面接も兼ねているようだった。 スク水。 正式名称スクール水着。小学校から高校までの体育における水泳用に採用されている水泳着を指す。 その限りないフェティシズムは、制服・ブルマー・スクール水着の三つをもって『お菓子系』と称され、支持を集めている。 濃紺のナイロン生地に、白い名札布が映える。前の内側腹部から外側下半身にかけて穴が開いて、前からだとスカートのように見えるそのデザイン。 紛う方無き旧スク水である。 あまりの恥ずかしさに、法正は頬を真っ赤に染めている。 それもその筈。一般にスク水に使用されるナイロン生地は、分厚い上伸縮性に乏しい。少々サイズが小さいだけで、簡単にぱっつんぱっつん少女の出来上がり……つまりはそう云う事である。 最早、作為的どころの騒ぎでは無い。どう見たって恣意的だ。誰が考えた? 簡雍の方はもっとそれが顕著だ。 デザインは法正と同じ、旧スク水。しかし圧倒的に異なる、その色。 真っ白なそれは、禁断の白スク。 スク水は、何も伊達や酔狂で濃い色をしている訳ではない。水着という性質上、それは必ず水に濡れる。そうなった時、水着を通して身体が見えぬよう考慮された上でのあの色なのだ。 故に、スク水に白が採用される事は基本的に有り得ない。だからこそのアンビバレンツ。これこそ、禁断と呼ばれる所以である。 「…こんなの撮って良いの? 倫理的に問題があるような気がするんだけど」 「全くだ。一体どんな層をターゲットにしてんだよ、コレ」 どう考えてもそっちの人対象である。最悪だ。 「まぁええやん。売れて儲かればいいって事で。あまりヤバイのは編集でカットするから」 そう言いつつ、手に持ったビデオカメラを二人に向ける劉備。動画も売る気なのか。 「……早く終わってくれないかしら。正直、この格好って結構肌寒いのよね」 真夏や屋内ならともかく、秋の気配を仄かに見せ始める今の時期でこの格好は、少々無理がある。 寒そうに胸の前で腕をかき抱く法正。それを見て立ち上がったのは諸葛亮だ。…何だろう、このそこはかとないヤな予感は。 「ふむ、寒いと仰られるなら法正殿、この上着をどうぞ」 そう言って渡された服を、言われるままに着る法正。そして気付く。コレは……! 「半袖体操服……っ! 見事や、孔明!」 「はっはっは、お褒めに預かり恐縮です」 これこそ奥義『スク水の上から体操服』。前述の『お菓子系』三要素のうち、二つを同時に盛り込んだ究極のスタイル。 スク水のオプションと言うにはあまりにも破壊力の強いこの組み合わせ方は、まさしく奥義の名を冠するに相応しい。 「ぃよし! コレだけで売り上げ15%アップは間違いなしや!」 「「そんなのどうでも良いから早く終われー!!」 涙目になりつつ叫ぶ簡雍と法正。でもね、まだ終わんないんっすよ。 ナース服。 『クリミアの天使』ナイチンゲールに由来するこの制服は、彼女以来、看護婦の象徴となっている。 看護婦と云う名称が看護師になったのは記憶に新しい。が、そんなのは関係ない。重要なのは、そこにナースがいる。ただそれだけだ。 ナースのことを『白衣の天使』と呼んだのも昔の話。最近のナースは一味違う。 具体的には白くない。淡い色が基本ではあるが、グリーン、ブルー、イエロー等、実にカラフルだ。 勿論、ピンク色のナース服なんてのも当然のように存在する。暖色系の色は見る人に安心感を与えるらしく、病院でも意外と違和感が無い。 そして、今まさに簡雍が着ているのがソレ。ピンクのナース服にナースキャップ、追加装備にカルテを持たせてある。 確かに看護師なのだが…… 「うーん、何ちゅうかなぁ…。看護師だけどナースっぽくない気がするなぁ…」 「待て、ソレは一体何処がどう違うんだ」 「憲和の場合、ナース界の二大幻想、『ツンデレナース』と『ドジっ娘ナース』のどっちにも当てはまらんしなぁ…。言ってみれば『おたんこナース』?」 「意味がわかんねぇ…」 ナースと云うのは、外野の壮大なる共同幻想である。実際の看護師はとんでもない重労働で、肉体労働の上に休みも少ない。かなり過酷な仕事なのだ。 仕事に疲れ果て、微妙にやさぐれた看護師…今の簡雍はそんな風に見える。この上なくリアルだが、それ故にかえって減点だ。 一方、法正はピンクナースに非ず。白いワイシャツに膝上のタイトスカート、眼鏡をかけて白衣を着こなすその様は、どう見ても女医。 法正のソリッドな印象に、服装がばっちりマッチしていて、こちらもリアルである。只、簡雍ナースとの大きな違いは、リアリティが加点になっている事だろう。如何にも大人の女性然とした法正。何と云うか、色気がある。一歩間違えればイメクラと変わらない辺りが特に。 「完っ全に女医さんにしか見えんなぁ。将来はその道へでも行くんか?」 「生憎と私は文系でして、そっち方面はさっぱりです。孔明辺りにでも行かせてください」 「いえいえ、別段医者でなくとも白衣は着れます。文系でもカウンセラーとかありますしね。斯く云う私も、白衣は普段着として愛用してますが」 そう言われれば、確かに孔明は白衣を常日頃から着ている。もっとも彼女の場合は、あまりにも自然過ぎて本当に普段着にしか見えないが。 「ま、取り敢えず悪くはないからこんなもんで言いやろ。ナース服については次回までの課題と云う事で」 「三回目もやる気かよ!!」 簡雍の悲鳴が、空に響いた。
188:7th 2006/01/23(月) 23:08 簡雍+法正改造計画、続きをお送りします。 先ずはネタを提供してくださった海月 亮・北畠蒼陽両氏に深く感謝を。 お二方の想像されたものの万分の一でも表現できていたら幸いです。 この話はもう少しだけ続きます。 25日で旭記念日からちょうど一週間。その日を目安に完結させられるよう、努力したいと思います。
189:海月 亮 2006/01/23(月) 23:54 >>7th様 ( 冫、)ノシ GJ! あぁ…タグの使える身分であれば、今の気持ちが最大限に表現できるものを…_| ̄|○ というわけで、「どう考えてもそっちの人」の典型たる私が来ましたよ(゚∀゚) そして私めも、劉玄徳と同じ言葉を贈らせて頂きたい…あの奥義を出された以上、最早私如きめに何の文句が浮かびましょう(;´Д`)ハァハァ つかぱっつんぱっつんときたらもうそれd(ry そして簡雍を指して「おたんこナース」とかテラワロスwwwwつか懐かしいなソレwwwww 私はもうネタ切れなんでとりあえず以後はROM…_| ̄|○
190:北畠蒼陽 2006/01/24(火) 19:40 [nworo@hotmail.com] ナース!ナース!うっはー! やぁ、これはいいコスプレですね! 感動のあまり熱と鼻水が出そうです! 会社休めとかいう話ですか、すいません…… 25日を目安に!? まだあるの!? うっはー、明日までもんもんと過ごしましょう(笑
191:雑号将軍 2006/01/25(水) 19:58 ▲跳躍▲ 帰宅部連合の劉備が益州校区を手中に収めてから間もない頃、各地では連合に反抗する蜂起が相次いでいたそんな時。ここ南充棟でも反対派が蜂起していた・・・・・・。 「急ぐのよ!反乱軍は目の前まで迫ってきているわ!」 棟長が半ば叫ぶようにして、辺りを駆け回っている。 多少なりとも錯乱しているのだろう。元来、武道を鍛錬するよりも本を読むのが好きな文学少女だ。こんな山賊まがいの連中とまともにやりやったことなどあるはずもない。 まあ、焦るのも無理ないか・・・・・・。 「棟長、少しは落ち着いたらどうです?あなたがそれでは皆の士気にかかわります」 「・・・うっ、でもぉー」 「デモは反乱軍に殲滅させられましたよ・・・。とにかく今は・・・・・・うん?どうした?」 私は半ベソの棟長に軽口を交わし、善後策を講じようとしたとき放っておいた斥候が血相を変えて戻ってきた。 「なに!副棟長が敵に捕らえられたっていうのっ!」 私は灰色の天井を仰ぎ見るよりほかになかった。横では棟長がぺたりとへばりこんでしまっている。 無理もないかな。棟長と副棟長、仲良かったから。 文の棟長に対して武の副棟長。あの人はそんなに弱い人じゃない。 まあそんなに強い人ではなかったけど。 それでも単身棟内に残って私たちを逃がしてくれた・・・・・・。 助けないと・・・・・・絶対助けないと・・・・・・っ! なんだろう。この感じ。なんだか胸が熱い。 体中が炎に包まれているみたいに。 ――なんでもできる なんの根拠もない自信が私の心の中に満ちあふれてくる。 気がついたとき、私はもう木刀を手に取っていた。 身体が勝手に動いていた。 そう。それが一番近い表現。 「は、伯岐さん?一体どこに行くつもり?」 伯岐・・・親しい人にしか呼ばせない私のもう一つの名。この名で呼んでくれる人はここにいる棟長と後一人だけ。 副棟長。あの人は私を「伯岐」と呼んでくれる。 「そうですね。囚われた姫将軍を助けに行く・・・・・・そんなところでしょうか?」 私は肩をすくめ、ちょっとおどけてみせた。 棟長は何も言おうとしない。どうやら私の無謀極まりない行動に絶句しているようだ。 『私だって、バカだと思う。それでも私は副棟長を助けたい!』 もはや火のついていない部分は私の心の中には存在しない。 さあ、行こう! 「棟長。副棟長は私が必ず助け出してきます。必ず!」 わたしはそれだけ言うと、引き揚げてきた道を今度は攻め上っていった。 夕暮れ時に吹く風はまだ冷たかった。 『ここまでたどり着いたはいいが、どうやって侵入するか・・・・・・』 私は南充棟の裏門前の草陰に隠れ、潜入の機会を窺っていた。 昨日まで自分が登校していた所に入れない・・・バカらしい話だ。だが、れっきとした現実だ。 だからこそ、今はこの危機をなんとか切り抜けなければならない。 さて、どうしたものかな・・・・・・。 私は半時くらいそこで丸まっていただろうか。棟内を白光が照らし始めた頃、運動場の方から歓声が聞こえてきた。 それだけではない。 校舎の方からもなにやら、驚喜の雄叫びらしきものが聞こえてくる。 『なんとまあ、節操のない・・・・・・。あれでも女?』 私はそう毒づきながらもこれらの情報から現在の状況を分析する。そこかから導き出される答えは・・・・・・。 宴会である。 『ふふ、なるほど・・・私たちを追い出せたことを肴に祝勝会ねぇ。だったら私も参加してみよっかな』 私は心の底から再び燃えたぎってくる炎を感じていた。そして同時にこれから行う手順が流れる川のように形作られていった。 決断してからの行動は素早かった。 私は六〇センチばかりの木刀を握り直し、裏門に詰める柔道着姿の女生徒に斬り込んでいった。 闇の中を駆けた。かっこよく言えばそんな感じ。 私の斬撃の前に女生徒は助けを呼ぶ暇もなく、地面に倒れ伏していた。 正直言うと、なぜ柔道着なのか突っ込みたくなったけど、生憎そんな暇はなかった。 まあ、聞かなくても大方検討はつくし・・・。 ここからはスピード勝負だと感じた私は、女生徒からサブマシンガン(エアガン)と弾倉だけを引ったくり、棟を囲む壁に手を掛け、登った。 『さて、どこから忍び込むかだけど、やっぱり突入は美術室からよね』 私は最近、美術室の窓ガラスが割れているという情報を入手していたので、そこから乗り込むことにした。もちろん一階にあるというのも重要な理由なのだが。 私は小、中、高とガールスカウトに所属して、数々の山をベッドにしてきた。崩れ落ちそうな橋を何度も渡ってきた。そんな私にとって、塀の上を走ることは難しいことではなかった。 どうやら、本当に運動場に集まって宴会をしているようだ。ここまでいくら裏道を通ってきたとはいえど、誰一人として顔を合わせていないとは。 『ま、交代の時間までが勝負かな』 私は早くも光り始めた月明かりをバックに時計を確認すると、美術室に突入した。 「作戦・・・スタートよ!」
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