【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
192:雑号将軍2006/01/25(水) 20:02AAS
 ▲跳躍▲

 美術室に飛び込んだ私は敵が隠れていないか、辺りを見回す。だが、どこにも人の姿は見かけられない。
「まったく。私らもなめられたものね」
 私は思わずそう呟いてしまったが、冷静さを失ったわけじゃない。現に今だってこの山賊の首領が楽しんでいるアジトをトレースしている。
 私の心当たりがあたっていれば場所は一つ・・・・・・。
間違いない。きっとそこに副棟長と一緒にいる。
『あの首領なら必ずあそこに・・・・・・いる!副棟長と一緒に』
 自分の勘に確固たる確信を持ち得た私は美術室を飛び出し、真横にある廊下を駆け抜け、はなれの方へと歩を進めた。

 はなれへとたどり着いた私は自らの作戦が誤りでなかったことを悟った。
 その証拠に渡り廊下の先にはノースリーブタイプの拳法着に身を包んだ二人の女生徒が背筋をピンと立てて文字通り直立していた。更にその後ろには弓道部の部室への入り口があるのだ。
『ふふ、私の読み通り、親玉は弓道室にいるみたいね』
そして今、私は微笑を浮かべながら、目的地へと続く渡り廊下の角に隠れて様子を窺っているところだった。
 「ほんとに『ここ』とはね。この先の光景はあんまり見たくないわね・・・・・・」
 私はこれから眼に飛び込んで来るであろう情景を想像し苦笑してしまった。確かに、それ程見たいものではない。
でも副棟長を助けるためには仕方がない。間違いなく副棟長もここにいるのだから・・・・・・。
私は前へ進む決心をして、大きな深呼吸をした。
そして・・・・・・。
「レディ!ゴー!」
 私の一人舞台は今開幕した。

 私はいま、渡り廊下を歩いている。もちろん、目標は正面の重厚さを押し上げる、黒塗りの木門だ。
「な、何者です!この『道義衆』では胴衣を着ることが義務づけられているはずです!」
 私は自分の想像が確信から真実に変わっていくのを感じた。そう思うと私は笑いが止まらなくなってしまった。
「な、何が可笑しいのですか!な、名前をお名乗りなさい!」
 門をかためていたもう一人の女生徒がムキになって食いついてきた。
「ふふ、聞きたいなら教えてやる!私は張伯岐!お前らに奪われた南充棟の生徒よ!」
 私はそう言い放つのと同時進行で二人をきっと睨み付けてやった。
「た、たった一人でなにしにきたのよっ?」
「ふっ・・・愚問ね。南充棟の生徒が来たというのなら目的はただ一つ。あんたらに囚われた副棟長を助け出す・・・それだけだろうが・・・・・・」
 私がそう言って、やっと彼女らははっとしてエアガンを構えた。
「潰すぞ!!」
 彼女ら二人が引き金を引こうとトリガーに手を掛けたとき、彼女らの身体には数十発のBB弾が叩き込まれていた。
 二人はあまりの痛みに声を上げることもできずに失神してしまった。
「じゃ、親玉の顔を拝見するとしますか」
 私はそう呟き、倒れている少女たちを見下ろし、門を開いた。
 ドアの向こうに広がっていた光景は・・・・・・。
「あらぁ〜あなた弓道着も似合うのねぇ〜。もっと、ここを、こうしてっ」
「い、いや、やめてください!」
 広がっていた光景は驚くほどに官能的であった。弓道着を着せられた副棟長の胸元を開こうと女の手が伸びているのだ。
 その女はジャージに竹刀を持った昔のスポ根アニメに出てくるコーチの様な出で立ちであった。
 どうやら奴がこの賊の親玉のようだが私は身体が動かなかった。この状況を真実としたくないと、心から願ってしまったのだろう。
しかし、それは間違いであった。
私は副棟長を助けに来たのではなかったのか。現に副棟長は弓道着をはだけさせられ、嫌がっているではないか。
「早く助けないと」その感情が私を決起させた。
「おい、そこの女。その汚い手を放せ!」
 言うが早いか、私は気がついたとき親玉の顔をグーで殴っていた。
 親玉は頬を右手で押さえているが、これは反射的なもので、どうやらまだ事態を飲み込めてないらしい。
「副棟長。大丈夫ですか?無理はしないで下さい」
「はっ、伯岐なのか!?ごめん・・・迷惑かけて・・・・・・」
 副棟長が私の顔をまじまじと見つめてくる。なんというのか、とにかく恥ずかしい。私は、思わずそっぽを向いてしまった。
「とにかくっ!あのバカが正気に戻る前にここから脱出しましょう!」
「『バカ』っていうのはあたしのことかしら?まったく、痛いわね!この美しい顔に傷でも付いたらどう責任を取ってくださるのかしら!」
 なんと、さっきぶん殴った女が鬼のような形相で私たちの方へのしのしと歩いてきたのだ。
 私はとにかくここから逃げだそうと副棟長の手を取ろうとした。
「そうはさせませんことよ!」
 怒り狂った頭領はそう言い放つと、胴着姿の女生徒がわらわらと私たちを取り囲んだ。
 どうやら、何が起こってもいいように頭領があらかじめ戸棚の奥に伏せさせていたようだ。
「ざっと見て、二、三十人・・・。副棟長、私から離れないでくださいよ!」
「わ、わかった。あたしも援護する。そのエアガンを貸して」
 少し脅え気味で声が上擦っている副棟長にエアガンを渡すと、副棟長の後ろに控える。
 そして次の瞬間――
 私は跳躍した。副棟長の肩を踏み台にして。
「今です!」
「あいよ。任せな!」
 私と副棟長は絶妙のコンビネーションを魅せた。私のジャンプに気を取られていた女生徒に向け、副棟長の容赦ない弾丸が放たれる。
 その破壊力は凄まじく私とは反対側に立っていた女生徒五人を失神させた。
同時に私は着陸した。相手の胴体を滑走路にして。みごとなまでに私の跳び蹴りが剣道着の腹に直撃したのである。
 さらに、横から向かってきた柔道着の脇腹に回し蹴りをいれ、着地した脚を360度回転させ、後ろから斬りかかってきた薙刀娘の懐に飛び込み、木刀で肩を打ち据えてやった。
「副棟長!こっちです」
 私はそう言って副棟長を引き寄せると、空いてる左手を掴んで走り出した。
 もちろんだが、賊の数が減ったわけではない。まだ20人弱はいるはずだ。
 正直、さすがに一斉にかかられてはこっちとしても防ぎきれない。だったら、一点突破するだけ。
 副棟長は私の作戦に感づいてくれたのか、エアガンを連射して、後ろから向かってくる賊を牽制してくれていた。
 その甲斐あってか、私たちは弓道部の練習場のある裏庭に飛び出すことができた。
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