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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
216:弐師 2007/01/20(土) 22:28 ホールに、色とりどりの華が咲いている。ひらひらと、ひらひらと、美しく舞っていく。 自分で踊るのも良いけど、こうやって舞台裏的な場所からマジックミラー越しに見ているだけというのもまたいいものだ。まあ、見ているだけ、と言えども音楽など仕事は結構あるのだが。 そうして、幻想的に照らし出される多数の華々をうっとりと見つめていると、この放送室のドアを誰かがこつこつと叩いた。 「は〜い?どうぞ〜?」 「失礼しますわ。」 「ぬわっ!伯安さん!」 「・・・私、何か致しましたでしょうか・・・?」 何故か、彼女の登場の仕方にはどうしても慣れない・・・ 彼女のようなお嬢様には不釣り合いなところにばかり登場しているからだろうか。 に、しても・・・ 「伯安さん・・・どうしてこんな所に?」 「いえ、ここがダンスを見る穴場だと聞いたので・・・ああ、本当に綺麗ですね。」 伯安さんも、ずっと踊る側だったから、恐らく私と似たような思いで見つめているのだろう。 端正な顔が、ミラー越しに一点を見つめていた。その視線の先を追っていくと、そこにはたどたどしいステップながらも一生懸命踊っている士起ちゃんと、本当に幸せそうな顔をしている伯珪姉の姿があった。 ・・・正直、私と踊っていたときにはもっと堅い顔だったように思う。単に踊りのうまさというなら私の方が士起ちゃんより上だろう。しかし、士起ちゃんでなければ・・・士起ちゃんがいなければ伯珪姉があんな顔をすることもなかっただろう。 「伯珪さん・・・本当に楽しそうな顔・・・」 「ええ、そうですね。」 「関靖さん・・・だったかしら?彼女のおかげなのかしらね。いや、彼女だけじゃないわね、妹さんや部下の方々・・・そして、範さん、貴女が有ってのことですわ。 ・・少なくとも私達が戦っていたときには間違ってもあんな顔は出来なかったでしょうね。」 「本当に・・・伯珪姉・・・じゃなくて、伯珪様は穏やかになられました。憑き物が落ちたようです。」 ――――――――ダンスは、クライマックスを過ぎ、終焉へと向かっていた。
217:弐師 2007/01/20(土) 22:29 「お疲れさまだったね。」 「いえ、伯珪さまこそお疲れさまでした。」 これまでの人生で一番緊張したが、何とか大過なく踊りきることが出来た。死ぬほど嬉しかったが、寿命が縮んだ気さえする。まあ、何だかんだ言って、最高だった。 そういうわけで、ダンスは無事に終わり、私達は寮へ帰り道を二人きりで歩いていた。 範さまは片付けがあるらしく(あたしも手伝おうとしたのだが、見事に断られてしまった)、単経さんと田揩さんは二人で別にもう帰ってしまっていた。 昼間降っていた雪は、今は止んでいる。が、また何時降り出してもおかしくはない。厚い雲が、あたしたちの頭上に広がっていた。 「これで旭記念日も最後か。うん、今までで一番楽しかったよ。ありがとうね。」 ――――――――最後。 わざと、意識しないようにしていた。 もうすぐ、伯珪さまとは違う学校に行くことになる。当然と言えば当然のこと、「出会いが有れば別れもある」のだ。だけど、そんな悟ったようなことを言っても、淋しいものは・・・淋しい。 だけど、目の前の伯珪さまは何というか・・・実にあっけらかんとしている。 「・・・伯珪さまは、淋しくないんですか?これが・・・最後なんですよ?」 思わず、非難するような口調になってしまった、と反省する。しかし、伯珪さまは特に気分を害された様子もなく、むしろ、少し驚いたような顔をしている。 「そうだな・・・私も、もちろん淋しいさ。だけど、淋しさに身をゆだねるより、残り少ないみんなと・・・貴女と過ごせる時間を大切にしたい。だから、私は出来るだけ笑っていたい、淋しそうな格好も我慢する・・・変かな?」 「いえ・・・あたしの考えが足りませんでした・・・」 「いや、私も素直じゃなかったかもしれないね。出来ることなら、みんなとずっと一緒にいたいし、これが最後だということを淋しくも思う。」 しばし、沈黙が二人の間に流れる。 気が付けば、雪がひとひら、またひとひらと降っていた。幽州はこの学園内でも最も寒いと言われる。今も手が寒くて仕方ない。せめて手袋でもあれば良かったのだが、今日に限って忘れてしまっていた。そんな自分の間抜けさを恨みつつ、真っ赤になってしまった手に息を吐き掛ける。 「士起、寒くないか?手が真っ赤だよ。」 「え、あはは・・・」 あたしが誤魔化すように笑うと、伯珪さまも少し頬をゆるめた。 そしていきなり、あたしの手を握った。いきなりの事態に混乱する、が、さっきの伯珪さまの言葉を思い出し、あたしは何も言わずに握り返した。 冷え切った手に、伯珪さまの暖かな感触が伝わってくる。 雪が、ひらひらと、あたしに――――――あたしたちに、舞い降りる。 もう、言葉は何もいらなかった。 ただ、お互い側にいる。 それだけで、最高に幸せだ――――――――――――――――
218:弐師 2007/01/20(土) 22:40 どうも、激しくお久しぶりでございます。何か落としてみました。 開催宣言・・・はしても良いのかな?いまいち判断が出来ないので保留しておきます。 偉そうなことを言っておきながら遅れてしまって申し訳ございませんでした、言い訳の言葉もございませぬorz
219:韓芳 2007/01/21(日) 00:16 >弐師様 長編お疲れ様です。 この寒い時期に心温まるストーリー、いいですね〜。 自然に笑みがこぼれて来ました。 一応私も話の構成(妄想)は出来てるんですけど、おもいっきり『祭り』のイメージとはかけ離れているのでやめときます。
220:雑号将軍 2007/01/27(土) 17:32 ■やまない雨なんてない■ 「ほんとにいいの?」 白塗りの部屋で透き通るソプラノ声が響く。見舞いに来ていたライムグリーンの髪をした少女―盧植―はベッドに横たわる朱儁に尋ねた。 「うん。まだ、肩治ってないしね。多分これじゃあ、まともに動けないだろうし…。だから、子幹と建陽の二人で楽しんできてよ」 そう言って朱儁はぎこちなく笑った。無理矢理笑顔を作っているのは誰の目にも明らかであった。 今日は蒼天学園最大の行事の一つである「旭記念日祭」通称「旭祭り」の最終日だった。 だからこそ、盧植と傍らでつまらなそうに座る小柄な少女―丁原―は朱儁を祭りへと連れだそうと入院中の朱儁を訪ねてきたのである。 「でもでも!こーちゃん(朱儁)、毎年、旭祭り行ってるじゃない。あたいたち今年で最後なんだよ?」 ついに場の荘厳な雰囲気に我慢出来なくなった丁原が朱儁に詰め寄るように言った。 丁原の言う通り、朱儁は高等部に入学してから、旭祭りに参加しなかったことは一度もない。ましてや彼らはもう三年である。これが最後の機会なのだ。 しかし、朱儁は気持ちを入れ替えることはなく、ただ、力なく首を横に振った。 「ごめん。建陽。でも行けない…」 「こーちゃん…」 場に重々しい空気が立ちこめる。個室であることも影響してか、外部の音が全く聞こえてこない。まるで、この空間だけ孤立してしまったかのように…。 それから、少ししてからだろうか。 盧植はパイプ椅子から腰を上げた。 「・・・・・・わかったわ。ごめんなさいね。無理に誘ったりしちゃって。じゃあ、わたしたち、行くわ」 そう朱儁に言ったときの盧植の顔は苦笑が浮かんでいた。 「ありがとう。子幹…」 朱儁が呟くようにそう言うと、またも盧植は困ったように笑った。そしてそのまま踵を返し、病室から出て行った。 「ちょ、ちょっと待ってってば!お〜い!しーちゃん(盧植)!じゃ、じゃあ!こーちゃん、また来るから!」 丁原はそれだけ言うと、力強く地面を蹴り上げ、矢のような速さで病室から飛びだしていった。 場がまた静寂に包まれる。 「はあ・・・つまんないの」 朱儁は寂しそうに目を細めてそう言うと、自らをまどろみの中へと押し込んでいった。
221:雑号将軍 2007/01/27(土) 17:36 彼女には親友がいた。何者にも代え難い親友が。 しかし、彼女とは二カ月前にある事件が元で絶縁関係にあった。そしてそれは、学園を巻き込んだ大事件へと発展した。 結果として、その事件をきっかけに二人は仲直りをした。しかし、その代償として彼女は親友の刃で肩の骨を折られることになった。 そして親友は一度も彼女の見舞いに来ることはなかった。 それから、何時間経っただろうか。目を開けた朱儁の見える景色はいかんせん暗い。 「もう・・・・・・旭祭り、はじまっちゃったな」 俯いたまま朱儁は呟く。いつも天に向かって逆立っているはずの一握りの赤髪さえも、力なくしおれている。 そんなとき、朱儁の耳に足音が飛び込んできた。 ことん、ことん、とまるで前進することを戸惑うかのような重い足取り。 そしてその足音は少しづつ、大きくなってきていた。 もう面会時間は窓の外を見る限りとっくに過ぎているし、朱儁の病室の周りは空室だ。 朱儁は近くにある青いアナログの腕時計に目をやった。 「やっぱり、看護師の巡回には早い・・・・・・」 朱儁はまだはっきりしない頭で思考を巡らす。彼女はつい最近まで生徒会の中で、かなりの地位にいた。それ故に飛ばしてきた人間も多い。 それらを総合してたどり着く答えは一つだった。 朱儁は慌てて身体を起こそうとするが、思ったように動いてくれない。 やはり片手しか使えないことと、しばらく運動らしい運動をしなかったのが問題らしい。 そして、足音は止まる。朱儁の直感が正しければその足音は朱儁の病室の前で途切れている。 かろうじて身体を起こす朱儁は病室のドアに目を向けた。 そのさきにはぼんやりと一人の人影が映る。 場が張りつめた弓のように緊張している。朱儁の身体から冷たい汗が流れる。 ついにがちゃりと音を立て、扉が開かれた。 「・・・義真!?」 朱儁は目に映る光景を信じることが出来なかった。 しかし、彼女の目にははっきりと見えていた。いつもと変わらぬ、碧色のリボンで結ばれたポニーテールをもつ長身の女性が。 「・・・・・・」 朱儁の言葉に彼女は答えなかった。しかし、朱儁のベッドの前まで近づく。 そんなそっけない態度に朱儁はますます疑心暗鬼に陥る。 「久しぶりだな。公偉・・・・・・。少し痩せたんじゃないか」 彼女を見間違うはずなどないのだ。 仲違いを起こすまでは何をするのも一緒だった彼女を。 最も信頼し、最も憧憬した彼女のことを・・・・・・。 彼女は皇甫嵩。 そう、一番の友達。
222:雑号将軍 2007/01/27(土) 17:41 朱儁は涙が溢れそうになった。しかし、泣いてるところを見せたくなかった彼女は顔を背けて拗ねた声で言った。 「そりゃそうだよ・・・。義真が遊びに連れってくれないから」 言いたいことはこんなことじゃない。 というより、遊びに連れて行かないからと行って痩せるわけではない。 それは朱儁自身が一番よく知っていた。しかし、朱儁は素直になれなかった。 「そうだな。すまん・・・」 それでも、皇甫嵩は素直に謝った。 朱儁はどうして皇甫嵩が一度も見舞いに来てくれないかを知っていた。 「公偉に怪我を負わせたのが自分であるから」そんな負い目を彼女は感じているのだ。 しかし、今、彼女はここにいる。 朱儁はそれだけでうれしかった。しかし、どうにも素直になれない。 そんな彼女を知ってか知らずか、皇甫嵩は苦笑を浮かべた。 「お詫びといっては何だが、これから旭祭りを楽しまないか?と言っても、この時間だと花火大会くらいしか残ってないが・・・・・・」 朱儁はびっくりして、目を丸くしながら、皇甫嵩の方を見た。 「でも、あたしは外出禁止だし・・・・・・」 そんなことは誰にも言われていない。むしろ少しは歩けと言われているくらいだ。でも、今日の朱儁は自分の気持ちに素直ではなかった。 そんな朱儁の態度に皇甫嵩は困っていたが、やがてこう付け足した。 「しかし、私は公偉と行きたい。毎年、お前と行っているのだ。やはり、公偉がいないとどうも落ち着かない・・・・・・」 そしてさらに皇甫嵩は目を泳がせながら続けた。 「それに・・・・・・今まで、私は公偉の我が儘に何度付き合ってきたと思っているんだ。一度くらい、私の我が儘をきいてくれたっていいだろう?」 そう言った皇甫嵩の声はところどころ裏返っていた。 朱儁はいつもと違う彼女の態度や言動に、戸惑っていたが、やがて声を上げて笑うと、皇甫嵩の目を見て答えた。 「もう、しょうがないなあ、義真は。わかった。付き合ってあげるよ」 そう言って、朱儁はもう一度、笑った。 その笑みは出会った頃と変わらぬ、裏のない素直な笑み。 ずっと見ていなかった彼女の本来の姿。 それは皇甫嵩が大好きな彼女の姿。 「そうと決まれば・・・・・・」 皇甫嵩はそう呟くとお姫様だっこの要領で朱儁を抱き上げた。 「ちょ、ちょっと!な、なにするのよ!」 朱儁が不満をあらわにすると、皇甫嵩はうっすらと笑みを浮かべて答えた。 「外出禁止と言うことは要するに運動するなということだ。だから、これが一番だろう」 皇甫嵩は不敵に笑うと、朱儁を抱きかかえたまま、病室から抜け出していったのだった。 「もう〜!義真のいじわる〜!」 そう言った朱儁の顔は笑っていた。まるで雨上がりに咲く朝顔のように。 「これからも、よろしく頼むぞ、公偉!」 「うん!こっちこそ、よろしくねっ、義真!」 朱儁の髪の一房はピンと跳ね上がっていた。 余談だが、この日、長身の男にお姫様だっこされた純白のドレスに身を包んだ少女が生徒に混ざって花火を見ていたという目撃情報が多く寄せられたが、真偽のほどは定かではない・・・・・・。 受験戦争に見事に敗北した雑号将軍、帰還致しました。まあ人生長いんでゆっくりやります。 ということで、旭記念日作品。なんとか仕上げました。もしかすると、もう閉祭してたり…。まあいいか。 とりあえず、一年近く書いていなかったので文章力が落ちてます。無かったのがさらに落ちてます…orz。また勉強し直しですね。 今度は卒業式だ〜!!
223:韓芳 2007/01/31(水) 00:41 >雑号将軍様 敗北しましたか… まあ、私も敗北寸前ですが…(−−; お互い卒業出来るよう頑張りましょう!(心配してるの私だけ? まあ、それはおいといて。 一筆お疲れ様です。 皇甫嵩と朱儁のコンビ、いいですね〜。 本当に信頼できるものは、そう簡単には切れないですからね。 心が温まります。 試験まであと1週間か… orz
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