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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
123:海月 亮 2005/01/19(水) 20:04 寮の外からがやがやと声が聞こえていた。 追っ手がかかったことを知った陸遜は部屋の電気をつけず、ベランダの窓にバリケードまで築いた上で懐中電灯とヘッドスタンドを持ち出していた。 扉は鍵をかけた上つっかえ棒もしてあるという厳戒態勢だ。 「これでひとまずは安心だな…」 「ええ。でも、懐中電灯の光も結構目立ちますからねぇ…」 「でも、本当にいいの? お邪魔させてもらって」 「はい。むしろ朝までいてください…今日ばっかりは、一人は嫌です…」 自分が貸したシャツの袖を引っ張って、泣きそうな顔で見つめてくる陸遜。 しかたないなぁ、と呟きながらも、諸葛瑾もそれに関しては同意見だった。 そのとき、ドアをノックする音がした。二人はぎょっとして顔を見合わせると…ドアの隙間からうめくような声。 「は、伯言…いたら助けてぇ〜!」 「御願いぃ〜」 慌ててドアを開けると、二人の少女がなだれ込んだ。赤みがかったショートカットの少女は吾粲、飴色の髪をポニーテールに結っているのは朱拠だ。 「孔休、子範!……よく無事だったわね」 「し、死ぬかと思ったわよ」 そう言ってへたり込んだ吾粲、上下のジャージを着ていた筈なのに、ズボンを失っている。 朱拠に至っては、スカートも靴も履いておらず、厚手のストッキングもボロボロだ。 恥も外聞も捨て、まさに命からがら逃げてきた、という感じである。ドアのバリケードを直しながら、陸遜はしみじみと言った。 「…どうしたの、とは訊かないわよ…解ってるから」 「しゃ、洒落にならんぞアレは…何で女の子同士の宴席で操を狙われにゃならないんだか…」 「あ〜ん…怖かったよぅ〜」 いつのも気丈さは何処へやら、泣きついてきた朱拠を宥めつつ、陸遜は当然の疑問を投げかける。 「しかし、よく逃げ切れたわね」 「仲翔さんが血路を開いてくれたからぎりぎり逃げて来れたんだけど…敬文とか曼才とか、どうなったのかな…徳潤さんも相当呑んでたみたいだし…」 実は虞翻もそうなのだが、(カン)沢は一旦アルコールが入ると豹変するクチだ。捕まれば無事では済まないだろう。 「その仲翔さんも、結局部長と谷利にとっ捕まったみたいだしなぁ…そういや子山は?」 「うぅ…多分いち早く逃げたと思う…何時の間にか元歎と一緒にいなくなってたじゃん」 「見てないのね…公績先輩が興覇先輩に羽交い絞めにされてたくらいの頃に、二人して裏口からこっそり出て行くの」 陸遜は、こそこそと逃げる歩隲と顧雍の姿を目の端で捉えていた。その時には自分も孫登達の襲撃を受けていたのでそれどころではなかったわけだが。 「嘘ッ、そんな早く逃げてたのぉ? ずるいよぅ!」 朱拠が非難の声をあげる。だが、いち早く逃げた二人の気持ちも解らなくはない。この場合は要領の悪かった自分達を責めるべきだろう。 「で、悪いんだが…」 「ぐすっ…会稽寮まで戻れそうにないから…朝までいい?」 「大歓迎よ。情けない話だけど、私も怖くて…」 二人の顔が、ようやく安堵の表情に変わった。 一方その頃。 「くそぉぉ、捕まってたまるモンですかぁ!」 柔かそうな黒髪をショートカットにした、ややキツめの顔に黒縁眼鏡をかけた少女が部屋の小窓から脱出しようと釣り下がっている。その形相は、必死そのもの。 少女の名は潘濬、字を承明。かつては荊州学区で関羽の信任を得、後方の守備を任されていたのだが、張湖部の荊州攻略の際、力及ばず軍門に屈した少女だ。彼女は帰宅部連合に対する信義を貫こうとし、部屋に閉じこもっていたが、孫権自らが彼女を諭し、以来幹部として厚遇されていた。 同じ直言の士であっても、張昭のようにやり込めてくるタイプではなく、親友がそうするように真摯な姿勢で諭してくれるスタンスが気に入られ、孫権の信任は非常に厚い。だが、あくまでそれは孫権が素面であった時の話に過ぎない。 酔った孫権にしてみれば、潘濬とてお気に入りの玩具のひとつでしかないのだ。 「う〜、逃がさないのらぁ〜承明ぃ〜」 「わぁぁ! そんなところに手をかけないで下さい部長〜!」 「お〜、いいよいいよぅ、もっとやれ〜♪」 「おねぇちゃんがんばれ〜」 「もう少し〜」 潘濬は、そのスカートの根元を孫権に捕まれ悲鳴をあげた。それを見て、座の中央で(カン)沢と孫登・孫和姉妹が無責任に声援を送る。援軍の期待できない状況に、潘濬は泣きたくなった。 逃げた連中を追っかけて、甘寧や凌統、徐盛に周泰といった猛者たちは方々へ散らばり、数人しか残っていないのですっかり静かになった宴会場は、それでもまだプチハチャメチャ状態を継続していた。 部屋の隅のほうでは、座った目をした朱桓と朱然が、制服の半袖にブルマというマニアックな格好をさせられ、泣きべそをかいている薛綜に酌をさせ、時折抱きついては慰み者にしている。 孫権が最初に座っていた辺りでは、散々弄ばれた後なのだろう、下着姿で突っ伏している厳Sと、弄んだ張本人の全Nが、酔いつぶれて倒れている。その近くには、普段孫権の後ろにくっついている谷利が、手酌で何かぶつぶつ言いながら痛飲している。 部屋の中央には、頭から酒を浴びせられ、衣服を乱され酔いつぶされた虞翻の姿がある。 どれも一瞬後の自分をみているような気がして、潘濬の顔が蒼白になった。 彼女は最初の大脱走(w)の際、機転を利かせて外に飛び出すと見せかけ、階上のトイレに隠れていたのだ。しかし、騒ぎがひと段落した頃を見計らいトイレから出たところで、徘徊していた孫権とばったり出くわしたのが運の尽き。陸遜という玩具を失ってヒマを持て余していた孫登・孫和姉妹を交えた壮絶な鬼ごっこの末、彼女は宴会場に戻ってくる羽目になった。 「むぅぅ〜しぶといなぁ〜…えいっ!」 「え?」 次の瞬間、孫権は潘濬のスカートの根元を掴んだまま、勢いをつけてぶら下がた。 スカートに限らず、この学園の制服は課外活動に伴う戦闘行為のために相当丈夫な生地を使っているはずだが、偶然ホックの辺りに手をかけていたからたまらない。勢いでホックが外れ、スカートがずり下ろされ… 「―――――――っ!」 その惨劇に、潘濬は声にならない悲鳴をあげた。その顔が、恥ずかしさのあまり瞬間沸騰する。 間の悪いことに、彼女は下着の上にはスカート以外に何も身に付けていなかった。普段堅物振りを発揮して、お洒落にも気を使わないと思われた彼女らしく、シンプルなストライプの下着が姿をあらわす。 「むぅ…白地に青の縞パンか…やるな承明」 なにが「やるな」なのか知らないが、しみじみと呟く(カン)沢。その目の前で露になった下着を隠そうと手を放してしまった潘濬と、未だにそのスカートから手を放そうとしない孫権は一緒に崩れ落ちた。 頭から落っこちた潘濬は、痛む頭をさすって起きあがろうとするが…何故かその上にはマウント・ポジションをキープした孫権がいた。 口元はこれ以上ないくらい妖しく歪み、手の動きが否応なく恐怖をかきたてる。潘濬は涙目で、必死になって逃げようとするが、竦んだ身体に上手く力が入らない。 「あ…あ…」 「つ〜かまえたぁ…たぁっぷりかあいがったげるから覚悟しろ承明ぃ〜」 そして建業棟に、潘濬の悲鳴が木霊した。 (続く)
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