【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
164:冷霊2006/01/19(木) 22:55
■雪降る戦場にて・3

南側校舎
ガッシャーンッ!
景気良く硝子の破片が降り注ぐ。
「おいおい、よーく狙えっつーの」
トウ賢がひょいと壊れた窓から顔を出した。
「野郎っ……ちょこまかとっ!」
冷苞が次々と雪玉を叩き込む。
強く押し固められ、猛スピードで飛んでくる雪玉は立派な凶器である。
頭にでも直撃すれば下手すれば病院送りであろう。
トウ賢は目立つように額にバンダナを巻いている。
それは挑発から来るものか、それとも覚悟の上か。
だが、雪玉はトウ賢に当たることなく、校舎の中へと消えていく。
何かが割れる音や砕ける音がするが今は聞こえないことにしておく。
「ホラホラ、そんなんじゃ当たんねーぞ?」
「ちっ……クソッ!」
状況は硬直状態であった。
冷苞の方が優勢に見えるものの、トウ賢はあまり力を入れて攻めて来ていない。
何か策があるのかもしれない。
「どっちにしろ、今の調子だとこっちがバテちまう……」
木陰で雪玉を作りつつ呟く。
「何かあるはずだ……何か……」
冷苞が辺りを見回す。
壊れた窓、崩れたかまくら、誰かの作った雪だるま。
どれもピンと来ない。
ふと視線を上へとやる。
「……やるだけやってみっか……」
冷苞がそろりそろりと移動し始める。

「……妙だな」
トウ賢が窓からそろりと冷苞の様子を伺う。
先程まで積極的に攻撃していたのに、あたりに姿はない。
「もうちょっと頑張ってもらわねーと困るんだよなー……」
軽く頭を掻く。
予定ではあと十分くらいは頑張ってもらわないと困る。
高沛は扶禁や向存を狙うからいいとして、問題なのは楊懐である。
どんな方法で攻めてくるか予想がし難い。
「冷苞ー、もしかして先輩たちにやられたかー?」
外へ声をかける。だが、返事はない。
「……向こうも待ちか?こうなるとメンドクセーんだよなー……」
呟きながらも耳を凝らす。
僅かな音も聞き逃すことの無い様、意識を集中させる。
カツン。
靴音である。
それは廊下の奥から聞こえてきた。
(裏をかかれた?)
頭にそんな疑問が浮かぶ。
だが、そんな疑問を気にする必要はなかった。
むに、何かを踏んだ感触。
「ん?」
思わず足元を見る。
そこにはロープが張ってあった。
ロープは頭上へと続いており、そこには木がある。
ミシリと枝が悲鳴を上げる。
枝は積もった雪の重量に耐え切れず、折れた。
「うわわっ!」
トウ賢は咄嗟に飛び退く。
そのとき、一つの雪玉がトウ賢へ飛んできた。
(まだ間に合う!)
ギリギリの所で拳で叩き落した。
「な……二つ目!?」
だが、飛んできたのは一球だけではない。同じ軌道で二球、投げていたのだ。
避けようと身体を後ろに反らす。だが、完全には避けられない。
鈍い衝撃の後、じんわりと額のバンダナが赤く染まっていく。
「へっ、オレの勝ちみてぇだな?」
「くーっ、こんな単純な手にやられるなんてよー……」
トウ賢が悔しそうに叩き落した雪玉を握り潰す。
「じゃ、これでオレの28勝目っと。一歩リードだぜ?
ニヤリと笑う冷苞。
「フン、いつものように追いついてやっから安心すんなよ?」
トウ賢が雪を払い立ち上がる。
「こうなったら先輩たちにも勝てよ。じゃねーと許さねーからな?」
「任せろって。お前には出来ねぇコト、見せてやんよ」
冷苞がニッと笑う。
そのときだった。
ひゅ〜……ぽす。
「……」
「……」
僅かな衝撃。
冷苞が二の腕に巻いていたバンダナが赤く染まっていく。
「……は?」
「アウト……?」
二人にも何が何やらわからなかった。
ただ確かなのは、これで冷苞もアウトだということである。
「誰か近くにいんのか?」
「大体の予想は付くけどなー……」
納得いかない様子でアウトとなった二人は部室へと戻って行く。
戻って行く二人の後ろで、雪だるまだけがニコニコと笑っていた。
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