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☆熱帯夜を吹っ飛ばせ! 納涼中華市祭!☆
12:北畠蒼陽2005/08/08(月) 00:00 [nworo@hotmail.com]
「ちゅ〜うきょ!」
毋丘倹はその明るい声を聞き、ため息をつきながら振り返る。
「仲若……あんた、なんでこなかったの?」
夏休みの炎天下の午後。
毋丘倹は上下ぴっちり制服。
それに比べ……
「だってかったるいじゃん、補修なんてさ」
笑顔を浮かべ、あっけらかんとする文欽は上はハートマークが胸に大きくデザインされたTシャツとホットパンツ。超私服。
「いや、だからってさぼるなよ」
「大丈夫だって。うちらの頭じゃいまさら勉強しても無駄だからさ」
にこにこと笑いながら肩をばんばん叩く文欽に毋丘倹はため息を止める術を知らなかった。
意外と努力家、毋丘倹。
意外でもなんでもなく遊び人、文欽。
ともに赤点常連。
夏い暑のヒトコマメ
「はぁ?」
手近な喫茶店に入ろうとした毋丘倹はその文欽の言葉に足を止めた。
「え? ……え? なに? なんだって?」
「疑問多いなー」
疑問は1つだけである。疑問形が多いだけで。
「今なんつった?」
「疑問多いなー」
毋丘倹は躊躇せずに文欽を叩く。
「いったぁ〜! 叩いたぁ!」
「つまらないことを言うからでしょ」
さすがに寮の同室だけのことはありあしらい方はわかっている。
あしらい方、というか実力で黙らせるしかないのだが。
文欽はしばらく不満そうな顔をするが『まいっか』と呟き再度満面の笑みを浮かべる。
「いや、だからさ。プールいこうよ、プール」
「ぷ〜るぅ〜?」
毋丘倹は自分のスポーツバッグを上げてみせる。
「私、水着持ってきてないぞ?」
バッグの中身は教科書とかノートとか。
なぜこの努力の10000分の1だけでも結果に結びつかないものか。
「あー、ダイジョブダイジョブ。仲恭の水着、あたしがすっげぇのチョイスしてもってきたったから」
「もってきた、って……」
言いかけて文欽が自分の同室であることを思い出す。
自分がずっと補修を受けてた間、文欽は部屋に1人だったわけだ。
……あさり放題じゃないか。
「……はぁ」
ため息をつきながら、しかし文欽の言う『すっげぇの』というのがなんとなく気になった。
……
……
……
毋丘倹は真っ赤な顔をして文欽から渡された『水着?』をつまみあげた。
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