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☆熱帯夜を吹っ飛ばせ! 納涼中華市祭!☆
51:海月 亮 2005/08/17(水) 00:12 「おらおら、気張って泳げ〜! 正明と承淵が赤壁島廻ってきたぞ〜!」 ビーチから、沖合いの赤壁島の中間くらいの地点に、泳ぐ少女たちの一団がある。その傍らで、ボートをこぎながら檄を飛ばす暗紫髪のショートカットがひとり。今年卒業を控えながら、水泳部長として後輩の育成に余念がない凌統である。 水泳部は毎年この時期になると、長湖部夏合宿とは無関係にほぼ毎日、揚州校区ビーチから赤壁島までの片道3キロを往復する遠泳を行うようになる。無論、学園都市全体で始まる祭の開始日であったとしてもそれは変わらない。 単純計算では6キロの遠泳だが、実際は赤壁島を周回して来るので7キロ強泳ぐことになる。全国に誇る強豪はこのようにして育て上げられるのだが、このハードさゆえに途中で音をあげ、夏の間に部を去るものも決して少なくない。 とはいえ、この年はいまだ脱落者を発生させていなかった。その鍵を握っているだろう二人が、少女たちとすれ違っていった。 僅かに先頭にたつ栗色髪の少女、それに追随する狐色髪の少女。 それぞれ高等部に入って間もない一年生、来年に高等部編入を控えた中学三年生である。水泳部に在籍する少女たちの中でも、その平均年齢からみればずっと下の少女たちである。そのふたりに対する負けん気が、プラスの方向に働いている所以である。とはいえ、それでも他の少女たちとそのふたりの差はかなりのものであった。 「う〜ん…やっぱり二週目となると、あのふたりにはついていけないもんかなぁ」 「ま、あのふたりが異常なのよ、ぶっちゃけた話」 そのふたりを追ってきたらしい一隻のボート。そこに、ポニーテールの少女がひとり乗っている。 「遅かったじゃない、文珪」 「遅いも何も、あのふたりが早すぎるんだ。ボートでついて行くのも精一杯だよまったく」 凌統のボートに自分のボートを横付けすると、その少女…潘璋はボートに仰向けでひっくり返った。 「情けないわねぇ…去年まで部下だった承淵に対してあんたがそんな体たらくじゃ」 「それでもいいよぅ〜、あたしも〜疲れたぁ〜」 呆れ顔の凌統に、ボートにひっくり返ってしまう潘璋。 水泳部の少女たちも、普段滅多に見られない潘璋の情けない姿に、野次馬根性むき出しで遠巻きに眺めている。 「あ、こらあんたたち、止まってないでさっさと泳ぐ! さもないと、完泳のジュースとスイカ、やらないよ!?」 凌統の一言に、慌ててコースに戻る少女たち。その後を、数隻のボートが追いかけていく。 「ったく。あんたもあんたよ文珪。普段のあんたの態度もどうかと思うけど、そんなんじゃ示しつかないわよ?」 「へいへい、解りましたよ〜…って何やってるのよ公績」 ふてくされた様にむっくり起き上がる潘璋。みれば凌統、ボートの艫綱を潘璋のボートに括り付けている。 「あたしも泳いでくる。これ、岸につけといてくれる? 礼ははずむわよ?」 「別にいいけどぉ」 その返答を聞いたか聞かずか、パーカーを脱ぎ捨てて水着だけになり、湖中へ消えた。 その姿を見送ると、やれやれと言わんばかりの表情で肩を竦め…やがてビーチに向けてボートを漕ぎ出した。
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