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☆熱帯夜を吹っ飛ばせ! 納涼中華市祭!☆
53:海月 亮 2005/08/17(水) 00:14 「何やってんのよあんたたち」 祭観覧の準備と言うことで、まだ四時前のこの時間に引き上げにかかっていた陸一家と敢沢。その道中、先頭きって駆けていった数名が何かをもの欲しそうに眺めているのを見て、陸遜は聞きとがめた。 「いいなぁ〜」 「あたしたちも食べたいなぁ…」 陸遜の幼い妹たちはそれを意に介している風がない。 その視線の先には浜辺の休憩所、その中でわいわい言いながら手にとっているものしか目に入っていないらしい。 「ありゃあ水泳部の連中だな。朝から居たみたいだけど奴らも引き上げかな」 「みたいね…ほらあんたたち、こんなところで道草喰ってないで、とっとと帰るわよっ」 そしてとりあえず手前にいた、最年少の妹たち四人の水着を引っ張ってその場から引き剥がそうとする陸遜。だが、必然的に抗議の声があがる。 「嫌っ! あたしたちもスイカ〜!」 「うち帰ったってどうせそんなもんねぇんだし、少しぐらいご馳走になったっていいだろ〜?」 年長組のひとりで跳ね髪の少女−陸凱がそのうち、中央にいた陸機、陸雲の双子を奪い返してしまった。 「馬鹿言わないの! 大体あれは水泳部の差し入れで持ち込まれているモノよ。あんたたちの分があるわけないじゃない!」 傍らにいた陸抗に捕らえた妹たちをあてがい、走り去ろうとした陸凱の首根っこを捕まえる陸遜。 「聞いてみりゃ解るもんか! 大体伯姉だってスイカ大好きのクセして…見た途端に口元、涎垂れてるじゃん!」 「え、嘘ッ!?」 陸遜は慌てて口元に手をあてがうが…それで束縛から脱した陸凱は双子を抱え、まっしぐらに休憩所に向けて駆けていった。 「へっ、嘘に決まってるだろ〜♪」 「…っ…こらあー!」 そして真っ赤な顔をしてそれを追っかけていく陸遜。残された年少組の陸晏、陸景のふたりもそれに続く。 しばらく呆然と眺めていた敢沢も、 「あたしたちも行って見るか、幼節、敬宗?」 「そうですねぇ…」 「いこいこ、もしおこぼれに預かれても、早く行かないとなくなるかもしれないし」 陸抗の返答に苦笑しながらも、残された少女たちを促してその後に続いた。 そしてそれから数刻。 「すいません先輩、私たちまで厄介になって…」 水泳部の面々に混じって、陸遜率いる陸一家の少女たちが、スイカを貪っていた。 陸凱が幼い陸遜の妹たちを扇動して、水泳部長の凌統とマネージャーの吾粲に食い下がった結果である。末妹の陸機、陸雲に何かしら仕込んで、水泳部のお姉さま方の気を引くなどと、この親戚の娘の抜け目なさはかなりのものらしい。 「気にすんなって。余るくらい用意してたから丁度いいくらいだしな」 「そういうこと。折角だから、あんたも喰っときなよ」 陸遜にとっては同窓の友である吾粲に一切れ宛がわれると、遠慮していた素振りだった彼女も反射的に食いついてしまった。遊びつかれて水気と甘味を欲していた身体は正直なものである。 「そういや、今日から祭だけど、伯言たちは行くの?」 「うん。妹たちは妹たちで行くみたいだから、私は部長たちと行くつもり」 「あたしはその会場で子山とバイトだ」 吾粲の質問に対する敢沢の答えに、合点のいった様子の陸遜。 「あ、じゃあ夜のバイトってそれ?」 「ああ。結構いい金になるみたいだし、祭の雰囲気も楽しめて一石二鳥だ」 「あ〜、それってなかなかいいかもしれないなぁ…」 自他ともに認めるケチ(当人は「倹約家」と言って憚らないが)の潘璋もそれに食いついてきた。 「文珪さんもやってみます?」 「う〜ん…ちょっと考えとく」 考え込んだ風を装う潘璋に、凌統が 「やめとけやめとけ、怠け者のあんたじゃ番台の留守番無理だ」 と皮肉を投げ込んできた。 「うわ、何か酷いこと言われた〜」 決して広くない休憩所は、少女たちの笑い声で一杯になった。 −そして、舞台は夜の祭会場へと移る−
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