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☆熱帯夜を吹っ飛ばせ! 納涼中華市祭!☆
37:海月 亮 2005/08/09(火) 23:22 「部長〜っ、こっちこっち!」 見晴らしのいい土手の一部を占拠した少女たちが、そこに姿を現した少女たちに呼びかけた。長湖部長・孫権を筆頭とした何名かの食料調達組が合流を果たし、戦利品の分配を開始した。 合宿上がりの着の身着のまま、体操着の半袖にハーフパンツといういでたちは凌統、朱桓、潘璋などの体育会系。 ばっちり浴衣を着付けているのは部長孫権を始め、顧雍、朱拠、薛綜といったお嬢軍団に、意外なところでは周泰がこの仲間に入っていた。普段流すままにしている銀髪を綺麗に結って、いざ着飾ってみればまるで別人のようであった。それで散々からかわれてしまったせいか、彼女は何時も以上に引いた位置にいる。 それでもって思い思いの私服を身につけているのは諸葛瑾、谷利、潘濬、そしてお目付け役の張昭といったあたり。諸葛瑾は白のワンピース、潘濬らも涼しげに軽装になっているのに、何故かごっそりと色々着込んでいる張昭。 「なぁ…なんであのねーさん、あんな暑苦しい格好してやがるんだ?」 ひそひそ声で隣の吾粲に耳打ちする潘璋。 「知りませんよそんなの。あたしらに対するあてつけかなんかじゃないんスか?」 「言えてる、観てるだけで暑っ苦しいわね、アレ」 うんざりした表情の歩隲に、凌統も皮肉たっぷりに相槌を打つ。朱桓もそれに続く。 「こんな蒸し暑い日に、どー観たって冬物のロングスカートに長袖の上掛けだろ? 正気の沙汰じゃないよな〜」 「それとも単に年寄りだから寒がり…げ」 「なぁんですってあんたたちぃ〜!?」 半袖パーカーにキュロットスカートという私服組の全Nがそこまで言いかけたところで、背後にものすごい形相の張昭が睨みつけるように立っていた。たちまちにして、彼女らの周りにいた無関係な少女をも巻き込んで、張昭の怒りの説教が飛ぶ。 「相変わらずねぇ、あの人も」 「連中も面白がって聞こえよがしにいうのも悪いんだけどねぇ…どっちもどっちだわありゃ」 それを離れた位置で眺める諸葛瑾と厳Sも呆れ顔である。 「そういえば、結局伯言たちには会えませんでしたね。承淵たちも何処にいったもんだか」 「ええ…元歎曰く中学生軍団は帰ったようだし、伯言たちは会場の何処かにいるってことなんだけど…」 厳Sの目配せを受け、草の上においたタロットから目を離し、なにやら呟く顧雍。 「居る事は確かだけど、人が多すぎて巧く気配がつかめない、って?」 顧雍がこくり、と頷くのを見て、肩を竦ませる厳S。 「元歎先生の占術を持ってしてもだめとなりゃ、諦めるしかないですかね?」 「だから来るのを待って、合流すればよかったのよ。どうせ急ぐことだってなかったんだし」 「そうだね…でも、いるんだったら帰り際にばったり出会うかもしれないし」 諸葛瑾の尤もらしい意見に、ちょっと残念そうな表情の孫権。 その時、一発目の花火が、轟音を伴って夜空に大輪の花を咲かせた。 そのころ、境内脇の本営に、木々の隙間から花火を眺めてる少女が四名。 言うまでもなく陸遜、朱然、そして変身中の虞翻とその妹虞譚である。結局放送を掛けようにも、虞譚は見ず知らずの娘三人はもとより、運営委員の大人たちにも警戒して口を利こうともしない。目の下を真っ赤に腫らして、不安そうに俯いているままだ。 仕方ないので迷子がいるという放送だけ掛けてもらい、心当たりのある人間が来るのを待つことになった。 「ちっくしょ〜…とんだ災難拾っちゃったな〜」 「あんたのせいだあんたの。それより、私思ったんだけどさ」 不満げの朱然だったが、陸遜が小声で、 「あの娘、よく観ると仲翔先輩に似てない?」 「ん?…あれ、そういえば」 彼女にもようやく思い至ったらしく、次の瞬間にはにんまりと笑みを浮かべる。 不意に自分の名前を呼ばれて、虞翻はどきっとした。 「そうだよ、ランプの光で解り辛かったけど…確かに、あの髪の色に髪型とか…」 「ね、そっくりだよね」 確かに虞譚の髪型は、三つ編みにこそしていないが、両サイドに垂らした髪の先をリボンで結っている。ツリ目かタレ目かの違いもあるが、確かに面影はある。 「この娘もうちょっと大きくなれば、きっと先輩みたいな美人になるのかしらね?」 「あ〜…でも見た目だけにしてもらいたいもんだな。この可愛らしいのからどぎつい言葉が飛んでくるのは遠慮願いたいトコだ」 耳をそばだてて聞いている虞翻。朱然の言うことも恐らくはほとんどの部員が思っていることだろうことは、虞翻も承知していたことだが…やはりそういう風に見られていることを改めて思い知らされ、少し胸が痛んだ。 「確かに…でも、あの人は言われるほど悪い人じゃないような気もするよ? 私はあまり付き合いはないけど、公紀がね」 「知ってるよ、あのふたりが仲いいことくらい。まぁアイツも同類のような気もするけどな」 「…………その同類と従姉妹の私はどうなんのよ」 ジト目で睨む陸遜。朱然はそれを気に止めた風もない。 「結構似たもの同士だと思うぜ? 正しいと思ったことは梃子でも曲げない真面目委員長タイプだよ、あんたも公紀も仲翔先輩もさ」 「…お姉ちゃんのこと…知ってるの?」 「「へ?」」 その時、沈黙を守っていた虞譚が、恐る恐るといった風にその会話に割り込んできた。どうやらひそひそ声で話しているつもりが、何時の間にか普段の調子で喋っていたらしい。 呆気にとられていた陸遜が、 「え…えと、じゃあ…あなた本当に仲翔先輩の…?」 と問うと、虞譚はこくりと頷いた。
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