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☆熱帯夜を吹っ飛ばせ! 納涼中華市祭!☆
43:北畠蒼陽 2005/08/10(水) 18:24 [nworo@hotmail.com] 「うー……」 「あ、あはは……玄沖ちゃん、あんまり気にすることは……」 王渾と王戎が夏の道を歩いていた。 王渾は白のセイラー服に青いバンダナをつけている。まんま水兵さんである。 王戎のほうはピンクのサマーセーターにチェックのスカート。普通に美少女、といった感じである。 2人は図書館での勉強を終え、今はその帰り道であった。 「あの山猿に期末テストで負けるなんて……」 王渾が山猿呼ばわりしたのは王濬。もともとむちゃくちゃ仲が悪い。 「いや、あの……あはは、ほら、士治ちゃん努力っ子だから」 王戎がフォローするがフォローし切れてない。 王渾が王戎を睨みつける。 「私が山猿に比べて努力してないって?」 「あの……あはは、そういうわけじゃないんだけど……」 困ったような笑みを顔に浮かべる。 というかあからさまに困っているのだが。 どの世代でも板ばさみ担当はつらいものがある。 「あー、玄沖ちゃん、まだ暑いし疲れたから、そこの店入らない? このケーキ屋さん、すごくおいしいんだよぉ」 「ん、そうなの?」 話をごまかす王戎。今度は成功した。 そして王戎は店のドアに手をかけ…… 夏い暑のサンコマメ 「いらっしゃいませぇ〜♪ 2名様でよろしいです……」 元気なウェイトレスの声が途中で止まる。 「あ」 ウェイトレスが誰か気づいた王戎はびっくりした。 「あ」 王渾もびっくりした。 「あ」 ウェイトレス……楽チンもびっくりしていた。 …… …… …… 「へぇ〜、ふ〜ん、ほぉ〜」 王渾があごに手をあてて楽チンを隅々まで眺めている。 「いやいや、あの豪快な楽チンちゃんがこのようなひらひらした服を着ていらっしゃるとは……眼福ですなぁ」 「あ、あんまり見ないでよ……」 真っ赤な顔の楽チン。 どうやら学園関係者に知られたくなかったらしい。当たり前といえば当たり前のような気はするが。 そのケーキ屋の制服は緑のキュロットスカートにYシャツ。胸元には赤いリボンにふりふりのエプロン……と、まぁ、そんな感じで、いかにも可愛い可愛いといった感じのものであった。
44:北畠蒼陽 2005/08/10(水) 18:24 [nworo@hotmail.com] 「いや、あの……ほら、楽チン先輩、可愛いですよ、とっても。あはは」 「でも濬沖だって一番最初、『あ』とか言って固まったじゃない」 王戎がフォローしたが王渾が叩き潰した。 空気読めよ、王渾。 まぁ、実際のところ制服が可愛いのは確かで、それを『あの』楽チンが着ている、ということにすさまじいギャップがあるのだが。 「あー、あははー」 困ったような顔で笑う王戎。実際、それくらいしかできないのだが。 「……あの、さ」 真っ赤な顔で楽チンが引きつり笑いを浮かべた。 「あの……できればお姉ちゃんたちには内緒にしておいてほしいかな〜、って」 毋丘倹や胡遵ならともかく、王昶とか文欽なんぞに知られた日にはどんだけ笑われるかわかったものではない。 「楽チンちゃん」 「ん?」 王渾が人差し指を唇に当て純真無垢な……明らかにそれを装った口調で楽チンを呼ぶ。 「あたし、ケーキバイキングがいいなぁ」 ディアブロだ。ディアブロがいる。 楽チンはそう思った。 「玄沖、あんた……間違いなく文舒の後継者だよ……」 楽チンの言葉に王渾は『てへっ』と笑った。 褒めてねぇよ。 落ち込みながらちらっと王戎を見る。 「あ、いいですいいです。あたしはいいですから!」 ぶんぶんと手を横に振った。 「濬沖はいい娘だねぇ」 しみじみと言った。 このディアブロの横にいると天使かと思えてしまう。 「いいよ、2人ともおごり、ね。そのかわり誰にもばらすなよ」 苦笑する楽チン。 「わぁー、楽チンちゃん、ダイスキー」 「あー……あはは。ほんと、すいません先輩」 1人は歓声、1人は謝罪。 つまり1人は悪魔で1人は天使ってことだ。 どっちがどっちかは言うまでもないことなのだが。 …… …… …… 「いやぁ〜、ここ、ほんとにおいしいねぇ〜」 王渾の王戎に語りかける。 かなりご満悦のようだ。 「また来たいねぇ♪」 楽チンのほうを見てにやにやと笑いながら言う。 ……あんた、そういうプレッシャーのかけ方は姉そっくりだよ。 対する王戎のほうは『あはは』と苦笑しながらコーヒーを飲んでいる。 板ばさみのつらさはよくわかるよ、うん。 「あ、ねぇ」 王戎が不意に腕時計を見た。 空にはそろそろ夕闇のベールが降りようとしていた 「あ、そろそろだっけ? ここから見えるかな」 クーラーのきいた店内から外へは出たくないらしい王渾が窓にへばりつく。 「大丈夫だよ。普通に座ってても見えるはずだから、さ」 楽チンは苦笑しながら王渾に言う。 3人で見る夕方の空。 この薄闇の空を彩るのは…… 花火が上がった。
45:北畠蒼陽 2005/08/10(水) 18:40 [nworo@hotmail.com] 1日1本ペースか……バカじゃなかろうか、私。仕事しろよ…… あ、してますよしてますよ<上司に 3日連続はやりすぎスメルがぷんぷんするので明日以降自重の雰囲気で。 仕事しないとおこられっちゃうし(笑 王戎初登場です。長湖部ラストバトルの予州の偉い人です。 晋書読んでないのでこういう性格でいいかどうか微妙ですが! >REGRET=悔恨という意味すらはじめて知った人(1/20) 血、吐くと苦しいのよ、ほんとよ(実体験 感想は後編を読んでからで! 楽しみにいたします! >虞翻さんかわいいよ かわいいよ……というだけで乾燥を終えるのはあまりにもあんまりなので。 シンデレラですねぇ…… 虞翻、確かにこういうの似合うかも。 正確には虞翻、ミスマッチだから逆にハマるかも、と。 ぐっじょぶぐっじょぶ。 >しなびる、水漬いて生き返る、そして流れる 今回の王基は壊王基♪
46:雑号将軍 2005/08/11(木) 10:21 感想とかいろいろ >北畠蒼陽様 な、なんとぉ〜!!この短い間に二本もSSをっ!お見事です…。僕には体力と話しが浮かびません…。 ではでは感想を。ついに王昶復活!!「待っていたぜ、このときをっ!」それから自分で悪いことしているのに気づかない諸葛誕がいい味出してます。 二編目はおおっ!王濬初登場ですな。まさか最初から仲が悪かったとは…。なにより、ウェイトレス姿の楽チンがやたらと気になったのは僕だけなのでしょうか? >教授様 ひさびさに法正見ましたよっ!これこそ法正。それから、ありがとうございます!!自分の作品との関連性までもいただいてしまって…。どうやって簡雍が出てくるのか楽しみです!(てか法正やばいのにそんなこと言ってられるのか?) >海月 亮様 シンデレラお見事!微妙なところなのですが、浴衣姿の孫権が激しく気になってしまいました。やっぱりその浴衣姿とは絵描きBBSのどこかにある、アサハル画なのでしょうか?それとも新作? 長湖部をツンデレ眼鏡っ娘の天国と評し、喜んでいた諸葛丞相にそれがしは激しく同意し、弟子にして頂きたく思いまする。
47:雑号将軍 2005/08/11(木) 10:24 れ、連続・・・・・・。 しっ、しまったっ!連続ですが…。またもや敬称落ちが…。アサハル様申し訳ないです。これからは一度見直すようにします…。
48:海月 亮 2005/08/11(木) 22:50 |▽ ̄)つhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~flowkurage/natsumatsuri2005_2.jpg とりあえず長姉と末妹はこんな感じであります。 仲翔姉さんが通常モードなのは気にしないでおくのが吉(は? >サンコマメ 三日連続!!? 何でそんなにネタがあるんですか?てかこんな短期間でよくこれほどのものを…。 …ああ、とうとう王渾タソの本性が… 楽チンの苦労性はやはり姉貴譲りなんですかね。てかいいひとだ(*´ー`*) >浴衣の孫権 _| ̄| ...○ …ヤバい全っっ然考えてなかった(甥 で絵版過去ログの旭絵にありましたね。あんな感じだと思います。てかそれで決定(は!? …海月も孔明先生の弟子になって萌え研究します…。
49:雑号将軍 2005/08/13(土) 22:34 うわっ!返事遅くなりました…。 >浴衣の孫権 承知致しました!あの孫権のイメージで好きなんで。その後ろから、すこし照れながら着いてくる周泰(これまた浴衣姿)ってのも見てみたい気がしますが…。 >海月も孔明先生の弟子になって萌え研究します おお!ではそのときには、海月様はそれがしの兄弟子ということになりますな!といっても僕はツンデレonlyですが…。
50:海月 亮 2005/08/17(水) 00:12 -長湖の夏休み(夏祭り前の風景から)- 長湖。 夏は南国、冬は寒帯と化す、中華学園都市最大のミステリーゾーンである。 そのほとり、揚州学区を縄張りとするのは、多くの水上スポーツ系クラブと少数の文科系クラブから構成される長湖部であり、夏休みもこのあたりで何かしている奴らが居れば、大概は長湖部の人間である。 その校区に面したビーチからやや外れて、丁度海で言えば磯のようになった岩場に、ひとりの少女が釣り糸を垂れている。 年季の入った麦藁帽子を目深に被り、淡い色のパーカーにキュロット、足首までバンドのあるしっかりしたつくりのサンダルを履いて、一見釣り人らしからぬ風体だが、その竿は名のある職人が作ったと思われる竹製の良い品物だ。 不意に釣竿の先が僅かに揺れ、次の瞬間一気にしなる。 「よし来た!」 少女は両の足を、岩の窪みに引っ掛けて固定する。そして手元のリールで糸の長さを細かく調整しながら、湖面を走る影の動きをコントロールしようとする。そして、機を見て一気に引き上げた。 湖面から引きずり出された影は、ゆうに50センチを越える。なかなかの大物であるが…それはなんとナマズだった。 「なんか珍しいの釣れましたね、徳潤さんっ」 少女がその声に振り向くと、ビーチとの境目にひとりの少女が居た。 白い帽子を緑成す黒のセミロングに乗っけて、きちんと着飾れば様になるスタイルの良い肢体にスクール水着を身に着けている。 「よお伯言、泳ぐのが好きじゃないあんたがそんな格好でどうしたんだい?」 「妹たちの付き添いですよ。それに、私泳ぐのが得意じゃないだけで、水遊びは嫌いじゃないですよ」 「ふ〜ん」 岩場に陣取っていた少女…徳潤こと敢沢は、会話に興じつつも手先では釣ったばかりのエモノの処理を同時進行で行っている。なかなか器用なものだが、ナマズの体に容赦なくかつ的確にナイフを突き立てているあたり、キャッチ&リリースという概念は彼女の脳裏に存在しないらしかった。 伯言と呼ばれた少女…長湖部の実働部隊総帥・陸遜も、その光景を目の当たりにしてさして驚いた風を見せていない。基本的に苦学生の敢沢がこうして食料を調達していることを知っていたからだ。 「というか徳潤さん、ナマズって食べられるの?」 「知らんのか。泥臭いのを何とかしさえすれば、味が淡白だからどんな料理にしても結構いけるんだよ、これが」 「へぇ」 程なくして動かなくなったそのエモノをクーラーボックスに仕舞い込むと、敢沢は再び糸を湖中に放ろうとした。 「あ、そうだ。良かったら徳潤さんもご一緒しませんか?」 「あたし? そうだなぁ、どうするかな」 その誘いかけに、彼女は一瞬迷った。 この日は思いのほか好調で、さらに朝から釣りに興じていたお陰もあって、漁果としては十分である。 同じ苦学生仲間の歩隲との交易材料も問題はない。夜には夏祭り会場でのバイトがあったが、祭が始まるまでにも十分時間があったし、彼女自身もひと泳ぎしてから帰る気でいたので、実は水着だって着込んでいたりする。 「う〜ん、バイト行く前にひと泳ぎするつもりだったからな。じゃあ、仲間に入れてもらうかな」 「決まりですね。じゃあ、行きましょう」 「ん」 釣り道具一式を担ぐと、敢沢は岩場を軽々と飛び降りてきた。
51:海月 亮 2005/08/17(水) 00:12 「おらおら、気張って泳げ〜! 正明と承淵が赤壁島廻ってきたぞ〜!」 ビーチから、沖合いの赤壁島の中間くらいの地点に、泳ぐ少女たちの一団がある。その傍らで、ボートをこぎながら檄を飛ばす暗紫髪のショートカットがひとり。今年卒業を控えながら、水泳部長として後輩の育成に余念がない凌統である。 水泳部は毎年この時期になると、長湖部夏合宿とは無関係にほぼ毎日、揚州校区ビーチから赤壁島までの片道3キロを往復する遠泳を行うようになる。無論、学園都市全体で始まる祭の開始日であったとしてもそれは変わらない。 単純計算では6キロの遠泳だが、実際は赤壁島を周回して来るので7キロ強泳ぐことになる。全国に誇る強豪はこのようにして育て上げられるのだが、このハードさゆえに途中で音をあげ、夏の間に部を去るものも決して少なくない。 とはいえ、この年はいまだ脱落者を発生させていなかった。その鍵を握っているだろう二人が、少女たちとすれ違っていった。 僅かに先頭にたつ栗色髪の少女、それに追随する狐色髪の少女。 それぞれ高等部に入って間もない一年生、来年に高等部編入を控えた中学三年生である。水泳部に在籍する少女たちの中でも、その平均年齢からみればずっと下の少女たちである。そのふたりに対する負けん気が、プラスの方向に働いている所以である。とはいえ、それでも他の少女たちとそのふたりの差はかなりのものであった。 「う〜ん…やっぱり二週目となると、あのふたりにはついていけないもんかなぁ」 「ま、あのふたりが異常なのよ、ぶっちゃけた話」 そのふたりを追ってきたらしい一隻のボート。そこに、ポニーテールの少女がひとり乗っている。 「遅かったじゃない、文珪」 「遅いも何も、あのふたりが早すぎるんだ。ボートでついて行くのも精一杯だよまったく」 凌統のボートに自分のボートを横付けすると、その少女…潘璋はボートに仰向けでひっくり返った。 「情けないわねぇ…去年まで部下だった承淵に対してあんたがそんな体たらくじゃ」 「それでもいいよぅ〜、あたしも〜疲れたぁ〜」 呆れ顔の凌統に、ボートにひっくり返ってしまう潘璋。 水泳部の少女たちも、普段滅多に見られない潘璋の情けない姿に、野次馬根性むき出しで遠巻きに眺めている。 「あ、こらあんたたち、止まってないでさっさと泳ぐ! さもないと、完泳のジュースとスイカ、やらないよ!?」 凌統の一言に、慌ててコースに戻る少女たち。その後を、数隻のボートが追いかけていく。 「ったく。あんたもあんたよ文珪。普段のあんたの態度もどうかと思うけど、そんなんじゃ示しつかないわよ?」 「へいへい、解りましたよ〜…って何やってるのよ公績」 ふてくされた様にむっくり起き上がる潘璋。みれば凌統、ボートの艫綱を潘璋のボートに括り付けている。 「あたしも泳いでくる。これ、岸につけといてくれる? 礼ははずむわよ?」 「別にいいけどぉ」 その返答を聞いたか聞かずか、パーカーを脱ぎ捨てて水着だけになり、湖中へ消えた。 その姿を見送ると、やれやれと言わんばかりの表情で肩を竦め…やがてビーチに向けてボートを漕ぎ出した。
52:海月 亮 2005/08/17(水) 00:13 「者ども、準備はいいかぁ!?」 「おー!」 「よーし、総員突撃ぃー! あたしに続けー!」 先頭、跳ね髪の少女がビニール製のイルカともシャチとも取れぬモノを小脇に抱えて湖面へ駆け出すと、そのあとに少女たちがときの声をあげて追随していく。皆、或いは浮き輪を装備し、また或いはビニール製のビーチボールを抱え、次々に沖へ向かって泳いでいった。 先頭切った少女は水色の地に白抜き水玉模様のワンピース、それの真後ろにいた三つ編みの少女は「PARQUIT☆CIRCLE」という白抜き文字が胸元に入っている橙のハイネックワンピースだったが、あとの少女は揃いも揃ってスクール水着だった。 「あんたたちー、あんまり沖のほうまでいっちゃダメだからねー!」 浜にひとり取り残された格好になった陸遜が呼びかけるが、聞いているのかいないのか。 そこへ荷を置いてきたらしい敢沢も合流する。苦学生の彼女ではあったが、着ているのはそれなりに値の張りそうなデニム地のセパレート。彼女はどうやら水着にもそれなりにお金を使うらしい。 「しかしまぁ…あれだけスク水だらけだと学校の授業で来てるみたいだな」 と溜息交じりに言う。 「私も正直な話、徳潤さんがそんな水着持ってるなんて意外でしたけど」 「折角の一張羅だからな、着れる時に着ておいてやらにゃあ。あんたもモノはいいんだから、たまにはお洒落に気を使ってもいいんじゃないか?」 陸遜の皮肉を鮮やかに皮肉で返す敢沢。 「あはは…でも私、どうも着慣れた服じゃないと落ち着かなくて」 「気持ちは解るがね。まぁ、着れる内に着ておくと言うなら、それなんかその典型かもしれないしな」 なんとも女子高生らしからぬ物言いではあるが、敢沢のそれはバイト環境で培われたものであることは想像に難くない。あくまで軽口に過ぎず、どこぞの諸葛亮のような趣味人的な発想ではないし、敢沢自身もそのような考え方は持ち合わせていない。 「それに考えてみれば、うちの制服ってどの学校のと比べても割高なんだよなぁ…そう考えると、多寡がスク水でも着ないのは何か勿体無い気がするなぁ…」 難しい顔をして考え込む敢沢。やはり、最終的にはどこかで苦学生の顔が出てきてしまうらしい。 「まぁ、そんなこと考えてもしょうがないですよ。 それより、バイトの時間は大丈夫なの?」 「夜からだから四時くらいまで余裕だな」 「え…今日の夜に?」 その答えに小首を傾げる陸遜。やっぱり、苦学生の彼女には祭を楽しむ余裕もないだろうか…ということに思い至ったようだ。 「…じゃ、折角だから今のうちに遊んどきましょう、ね?」 手をとって子供のようにはしゃぐ緑髪の少女の笑顔に、敢沢はふと、今年の年明けに起こった出来事を思い出していた。 長湖部と帰宅部連合の全面戦争。 甘寧や韓当を始めとした百戦錬磨の大将ですら成す術ないその危難の矢面に、自分がこの少女を引きずり出したことを、敢沢は未だにそれが正しかったかどうなのか考える時があった。 結果的にその行為は長湖部を救うことになったのだが…そのために嘆き悲しんだ少女がいたことを知っていたから。 だが、彼女は思う。 今こうして、この少女が笑顔で居れるのだから、それならそれでいいじゃないか…と。 「ああ、いくか」 敢沢は陸遜の手に惹かれるまま、水際で遊ぶ少女たちの一団に駆け込んでいった。
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