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☆熱帯夜を吹っ飛ばせ! 納涼中華市祭!☆
50:海月 亮 2005/08/17(水) 00:12 -長湖の夏休み(夏祭り前の風景から)- 長湖。 夏は南国、冬は寒帯と化す、中華学園都市最大のミステリーゾーンである。 そのほとり、揚州学区を縄張りとするのは、多くの水上スポーツ系クラブと少数の文科系クラブから構成される長湖部であり、夏休みもこのあたりで何かしている奴らが居れば、大概は長湖部の人間である。 その校区に面したビーチからやや外れて、丁度海で言えば磯のようになった岩場に、ひとりの少女が釣り糸を垂れている。 年季の入った麦藁帽子を目深に被り、淡い色のパーカーにキュロット、足首までバンドのあるしっかりしたつくりのサンダルを履いて、一見釣り人らしからぬ風体だが、その竿は名のある職人が作ったと思われる竹製の良い品物だ。 不意に釣竿の先が僅かに揺れ、次の瞬間一気にしなる。 「よし来た!」 少女は両の足を、岩の窪みに引っ掛けて固定する。そして手元のリールで糸の長さを細かく調整しながら、湖面を走る影の動きをコントロールしようとする。そして、機を見て一気に引き上げた。 湖面から引きずり出された影は、ゆうに50センチを越える。なかなかの大物であるが…それはなんとナマズだった。 「なんか珍しいの釣れましたね、徳潤さんっ」 少女がその声に振り向くと、ビーチとの境目にひとりの少女が居た。 白い帽子を緑成す黒のセミロングに乗っけて、きちんと着飾れば様になるスタイルの良い肢体にスクール水着を身に着けている。 「よお伯言、泳ぐのが好きじゃないあんたがそんな格好でどうしたんだい?」 「妹たちの付き添いですよ。それに、私泳ぐのが得意じゃないだけで、水遊びは嫌いじゃないですよ」 「ふ〜ん」 岩場に陣取っていた少女…徳潤こと敢沢は、会話に興じつつも手先では釣ったばかりのエモノの処理を同時進行で行っている。なかなか器用なものだが、ナマズの体に容赦なくかつ的確にナイフを突き立てているあたり、キャッチ&リリースという概念は彼女の脳裏に存在しないらしかった。 伯言と呼ばれた少女…長湖部の実働部隊総帥・陸遜も、その光景を目の当たりにしてさして驚いた風を見せていない。基本的に苦学生の敢沢がこうして食料を調達していることを知っていたからだ。 「というか徳潤さん、ナマズって食べられるの?」 「知らんのか。泥臭いのを何とかしさえすれば、味が淡白だからどんな料理にしても結構いけるんだよ、これが」 「へぇ」 程なくして動かなくなったそのエモノをクーラーボックスに仕舞い込むと、敢沢は再び糸を湖中に放ろうとした。 「あ、そうだ。良かったら徳潤さんもご一緒しませんか?」 「あたし? そうだなぁ、どうするかな」 その誘いかけに、彼女は一瞬迷った。 この日は思いのほか好調で、さらに朝から釣りに興じていたお陰もあって、漁果としては十分である。 同じ苦学生仲間の歩隲との交易材料も問題はない。夜には夏祭り会場でのバイトがあったが、祭が始まるまでにも十分時間があったし、彼女自身もひと泳ぎしてから帰る気でいたので、実は水着だって着込んでいたりする。 「う〜ん、バイト行く前にひと泳ぎするつもりだったからな。じゃあ、仲間に入れてもらうかな」 「決まりですね。じゃあ、行きましょう」 「ん」 釣り道具一式を担ぐと、敢沢は岩場を軽々と飛び降りてきた。
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