★しょーとれんじすと〜り〜スレッド 二学期!★
23:第二章Part32007/03/01(木) 01:40
「掃除するのは後でいい、道を塞ぐものは全部押し出せっ!」
 許昌と襄陽を結ぶ幹線道路。大勢が動き回るその背後から、大きな怒号が響き渡った。
 普段は生徒の往来が活発な通りも流石にこの日は警備要員以外は姿を見せず、人気の無い通りは頑丈なバリケードに塞がれている。
「ったく・・・まともなやる気も見せないくせにきっちり仕事して・・・」
 半ば片付けられてはいるが、未だに道を塞いでいるバリケードを見て「鷲部隊」を預かる于禁がぼやいた。
 「鷲部隊」の戦いぶりは“強襲部隊”の名に恥じないものだった。彼女らの果敢な突撃によって、校区境界部の敵はあっという間に一掃されたのである。
 しかし、本当に大変なのはここからであった。呆気なく壊走した敵たちも、校区を守る気を見せないといけないと思ったのだろうか。道路上に組み上げられたバリケードはなかなか手強い。解体・撤去に予想外の手間が掛かっている。
 こうなると手間が惜しい。于禁自らも作業に加わり、降伏した敵警備班の者も加えて道路の片付けに邁進していた。とにかく時間が無いため、邪魔な障害物はそのまま路肩に山積みにされ、通行路の啓開に全員が大車輪のごとく駆けずり回ったのだった。
 その努力の甲斐あって、何とか後続部隊の通行路は確保されつつある。背後で作業の様子を見守っていた楽進が出撃可能と見切りを付けて、于禁の傍へと駆け寄ってきた。
「大体片付いたね。私らは行くよ于禁」
「ああ、後始末はお任せ願うとして・・・時間はどう? 15分のロスになったけど」
「心配要らない。距離が長い方が挽回できる余地も大きくなるから。一気に突っ込んでやるよ!」
「ならいいね。武運を祈る!」
 自分の部隊に駆け戻りつつ「ああ!」と于禁に返事をし、楽進は進撃の合図を後ろに送った。
 直後、周囲の大気が震撼する。
 指揮官の命令を待っていたかのように、アイドリングの轟音が周囲の空気を揺るがしたのだ。その様は、艦載機の発艦を待つ空母の飛行甲板さながらだ。
(良い音だ)
 壮観な光景に満足感を覚えた楽進だったが、いつまでも止まっているわけにはいかない。その思いを一瞬で振り払うと指揮官の任務に立ち戻った。
「雷部隊、出撃―っ!」
 力強い号令と共に、強襲部隊の第二陣が襄陽目指して動き出す。

 「前の連中が動いたか。私らも突っ込むぞ!」
 前方の「雷部隊」が動き出したのを見て取って、張[合β]の「剣部隊」も前進を開始した。
「程Gさん、しっかり掴まってな! お客様に怪我させるつもりも無いけどな!」
 張[合β]が操る車両のサイドカーには、参謀役の程Gが同乗していた。お客が乗っている以上、一人でバイクを乗り回すときのようにはいかない。かと言って、安全運転で走るつもりも無い張[合β]だった。都合のいい言葉だが、要は「事故らないように飛ばしまくる」ということだ。
 もちろん程Gも分かっている。彼女の胸中を知っての上で返事を返した。
「お任せしますよ、過激な馬車屋さん!」
 予期せぬ返答に面食らった張[合β]だったが、立ち直るのは早かった。「私は馬車屋か!余裕だねぇ!」と言いつつアクセル全開。お任せ願えるのであれば、遠慮は無用というものだ。
「それではお客様、出発致します!」
 後続車両が付いてくる気配を感じつつ、張[合β]は車両を加速させる。道の両脇に押しのけられた障害物が後方へ過ぎ去ると、眼前に荊州学院の広大な敷地が広がった。
(飛ばすには絶好だ! 大いに結構。この張儁艾の腕(テク)を披露してやるか!)
『関羽や夏候淵さんには敵わないけどな』と付け足して、張[合β]は「剣部隊」をトップスピートで突っ込ませた。
1-AA