★しょーとれんじすと〜り〜スレッド 二学期!★
8:韓芳2007/01/24(水) 00:54AAS
『じ・・・者・・し・・・』
心の奥底から声が聞こえてくる。不思議と心地がいい。
「・・・さない。」
「!おっ、落ち着け!」
部屋の空気が変わった。
さっきまでとは違い、刺々しく背筋に寒気を覚えるような感じだ。
その手には木刀が握られていた。
「母さんを・・・よくも!」
『邪・・者は・・・してやる』
そうだ。私は戦うために居るんだ。そう、思えるような声。
もう、何も考えられない――
「落ち着け!」
「そうだ!これでは、今までの修行の甲斐が無い。」
それらの声は、少女には届かなかった。
「木刀を捨てろ!でないと私はお前も―――」
「うるさい!・・・みんな・・・みんな・・・」
   『邪魔者は殺してやる!』
「殺してやる!」
少女は父親へと突っ込んだ。
「くっっ!仕方ない!」
父親は一気に剣を振りぬいた。持っている力をすべて込めて。
だが次の瞬間、父親の体は宙を舞い、そのまま意識を失って倒れこんだ。
何が起こったか何をしたか、誰にも分からなかった。
「なっ、何と言うことを・・・」
「うっっ、うわぁぁ!けっ、警察を呼べー!」
「逃げろー!!」
「逃がさない!・・・全員殺す!」

この一件後、少女は一時的に少年院に入れられたのち、遠い親類の家に預けられることになった。
だが、ほとんどの家で「このような子は預かれない」と言われ、たらいまわしにされることが多く、ほとんど野宿に近い日々をすごしていた。
そうしているうちに1年が過ぎた―――

「ふぅ。・・・もう少しやっておくか。」
少女は夜の公園で剣の素振りを行っていた。
親類の家に居ても、色々悪口を言われるだけで、体を休めることが出来ないからである。
そこへ、数人の男女が公園へやってきた。
「ちょっと!やめなさい!」
「なんだと!5人もやりやがったくせに!」
「それはそっちがふっかけてきたからでしょ!」
「んだと!?」
見ると、1人の女性に5・6人の男が集っている。
その女性は、遠くからだが少しかわいく見えた。
「・・・まあ、軽い運動にはなるか。」
そう言うと、その少女はもめている集団の方へと歩いていった――

「もう。離しなさいよ!」
「けっ。お前にはこれからたっぷりし返ししてやるぜ。」
「覚悟しろよ。」
「くっ・・・。」
もうだめだ・・・そう思った次の瞬間。1人の男が倒れていた。
「なっ、何?てめえ誰だ!」
「さあ・・・な。」
「野郎!」
集団の一人が殴りかかっていった。が、次の瞬間には男は3メートルほど吹き飛ばされ、気を失っていた。
「こいつ・・・強い!」
「・・・なんだ、弱すぎるな。面倒だから全員で来なよ。」
「くそっ!言われなくとも行ってやるぜ!」

「助けてくれてありがとうね。」
「・・・別に。」
再び静まり返った公園のベンチで、助けた女性の迎えが来るのを待っていた。
「あなた強いのね。まあ、私が本気を出せばあんなやつら10秒でやっちゃうけどね。それで、あなた名前は?」
「私・・・は・・・」
「あ、そうだ。私はね、て――」
遠くで車クラクションの音が聞こえた。
「あら?もう迎えが来たみたい。」
「あ・・・ああ・・・そうだな。」
「もう、無口なんだから!・・・そうだ!今度遊びにおいでよ。今日のお礼するからさ。」
「え・・・えっと・・・」
「ねえ、いいでしょ?」
その女性はじっと少女を見つめている。
これほど間近で人に見られたのはいつ振りだろうか。
少し恥ずかしくなってきた。
「じゃ、じゃあ・・・よろしくたのむ・・・」
「決まりね!じゃあ、またね!」
「ああ、また・・・」
そうしてその女性は帰っていった。
ある少女に満面の笑みを残して―――

「・・・様。り・・様!」
「う・・・ん?」
「起きてください、呂布様!」
「ん?どうした陳宮?」
そこはいつもの棟長室だった。
昼間とはいえ、1月の下丕は結構肌寒い。
「どうしたじゃなくて。『今日は祭りだ!』って言って騒いでたのはあなたでしょう?」
「ああ、そうか。・・・夢を見ていたのか。」
「夢、ですか?」
「ふっ・・・結局可愛かったのは印象だけだったなぁ〜。」
「へ?誰が?」
「なんでもない!じゃあ行くか、陳宮!」
「え、ちょっと!何をする気なんですか?」
あわてる陳宮をよそに呂布は、
「武芸大会に決まっているだろう!」
そう笑顔で答えた。

その後、ある少女は助けた女性の元で暮らしていたという。
大きな戦乱に巻き込まれるとは露ほども知らずに。

これは、ある少女の物語――
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