★しょーとれんじすと〜り〜スレッド 二学期!★
28:彩鳳2007/03/07(水) 22:14AAS
 『王者の征途』

 第三章 『潮(うしお)満ちるとき』

 連合会が巻き起こした嵐は、巨大なうねりを伴って北から南へと押し寄せている。そのうねりの先端は、怒濤の勢いをもって目指す襄陽棟を目前にしていた。
 攻撃開始時と入れ替わり「雷部隊」「剣部隊」「鷲部隊」の順となった突入部隊は、ただひたむきに襄陽目指してひた走る。
 襄陽への途上、数か所の検問所のような拠点はあったが問答無用で強行突破され、守備隊はバイクの大集団を道端で見送るのが任務となった。正確に言うと、大集団を見送ったのち、後続の歩兵部隊に白旗を掲げるのが任務となったのである。
 本来これを迎え撃つべき荊州校区の主力部隊は、全く動きを見せなかった。一部の者は抵抗すべく迎撃命令を要請したが、上層部から命令が下ることはなかった。彼女らは襄陽近郊に展開していたが事態の急変に全く対応出来ず、最後まで傍観者であり続けることになる。
 予定外の遅れを取り戻すべく突進する前衛部隊の後方には、曹操率いる南征軍の本営が設けられている。本営を取り巻く司令部直属部隊や残る諸将の部隊が南征軍の本隊を形成し、前衛部隊の突破攻撃に合わせて南への進撃を開始していた。
 曹操の本隊が台風の中心だとすれば、前衛の各部隊は嵐を告げる高波である。
 末期の患者さながらにまともな抵抗の見られない――もしくは制圧された――荊州校区北部を進撃する南征軍の右手には、逆光に霞んで西方の山々が連なっている。その山々の向こうには「高潮作戦」の次のターゲットとなる、益州学園校区の各校舎が存在していた。しかし、そのことに関心を向けたのは本営にいる曹操と、彼女を取り巻く参謀たちだけであった。多くの者たちには益州校区での戦闘など遠い先の話でしかなったし、そもそも眼前の戦闘から目をそらす者など居るはずがなかった。
 秋の色に彩られた山々の稜線を横目に見ながら、南征軍の本隊は南下している。その前進を阻むものは何も無い。
 攻勢開始から半日も保たずに、襄陽は陥落の時を迎えようとしていた。
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