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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド 二学期!★
30:彩鳳2007/03/07(水) 22:20
元々、荊州校区は文化系のサークル活動が活発な校区の一つである。同校区の生徒会役員の中でも、文官の蒯良や王粲らは荊州校区の生徒会役員としての肩書以外に、各自が所属するサークルの幹部としての肩書も併せ持っている。これらのサークルは彼女たちの支持基盤と言っていい。
これまでは荊州校区内で平和に共存しつつ、独自の勢力圏を形成していた彼女たちだったが、官渡決戦以降は状況が変わった。劉備率いる帰宅部連合会が、荊州校区に編入したのである。
帰宅部連合会の参入は、荊州校区のサークル活動に大きな波紋を投げ掛けた。
規模の面では既存のサークルと大きな差は付かないものの、周囲に与える影響力には格段の差が出たのである。
荊州校区に流れ着いた時点で、帰宅部連合と劉備の名前がある程度知れ渡っていたのに加え、文化系サークルが活発な校区だったことが劉備たちには幸いした。
言うまでもない事だが、帰宅部連合の所属サークルは多くの校区を渡り歩いている。このため既存のサークルとは毛色の違う彼女らの存在は、校区内の注目の的となったのである。これには劉備の気さくな人柄も一役買っているのだが、既存のサークルのリーダー達がこの状況を好ましく思わないのは当然と言えよう。必然的に生徒会の主要メンバー(特に文官たち)の間では、反劉備の空気が形成された。
蔡瑁一派や張允ら、荊州校区では少数派に属する体育会系サークル出身の生徒会幹部たちも、この空気に同調した。
彼女らは、文化系サークル出身者の危機感とは別に、帰宅部連合の持つ軍事力を警戒していた。人数自体は取るに足らないものの、劉備に従う関羽、張飛、趙雲らが本気になった場合これといって対抗できる人間がいなかったことも、彼女たちの警戒感を強めさせた。
だが校区の幹部たちにとって何よりも恐るべき事は、劉備に心酔する人間が日々増加し、劉備を荊州校区の会長に、つまり劉表の後継者に推す声が高まったことであった。万が一これが実現しようものならそれまで構築してきた校区の運営体制のみならず、自分たちの「聖域」、すなわちサークル内での地位までもが失われることになると考えたのだ。
このため、彼女たちは事あるごとに劉備を校区から追い出そうと画策した。敵もさるもので中々成功しなかったが、ここにきて大きなチャンスが訪れた。曹操の南征が現実のものとなったのである。
曹操と劉備は敵同士。必ずや曹操は劉備を攻撃するだろう。結局は仕える相手が劉表の妹から曹操に代わることになるが、劉備がトップに来るよりはマシなはずだ。
なぜなら、劉備がトップに立ち、幸い校区内での地位が維持できたとしても、いずれは南下する曹操との交戦になる。そのような不安定な情勢では、特に文化系サークルの活動に悪影響が出るのは必然であった。それならば、最初から強大な力を持つ曹操に校区を守ってもらった方が都合がいい。
荊州校区は安定した状況を作る力を持つ、強力なリーダーを欲しているのだ。
劉Nの目の前では、蔡瑁が劉備の危険性を彼女に激しい恨みでもあるかのように劉Nに訴えていた。その話題が終わり、今度は話の矛先が姉の劉Kへと向けられる。
「それから劉Kさんの処遇についてですが、私どもの方で曹操に降伏されるよう説得いたします。ですので、この件については我々にお任せください」
劉Nには分かっている。この者たちは劉備同様、姉に対して手を差し伸べるつもりなど全くないのだ。「今すぐ手配します」と言うならまだしも「私たちにお任せを」? 二人を見捨てるつもりとしか考えようがないではないか。
もはや看過できない。目の前の上級生たちに苦言を呈すべく、それまで俯きがちだった顔を上げた劉Nだったが口を開くことは出来なかった。複数の視線に射すくめられた彼女の体は、動くことを許されなかったのだ。
孤独な沈黙が室内を支配する。そのとき劉Nは気が付いた。外から聞こえてくる騒音に。
そして彼女は理解した。荊州校区の終焉が訪れたことを。
嵐を告げる高波が、ついに襄陽棟まで届いたのである。
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