★しょーとれんじすと〜り〜スレッド 二学期!★
33:彩鳳2007/03/11(日) 00:26AAS


 『王者の征途』

 第四章 『襄陽棟の落日』

「見えた、目的地だ! 襄陽棟の校舎が見えたぞ、各小隊は散開用意!」
 前衛部隊の先頭で「雷部隊」を引っ張ってきた楽進が、ついに目的地を視界に捉えた。
 時計の針は、間もなく3時を過ぎようとしている。障害物の撤去作業で思わぬ時間を取られたが、それ以降は大した邪魔も入らずに突き進むことができた。このおかげで、攻撃開始から1時間半経たずに目的地に到達するという驚異的な猛進撃が実現できたのである。
 西に傾いた太陽が、かなり赤みを帯び始めた光で校舎を照らし出す中、「雷部隊」のバイク班は散開して校舎の各ゲートを封鎖しにかかる。同時に、後続してきた「剣部隊」と
 楽進の本部中隊は正門へと雪崩込み、校舎の敷地内へと乗り込んだ。
 剣道着姿に身を固めた武装風紀部隊と、運動着姿だが身のこなしの鮮やかな執行部員の精鋭たちがバイクから飛び降り、速やかに隊列を形成する。
「楽進さん、張[合β]さん、二人とも有難う。おかげでここまで来ることが出来た。ここから先は、この私にお任せ願いたい」
 そう言って張[合β]の脇に座していた程Gは、校舎に向けて歩き出す。長身の彼女ゆえに、その様は真剣になった時の曹操とは異なる威圧感がある。その彼女を護衛すべく周囲を張[合β]と武装風紀が取り巻くと、その光景はまさに「主従の一行」という趣である。
 外への警戒のために楽進らを残した一行が、校舎へ向けて歩いてゆく。
 歩きながら程Gは「張[合β]さん、気づいているか?」と前を進む張[合β]に語りかけた。
 急に問いかけられた張[合β]だったが、慌てる素振りを全く感じさせずに「戦の空気のことかな?」と返事する。曹操ほどではないが(いや、失礼)一見どこか抜けているようで、実は誰よりも鋭いのが彼女である。ある意味、一種の本能と言えるかも知れない。
「そうだ、我々が攻めてくることは(正確な日時はさておき、だが)ここの連中も分かっていたはず。だというのにこの警戒感の無さ。何かの罠かも、と最初は思ったがこれは明らかに違う」
「・・・荀揩ウんや賈詡さんが言っていたように、降伏派の力が強い、と?」
「それ以外に無いな、これは・・・で、噂をすれば何とやらか」
 突然、程Gの突き刺すような鋭い視線が正面を向いた。彼女たちの正面――大校舎の玄関口に人の影が立っているのが見えたのである。
 その影が「失礼ですが、連合生徒会の方々ですね?」と問いかけた。
 影の問いに「そのとおりだ、あなたは?」と程Gが応じる。
「お初にお目にかかります。わたくし、荊州学院校区の生徒会役員を務めております蒯良子柔と申します。どうぞお見知り置きを」
「ご丁寧な挨拶、恐れ入る。私は連合生徒会の程G仲徳。何のためにここに来たかは、今更語る必要もないと思うが」
 二人の脇では、張[合β]が蒯良の馬鹿丁寧な挨拶(なんだこいつ、司隷校区出身か?)に辟易しつつもこのやり取りを見守っていた。二人とも知恵者であるだけに、会話はとんとん拍子に進んでいく。
「程Gさんのお名前は、荊州校区の我々もよく存じ上げております。お会い出来て光栄ですわ。確かに、あなた方がここに来られた目的はよく存じ上げております。失礼ですが、なぜわたくしがここに居るかについても―――」
「―――ああ、語る必要の無い事だ。早速だが生徒会長の下へご案内願いたい」
「はい、会長の劉Nもみなさまをお待ちしております。それではこちらへ・・・」

 こうして、荊州校区の中枢はいとも容易く曹操の手中に納まった。
 襄陽棟制圧の報を受け取った曹操は直ちに現地へ赴き、降伏の手続きを行っていた程Gらと合流した。
 そして、直後の交渉によって、劉Nらの処遇が正式に決定した。
 生徒会長の劉Nは、生徒会長の座を降りることになったものの蒼天章の剥奪には至らなかった。さしたる抵抗をせずに降伏したことが評価されたのである。(曹操たちの予想通りの降伏ではあったが)ただし、荊州校区に留まることは許されず襄陽から、そして荊州校区から遠く離れた青州校区への転校となった。
 蒯良・蒯越らをはじめとする文官グループの者たちは、連合会役員に加わることになり、改めて連合会(つまりは曹操)から現在のポストに任命されると言う形で、新たな部署(地位)に転属したり元の地位を維持することが出来た。
 蔡瑁・張允ら、武官グループの面々も引き続きそれまでのポストに留まることになった。彼女たちはそれまで預かっていた部隊の指揮を引き継いで、曹操の南征軍に加わることになった。
 かくして、劉表の会長就任以来続いていた荊州校区の独立運営は、ここに終わりを告げたのである。
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