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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド 二学期!★
7:韓芳 2007/01/24(水) 00:53 夢幻泡影 その少女は、平和に暮らせるはずだった。 あの日、あの時までは――― 「嘘じゃないわ。間違いない。」 「そこまで言うなら試してみるが、無駄だと思うぞ。」 「いいからお願い。」 ここはとある道場。ある少女の父親が代々受け継いできた場所である。 そこに、その少女と両親、親類達が集まっている。 「一応スポンジで出来ているから怪我はしないけど、ちょっと痛いかもしれないんだ。ごめんな。」 「うん・・・わかった。」 「じゃあ、いくぞ。」 そう言って父親はスポンジの剣を構え、少女の前に立った。 「無理に決まってる。」 「ああそうじゃ。手を抜いているとはいえ、まだ4つの子に避けられるはずが無い。」 誰もがそう思った。 手で顔を隠しつつも、指の間から覗いている人も居る。 父親は若干加減しつつ、剣を振り下ろした。 バン、と道場に鳴り響いた音。 誰もが少女の心配をした。だが・・・ 「おっ、おい・・・嘘だろ・・・」 「まさか・・・」 「ね。言ったとおりでしょ。」 その少女は、父親の剣を見事にかわし、平然と立っていた。 「これは凄い・・・!もっとやってみてくれ!」 「あっ、ああ。」 父親は次々に剣を繰り出したが、少女はすべてかわしていた。 「これは・・・!」 「おい!この子は10年に1人の逸材だぞ!」 「明日からでも剣術を習わせるべきじゃ!」 「いや、剣術だけじゃなくほかの武術もだ!」 周りの大人は活気づいていた。 ただ少女のみ、この後の状況を把握できずに呆然と立ち尽くしていた。 それからと言うもの、毎日さまざまな道場へ通い、その力を十二分に発揮していった。 だが、 「もう嫌だよ!みんなと一緒に遊びたいよ!」 「駄目だ。今日は稽古の日だろ。」 「そんなの毎日じゃん!お母さんも何か言ってよー!」 「・・・」 「ほら、行くぞ。」 「何で何も言ってくれないの!?」 「静かにしろ!いい加減あきらめなさい。」 いつもこうだった。 その少女は遊ぶ暇も無く、毎日道場へ通わされていた。 少女の意見など通りもしなかった。 ただ、母親が何も言わないのがいつも気がかりだった。 そして、少女が中学1年生になったある日――― 少女は、すでに10個近くの武術を極め、もはや最強と言っても良い強さを持っていた。 ただ、その代償として感情をほとんど表には出さなくなっていた。 そんな時、母親がその少女を呼び出した。 「どうか致しましたか?」 「・・・そのしゃべり方はもうやめなさい。」 「あなたがそうするよう教えたのでしょう。」 部屋の中に夕日が差し込み、日が暮れようとしているのが良く分かった。 「そんなあなた、もう見てられない。耐えられない。あなたは私を許すことは無いかもしれないけれど、それでもいい。ここから逃げましょう!」 「えっ・・・?母上・・・?」 「嘘なんかじゃない。この数年、あなたと暮らすためにお金を貯めておいたのよ。さあ、2人でここから逃げ出しましょう。2人で暮らしましょう。」 母親は優しい顔と声で言った。 少女はしばらく呆然としていたが、ふと我に返ると涙目でこう言った。 「やっと・・・やっと自由に・・・!母上・・・!お母さん!」 ようやく掴んだ自由。もう、こんなつらい生活続けなくていい。これからは2人で生きていこう、そう思った。が。 「やはりか・・・。こっそり金を貯めていると思ったら、そういうことか。」 見ると、部屋の入り口に父親と親類数人が立っていた。皆、手には武器を持っている。 「!!お父さん・・・。」 「師匠と呼べ。・・・お仕置きが必要だな。」 「あなた、待って!話を聞いて!」 「問答無用だ。下手に逃げ出そうとすれば、お前といえども・・・斬る。」 そう言った父親の目は、冷たく憎悪がにじみ出ていた。 「さあ、こっちにおいで。稽古の時間だ。」 そう言って、父親は少女の腕をつかむ。 「あ・・・」 「だめよ!言っちゃ駄目!」 「邪魔をするな!」 父親はとっさに手にしていた剣を振りぬいた。 「あっ・・・」 薄暗い部屋に赤い雨が降った。 「し、しまった!おい、誰か!救急車を!」 「あ・・・ごめんね・・・ごめ・・ね・・・」 「お母さん!だめ、しっかりして!!」 だが傷は深く、出血の量も多い。誰の目に見ても死を感じずにはいられなかった。 「私が・・・あの時あんなことを・・・言わなければ、こんな・・・」 「もういい!お願い、しゃべらないで・・・!」 父親も親類も、母親から目を背けていた。 「ごめんね・・・ごめ・・・ほ・・・」 「お母さん・・・?・・・お母さん!」 だが、返事は無かった。 「・・・すまない・・・」 「・・・一緒に暮らすって・・・言ったのに・・・!」 その少女の目に、涙が光っていた。もう、何年ぶりだろうか。 「悪気は無かったんだ。許してくれ・・・」 少女が変わった。
8:韓芳 2007/01/24(水) 00:54 『じ・・・者・・し・・・』 心の奥底から声が聞こえてくる。不思議と心地がいい。 「・・・さない。」 「!おっ、落ち着け!」 部屋の空気が変わった。 さっきまでとは違い、刺々しく背筋に寒気を覚えるような感じだ。 その手には木刀が握られていた。 「母さんを・・・よくも!」 『邪・・者は・・・してやる』 そうだ。私は戦うために居るんだ。そう、思えるような声。 もう、何も考えられない―― 「落ち着け!」 「そうだ!これでは、今までの修行の甲斐が無い。」 それらの声は、少女には届かなかった。 「木刀を捨てろ!でないと私はお前も―――」 「うるさい!・・・みんな・・・みんな・・・」 『邪魔者は殺してやる!』 「殺してやる!」 少女は父親へと突っ込んだ。 「くっっ!仕方ない!」 父親は一気に剣を振りぬいた。持っている力をすべて込めて。 だが次の瞬間、父親の体は宙を舞い、そのまま意識を失って倒れこんだ。 何が起こったか何をしたか、誰にも分からなかった。 「なっ、何と言うことを・・・」 「うっっ、うわぁぁ!けっ、警察を呼べー!」 「逃げろー!!」 「逃がさない!・・・全員殺す!」 この一件後、少女は一時的に少年院に入れられたのち、遠い親類の家に預けられることになった。 だが、ほとんどの家で「このような子は預かれない」と言われ、たらいまわしにされることが多く、ほとんど野宿に近い日々をすごしていた。 そうしているうちに1年が過ぎた――― 「ふぅ。・・・もう少しやっておくか。」 少女は夜の公園で剣の素振りを行っていた。 親類の家に居ても、色々悪口を言われるだけで、体を休めることが出来ないからである。 そこへ、数人の男女が公園へやってきた。 「ちょっと!やめなさい!」 「なんだと!5人もやりやがったくせに!」 「それはそっちがふっかけてきたからでしょ!」 「んだと!?」 見ると、1人の女性に5・6人の男が集っている。 その女性は、遠くからだが少しかわいく見えた。 「・・・まあ、軽い運動にはなるか。」 そう言うと、その少女はもめている集団の方へと歩いていった―― 「もう。離しなさいよ!」 「けっ。お前にはこれからたっぷりし返ししてやるぜ。」 「覚悟しろよ。」 「くっ・・・。」 もうだめだ・・・そう思った次の瞬間。1人の男が倒れていた。 「なっ、何?てめえ誰だ!」 「さあ・・・な。」 「野郎!」 集団の一人が殴りかかっていった。が、次の瞬間には男は3メートルほど吹き飛ばされ、気を失っていた。 「こいつ・・・強い!」 「・・・なんだ、弱すぎるな。面倒だから全員で来なよ。」 「くそっ!言われなくとも行ってやるぜ!」 「助けてくれてありがとうね。」 「・・・別に。」 再び静まり返った公園のベンチで、助けた女性の迎えが来るのを待っていた。 「あなた強いのね。まあ、私が本気を出せばあんなやつら10秒でやっちゃうけどね。それで、あなた名前は?」 「私・・・は・・・」 「あ、そうだ。私はね、て――」 遠くで車クラクションの音が聞こえた。 「あら?もう迎えが来たみたい。」 「あ・・・ああ・・・そうだな。」 「もう、無口なんだから!・・・そうだ!今度遊びにおいでよ。今日のお礼するからさ。」 「え・・・えっと・・・」 「ねえ、いいでしょ?」 その女性はじっと少女を見つめている。 これほど間近で人に見られたのはいつ振りだろうか。 少し恥ずかしくなってきた。 「じゃ、じゃあ・・・よろしくたのむ・・・」 「決まりね!じゃあ、またね!」 「ああ、また・・・」 そうしてその女性は帰っていった。 ある少女に満面の笑みを残して――― 「・・・様。り・・様!」 「う・・・ん?」 「起きてください、呂布様!」 「ん?どうした陳宮?」 そこはいつもの棟長室だった。 昼間とはいえ、1月の下丕は結構肌寒い。 「どうしたじゃなくて。『今日は祭りだ!』って言って騒いでたのはあなたでしょう?」 「ああ、そうか。・・・夢を見ていたのか。」 「夢、ですか?」 「ふっ・・・結局可愛かったのは印象だけだったなぁ〜。」 「へ?誰が?」 「なんでもない!じゃあ行くか、陳宮!」 「え、ちょっと!何をする気なんですか?」 あわてる陳宮をよそに呂布は、 「武芸大会に決まっているだろう!」 そう笑顔で答えた。 その後、ある少女は助けた女性の元で暮らしていたという。 大きな戦乱に巻き込まれるとは露ほども知らずに。 これは、ある少女の物語――
9:韓芳 2007/01/24(水) 00:58 便乗して私も(ぉぃ 実は、これでも祭り期間に書いてみたんです。 ええ、雰囲気ぶち壊しですごめんなさいm(_ _)m とりあえず、祭りとは別の休みの日ってことで・・・(汗 >7th様 お疲れ様です〜。 いや、いいと思いますよ、お世辞じゃなくて。 『ジョーズが素足で逃げ出す』に、ちょっとウケましたw 次回作、ゆっくり待たせていただきます。
10:冷霊 2007/01/24(水) 10:48 白い吐息 「ちっ……クソッ!」 冷苞は壁に拳を叩きつけた。 何度も、何度も。 ここはフ水門、益州校区の中心たる成都棟へ向かうには、避けて通れない要所である。 劉循の守るラク棟に続くその門を守っていたのは冷苞、そしてトウ賢であった。 そして今、フ水にいるのは彼女一人である。 魏延と黄忠の夜襲に対し、二人は善戦空しく劉備軍に捕らわれた。 だが、トウ賢はその際に怪我を負い、脱出不可能。 結局、冷苞は一人で逃げてきたのだ。 トウ賢を一人、敵陣において。 冷苞の口から白い吐息が漏れる。 「……お前の力、借りるぜ……」 冷苞はグッと拳を握り締めた。 その手の中には丁寧に描かれた図面が握り締められていた。 ガラリと扉が開けられた。 「トウ賢、調子はどう?」 聞こえてきたのは懐かしい声。 だけど聞きたくなかった声。 彼女は扉に背を向け、窓の外を見る。 「ここでは診療は出来ないけど、ホウ統の話だと折れてるかもしれないそうよ」 コツリコツリと一歩ずつ近付いてくる。 椅子の擦れる音。 「まだ高校にもなってないのに引退するつもり?あんた、ここに何しに来たのよ」 突き刺さる言葉。 だけど答えるべき言葉は持っていない。 「あの子じゃもうダメなのはわかってるでしょ?益州校区には新しい風が必要なのよ」 ぎゅ……。 孟達の言葉に思わず拳を握り締める。 「今ならまだ間に合うわよ。従姉妹なんだし、劉備さんにはあたしから話をつけたげるから……」 「ねぇ」 トウ賢の声が孟達の声を遮った。 「達姉、一つ聞いていい?」 「……どうぞ」 「達姉は今、楽しいかい?」 「は?」 予想外の問いに空気が止まる。 そしてその沈黙は孟達の笑い声によって破られた。 「あははははっ!楽しいかどうかなんてどうでもいいじゃない」 孟達が一つ溜息を着く。 「いい?楽しい学園生活ってのは皆の平等の上に成り立つものなの。そして能力のある者が正しい評価をされることこそ平等……それが出来るのは劉備さんだけ。間違ってる?」 孟達が自信有り気に言い放つ。 だが、トウ賢からの反応はない。 「もういい……わかったわ。劉備さんにあんたの意思、伝えてくるわ」 「その必要はねーよ」 去ろうとしたその背中にトウ賢の声が聞こえた。 「この戦いの結果次第って伝えといて。以上」 「……わかったわ。伝えとく」 がらりと扉が閉まる。 誰もいない部屋でトウ賢が一人呟く。 「劉備を止めるのはあたしじゃ無理だ……けど……」 ぎゅっと毛布を握り締める。 「……皆の想いだけはゼッテー忘れねーから」 噛み締めた唇からはいつの間にか血が滲んでいた。 「やっぱ寒ぃな……上着くれぇ持ってきときゃ良かった……」 冷苞は白い吐息で指先を暖めた。 本来なら暖房機器のおかげでフ水門周辺は暖かいはずである。 元々、寒くなり易いこの辺りは生徒の要望もあって暖房機器が多く設置されている。 「前準備はばっちりっつーことか……」 夜を迎えた学園内でも寒いということは電気系統は死んでいるということである。 おそらく、トウ賢が前以てやっておいてくれたのだろう。 電気系統の知識なら益州校区でトウ賢の右に出る者はなかなかいない。 そして冷苞が向かっているのはフ水門管理棟の屋上に設置された非常用の貯水槽。 ここを壊せばフ水門は水浸し、一晩もしない内に氷に閉ざされる。 氷を溶かさない限り、劉備軍は進むことも出来ず、やがて退路を絶たれて自滅する。 元は巨大なスケートリンクを作る為に皆で考えていた方法だ。 「オレが必ず成功させてやる……時間をかせぎゃあいいんだ……益州の連中が一枚岩になれるだけの……」 まるで呪文のように呟きながら一段ずつ階段を上っていく。 付き従う者は誰もいない。 だが、悪い考えが思い浮かぶ。 もし、貯水槽のことをホウ統が知っていたとしたら。 もし、電気系統の死んでいる原因を調べてられていたとしたら。 「今更、“もし”を考えても仕方ねぇよな……」 屋上へと続く階段を上り終え、扉の前に立つ。 ノブを握るとキンと冷たい。 扉は大した抵抗もなく、あっさりと開いた。 「やっと来たね、待ち草臥れたよ」 冷苞に聞き覚えのある声が投げかけられる。 「昨日の借り、返させてもらいにきたわ」 そこにいたのは黄忠と魏延。 「考え直す気は……って聞くだけ野暮だろうね」 「オレは器用じゃないからね、アンタらみてぇにさ」 冷苞が僅かに口の端を緩め、魏延に視線を向ける。 「そっちの猪には昨日勝ったからどうとでもなる」 「ちょ、猪って何よ!」 魏延が食って掛かろうとするが黄忠がそれを制止する。 「でもよ……」 冷苞が視線を黄忠へと移した。 「オバサン、アンタとはまだ正面からやり合ってねぇだろ」 「……いいよ、かかって来な」 黄忠が得物を水平に構える。 笑みを浮かべる冷苞の口の端から白い吐息が漏れた。
11:冷霊 2007/01/24(水) 11:08 管理部様御苦労様です。 そして更に便乗して私も投下……一先ずお久し振りですw ネタが思いっ切り被ってしまいましたが、他に良い策が思いつかず、そのまま行ってしまいました(割腹) 後は葭萌関の攻防とかいろいろと書きたいなぁとは思っておりますが、 >7th様 おおっ、諸葛喬ですかー。 ホント、惜しい人物って早世しちゃいますよねぇ…… 続きがとても気になりますー、のんびりと待たせて頂きますですよー。 >韓芳様 人に歴史あり、ですね。 まさか彼女にそのような過去があろうとは…… そして絡まれていた女性はもしかして……? その頃のことはあまり詳しくはないので、ちと気になるところですねー。 お疲れ様でしたー。
12:韓芳 2007/01/31(水) 00:52 >冷霊様 『冷苞…』と、思わず声に出してしまいました。 冷苞かっこいい…! 見方を変えれば、やっぱりどの人も格好よく見えるものなんですね。 お疲れ様です。 本物の過去を調べたんですけど(ちょっとだけ)、全然分からなかったので自分なりに考えてみました。 てか、呂布軍団しか書いてない… 私、呂布軍団好きなんだなぁ…
13:彩鳳 2007/02/22(木) 22:24 『王者の征途』 序章『嵐の予感』 曹操率いる蒼天学園・連合生徒会の北伐部隊と烏丸高校の抗争が終結してから、およそ1週間が過ぎ、学園は間もなく10月を迎えようとしていた。 夏の余韻は完全に消え去り、秋らしい涼風が色付き始めた木の葉を揺さぶっている。 本格的な秋の訪れは、学園内に漂う張り詰めた空気を一掃させていた。 袁紹の引退を契機に曹操が河北侵攻を開始してからというもの、冀州校区・并州校区・幽州校区の各地で戦闘が連続し、学園内には緊張した空気が張り詰めたままであった。ようやく、先日になって北への攻勢が終結して学園内――特に黄河以北の地域――の空気は緊張感から開放されたのである。 混乱続きの蒼天学園に穏やかな日常生活が戻ってきたのは、夏休みも含めておよそ四ヶ月ぶりのことである。生徒たちは烏丸高校との抗争が沈静化したことを喜び、開放感あふれる日々を満喫していた。 だが、ほとんどの生徒たちは知っている。この平穏な日々が「嵐の前の静けさ」に過ぎないことを。次の嵐が、そう遠くない日に吹き荒れることを。 嵐の訪れを予感しているためか、生徒たちは秋空の下“楽しまなくちゃ損”と言わんばかりの日常生活を送っている。そのほとんどが口にこそ出さないが、心の中で願っていた。 『この穏やかな日々が、一日でも長く続いて欲しい・・・』 叶わぬ願いであることは皆が理解している。だから口には出さない。だが、それでも願わずにはいられない。混乱期の一般生徒たちが抱えた悲痛な願いである。 だが、彼女らの願いが一旦実現するのは、三国時代が終結する数年先のことである。それまで蒼天学園の生徒たちは、戦乱の続く嵐の時代を過ごすことになる。 その「嵐の時代」すなわち三国時代の始まりを告げる『赤壁島決戦』の序章、曹操の荊州校区侵攻が、間もなく始まろうとしていた・・・。
14:補足説明 2007/02/22(木) 22:24 正確に言うと、湖南地域では孫権率いる長湖部と荊州校区の間で紛争が頻発しており、学園内は完全に平和な状態ではありません。ですが、当時の孫権は揚州校区を束ねる立場に過ぎず、学園全体に与える影響力、あるいは生徒たちの注目度、といった部分で曹操に遠く及びません。 それに、江夏近辺の紛争は所詮地域レベルですので、現地の面々以外に注目する物好きもあまりいないでしょう。 (某勢力の参謀陣は違うと思いますが) さて、拙作『王者の征途』では曹操の荊州侵攻を扱います。正史準拠・・・と言えるかどうかは 相当怪しいですが、皆様がお楽しみいただけるように努力したいと思います。 次の第一部は明後日に載せる予定です。
15:雑号将軍 2007/02/25(日) 22:09 お久しぶりです。雑号将軍と申す者です。久々に感想などを…。 >7th様 諸葛喬ですね。彼(彼女)はなんというのか諸葛瑾の生き写しのような印象を持ってたりします。 なにはともあれ、蜀の中ではかなりの人物だった故に悲しいことです。 >冷霊様 冷苞将軍は自分の中ではすごい強い印象があります。三國志シリーズで常に先陣を切って敵陣に突っ込んでいます。 まあ、自分が常に劉璋を使うからかもしれませんけど。もし冷苞が劉備軍にいたとしたらと時々考えたりする雑号将軍であります。 >韓芳様 呂将軍、格好良いですなあ。そういえば、高順とかって呂布はどこでであったんでしょうね。張遼は丁原繋がりだった気がしますが…。 あと、韓芳様の中では呂将軍の流派って決まっているのでしょうか?やはり我流なのでしょうか?
16:彩鳳 2007/02/25(日) 23:24 『王者の征途』 第一章 『高まるうねり』 その日、曹操を中心とする「嵐を起こす者」たちは鄴棟―冀州学院校区の中枢―の連合生徒会総本部にいた。 鄴棟は冀州学院最大の校舎で、かつては袁紹が、現在は曹操が本拠地として活用している巨大校舎だ。黄巾革命の大乱で一度激しく荒廃したが、革命から二年が経った今では以前の賑わいを取り戻し、蒼天学園でも有数の大校舎となっている。 その巨大校舎の廊下に響く、間の抜けた歌。 「しぃ〜っぷう(疾風)万里〜♪ れぇ〜んごう(連合)会〜♪ め〜ぇざす〜ぅ(目指す)は湖南♪ さぁ〜いそ〜ぉ(柴桑)棟〜♪」 「・・・・・・何歌ってんのさ」 聞いたら誰もが沈黙すること請け合いの『ハ○イ大海戦』の替え歌に、生徒会執行部長・夏候惇は顔をしかめた。曹操の傍という位置関係上、脱力しつつも仕方なくツッこんだのだが、 (こんなのにウケる奴がいたら、相当変な奴だ。絶対に) と心の中で思っている。廊下に二人だけしかいないのは、不幸中の幸いだ。だが、当の曹操は彼女の胸中を知ってか知らずか、 「え? 南征軍の賛歌。さっき思いついたの」 と言う始末。 「とりあえず、アンタの発想力に敬意を表することにするよ・・・」 事ここに至っては、もはや多くを語る必要はあるまい。一体何を言えというのか。「馬鹿と天才は紙一重」と先人たちは言うが、その通りだとつくづく痛感させられる。どちらも結局は「変人」だ。 古くからの付き合いではあるが、こういう“変人モード”の時の曹操は、剣道一直線の夏候惇にはどうにも扱いにくい相手である。その天真爛漫さが、彼女の幼げな容姿に似合っているのが救いといえば救いか。 (まったく、昔から複雑な奴なのは分かってるんだけど。どうもやりづらい・・・) 夏候惇の思考を遮るように、曹操が口を開く。 「も〜さっきから黙っちゃって。どうせ見た目と実年齢が、とか思ってんでしょ?」 曹操が鋭いのは昔からだが、こういうところで得意技を発揮するのは勘弁して欲しいものだ。まあ、古い付き合いだけに仕方ないが。諦めたように夏候惇は口を開く。 「まあね。私や幹部連中の前ならまだいいけど、下級生たちの前ではやめときな。あんたのファンが泣く」 「も〜元譲は心配しすぎだよ! そんなことするワケないのに〜」 そうやって無駄にムクれる姿は可愛らしいのだが、それはさて置き確かに曹操がそんなバカをやらかす心配は無いだろう。・・・・・・酒が回ったりしない限りは。まあ、年末年始はまだまだ先だ。もっとも、これから始まる大攻勢が成功裏に終われば、祝勝会で暴走する危険性は―――。 考えるのはやめにしよう。夏候惇は自分の思考を打ち消した。これから始まる戦の後のことなど、戦の前から想像するべきではない。何が起こるかわからないのが戦だ。自分たちが官渡で証明したではないか。 「まあ、ここまで来たんだから、今は作戦に集中しないとね」 「・・・・・・そうだね」 先ほどのムクれた姿から、打って変わった曹操の一言。 切り替えの早さもさることながら、こっちの考えを見透かしたかのように「作戦に集中しないと」ときた。 (これが孟徳の覇者たる所以、ってことなの・・・・・・かな?) 曹操の奇才(鬼才)ぶりは重々承知している夏候惇だが、事あるごとにこの古馴染みに振り回されてしまう。 (困った奴だけど、なんだかんだで敵わないんだよなぁ。やれやれ) そう思いつつも、不思議と不快感は感じずにいる夏候惇だった。結局のところ、彼女はこの騒々しい古馴染みを気に入っているのだ。 曹操と夏候惇が入室した大会議室には、既に荊州侵攻作戦の最終打ち合わせのため、多くの連合会幹部たちが集合していた。 「それでは、全員揃いましたので、南方作戦の最終確認を始めたいと思います」 口を開いたのはドレードマークのストールが印象的な議長役の荀掾B彼女は曹操の参謀長的存在だ。 同時に、情報参謀役の賈詡がノートPC直結の大型スクリーンを操作し、スクリーンに大型の地図が映し出された。続いて荀揩ェ皆に作戦内容の確認を促すべく、作戦の概要を話し始める。 10月初旬に発動される「ホッホヴァッサー」(Hoch Wasser=高潮作戦)。これが曹操と彼女を支える強力参謀陣が創り上げた南方侵攻作戦の名称である。 作戦は3つの段階に分かれているが、大まかな流れは簡単だ。 荊州校区と司隷校区及び豫州校区の境界部から一挙に大兵力をもって南下し、荊州校区の中枢である襄陽棟・江陵棟を制圧するまでが第一段階。 そして、旧劉表(現劉N)陣営の取り込みを行い、同時に占領地域の安定化を図るのが第二段階。 然るべき足場固めを行った後、長湖に面した江陵棟を拠点にして水陸両面から東進し、孫権率いる長湖部を屈服させるのが第三段階である。 この作戦が成功すれば、連合生徒会に敵対する主な勢力は一掃され、残る勢力は馬騰率いる涼州校区の陸上連合会と、劉璋が生徒会長を務める益州校区の二つとなる。 どちらの勢力も、追い詰められれば激しく抵抗する事が予測される。しかし、荊州・揚州校区を併合した連合会の大兵力を相手にすれば勝てないと参謀たちは考えている。第二次大戦時の東部戦線が良い例だ。 東部戦線の戦いは、独ソ両軍合わせて600万以上(クルスク戦時は1000万以上)の将兵が激突した大規模なものであった。ドイツ軍は1941年の独ソ開戦までにポーランド・フランス・バルカン半島での戦闘を経験しており、将兵たちの戦闘能力はソ連赤軍を遥かに超えていた。事実、開戦直後のドイツ軍は圧倒的な勢いで進撃している。しかし、数で勝る赤軍に激しい抵抗と消耗を強いられ、1943年夏のツィタデル作戦(城塞作戦=クルスク大会戦)以降は完全に戦争の主導権を失うことになる。劣勢に立たされたドイツ軍はなおも自軍を上回る損害を赤軍に与え続けたが、雲霞のごとき赤軍の前に補充が追いつかずに戦力差は広がり、戦線は後退する一方であった。そして1945年5月の終戦により、彼らの祖国は東西分割の憂き目に遭ったのである。 ドイツ軍の末路が良い教訓である。ゆえに参謀たちの考えは一つの点で一致していた。物量で勝る以上、多少てこずっても物量に限界のある相手に負けることは無い。最終的には勝者の座を獲得できる、と。もちろん、西方へ進出するのは荊州・揚州の両校区を押さえてからの話だが、蒼天学園を制覇するまでの道のりを考えるのが戦略に携わる参謀たちの仕事である。この辺りは目の前の仕事(戦闘)に集中する夏候惇のような軍人肌の人間たちと決定的に異なる部分だと言えよう。
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