下
サンホラ雑談スレ
73:★玉川雄一 2004/06/14(月) 02:11 あ、俺も時間差だ。惟新さんの分についてはまた今度。
74:岡本 2004/06/14(月) 07:55 いつものように私論を書いてみましたが、あまりにも語調がきつすぎましたのでちょっと文体を変えてみました。 かなり毒がありますが、ネタと思ってください。
75:岡本 2004/06/14(月) 07:55 ◆ガリアにおける“死神”アーベルジュの一考察◆ 〜トマス・マロリー〜(註) [1] さて、この時代の戦争の立役者であったアーベルジュこと“死神”アルヴァレスであるが、その軍事的才能とそれを制御した人格はいかなるものであったのか?彼が歴史に及ぼした影響を慮れば、これは論者としては無視すべからざる問題と思われる。 彼の短くも猛々しい人生は、故郷ベルガを滅ぼされた後にフランドル帝国の常勝将軍として周辺諸国の恐怖の的となった“死神”としての前半生と、ローザ女王の誘いに応じブリタニア王国に“単身”亡命し終戦へと尽力した“薔薇の騎士”としての後半生に分けられる。ある意味、前後半で人格が様変わりしたような観を受ける。 そもそも彼は生地たるベルガにおいて如何なる身分にあったのであろうか?彼はベルガにて平民であったのであろうか、それとも支配階級にあったのであろうか?羞恥に耐えぬことであるが、論者は蒙昧にして正確な情報を得ていない。フランドル王国軍の一部隊長として彼がその復讐の暗い願望を初めて満たしたオッフェンべルグの戦いにおいて、フランドル王国軍の一部隊長として登場する。この戦いの活躍によって皇帝に引き立てられるようになったとするならば、故国を崩壊させられ裸一貫で傭兵としての戦歴を重ねてきた平民であろうと、国をなくし客将として異国で冷や飯を食ってきた貴族であろうと問題にはならない。 重大な問題は、門閥や後見といった集団・閥としての力を持ちえぬ人間が単に一個の武勇のみで帝国の方面軍軍団長にまで付けるのであろうかということである。平民であるにしろ貴族であるにしろ苛烈な戦歴を潜り抜ける上で、戦場にて信用できる手足は必須であるし、そういった集団戦力を個人でもっていることが国内の政治的発言力の上昇につながることを考えると、単なる帝国の一ベルガ人にすぎなかったとする伝承は眉に唾して聞くべきであり、はっきりいって論者には“通常ならば”理解しかねるといえる。 が、別の可能性を考慮すれば、これが事実であることも不可能ではない。彼はそう見ていなかったとはいえ、彼には絶大な後見があったとするならば。対象はフランドル帝国の皇帝、キルデベルト6世である。ここで彼の出自が問題となる。平民であるならば、武勇のみがとりえで部下を用いる類の将才はかけらも無い人物を“便利な手駒”と看做すいわれが無い。個人的武勇のみで単なる騎士ならいざ知らず将軍としてやっていけるのは貴族階級のみ。それもフランドル国内の貴族の利権争いから遠い位置にあって国王の覚えもめでたいとなると、王族と遠くはあったろうが血縁関係にあったベルガの王族ないし地方領主という可能性が最も高い。
76:岡本 2004/06/14(月) 07:56 [2] ここで問題となる“アルヴァレスには将才がない”の根拠であるが、これは彼のカスティーリャ遠征における歴史的勝利、“アラゴン平原の戦い”で明示される。5000の騎兵を率いピレーネ山脈を越えた後、カスティーリャ王国北方防衛軍12000を粉砕した戦いである。 この論説を執筆するに当たり、論者はあらためてこの伝承を耳にしたのであるが、淡々と述べることでこの戦いの描写を叙事詩として吟ずる効果を最大に高めた女流詩人とは対照的に、英雄を演じた詩人のほうは“常勝将軍”を“最強の戦士”として演じたあたり、英雄譚を吟じるにはいささか役不足であったといえる。だが、あるいはこれが“英雄”の本来の姿であったのやもしれない。古来、ピレーネ山脈越えはそれだけでも一大軍事計画である。物資の調達、兵員・兵力の状況維持、麓で待ち構えているであろう敵軍の情報等、総指揮官に要求される能力は到底一個の戦士で賄いきれるものでない。それらの条件を超ええたとしても会戦時には人馬共に疲労し本来の能力は到底出しえず、ましてや火事場の糞力を期待することもかなわなかったことはいうまでもない。ましてや敵の兵数は倍以上である。ここにおいてアーベルジュのなした軍事指導は唯一つ。自身先頭に立っての騎馬突撃である。まったく大した将帥ぶりである。言うまでもないが、騎馬突撃は歩兵・弓兵の援護があって初めて効果のある戦術である。また遊牧民族でもない以上、騎兵のみの長期の軍事行動は(輜重を度外視する短期と違い)返って歩兵よりも多くの物資を必要とする。山越えにもっとも適したのは歩兵であり馬は損害が多い動物であるが、以後のカスティーリャ平定において神出鬼没の用兵で数に勝るカスティーリャ王国軍を各個撃破し、初期の5000の騎兵戦力のみでカスティーリャを滅ぼしたとされる以上、疲弊した騎兵の突撃のみで勝利して見せたというのである。何のことはない、詩人達は予備兵力である歩兵、それもおそらく少なく見積もっても2,3万の歩兵を勘定にいれなかったのである。単にこれらが“騎兵隊長”アルヴァレスの直接の指揮下に無かったという理由で。これらの歩兵が数を利して12000を押さえ込んでいる間に、突撃しか知らない迷指揮官の騎兵が突っ込んだというべきであろう。騎兵の特質である機動力と意外に弱い防御力に目をつけず、その絶大な打撃力にのみ見せられた指揮官は洋の東西を問わず枚挙に暇が無い。アルヴァレスも指揮官突撃あるのみという“見事な”戦術思想から考えると、絶大な打撃力しか頭に無かったといえよう。そんな人物が王国の軍団長になれた理由は、王族の血縁者であったからというのが大きい理由であろう。また、元へ戻るがそのような人物の軍事活動である以上、騎馬数千のみはありえない。伝承では彼は“ベルガ再興のために(皇帝の口車に乗って)カスティーリャを滅ぼした”と後悔したとされるが、何のことはない。彼は(自覚していなかったとはいえ皇帝の威を借りていた)紛れもなくフランドル帝国の中心軍だったのだ。
77:岡本 2004/06/14(月) 07:57 [3] さて、ここで彼の後半生の入り口となるブリタニア王国への亡命に関して考察してみる。となると、“奇跡”と称されるローザ女王とアルヴァレスの邂逅そして、軍団長の単独亡命自体も検証する必要が出てくる。 ブリタニア攻略において第3軍団が、先行した第1・第2軍団を大きく引き離してあまりにも北方に異常に侵入した敵中上陸がそもそも疑わしくなってくる。また、彼が亡命したあと、指揮官不在とはいえその時点では戦力もまばらな敵中にいた第3軍団が指揮官代行を立てての戦闘行動の続行もせず、また戦力を回復して第1・第2軍団を南端まで追い下げたブリタニア軍によって壊滅されもせずに無事引き上げたというのはかなりキナ臭くないであろうか?可能性はいくつか考えられるが、一つの案としては流石に今回は兵力不足もあって被支配地域から兵を集めた第3軍団の幹部連がローザ女王と密かに交渉し、内応したと同時にその保障として“ベルガの復讐鬼”でありながらフランドルの鬼子でもあってそれなりの外交カードである無能指揮官をブリタニアに売ったと考えるのが自然でなかろうか。ブリタニアの交渉人はローザ女王本人、第3軍団側は併合されたプロイツェンの騎士・ゲーフェンバウアーである。そして、奇跡の邂逅は脚本・主演・ローザ女王、演技指導・ゲーフェンバウアーの一本釣り政治劇いや茶番劇であった可能性が高い。ローザ女王自身かなりしたたかであり、彼女が絶対であるブリタニア王国の性格上、戦争勝利のため村ひとつ演出のためにつぶすのは必要経費におさまったであろう。アルヴァレスの人格に関しては、子供のまま大人になったような集団の統率者としては余りにも無責任・無軌道な点が際立っており普段から大した運営上とるべき対応をしていなかったのは明白である。彼一人欠けたところで軍団の運行には何の支障も無かったであろう。そうすると、第1・第2軍団は押しているどころかブリタニア軍の遅滞戦術に引っかかって内地に引き込まれていたと考えるほうが理にかなっている。
78:岡本 2004/06/14(月) 07:57 [4] 吟遊詩人の語りによれば、彼は亡命後“多を生かした”とされる。が、他を寄せ付けぬ個人的武勇に依存した“常勝”将軍としての評があったとしても、統率者・軍略家あるいは政務家・交渉者のいずれにおいても疑問の余地が有り余る人間が、果たして亡命後の高々3年間の“善行”でこれまでの10年近くにわたって全世界に振りまいてきた“他の追随を許さぬ暴虐”の爪痕を拭い去ることができうるものであろうか? また、彼の勇名を頼りにガリア全土から反帝国の亡命者がブリタニアに集ったというが、それこそ彼の“常勝”伝説の肥やしとしてベルガ以外のガリアの諸国は彼の手によって打ちのめされフランドル帝国の頸木に繋がれたといってよい。王族の縁者であれば言うまでもないし、フランドル譜代の将でなければなおのことフランドルの“将帥”よりフランドルの“走狗”としての認識の方が強いことは疑いの余地は無い。となれば、ブリタニアの反抗と反フランドルの運動の原動力は、信頼関係や政治的権力など薬にもしたくないようなフランドル王家の“ベルガの脳筋野蛮人”でなく、彼を手懐け引き抜いたしたたかな薔薇の女王に対する各諸国の期待感であったとするほうが自然であろう。 そして、3年後、休戦会議が成り立ちアーベルジュは御用済みになった。ローザ女王は3年前の密約の相手であるゲーフェンバウアーの手を借り、アーベルジュを今度は物理的に退場してもらうことにしたが、口封じもかねてパーシヴァルにゲーフェンバウアーをも殺させたのが裏目に出た。彼がガリア大陸において裏の世界ではあるが反フランドル帝国運動の重要人物であったため、ローザ女王の意図を他の反フランドル勢力の重鎮が疑ったのである。結局、講和条約締結はならず、ローザ女王も策士策に溺れる結果となり、戦乱終結にはさらに数年を要するようになった…。 畢竟、アーベルジュ自身は復讐と故国再興の念を根幹とした英雄といわれるが、その余りに無軌道な行動から考えるに、とりえとする個人的武勇を振り回すことしか頭にない匹夫でありながら神々の一方ならぬ恩寵で悲劇を糧とした“常勝”将軍に祭り上げられた哀れなる道化としての前半生に、したたかな薔薇の女王に外交・軍事の手札として操られる傀儡としての後半生にすぎないと評するのは酷にすぎるであろうか。 “善を百日行えど今だ足りず、悪を一日行えばなお余りあり”とは東洋の言い回しであるが、思うにアーベルジュはその悲惨な前半生を埋め合わせるかのようにこの世界を創造した神々から一個人の身をはるかに超えた恩寵を与えられていたに相違あるまい。この世界を創造した幾柱かの神々は、音曲・吟詠においては彼のアポロン・アテナに比すことも吝かではないが、蓋し人の営みや英雄の創造そして時代の潮流の制御においては、今だ砂上に箱庭を拵えて悦に浸る童たちと差して変わらぬといえようか。 註)論者であるトマス・マロリーは“アーサー王の死”なる書物を著した異世界の人物である。ナイト爵は持っていたものの、あらゆる悪事を働き幾度と無く投獄された問題人物でもあったという。
79:★ぐっこ 2004/06/14(月) 23:57 (;´Д`)…。コメントハサシヒカエサセテイタダキマス。ブッチャケ ココ ファンスレナンデスガ。
80:★ぐっこ 2004/06/15(火) 00:39 というわけにもいくまいか。異説長文乙であります。 >英雄を演じた詩人のほうは(中略)いささか役不足であったといえる。 ワロタ。確かに、予言者ノアのアゴが外れるほどの高笑いやら何やら、そっちの方の声が 印象深いですよねえ…。つうか、じまんぐさんの声といえば「檻の中の花」のナレーション がインパクト強すぎたためか、ロン毛の丸眼鏡っぽい胡散臭い男の顔が浮かぶ… >アルヴァレスの庇護者は国王? これ激しく同意。彼の元の身分はどうあれ、異国で身を立てるには、よほどの後ろ盾が無いと 不可能なんですよねえ…。(私ゃ「アーベルジュの戦い」の歌詞から、彼は平民か、せいぜい 地方小領主のお坊ちゃんくらいかな、と思ってましたが) こちらは考察に書くつもりでしたが、キルデベルト6世の即位を巡って一波乱あり、アルヴァレスは そのへんの内乱で王の目にとまったのではないか、と。フランドル王国はガリアのド真ん中ですし、 たえず国境紛争なり異民族の侵入なりに悩まされてたでしょうけど、地方領主の分離独立騒ぎなんかが あってもおかしくなさそうですし…。 >カ ス ティ リ ヤ >>40で転載したネタスレタイの 10:たった五千でカスティーリャを征服できっかよ その7 (574) を思い出してワロタ。きっとこういう考察が飛び交ってるのかと。 さて、「詩人達」を代表して言うならば、騎兵のみ五千+数万の歩兵輜重、というよりもむしろ、 騎兵含めた五千、という小規模の部隊でなかったか、と思います。長駆しての奇襲攻撃の可能性を考えると、 ゾロゾロ軍団が移動した、というよりは、軽装の部隊がなだれ込んだ、という印象の方が強いですので。 しかし…確かに五千の兵でウロチョロしただけで一国は滅びないでしょうねえ(^_^;) 前哨戦として北方防衛駐留部隊を撃破して国境を制圧し、本国の増援を待って再度進軍、主力同士の決戦に挑む、 といったところでしょうか。 >アーベルジュの将才 マロリー氏に反論するならば、形はどうであれ数カ国を攻め滅ぼした将軍の実績を全て無視して、個人的武勇に 頼っているからというただ一点のみで愚将扱いするのは、ちと論が行き過ぎではないかと。国王やら宰相クラス やらでも陣頭指揮してる連中もいることですし。 >>71 ( ゚Д゚)そうそれ! アルベール・アルヴァレス少年の成長物語、なんでしょうね。これ。 そもそも「アーベルジュの戦い」じたいが、「少年よ 臆することなく進め」みたいな 主題ですし。 ただ彼の場合、「絶望の果てに辿り着いた若き騎士」とか「暗い過去に潰されそうな青年」を演出する 背負っている重さが、ローザと出会うあたりでは大分稀薄になってるんですよねえ…。なんというか、 普通の青年になっちゃってるかんじ。プロイツェン攻略あたりだと、まだ狂気というか、凄みのある騎士だった のでしょうけど。
81:那御 2004/06/16(水) 01:06 凄まじい考察が繰り広げられてて、付け入る隙が…w >騎兵 騎兵の機動力を存分に生かした王朝と言えば、元。 実際当時のヨーロッパと元の騎馬の使い方を比較すれば天と地ほどの差があったでしょうし。 まぁ、仮にですが、アルヴァレス直属の騎兵にそれだけの機動力があれば、 一国を滅ぼすこともあるいは・・・ でもアルヴァレスは専ら個人的武勇の人でしたねOTL >成長物語 あー、それよく判ります。 一種の小説的な要素があるというか・・・彼の心の変化が描かれてますよね。 ローザとの出会いで、彼の心及び行動が、それまでと180度近く変わっちゃうわけですが、 それが彼の魅力を半減してる・・・てぇのは言いすぎでしょうか?
82:惟新 2004/06/16(水) 01:19 おお〜また大作ですね〜! もう少し余裕が出来ましたらゆっくり読ませていただきます。 あ、細かいですが、役不足を力不足の意味で使うのは間違いですよ〜 >左平(仮名)様 音楽の方はお聞きになられました? http://www.akibaoo.com/ichioshi/soundhorizone/ ↑でならまだ販売しておりますので、もし興味がおありでしたら是非。 >ぐっこ様 そうですね〜せっかくですから、アルヴァレスの遍歴を分析してみますね。 まず、少年時代。「その身朽ち果てようとも、守りたいものがあった…」 に代表されるように、彼には既存の価値観に囚われる部分が強かったようです。 踏み込んでいえば、「お坊ちゃん」であった、と(実際に身分が高いかは関係ないです)。 戦士(騎士?)として育ったと仮定すれば、戦争に対する抵抗感は薄かったでしょう。 そして、その後の彼を見ても、彼は愛国心の強い人物であったことが伺えます。 そんな彼にとって最も拘るべきは過去。ここには「約束の丘」も絡みます。 さて、青年期。思いを胸に、彼は戦います。 敗れ去って後、彼が戦場で求めたのは、復讐心の発散。 最初に怒りをぶつけられた不幸な国はPreuzehn。 その後は自らのために諸国を征服しますが、そのうちに彼には変化が訪れます。 このタイプは批判精神が薄く、価値観が一度崩れてしまうと、非常に脆い面があります。 そうして崩れていったのが、成熟期。あえてこの表現を使います。 「私にはどうしても取り戻したい場所があったのだ」 この言葉は中心としては約束の丘を指しますが、外辺には故郷そのものを含んでいます。 その思い出のために彼は恐るべき銀色の死神となりますが、 成熟していくにつれ、彼は気付いたはずです。 自分が行ってきた戦いは志のためではなく、 怒りを発散し、また、保身を図るためだったのではないか。 悲劇を振り撒きながら彼が求めた夢は、そもそもその代償に見合うものなのだろうか。 その疑問を押し殺して戦ううちに、彼の内なる正義への信仰は磨耗します。 それは彼の精力源でした。復讐鬼になりきれぬ、不幸。 やがて彼は虚無感に飲み込まれ、そうして、彼は「大人」になっていったのです。 次は変革のときでした。GefenbauerやRoseに出会い、彼は変わります。 まず前者との出会いで、彼は自分の過去と向き合わされます。 そんな彼に新しい光を示してくれたのは、後者でした。 ――悲劇を終わらせ、新しい歴史を作る―― 彼女の独創に満ちた世界は、さぞや輝かしいものに見えたことでしょう。 そしておそらく彼は、彼女の志に殉ずることを生きる意味としたのではないでしょうか。 いずれくるであろう、悲劇の瞬間を知りながら。 それでも敵の手で討たれたのは、ある意味では、幸せだったのかもしれませんね。
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