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サンホラ雑談スレ
83:惟新2004/06/16(水) 15:11
ちょっと訂正。少年期4行目、「戦士〜」のくだりは
「戦士(騎士?)として育ったらしく、戦争に対する抵抗感も薄かったようです。」
もう一度流れを辿ります。
・無邪気に正義を信じた少年期
・愛のために戦い、敗れ、復讐を誓い、怒りを撒き散らした青年期
・怒りが鎮まり、自らの罪深さに気付いていく成熟期
青年期までは既存の価値観に囚われ続け、成熟期ではそれが壊れます。
しかしそれと向き合うことが出来なかった彼は、
「約束の丘」へ帰ることを唯一つの希望として生きます。
その虚しさは彼自身、よくわかっていたことでしょう。
わかっていながら、それでもなお、彼はそれにすがらざるをえなかったのです。
このタイプの人間は、基本的に善良です。
批判精神は薄く、善を信じ、自ら価値を創造することは苦手です。
彼は復讐鬼になり切れず、かといって、新しい道を切り開くこともできなかったのです。
・変革期
過去と向き合った彼は、Roseの言葉によって、過去から一応の解放をされます。
この変革期ではじめて、彼は「自らの理性で自らの道を選択した」。
一連の流れの中で描かれたのは、静かなる絶望です。
無批判の正義、それによって燃やされる復讐心と怒り。
その手は血にまみれ、全身に浴びた返り血は、彼の心をゆっくりと侵していきます。
しかし彼の善良さは、その侵食にささやかな抵抗を示しました。
その葛藤は彼の精力を消費し、心に混沌をもたらし。
打ち続くその心中の戦乱に、やがて彼は倦みだすのです。
それは、静かなる絶望。多くの人はこうして、「大人」になっていきます。
この絶望は派手な物語ではなく、一見、文学的テーマとして魅力あるものではありません。
むしろ誰の心の中にもある、リアリティのある青年像が、そこにあります。
Revoさんのこれまでの作品を鑑みるに、これはあえて選択したものと思われます。
信長や曹操、フェデリコ2世のように価値を創造する英雄や、
謙信や関羽、リチャード1世のように信念に燃え続ける英雄を描こうと思えば、
おそらく、たやすく出来たに違いありません。
また、これまでの諸作品において試みられた一つに、「表層的で派手な絶望を
提示しつつ、どこかに光を点在させる」というものがありました。
それらを考慮すると、今回は、なかなか難しい問題に取り組んだといえるでしょう。
ですが、この静かなニヒリズムは、人類永遠のテーマというべきものの一つです。
これは静かな絶望に飲まれかけながら新しく生まれ変われた、一人の男の物語です。
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