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私的エリ組考察
1:惟新 2007/11/11(日) 10:55:27 ID:z+Pg/kAk (2005年04月20日 05時26分46秒) それではチラシの裏を利用してみるヽ(・∀・)ノ 全体としての大まかな考察をしてみます。 1、side:E(楽園パート) - ※【】内の数字は、参照トラックを指します。 仮面の男には、お金が必要でした。【7】 そのためには、誘拐、強盗、何でもやりました。 しかしそれは、なぜなのでしょうか? 彼には娘がいたようです。 その娘は、とても病弱でした。【1】 咳をする度に胸が痛むような、そんな状態でした。 仮面の男は、そんな娘に希望を与えるように、 苦しみのない「楽園」を語っていたようです。 ですが、彼は娘の誕生日を前に、恨みを買ったため刺されてしまいます。【7】 瀕死になりながらも、仮面の男は家へと帰ろうとします。【1】 雪原に血を滴らせながら。しかし、扉に手を掛けた瞬間、彼は斃れます。 そして…彼の現実は朽ち果てる…… 娘(エル)は、それを受け止められなかったのでしょうか。 【1】 そして…彼女の現実は砕け散る…… 彼女は精神の現実性を失います。 父に語られてきたであろう、楽園への興味。 一人語りを続け、彼女は夢想へと落ちていくのです。 そのエルの世界では、ついに楽園への扉が開かれます。【3】 そしてその世界で、仮面の男は楽園を求める傷ついた人々を引き連れ、 笛を吹きながら、世界の果てを目指して『楽園パレード』を続けます。【9】 これも、エルが生前の仮面の男に聞いた話なのでしょうか。 こうして人々は、苦しみのない、幸せな楽園へと行くのです。 しかし、娘さんには、「泣き声」が聞こえてきます。【11】 そんなはずはないわ、だって楽園だもの。 そう思いながらも、しかし、エルは、「知っていたのです」。 2、side:A(奈落パート) - それは、『楽園』のもう一つの姿、『奈落』。【11】 楽園を求め、果たせなかった女たち。【2,4,6,8,10】 彼女たちを、仮面の男の妄念は『楽園パレード』と称して連れて行きます。【9】 その度に、『楽園』(実態は『奈落』)の扉が開かれる度に、 仮面の男はエルの元を訪れていたようでもあります。【44】 3、ループ構造 - まず、『楽園パレード』における、仮面の男アビスによる永遠が一つ。 もう一つは、『エルの肖像』がループ構造の一端を担っていると推察します。 まず、あの肖像画は過去において仮面の男が娘エルに贈ったものだと考えます。 というのも。 まず、『エルの天秤』のあと、『→side:E→』でエルが肖像画を受け取り、自ら署名したのなら、 『私、お誕生日プレゼントには絵本がいいと思います』 という一人語りは出てこないと思うからです。 また、あれが仮面の男の少年時代に限定された場合、 幼い筆跡の署名 妙に歪な題名は あるいは ――そして…幾度目かの楽園の扉が開かれる…… 以下に描かれる文章の意味が不明になってしまいます。 この「以下の文章」は、この作品にある「ループ構造」を指し示しています。 同様の経験が仮面の男にもあったかもしれませんが、それだけに留まらず、 「エリス(次項参照)を求め見つけようとすることになる」少年を、 具体的に誰という指摘ではなく、描き出していると私は考えます。 それは、「第二の仮面の男」を生み出すという意味、あるいは、 『エリス』を奈落へと突き落とす、『A』(Adam)なのではないでしょうか。 4、『エリス』とは何か - 『エルの肖像』にあったように、男は『エル』(エリス)、すなわち 望む理想であり、己を拓く鍵穴であり、安住する楽園であり、得るところの女を 探し求めて生きます。 しかし、その『E』は、エデンは、すでに失われているのです。 理想は理想であり、決して手の届かない、幻想なのです。 それでもなお、男は『E』(エル)を求め続けます。 それは女視点である『→side:A→』の エルは生まれ エルは痛み エルは望みの果て 安らぎの眠りを求め 笑顔で堕ちてゆく… と繋がり、それは、『→side:E→』の …男の夢想は残酷な現実となり …少女の現実は幽玄な夢想となる …男の楽園は永遠の奈落となり …少女の奈落は束の間の楽園となる という形で叙述されているようです。 これがABYSSサイドの基本的な要点となります。 5、メタファーとしての楽園パート - この作品で描き出したかったものは、おそらく、 ――退廃へと至る幻想、背徳を紡ぎ続ける恋物語 なのでしょう。 それを、『エル』という名の少女、『ABYSS』という名の仮面の男を機軸に、 一種のおとぎ話の形態によって描き出そうとしているようです。 楽園パートにおいて、仮面の男は『理想の女性』を娘に仮託しています。 エルの母は、すでに奈落へと突き落とされたのでしょう。 『私は、生涯彼女を愛することはないだろう』 この一連の語りは、おそらく、そのような意味合いではないでしょうか。 娘エリス(Eve)に、甘い楽園を囁く、アビス(Adam)。 しかし、アビス(Adam)の死によって物語は急転します。 エリス(Eve)に希望を与えた『楽園』は、『束の間の楽園』に過ぎなかったのです。 …男の夢想は残酷な現実となり …少女の現実は幽玄な夢想となる …男の楽園は永遠の奈落となり …少女の奈落は束の間の楽園となる 病篤い娘を救うという仮面の男の『夢想』は、それゆえに迎えた死という『残酷な現実』となる。 病篤い『現実』に苦しむ少女は、苦しみのない『楽園』という幽玄な夢想を抱く。 仮面の男の語る『楽園』は、少女の、父の死という現実を受け止められない『奈落』となる。 少女の堕ちた『奈落』は、一連の物語に描かれる、『束の間の楽園』(『エルの楽園』)となる。 4項にて論述したように、これらは奈落パートにおいて、 具体的な恋物語(ロマンス)として描かれていきます。 原罪を背負った人間という存在は、悲しい哉、それを永遠に繰り返していくのです。 その奈落パートに関しては、次回に書いてみます。 さあて、Sacrificeをどう受け止めたものか(^_^;)
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