下
【SS】Lostネタ〜永遠の少年と水底の少女篇。
1:東唯人。 2007/11/11(日) 13:22:59 ID:z+Pg/kAk (2005年04月21日 15時26分19秒) 穢れない少年と、水底で嘆く少女の囁き。 母なる大地に還れないモノが、水底さえ拒絶して<彼の世界>へと誘われてしまったあとの物語……。 「わたしは……絶対にアナタを赦すことが出来ない……」 柔らかな金色の髪を揺らし、激情を隠しきれないまま、少女が咽ぶように小さな声で漏らす。 黒衣を身に纏ったその少年は、人ならざる色の肌と髪を彼女に向け、囁くように彼女に言った。 「―――それは、キミが無謀だからだろう? ボクは、唯、のうのうと現実を生きている奴らに最後の審判を下すだけさ」 彼女の彼に対する憎悪の念は沸々と燃え滾って、彼女の表情を激情で多い尽くすが、彼の表情は、穏やかでいて、何一つ感じていないようである。 「愚弄、罵倒、蹂躙、殺戮……。ボクはそれらの行為に逃げ、それらのことを無意識のうちにしてしまっている彼らを苦しめる為にいる。逃げても逃げても……一度はボクという存在を受け入れてしまったから……ボクは彼らがこの世界を絶ち、<常世と幽冥、冥府の底>へと堕ちて逝くまで、此処に存在し続ける」 ゆっくりと彼の言葉を噛締めるように少女はその言葉を聞いた。彼が言い終わるや否や、彼女は彼に向けて言った。 「わたしが……これからも、止めてみせる。アナタを、アナタという<喪失>を受け入れないよう……」 彼は彼女を見つめていた褐色の瞳をゆっくりと閉じて、彼女に背を向けた。 「笑止だね。キミが一度だってボクの獲物を逃がすことが出来たことがあったかい?」 そして、笑った。 「ボクの事を止めたければ勝手に止めればいい。……止められればの話だけどね。キミがどんなに彼らに忠告しても、その言葉に意味は無く。……キミがあの水底でどんなに彼らに忠告しても、彼は絶対にボクのほうへと傾いていく」 彼の表情が完璧な笑みへと変わる過程に、その表情を見た彼女の表情が凍り付いていく。彼女の顔には、もう憎悪は映っていない。絶望の念しか残っていない。 「数多の記憶が在る限り、ボクは止まりはしないよ。……ねぇ、<救済の手を差し伸べし水底の少女>?」 「まさか、アナタは……!」 息を呑み、少女は少年に向って言った。獣の咆哮というには幼く、小鳥の確信というには愚か過ぎる。そのような声で、言った。 「そうだよ、ボクの言いたいことが分かった? キミはこの水底の狭い世界しかしならない。だから、キミはボクしか恐れようが無いんだ」 もう、少年が少女の顔を見ようとはしなかった。そして、歩き出した。 「此処は第三の地平線<忘却と喪失>なのだから」 黙々と聞きざるを得ない彼女は、唯其処に在る現実を受け入れようとした。 「もし、何れ彼らがキミを受け入れ、ボクが此処で消滅しても……」 彼が向う先は、第三の地平線を統べる地、忘レモノを抱く場所。 「彼らは第四の地平線<楽園と奈落の狭間>で揺れ続け散り逝き、枯れ果ててゆくだけなんだから……」 そして、少女は何処へ歩むのだろうか? 「彼と彼女がこの第三の地平線<忘却と喪失>の円盤を見向きもしなくとも、第四の地平線<楽園と奈落の狭間>で揺れることも在り得る……。彼らが第四の地平線を拒絶しようとも、其処には第五の地平線も、第六の地平線も存在するのだから……。だから、今は」 数少ない希望さえなく、遺された罪人達は何処へ流れるのだろう? 「喪うまで、逃がさない」 ―――ヒカリが、消えた。 無題 - あずまただひと。 (2005年04月21日 15時27分16秒)全く希望の無い話、しかも訳が分からない話、極めつけは持っている人が他に比べ少ないだろう『LOST』話です。
2:メイ 2007/11/11(日) 13:23:27 ID:z+Pg/kAk 無題 - (2005年07月04日 18時02分06秒) すばらしい『LOST』話読ませていただきましたっっ!!!! 『永遠の少年』の大ファンの私にとってこの小説は究極の癒しですっ!歓喜のあまり涙が・・・。
3:彩菜 2007/11/11(日) 13:24:18 ID:z+Pg/kAk Re: - (2007年01月06日 20時28分19秒) 素敵なお話、読ませて頂き有り難う御座います! 「永遠の少年」大好きなので、繰り返し読んでしまいましたっ。さて、もう一度読もうっ!
上
前
次
1-
新
書
写
板
AA
設
索
【SS】Lostネタ〜永遠の少年と水底の少女篇。 http://gukko.net/i0ch/test/read.cgi/rakugaki/1194754979/l50