Eiysion〜楽園幻想物語〜
2:蜜林檎2007/12/28(金) 20:24:32 ID:/JBO5+FU
      〜エル8歳〜
「ねぇ パパ。今年の誕生日も絵本がいいわ!」
「そうだね・・・ エル・・・」
父親は弱々しく答えた
この家にはもう金がなかった
「ごめんね エル もう絵本はかえないよ…」
「そう…」
悲しくうつむいた少女は勢い良く顔をあげた
「じゃあ 肖像画! 私の絵を描いて それがいいわ」
「エル…」
にこっと少女は笑顔になった
父親はこの笑顔が偽物の笑顔と知っていた
心と体は痛いに違いない
「今描いて ね お願い」

絵描き道具を一式そろえると父親は描き始めた
「ねえ パパ 6歳の時、良く『楽園へ行こう』ってよく言ってたね」
「あぁ…」
「ねぇ パパ その楽園ではどんな花が咲くの?」
「そうだね… 紅・黄・緑・水・菫色の花が綺麗じゃないか?」
「ねぇ パパ その楽園ではどんな鳥が歌うの?」
「紅い鳥が兄のために
 黄色の鳥が女のために
 緑の鳥が夫と子供のために
 水色の鳥が妹のために
 菫色の鳥が彼のために・・・」
「ねぇ パパ その楽園では体はもう痛くないの?」
「そうだね… 痛くないだろうね・・・」
「ねぇ パパ その楽園ではずっと一緒にいられるの?」
「あぁ… 一緒にいよう」
そんな質問攻めのなかでも父親は絵を描き続けていた
「素敵ね・・・ そんな楽園に行ってみたいわ…」

ふと、父親が少女がやけに静かだなと思い見てみた
そこには倒れていた少女がいた
「エル! エル! エル! エル!」
叫んだ が少女からの返事は来ない
「エル!」
近くの医師が寄ってきた



「もう 無理です 少女なりに頑張ったでしょう」
「・・・ そんな・・・ あぁ エリス・・ エル・・ なぜ私をおいていった・・・」
少女の肖像画がカタンと落ちた

       〜続く〜

あとがき的なもの

今回はエルの肖像が生まれる(描かれる?)時の物語を書いてみました
ちょっとエルの楽園[→side:E→]がちょっと混ざってますねw
力を入れたのは、鳥の所ですね
ABYSSのタイトルの色を見れば「そうか」と思うところが出てくるかもしれませんw
楽しんでいただけたら幸いですw
1-AA