下
★『宮城谷三国志』総合スレッド★
300:左平(仮名)2011/01/29(土) 09:57:28 ID:???0 [sage ]
続き。
膂力に富み、謙虚な人となりを評価されて貴臣となった朱拠にもその毒牙は及びました。無実の罪で、彼の部下を
獄死させたのみならず、その部下を憐れんで手厚く葬ったことを、悪意を持って讒言したのです。
このままではいけない。都を離れ、任地にあって軍を統率する陸遜・潘濬は、強い危機感を抱きます。特に潘濬の
憤りには凄まじいものがあり、刺し違える覚悟を持って、都に赴きます。
潘濬は、もとは劉備配下。荊州が孫権の手に落ちた後、劉備への恩義から隠遁していたのを、孫権が礼節を以て迎
えたといういきさつがあり、人一倍、不正を憎む激しさを持った人物です。
心中、やましいものがある呂壱は、潘濬を恐れ、接触を避けました。実際、二人が対面することがあれば、潘濬は
呂壱を斬ろうとしたことでしょう。しかし、これが呂壱の命取りとなりました。
呂壱は、所詮は虎の威を借る狐に過ぎません。彼が皇帝の側にいないとなれば、これまで罪に落される恐怖から口
をつぐんでいた者も、その口を開きます。
そうして、孫権は、初めて己の誤りに気付かされました。これでは、秦の二世皇帝(胡亥)と同じではないか、と。
ほどなく、呂壱は処刑されました。
追記:
今回のタイトルの「浮華」について。作中でこの言葉が使われているのは、曹爽一派に対してなのですが、何と
言うか…それだけでもないように思えます。
呂壱の栄華と破滅。この原因は、明らかに孫権にあります。「(政に)緩みが生じる」というのは、何も刑罰に
限ったことではありません。事の正否を見分け、適切な賞罰が行われることが肝心なわけです。
孫権は、呂壱の、見た目の厳しさにすっかり騙されていたわけですから、正否をみる眼に曇りがあったことは否
めないでしょう。華やか…かどうかはともかく、孫権もまた、浮ついていたのではないでしょうか。
しかし、どちらも、この後のことを想うと…。
上前次1-新書写板AA設索