★『宮城谷三国志』総合スレッド★
175:左平(仮名) 2006/04/13(木) 22:41AAS
今回のタイトルは「ギョウ【業β】県」。官渡の戦いから、はや数年が経っていますが、
今回は、ギョウ【業β】攻略がメインとなっています。

建安七年。曹操は、郷里であり、若い頃隠棲していたショウ【言焦】を訪れていました。
住民の歓待を受けにこやかな顔を見せつつも、心中にはふと一抹の寂しさがよぎります。
「あの頃描いていた未来とは違うかも知れないが…過去を振り返ることはできない」。
覇業に向けての歩みはおおむね順調ですが、苛烈な生の中にいる自分を、しかと認識して
います。
既に四十の半ばを過ぎました。知命(五十歳)ももうすぐ。おのずと自省に意識が向いた
のでしょう。

しかし、その時は呆気なく敗れます。袁紹が亡くなったのです。
その長子・袁譚は青州の、次子・袁熙は幽州の刺史として出されていましたから、父の許
にいた末子・袁尚がすんなりと跡を継ぐ格好にはなったのですが…とはいってもただでは
済みませんでした。
(袁譚・袁尚とも、器量は父にも劣っている様に描かれていますが、本作においては、袁
譚の方がまし、みたいな感じです。袁譚は自省に甘さがある【それ故、配下の質も低い】
のですが、父の跡を継いだ直後に袁尚がみせた冷酷さ【父の愛妾の家族を皆殺し】はない
ということ)
曹操という共通の敵がいながら、両者は相戦うことになります。まずは、勢力にまさる袁
尚の方から仕掛けました。ギョウ【業β】の堅い守りを頼りに、曹操に攻められるより先
に…というところなのでしょうが、決着はつきません。
袁譚は袁尚に近い逢紀を殺し、袁尚(というか審配)は袁譚に近い辛評を捕え…という具
合で、配下の人材をも消耗する有様。
当然、曹操がこのような好機を逃すはずもありません。ギョウ【業β】の攻略そのものは
けっこう時間がかかりましたが、その間に着々と周囲を攻略し、自身の勢力の涵養に努め
ています。
(程Gの胆の太さ、あの曹操がいったん思考停止して意見をそのまま受け入れる荀攸の頭
の回転の速さ。配下がその手腕を存分に振るえる環境づくりの能力の差は大きいですね)

袁譚が(本心ではないのは明らかながら)曹操に降ると、袁尚はいっそう苦境に立たされ
ます。ギョウ【業β】は孤立無援になり、蘇由、そして審栄が裏切ることで、ついに陥落
しました。
ここでの審配の最期は、どこかやるせないものがあります。前々回での彼は、「所与の条
件下で最善を尽くす」ってな感じでけっこう格好よく思ったのですが、今回は、どこか醜
悪な感じがしてなりませんでした。
審配自身は変わってはいないのでしょう。しかし…落城に際し、囚われている辛評(及び
一族)を殺したら、処刑されるにあたって自らの忠義を誇るついでに人を罵ったりすると
いうあたり、どこか哀しいものがあります。

なお、今回は劉備の動きについての言及はなし。ラストはあの美女の登場でした。
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