下
小説、書いてみました。
1:左平(仮名)2002/12/19(木) 23:18AAS
ここでスレッドたてて連載してもいいとの事でしたので、お言葉に甘えて、掲載してみようと思います。
現在、牛氏を主人公とした作品を考えているのですが、それを考えていると、どうしてもむくむくと湧きあがるものがありましたので…先に、別作品を掲載します。
6:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:40AAS
五、
董卓は、洛陽を出て、西に向かっていた。左手を向くと、はるか彼方には、急峻な山脈が広がっている。秦嶺山脈である。夏なので、さすがに冠雪は見えない。
「あれを越えるのはしんどいな…」
董卓は、北西に進路を取った。木々が少なくなり、徐々に風景が変わってゆくのが分かる。このまま進み続ければ、どこに着くのであろうか。
「まぁ、ゆっくり行くか…」
省27
7:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:42AAS
六、
はるか彼方に、煙が立ち昇っているのが見えた。
(国境か? もうすぐ西域に入るのか?)
一瞬、そう思った。…だが、違う様だ。第一、煙が薄い。あの煙では、狼煙にはなりそうもない。
(と、なれば…。近くに、集落があるのか…)
省43
8:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:45AAS
七、
「えっ? このあたりには、獲物となる動物がいないのですか?」
「いや、そういう事はないが…。一人で、この集落の全員に振る舞うだけの肉を用意するというのか?」
「えぇ。獲物がいるのでしたら」
「信じられんな」
省45
9:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:46AAS
八、
「いかがですか。これだけあれば、皆さんに肉を振る舞えるかと思いますが」
そう言って、仕留めた獲物を差し出すと、周囲から喚声が起こった。まさか、漢人の青年が、たった一人でこれだけの獲物を仕留めて見せるとは。しかも、たった五本の矢で。
「董卓殿。見事ですな」
族長も、ただただ驚くばかりであった。
省46
10:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:47AAS
九、
朝がきた。朝日がまぶしい。ちと飲みすぎたか。少し頭が痛い。
羌族の生業は、主に遊牧である。夜の間、狼などに襲われない様一箇所に集められていた羊が、一斉に放たれ、思い思いに草を食んでいる。
広い緑の草原に、白い毛に覆われた羊たちが点々と散らばっているその姿は、天をそのまま地上に移した様にも見える。
省32
11:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:50AAS
十、
「久しぶりですな、董卓殿。いや、漢の流儀で言えば、仲穎殿か」
「おぉ、あなたは! あの時の族長殿ではありませんか!」
「はは…。 まぁ、お元気で何よりじゃ。いかがお過ごしかな?」
「まぁ、おかげさまで。兄に田と牛を分けてもらいまして、何とか暮らしております」
省38
12:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:50AAS
十一、
「瑠よ。帰ったぞ」
族長は、帰って来るや、末娘の名を呼んだ。
「お帰りなさいませ、父さま」
「うむ。ところで、そなた、以前この集落にやって来た漢人の事を覚えておるか?」
省52
13:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:52AAS
十二、
「そんな、いきなり言われてもなぁ…。婚儀もせにゃならんし…」
豪放な董卓も、この申し出には驚いた。それにしても、羌族の女の大胆なことよ。漢人であれば、こうはいかないであろう。まぁ、悪い気はしないが。
そんな事を考えていると、いつの間にか馬から下りた瑠が、彼の体にしがみついてきた。彼女の胸が当たってくる。ますます驚いた董卓は、動けなくなった。
「あら、鹿を素手で締め上げた勇者さまが、女の私に締め上げられてるなんて」
省40
14:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:59AAS
十三、
光和七(西暦184)年。太平道が蜂起した。世にいう、黄巾の乱である。董卓も、その征討軍の一員として、前線に赴いていた。
既に五十に届こうかという年である。さすがに、自ら武器をとって戦うという事は少なくなっていた。とはいえ、ひとたび武器を手にとれば、そんじょそこらの兵どもには負けはしない。素手で鹿を締めた膂力は、なお健在であった。
眼前に、黄巾の賊の姿が見える。頭に黄色の布を巻いた群衆の姿は、あたかも黄河の奔流を思わせた。
省32
15:左平(仮名)2002/12/22(日) 01:07AAS
あまり構想を練らずに、勢いだけで書きましたので、ちょっと荒っぽいですが…。いかがでしょうか。
今回、これを書いたのには、二つの理由があります。
一つは、今回の宮城谷三国志に董卓が登場したもので、それに影響されて…(漢に虐げられる羌族に同情的というあたり)。
もう一つは、今考えている『牛氏』、第一部は牛輔を描く予定なのですが、どうしても岳父・董卓を抜きには考えられず、考えているうちに、董卓についての記述が長くなり、脱線しそうだったので、別の作品にしよう…と。
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