小説、書いてみました。
4:左平(仮名)2002/12/20(金) 00:14
三、

董卓は、自由奔放に育てられた。父にきつく叱られたという事は殆どない。その育てられ方は、兄の董擢とは対照的であった。董擢は、長男として厳しく育てられていたのである。普通なら、その事について、不平の一つも述べるところであろう。だが、そういう事はなかった。彼には、父の思いが分かっていたからである。厳しく育てられたとはいえ、彼もまた、父の愛情を強く感じていたのであった。
董擢の自制もあって、董家には穏やかな月日が流れた。それは、一家の顔を見れば分かる。特に、妻の満ち足りた顔は特筆すべきものであった。夫に愛されているという安らぎがそうさせるのであろう。
董擢が成人し、出仕するのを見届けると、君雅は引退した。惜しまれつつ引退したその姿は、実に清しいものであった。

省27
5:左平(仮名)2002/12/20(金) 00:15
四、

「卓よ。話がある」
「何でしょうか」
「私は、明日より再び出仕する」
「はい」
省50
6:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:40
五、

董卓は、洛陽を出て、西に向かっていた。左手を向くと、はるか彼方には、急峻な山脈が広がっている。秦嶺山脈である。夏なので、さすがに冠雪は見えない。
「あれを越えるのはしんどいな…」
董卓は、北西に進路を取った。木々が少なくなり、徐々に風景が変わってゆくのが分かる。このまま進み続ければ、どこに着くのであろうか。
「まぁ、ゆっくり行くか…」
省27
7:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:42
六、

はるか彼方に、煙が立ち昇っているのが見えた。
(国境か? もうすぐ西域に入るのか?)
一瞬、そう思った。…だが、違う様だ。第一、煙が薄い。あの煙では、狼煙にはなりそうもない。
(と、なれば…。近くに、集落があるのか…)
省43
8:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:45
七、

「えっ? このあたりには、獲物となる動物がいないのですか?」
「いや、そういう事はないが…。一人で、この集落の全員に振る舞うだけの肉を用意するというのか?」
「えぇ。獲物がいるのでしたら」
「信じられんな」
省45
9:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:46
八、

「いかがですか。これだけあれば、皆さんに肉を振る舞えるかと思いますが」
そう言って、仕留めた獲物を差し出すと、周囲から喚声が起こった。まさか、漢人の青年が、たった一人でこれだけの獲物を仕留めて見せるとは。しかも、たった五本の矢で。
「董卓殿。見事ですな」
族長も、ただただ驚くばかりであった。
省46
10:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:47
九、

朝がきた。朝日がまぶしい。ちと飲みすぎたか。少し頭が痛い。

羌族の生業は、主に遊牧である。夜の間、狼などに襲われない様一箇所に集められていた羊が、一斉に放たれ、思い思いに草を食んでいる。
広い緑の草原に、白い毛に覆われた羊たちが点々と散らばっているその姿は、天をそのまま地上に移した様にも見える。
省32
11:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:50
十、

「久しぶりですな、董卓殿。いや、漢の流儀で言えば、仲穎殿か」
「おぉ、あなたは! あの時の族長殿ではありませんか!」
「はは…。 まぁ、お元気で何よりじゃ。いかがお過ごしかな?」
「まぁ、おかげさまで。兄に田と牛を分けてもらいまして、何とか暮らしております」
省38
12:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:50
十一、

「瑠よ。帰ったぞ」
族長は、帰って来るや、末娘の名を呼んだ。
「お帰りなさいませ、父さま」
「うむ。ところで、そなた、以前この集落にやって来た漢人の事を覚えておるか?」
省52
13:左平(仮名)2002/12/22(日) 00:52
十二、

「そんな、いきなり言われてもなぁ…。婚儀もせにゃならんし…」
豪放な董卓も、この申し出には驚いた。それにしても、羌族の女の大胆なことよ。漢人であれば、こうはいかないであろう。まぁ、悪い気はしないが。
そんな事を考えていると、いつの間にか馬から下りた瑠が、彼の体にしがみついてきた。彼女の胸が当たってくる。ますます驚いた董卓は、動けなくなった。
「あら、鹿を素手で締め上げた勇者さまが、女の私に締め上げられてるなんて」
省40
1-AA