小説 『牛氏』 第一部
81:左平(仮名)2003/09/14(日) 22:20
(あいつ、また落ち込んでるのか?)
牛輔も、その様子には薄々気付いてはいたが、声をかけるのはためらわれた。その原因は、だいたい見当がつくからである。
(もう少し、様子を見ないとな)
ただ、しばらくすると、どうやら落ち着きを取り戻した様に見えた。
落ち着きを取り戻したのであれば、それで良い。それ以上は気にとめる事もなかったのであるが…

「殿。ちょっと気になる事があるのですが」
そう言ってきたのは、今や牛輔の腹心とも言うべき存在になった盈である。
以前の、テイ【氏+_】族との戦いの時もそうであるが、彼は何をどうやっているのか、実に多くの情報を持って来る。しかも、その情報は実に有益なのである。いまだに自身の事を語らないのが少し引っかかるとはいえ、その態度は至ってまじめなものであり、咎めるべき誤りもない。
今回は、一体なんであろうか。気になるところである。
「おお、盈か。そなたが気になる事、とな?一体どういう事だ?」
「はい。実は、文和殿の事なのですが…」
「文和がどうかしたのか?」
「それがですね…」
盈の声が小さくなった。どうも、重要な話の様だ。
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