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小説 『牛氏』 第一部
25:左平(仮名) 2003/03/09(日) 21:50 「確かに、その通りの様ですな…。ここまで話が一致するとなれば、そうとしか考えられません。…と、なると…。伯扶殿と姜とは、従兄妹同士という事ですか」 「恐らく」 「こりゃまた…」 「まぁ、大した事ではありますまい。輔と姜殿は、姓が異なりますからな」 「それはそうですが…。名族・牛氏としてはそれでよろしいのですか?」 「えぇ。構いません」 「まぁ、それならそれでよろしいのですが…」 中国(及び朝鮮半島)には「同姓不婚」という原則がある。同じ姓(朝鮮の場合は、本貫【一族の始祖の出身地】も考慮する必要がある)の男女は結婚してはならないという事である。 一般的には、近親婚の禁止という意味でとらえられており、事実、だいたいの場合はそうなのであるが、時に、この様な事例も発生する。 現在の感覚でいうと、この場合も近親婚といえるのであるが、二人の姓が異なる為、問題にはならないのである。 翌日、董卓は帰っていった。彼が帰るのを見届けた牛朗は、さっそく牛輔・姜夫妻を自室に呼んだ。 父の表情は、いつもにも増して固い。義父との話は、思っていた以上に重要なものであった様だ。牛輔にはそう感じられた。だが、その内容までは、うかがい知る事はできない。 「父上。話とは、一体…」 「まぁ、そうせかせるでない。話は、二つある」 「二つ?」 「そうだ。その前に、姜に聞こう。そなたには、伯母上がおられたな。違うか?」 「はい。母上がまだ小さい頃に亡くなられたと聞いておりますが…」 「うむ。そして、その伯母上の名は、琳、ではないか?」 「はい…。ですが、なぜその事を?」 「実はな。琳は、輔の母なのだよ」 「えっ!? と、いう事は…」 「そうだ。そなた達は、血を分けた従兄妹同士という事になる」 全く予想もつかない話に、二人は茫然とした。では、自分達は近親婚をしたというのか…。
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