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小説 『牛氏』 第一部
49:左平(仮名) 2003/05/25(日) 21:28 「…そなた、赤子がどこから産まれるか知っておるか?」 「えっ?」 「知らぬか」 「はぁ…」 「ここだよ」 そう言って董卓が指し示したのは、自分の股間であった。 「ここ?」 「そうだ。まぁ、男と女とでは付いてるものは違うがな。…赤子が産まれるのだ。そなたも、姜のここを見た事があろう?」 「まぁ…」 「凄いとは思わぬか? そなたの陽物でさえ入るかどうかという陰門から、赤子が出てくるのだぞ」 「…」 「その時、わしは見てしまったのだよ。子を産んだばかりの、瑠の陰部をな。…あれは、男が見るものではない。幾度となく戦場を駆け、血にまみれ、死線をかいくぐってきたわしも、あれには血の気が引いた」 出産とはそんなに凄まじいものか。そんな事を、あの姜が…あの華奢な体にそんな力が…。にわかには信じ難い事であった。だが、事実である。 「瑠が産褥から起き上がっても、わしは、しばらくあいつを抱けなかった。あれが頭から離れなくてな…。子育てやら何やらであいつが忙しかった時に、思う様に慰めてやる事ができなかったのが、今もって悔やまれるのだ」 「そんな事があったのですか…」 「ま、今はそんな事はなくなったがな。実は、昨日も抱いてやったところだ」 それでこそ義父上。思わず笑みがこぼれる。董卓も、つられて笑う。 「わしでさえそういう有様だったからな。ましてや、繊細なそなたではどうなるか。そなたがいかに姜をいとおしく思っていても、そんな光景を目の当たりにしたが最後、二度と抱けなくなるやも知れぬ。瑠はそれを恐れたのであろう」 「そうでしたか…」 妻の出産の場面に耐えられないであろうとみられたとは、いささか情けなくはある。しかし、義父でさえそうであるのだから、さして気にする事ではあるまい。 「どれ、もうよいかな」 話している間に、いくらか時間も経った様だ。そろそろ、産湯も片付けも済んだであろう。 「おぅ−い、瑠。産湯は済んだか−」 「はぁ−い。もぅ入ってもよろしいですよ−」 「では、行くか」 「はい」 いよいよ、我が子との対面である。瑠の声からして、母子ともに無事である事は間違いなかろう。 (いったい、どんな子であろうか) 早く後継ぎが欲しいから、男子である方がいい。とはいえ、二人ともまだ若いのである。女子であっても、いっこうにさしつかえない。
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