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小説 『牛氏』 第一部
99:左平(仮名) 2003/11/16(日) 22:22 それからほどなく、義弟・勝のもとから一通の知らせが届いた。 「で、知らせには何と書かれてるんだい?」 「はい。無事に産まれ、母子共に至って健やかであるとの事です。女の子だそうで」 「それはよかった。で、名前は?」 「白、としたそうです」 「白?」 「何でも、この子が産まれる時雪が降っていて、その様子が大層美しかったのでそれにちなんだとか。父上も良い名だとお喜びだそうで」 「そうか…」 この時牛輔は、『白』という名にどこか引っかかるものを感じた。 (白…色としては白、五行では秋、西、金とかいった意味があるな…。この字自体には、私が知る限り、これといって悪い意味は見当たら ない。しかし…雪にちなんで名付けたというのはどうなのであろうか…) 雪は、冬に降るもの。春になれば融けて消えてしまうという、儚いものである。その様なものにちなんで子の名をつけるという事には、何 か問題はないのだろうか。そう思えてならなかった。 (勝…いや、伯捷は、そういう事に思いが至らなかったのであろうか。しかし、今更私が何か言うのも何だしな…) これは、ひょっとすると虫の知らせというものであろうか。そんな思いが頭をよぎる。 (いや、私ごときが人の命運を予測するなど…できるはずもないな。気のせいであろう) そう思った牛輔は、ほどなくこの事を忘れた。しかし、それはあながち気のせいでもなかったのかも知れない。
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