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小説『魏延別伝』
3:レイジ2003/08/02(土) 22:11AAS
魏延別伝
孔明と仲達が五丈原に布陣する、第五次北伐戦。
蜀の兵糧は充分にあり、今回こそ長安を奪おうと言う算段。
孔明と仲達の知恵比べ。
孔明が勝っていたが、惜しくも病没してしまう。
人々はその死を哀れみ、嘆き悲しんだ。
その後、撤退していた蜀軍で一悶着あった。
「魏延将軍、蜀はこれからどうなるのでしょうか。」
声をかけるのは勇将、馬岱。
馬超と共に蜀に投降した人物。
魏延はしゃべらない。
もともと無口な方であったが、最近は特に無口であった。
一人の人間の死―――。
蜀に、いや、三国を新たな方向に進ませるほど大きな死。
それを聞いたとたん、仮面の下の表情が読み取れるほど驚愕したのを馬岱は知っている。
「馬岱…。丞相ハ真ニ死ンダノカ……?」
魏延ほどの人間ですら、真に信じられず、馬岱に問う。
丞相は魏延を警戒していたが魏延は何も考えていなかった。
陰口を叩いていると言うのも所詮噂であった。
蜀の国の為、いや、先帝(劉備)の為に戦う人間であった。
『魏延、私はあなたに期待しています。』
孔明は度々そういっていた。
今にもそう聞こえてきそうである。
しかし聞こえない。
魏延にもようやく孔明が死んだことを認め始めた。
『反骨の相がある』
そう言いながらも孔明は魏延に期待していた。
あくまでも”忠告”であったのである。
「馬岱…。人トハ脆イナ……。」
いつもの魏延とは思えない、消え入りそうな声で話す。
馬岱ですら今の彼には不信感を覚えている。
少し迷ったが、すぐに言葉を続けた。
「ええ。これからは丞相が安らかに眠れるような国作りをしなければなりませんね。」
再び流れる沈黙―――。
馬岱も信じたくない。
孔明は蜀の最後の精神的柱だったのである。
思えば蜀の精神的柱も次々と崩れていったものだ。
仁政によって民に慕われ、蜀という国を築いた、劉備。
劉備の糧となり、首になっても二国を脅かした、猛将、関羽。
その武勇は勝る者が無く、長板橋では一喝して曹軍百万を退けた猛将、張飛。
劉備を見出し、常に謙虚で諸葛亮、劉備に慕われ長板橋で名をとどろかした勇将、趙雲。
長沙では関羽と互角に戦い、夏候淵を討ち取った老将、黄忠。
かつては曹操をも脅かし、一度は長安をも手に入れ、張飛と互角に戦った虎将、馬超。
その他もろもろの勇者達―――。
……そしてその知略は地上に勝る者無し。最後の巨星。天下の奇才、諸葛亮。
全てを失ってしまった蜀軍。
最後に蜀を支えるのは、魏延なのか……。
そんなことを考えているとき、急使が飛び込んできた。
内容―――
『魏延が謀反を起こした』
。
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