下
短編(?)です。
17:左平(仮名) 2005/01/02(日) 20:22
九、
「えい!」
「なんの!」
虚空を切り裂く音がしたかと思うと、凄まじい打ち合いが演じられる。彰と冒突の武術の鍛錬は、日を追うごとに激しさを増していった。
打ち合いながら、冒突は、彰の成長ぶりをひしひしと感じる。一方で、何かを言い出しかねているのも感じていた。
「お疲れ様」
「お疲れ様です。…ところで若殿、何か私に聞きたい事があるのではありませんか?」
「え、気付いてたのかい」
「気付きますよ。それであれだけの打ち合いをなさるというのはすごいですがね。しかし、何を聞こうとなさってるのですか?まさか、飛燕がお気に召さないとか?」
「いや、あの娘はいい子だよ。ずっと側においておきたいし、子を儲けてもいいと思ってる」
「では、何を?」
「あの技を教えて欲しいんだ」
「あの技?若殿に隠している技などございませんが…」
「いや、あの時、羊をさばいたあの技だよ」
「ああ、あれですか。別に、特別なものではありませんよ。我らが昔からやってる事ですから」
「じゃ、教えてくれるのかい?」
「それはいいんですけど…。そうすると若殿、これから当分、覚えられるまで、羊ばかり召し上がっていただく事になりますよ」
「承知の上だよ」
「それでしたら、お教えいたしましょう」
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