下
短編(?)です。
25:左平(仮名) 2005/01/02(日) 20:28
十三、
「たっ、大変です!」
「何事だ!」
「う…烏丸の襲来です!」
「そうか、ちと早いな。手元には僅かの兵…これでは全軍の迎撃体勢が整うのを待ってはおられぬ」
「いかがいたしましょうか?」
「うろたえるでない!国譲殿、策は?」
「そうですな。少数の歩兵をもって多数の騎兵にあたるには…李陵にならいましょう」
「李陵の?確か、彼は匈奴に敗れたのではなかったか。敗軍の将の戦い方に倣うとというのか?」
「確かに、李陵は匈奴に敗れました。しかし、そこに至るまでに、僅か五千の歩兵をもって単于自ら率いる八万の騎兵を相手に戦い、自軍の数倍の損害を与えております」
「我が軍は数万。質量とも敵にまさります。この場を凌ぎさえすれば、勝利はもう眼前でごさいますぞ」
「そうか。では李陵に倣うとしよう。それは、具体的にはどの様な戦い方だ?」
「輜重の車を周囲に並べて長城の如くし、その内に弩兵を込めます。そして、隙間には長兵を充てて埋めるのです」
「そうか。騎兵が得意とするのは、その速さと高さだが、車を壁にする事でその勢いを殺ぐというわけだな。そして、矢を浴びせる…」
「その通りです」
「うむ。…者ども!すみやかに車を動かし、円陣を組め!ここを凌げば、手柄は思いのままと心得よ!」
「はっ!」
さすがに、歴戦のつわもの達だ。ひとたび将の命令が出るや、実に速やかに動き出した。気がつくと、もう車による円陣が組まれている。
こうなれば、烏丸の騎兵をもってしても容易には破れまい。
そう思っていると、早々と引き始めるのが見えた。
「なんだ、あいつら、もう引くのか」
「やつらは、勝てないとみるとすぐに引きますからね。…将軍、いかがなさいますか?」
「知れたこと、追いかけて粉微塵に打ち砕くまでだ!行くぞ!」
「おう!」
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