短編(?)です。
3:左平(仮名) 2005/01/02(日) 01:21AAS
二、

「誰だ!牆垣を壊したのは!…彰、またそなたか!」
「ごめんなさい!つい…」
「ごめん、とかつい、ですむか!こっちに来い!おしおきだ!」

(そうそう、たびたびものを壊したから、よく父上には叱られてたなぁ。ただ…)

「これに懲りたら、もう二度とこの様な事はするでないぞ!それと、もっと体を大事にせい!怪我をしておるではないか!」
「は−い、分かりました」
「軽々しく考えるな!人の体というのは存外弱いものなのだぞ!」

(あの時に限っては、なぜか父上が怖いとは思わなかった。むしろ、おれの体を気遣ってて、妙に優しげに見えた)

「あたた…。今頃になって痛くなってきた…」
「どうした、彰。冴えない顔して。ははぁ、また父上に叱られたか」
「あ、兄上。『また』は余計ですよ」
「余計ったって、事実だろ。まぁ、兄として一言言っとくよ。体が健やかなのはいいけどな、そなたも曹家の子の一人として恥ずかしくないよう、そろそろ何か始めろよ。そなたもいつまでも子供じゃないんだしな」
「何かって…何をすればいいんですか?」
「いろいろあるだろ。『六藝(礼、楽、射、御、書、数)』とか『六経(詩経、書経、易経、春秋、礼記、楽経)』っていうくらいなんだから。父上はそれらの全て、おまけにあれやこれやと極めておられるというが、そなたにはそこまでは求められんだろう。何か一つでもいいから打ち込んでみろよ」
「分かりました。何がいいか考えてみます」
「ああ」

(ただ…そうは言われても、どういうわけか、おれは書物を読むのが苦手でしょうがなかった。じっと座ってられないというわけではないが、あの『字』というやつがどうにも馴染まなかったんだよな…。で、ふと気付くと、おれは兄上のところに来ていた…)
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