短編(?)です。
15:左平(仮名)2005/01/02(日) 20:21AAS
八、

「若様、父上。用意ができました」
「では若殿。参りましょう」
「えっ、どちらに?」
「この料理の支度は野外でするものですからね。ちょっと外に」

外に出てみると、日はだいぶ西に傾いていた。徐々に日は長くなっているとはいえ、さすがにもう薄暗い。
「父上、この羊なぞはいかがでしょうか」
「うむ。いい具合に肉がついておるな。…では若殿。これより調理に取りかかりますぞ。飛燕。火と炭と串、あと塩を用意してくれ」
「はい」
「調理ったって…まだその羊、生きてますよ」
「ええ、これからさばくのです」
「これから?」
「ちょっと待っててくださいね。すぐ終わりますから」

冒突の手には、小刀と大きな容器があった。何も知らない羊は実にのんびりとした様子である。彰は、羊を見る冒突の眼に、一瞬異様なものを感じた。
次の瞬間、冒突により、羊は仰向けに倒されていた。そして、小刀を握った右腕が羊の脇腹に叩きつけられたかと思うと、羊は、ぴくりとも動かなくなった。

「な…何が起こったんだ?」
「我らは、あの様にして羊をさばくのです。ああする事で、羊に余計な苦痛を与えずに済むし血も無駄なく使えるのです」
「えっ?じゃ、もう羊を殺したってのかい?」
「ええ。ほら、あとは皮をはいで肉と臓物を切り分けるだけです」
「なんて技だ…」
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