短編(?)です。
20:左平(仮名)2005/01/02(日) 20:24
彰が構えるか否かというところで、虎が飛びかかってきた。
いくら武術に長け、羊を巧みにさばいてみせたとはいえ、虎では相手が大きすぎる。誰もが、彰が負けると思った。
冒突でさえ、事あらば直ちに彰を助け出すべく得物を構えたほどである。しかし、次の瞬間。

虎は、虚を衝かれたと言わんばかりの間抜け面を晒していた。その足元には、彰の体はない。どうやら、虎の一撃を避ける事ができたらしい。

「わ、若殿はどちらに?」

気が付くと、彰はいつしか虎の背後に回り込んでいた。

「えい!」

そう言うや否や、彰は虎の脚を蹴り飛ばし、横倒しにした。そして、顎と前足の根元付近に立て続けに拳を叩き込んだかと思うと、脇腹に手を伸ばした。
「…決まった…」
虎と人との死闘は、存外呆気なく終わった。彰には傷一つない。完勝であった。

「若殿、いつの間にこれほどの腕前に…。やはり、我が目に狂いはなかった。このお方こそ、類稀なる武人」

彰の、そして冒突の顔に、満面の笑みが浮かんでいた。
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