短編(?)です。
5:左平(仮名) 2005/01/02(日) 01:23
三、

(ともかくおれには、おとなしく書物を読むという選択肢はなかった。武芸しか選びようがなかったってわけだな)

「それでは、武芸を学びたいと思います」
「武芸か。となると、射術、馬術、それに撃剣といったところだな」
「じゃ…まずは射術を」
「そうだな。射術は、道具と的さえあれば一人でもできるからな。どうだ、試しにやってみるか」
「えっ、いいんですか?」
「ああ、さっきまでやってたからな。道具も、ほら、ここにある」
「ほんとだ。じゃ、早速ですけどやってみます」
「弓の引き方、分かるか?」
「え−と、見た事はあるんだけど…よく分かりません」
「こうするんだ。よく見とけよ」
「はい」

(兄上は六歳で射術を、八歳で騎射を体得されたという。胡人ならともかく、中華の人がこの年で体得するというのは大変なこと。考えてみると、おれはいい師に恵まれたもんだ)

弓から放たれた矢は、わずかに放物線を描くと、的のほぼ中心に当たった。腕に覚えのある武人でもこれほど見事には当たるまい。そう思わせるほど、丕の射術は優れていた。

「さあ、やってみろ」
「え−と…こんな感じですか」
「まずは何でもいいから弦に矢をあてがって引き絞り、そして放て。やってみん事には何とも言えん」
「む〜、えいっ!…ありゃ」
「…いかんな。まずは矢を放つことからだ。もう一回!」

(そう簡単にはいかなかったけど、しばらくやってるうちに、ともかく矢を放てるようにはなった。で、初めて的をめがけて射た…)
1-AA