下
短編(?)です。
8:左平(仮名)2005/01/02(日) 01:25AAS
「父上、お呼びですか」
「おお、彰か。入れ」
「はい、では」
「なに、そうかたい話ではない。…そなたの武術の腕前は相当なものというが、自分ではどの程度だと想う?」
「はぁ…。我流としてはなかなかだと想いますが、実践の機会がなかなかありませんから、何とも…」
「そうか。まだまだ鍛えなければというところか」
「はい」
「それなら、うってつけの者がいるぞ」
「えっ?それは一体…」
「近頃わしのもとに来た胡人の男だ。身分こそ低いが、武術の腕前は我が配下の猛将どもにも劣らぬぞ」
「配下の…と言いますと、あの張将軍(張遼)と比べても、ということですか」
「うむ。立ち合わせたわけではないから正確な比較はできんが…わしが見たところ、そう見劣りはせんだろうな」
「それほどの方がなぜ将になられないのですか?」
「わしにもよく分からん。何でも、本人にその気がないということだ。その気がない者を将にはできぬ。身分が低い者では不満か?」
「とんでもない。張将軍にも劣らぬ方となれば、喜んで師事いたします」
「そうか。なら決まりだな。おい、冒突、入れ」
「お呼びですか、殿」
冒突と呼ばれた男が入ってきた。彰より一回り大きいだろうか。いかにも歴戦の武人といった、精悍な面構えである。
「これは、我が仲子の彰だ。武術を好む。そなた、これの師として武術を教えてやってはくれぬか」
「殿のご命令とあらば、喜んで」
「よし。では早速、指導に入ってもらおうか」
「はい。若殿、それでは別室に参りましょう」
「えっ?武術の指導を受けるのに、どうして室内なんですか?」
「指導の前に、若殿の人となりを拝見しとう想いまして」
「そうか、そうだな。彰。しっかり教えを受けてこいよ」
「はい」
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