下
短編(?)です。
9:左平(仮名) 2005/01/02(日) 01:26
五、
「若殿、どうぞおかけ下され」
「はい」
「まずは、そのご尊顔をとくと拝見しとうございます。…それにしても、漢人には稀なお姿でございますな」
「そうですか?鏡を見たこともあるけど、そんなに変わってるとは思いませんが」
「お気付きではありませんか?その髪、そして眼の色を」
「ん?髪?眼?まぁ、確かにちょっと色が薄いみたいですけど…それが何か?」
「その髪、眼の色は生来のものですよね。そして、既に騎射を体得なさっておられる」
「そうですよ。まぁ、騎射は我流というやつですが」
「となると…。若殿、あなた様は大変なお方ですな。既に、世にも稀なる武人でございますぞ」
「え?どういう事ですか?」
まだ実際の動きも見てないのに、たかが髪と眼の色一つで、何をおおげさな。彰はそう思った。しかし、それに構わず冒突の話は続いた。
「若殿。あなた様の様なお方は、普通、武人にはなれぬのですぞ」
「?」
「それでしたら、問いましょう。若殿。あなた様は、書物を読まれるのが苦手ですな?」
「そうですけど…それと武術と何の関係が?」
「書物を読みたくないのは…書かれている内容が理解できないからというより、字を読むのが苦しいから。違いますか?」
「ん!ま、まぁそれはあるかな。話を聞くぶんにはそんなに苦にはなりませんが…」
「さらに問います。昼間はおろか、夙夜にあっても眩しいと感じる事がしばしばあるのではないですか?」
「確かに…。な…なにゆえそこまで分かるのですか?」
「分かりますよ。似た様な者を見た事がありますからね」
「あなたは一体…」
この男、何者なのか。どうして自分の事をこうも言い当てるのか。彰は、珍しく背に汗が浮かぶのを感じた。
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