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■ ☆熱帯夜を吹っ飛ばせ! 納涼中華市祭!☆

1 名前:★教授:2005/07/31(日) 00:46
はい、こんなスレ作りました。
『夏と云えば祭だ!』
かなり単純な理由からこんなイベントを発起しましたYO
この企画に関するご要望、ご質問、神作品投稿はこちらのスレをお使いください

期間:8月8日〜8月20日前後
とにかく祭だワショイ! ノリが重要ですYO!
投稿される作品にジャンル(例:SSやCG等)は関係ありませんので、お気軽にご参加ください。
なお、今回の企画には個人で複数作品の投下も認められております。

皆様の神作品が中華市を華やかに彩る花火になるように…。

2 名前:★ぐっこ@管理人:2005/07/31(日) 22:37
(゚∀゚)〜♪ 教授様GJ!

あー、今南蛮王推敲中〜!こっちが今夜中に片づくから、今度は学三(*゚ー゚)=3
ナイスタイミング!
夏祭りね! OK! 久々に腕がなるですよ! 

3 名前:雑号将軍:2005/07/31(日) 22:51
おお!ついにスレッドも完成しましたかっ!この雑号将軍、非才ながら先鋒の大任果たしてみせまする!
なんとしても、教授様の期待に応えなければっ!

4 名前:★教授:2005/07/31(日) 23:17
◆追記

簡「祭って前夜祭もあるんだよね。前日から盛り上がれるよなー」
法「無い所も多いけど…憲和の狙いは常山で振舞われるお神酒でしょ」
簡「んなバカな。酒なら自家製…んむ…(法正に止められる)」
法「はいはい、それは禁止ワードね。お酒は18歳以上から」
簡「そうだったっけ? ま、ともかくウチは前夜祭もやってるからさ」
法「メインの前に前菜…そんな所かしら。軽いジャブも打ち込んでね」
簡「良い子の皆、8月7日も見逃しちゃダメだぞ!」
簡×法「って事でよろしくー!(投げ接吻)」

5 名前:海月 亮:2005/08/05(金) 00:28
そして微妙に今から何か書き始めている私が居る…_| ̄|○
というわけで遅ればせながら参戦報告に現れたのでありますよ^^A

イラストを前夜にうぷして、本戦にSSが間に合うか否か。
てか今、次から次へと溢れて止まらない長湖斜陽SSと同時進行であってしかも繁忙期。
こうなったら寝る時間を削ってでも…(;;゚Д゚)ノシ


というか別に夏祭りとかイベント縛りはありませんよね?

6 名前:海月 亮:2005/08/05(金) 00:33
で、よく読んだら「夏祭り」って書いて(ry_| ̄|○

ええぃ、今からでも遅くはない!一本考えてやるッッ!(半ヤケ

7 名前:雑号将軍:2005/08/07(日) 22:45
  〜張任の憂鬱〜

「張任さん!これはどこですか?」
「あれはそっち!」
 八月六日、後二日で蒼天大花火大会。前夜祭もあるから、実質、あと一日で開催だ。
毎年、決まった場所で開かれる、蒼天学園の三大イベントの一つ。
そして、今年は我らが益州校区で開かれることになった。
俺?俺の名前は張任。これでも、益州校区ではちょっとは名の知れてるんだ。なんか今回は花火大会の準備の指揮を頼まれてしまった。なんかもう責任重大だなあ・・・・・・。

「た、大変ですよ!張任さんっ!」
 赤くショートカットの少女が血相を変えて走ってきた。俺の目の前で急ブレーキをかけると肩を上下にゆらせて息をしていた。
 彼女は呉蘭。頭の方はいまいちだが、腕っ節の方なら、なかなか出来る方だ。そう言うことで今は舞台の組み立て作業を手伝ってもらっている。
「どうしたんだ、呉蘭?」
「だから、大変たら大変なんですよー」
 呉蘭の摩訶不思議な答えには首をかしげるしかない。しかし、それではななんの解決にもならないので、もう一度、今度はゆっくりと尋ねた。
「・・・・・・ふう、だ・か・ら!なにが、大変なんだ?」
「雷同が『今のあたしには電気が必要なんだよ!』とか言い出して、挙げ句の果てにはちょうちん用のアンプを占拠してるんです・・・・・・。張任さ〜ん、なんとかして下さいよ〜」
 俺は思わず、髪を手でわしゃわしゃと掻き乱してしまった。
「まったく、このクソ忙しいときに・・・・・・それで、雷同はどこにいるんだ?」
「こっちです!」
 この後、俺は三〇分間も雷同に電流のすばらしさとやらを熱く語られる羽目となってしまった・・・・・・。

「ようやく、舞台の設置が終わったか・・・・・・」
 俺は流れる汗を拭き取ろうとタオルを探したのだが、どこを探しても見つからない。
 そんなとき、後ろの方から、猛スピードで誰かが俺に突進してくる。そんなことをするヤツは一人しかいない。
そして、俺はそいつを受け止めて言った。
「こら、劉循!ここはいろんなものがあるんだから走るなとあれほど言っただろっ!」
 こいつは劉循。益州校区総代である劉璋さんの妹だ。まだ中等部の三年生なんだが、なにかと面倒を見ていたら懐かれてしまったみたいで。
まあ、悪い気はしないんだけど。ただ、「張任お姉様」はやめてほしいな。「トッ○をねらえ」じゃないだから・・・・・・。
 少しだけ、怒気を含めて言った俺の声に劉循はうつむいて、しゅんとしてまった。
「・・・だって、張任お姉様にタオルを早く届けようと思って、だから、だから・・・・・・」
「わかった、もういい。ありがとう、劉循」
 俺はそう優しく言ってから、劉循の頭に手を置いて撫でてあげた。
 すると、劉循はいつものように笑っていた。

8 名前:雑号将軍:2005/08/07(日) 22:49
〜張任の憂鬱〜続き
俺が、昼食をとっていると、一角でなにやら騒ぎが起こっていた。
「た、大変ですよー!張任さ〜ん!」
「今度はなんだ!」
「ご、呉班さんが!呉班さんが!ご飯を食べてるんですっ!!!」
 あいたたたた。胃が痛くなってきた・・・・・・。
俺はもう、あきれてなにも言えなかった。大方、呉班とご飯(白米)にかけて共食いだとでも言っているのだろう。どうして、こいつらはこんなに暇なんだ?
すると俺の横で、必死に電卓をたたいていた少女が素っ頓狂な声を上げた。あれは、ご飯もとい呉班の従姉である呉懿だ。はっきり言って、呉懿以上
に働いてくれてるのはこの場にはだれもいない。
「あ、あの・・・パン食人間益州校区代表の呉班が・・・・・・。白米を食べるなんて。私も負けられないわ。ご飯人間益州校区代表としてっ!こうしてはいられないわ。呉班のいるところに連れてって!」
 それだけ言うと、呉懿は事務処理もそこそこに走り去ってしまった。
 しかしご飯人間益州校区代表って・・・・・・。いや、それよりも、呉懿。仕事、まだ残ってる・・・・・・って、もういないか・・・・・・。
「俺がやるのか、これ」
 張任は山積みにされた書類の束に、思わず冷や汗が流れた。
 余談だが、とうとう、この日、呉懿が戻ってくることはなかった・・・・・・。

 もう辺りが暗くなってきていた。祭りの設置の指揮を執り、合間に呉懿が残していった、事務処理をしていると、人影がこっちに向かってくる。
「張任ー!大変だ〜!」
 あの高い声は高沛さんだな。あの人苦手なんだよなあ。楊懐さんと必ず悪さ考えてるから・・・・・・。でも、今日は高沛さん一人?まてよ。夜、夏、楊懐さんがいない・・・・・・。あはははは。まさかな。
「ど、どうしたんです。高沛さんがこんなに焦ってるなんて?お願いですから、楊懐さんが妖怪になったとか言わ――」
 もう遅かった。俺の肩をとんとんと叩くヤツがいる。俺は恐る恐る振り返った。
 
解説致しましょう。張任の首には、楊懐の顔があった。たしかにあった、あったのだが、身体は遠く離れた部分にあるのだ。その長い距離を結ぶのはするするとのびた首だったのだ。以上解説コーナーでした。

「うらめしや〜」
「・・・きゃああああああああああああああああああああああああああ!」
 はあ、はあ、はあ。な、なんだよあの精巧なろくろく首はさあ!?
俺がその妖怪と幽霊とかそのてのものがテスト以上に嫌いなの知ってくるくせにー!
「やったね。楊懐!張任の乙女ヴォイスも聞けたし。じゃあねぇ、張任〜」
 高沛さんは半泣きの俺を見て、うれしそうにそう言うと、楊懐さんと一緒に走り去っていった。
「益州校区の人間はなんでこんなにダジャレが好きなんだー!!!!!」
俺は心の中で何度も何度も叫び続けた・
「なんで、なんで、俺ばっかこんな目に・・・・・・。」
この後も張任は事務処理を続け、寮に着いたときには雀が鳴いていたという。

そして今回の功労者たる張任が前夜祭に行けなかったことは言うまでもない・・・・・・。

9 名前:雑号将軍:2005/08/07(日) 22:58
どうも、前夜祭もあるとのことで…一応、こっちでは先陣を。フライングだったらすみません…。もしくは無いと思いますが、僕の先陣発言のために作品を出せなかった方がおられましたら、重ねてお詫び致します。

では今回の作品について少しだけ…。
張任はこんなキャラで良かったのかわからないのです。アサハル様のサイトでキャラ紹介はみてきたのですが…。なにより、この話が「納涼中華市祭」のテーマに準じているのでしょうか?もし準じてなかったら…すみませんでした!今更どう仕様もありませんが、すみませんでした。
あと、蒼天大花火大会とか適当なネーミングのものはスルーしちゃって下さい。僕が苦し紛れに付けたものですので。

>お詫び
えーと、本当に本当に申し訳なくて、土下座しても許されるものではないのですが、本祭の先鋒、無理なような気が…。大任を与えて下さった教授様にはどうお詫びしたらいいのかわかりませんが、一刻も早く作品を完成させるということでいくらかのお詫びになればと思っています…。

10 名前:★教授:2005/08/07(日) 23:07
雑号将軍様>

 先陣乙! 張任の幸せ不幸はこうしたちょっとした事にも表れておりますなぁ。
 準備もまた祭の一環、テーマにはしっかりと準じておりますのでご心配なく。
 取り敢えず雷同たんの電気マニアっぷりに萌えるべきでしょうか(^∀^)

11 名前:海月 亮:2005/08/07(日) 23:58
夏祭りの会場はこちらですか?|ー ̄)コソーリ
というわけでここんところ鳴りを潜めていた私が来ましたよ(←だからどうした

>雑号将軍様
見事な先陣っぷり、天晴れの一言に尽きますな!
旧益州派閥のハジけっぷりがなんともいえませんね。
充電する雷同、狂ったように白米をかき込む呉班と呉懿、見事な飛頭蛮(=轆轤首)と化した楊懐…
「ご、呉班さんが!呉班さんが!ご飯を食べてるんですっ!!!」のくだりで、呑んでた爽健美茶吹きましたよマジでw
ジャブどころか土手っ腹にいきなりイイのを頂いてしまいました。本番も期待ですよぅ♪


というわけで先陣が無事に通っていったところで、僭越ながら私めも軽めの一撃を。
相変わらずのオリデザでアレですが…
http://www5f.biglobe.ne.jp/~flowkurage/natsumatsuri2005.jpg target=_blank>http://www5f.biglobe.ne.jp/~flowkurage/natsumatsuri2005.jpg

海月も密かに用意していたネタを急ピッチで製作ちう。むしろ二陣狙いで(何

12 名前:北畠蒼陽:2005/08/08(月) 00:00
「ちゅ〜うきょ!」
毋丘倹はその明るい声を聞き、ため息をつきながら振り返る。
「仲若……あんた、なんでこなかったの?」
夏休みの炎天下の午後。
毋丘倹は上下ぴっちり制服。
それに比べ……
「だってかったるいじゃん、補修なんてさ」
笑顔を浮かべ、あっけらかんとする文欽は上はハートマークが胸に大きくデザインされたTシャツとホットパンツ。超私服。
「いや、だからってさぼるなよ」
「大丈夫だって。うちらの頭じゃいまさら勉強しても無駄だからさ」
にこにこと笑いながら肩をばんばん叩く文欽に毋丘倹はため息を止める術を知らなかった。
意外と努力家、毋丘倹。
意外でもなんでもなく遊び人、文欽。
ともに赤点常連。


夏い暑のヒトコマメ


「はぁ?」
手近な喫茶店に入ろうとした毋丘倹はその文欽の言葉に足を止めた。
「え? ……え? なに? なんだって?」
「疑問多いなー」
疑問は1つだけである。疑問形が多いだけで。
「今なんつった?」
「疑問多いなー」
毋丘倹は躊躇せずに文欽を叩く。
「いったぁ〜! 叩いたぁ!」
「つまらないことを言うからでしょ」
さすがに寮の同室だけのことはありあしらい方はわかっている。
あしらい方、というか実力で黙らせるしかないのだが。
文欽はしばらく不満そうな顔をするが『まいっか』と呟き再度満面の笑みを浮かべる。
「いや、だからさ。プールいこうよ、プール」
「ぷ〜るぅ〜?」
毋丘倹は自分のスポーツバッグを上げてみせる。
「私、水着持ってきてないぞ?」
バッグの中身は教科書とかノートとか。
なぜこの努力の10000分の1だけでも結果に結びつかないものか。
「あー、ダイジョブダイジョブ。仲恭の水着、あたしがすっげぇのチョイスしてもってきたったから」
「もってきた、って……」
言いかけて文欽が自分の同室であることを思い出す。
自分がずっと補修を受けてた間、文欽は部屋に1人だったわけだ。
……あさり放題じゃないか。
「……はぁ」
ため息をつきながら、しかし文欽の言う『すっげぇの』というのがなんとなく気になった。

……
……
……
毋丘倹は真っ赤な顔をして文欽から渡された『水着?』をつまみあげた。

13 名前:北畠蒼陽:2005/08/08(月) 00:00
ここでいう『真っ赤』というのは羞恥7割、怒り3割といったところ。
まぁ、ある程度は覚悟していた。
きっと文欽が『すっげぇの』というのなら本当に『すっげぇの』なのだろう。
ある程度なら……
「これは……?」
毋丘倹はその声が我ながら呪詛に近い響きだと思った。
いや、実際に呪詛なのだけど。
ハイレグとか、かなりきわどい水着であればまだ……いや、それも恥ずかしいなぁ……
でもこれはない。絶対にない。
ぎぎぎぎぎ、と油がさされていないような機械のような動きで首だけで振り返り文欽を見た。
「いや、だからすっげぇじゃん?」
すでに着替えた文欽はにこにこと言う。
胸に肉きゅうのワンポイントつきの赤いワンピースの水着。
うん、可愛い。
……これとは大違いじゃないか?
毋丘倹はもう一度まじまじと文欽に渡された『水着?』を見る。
……よく見る。
よく見てみたら実は違うものなんじゃないか、というくらい見る。
「これは……?」
見た上で聞いてみた。
「いや、だってさぁ。仲恭、色気のない水着しか着ないじゃんかー。私がこれっくらいしてやらねぇと」
けらけら笑う。
……色気?
まじまじとその『水着?』を見る。
「これを、着てたら、ただの、変態だと、私は、思う」
文節を区切って毋丘倹はゆっくりと口を開いた。
「いや、でもさぁ。昔、あったじゃん? 貝殻の水着」
あった。確かにあった。
あぁ、なるほど。貝殻だ。確かに貝殻だ。
貝殻過ぎて涙が出そうだ。

「シ ジ ミ は あ り え な い だ ろ」

毋丘倹は文欽をはったおした。

……
……
……
そして。
「おっと、そろそろ時間じゃない?」
夕方、プールで遊びつくし、帰路につく毋丘倹は文欽の言葉に足を止めた。
街は人の活気で溢れている。
「あ、そうか」
今日は1年にたった一度の夏祭りの日。
祭りらしいうきうきした雰囲気で街は彩られている。
夕闇が差し迫り、人々の期待が高まる。
この群青の空を彩るのは……

花火が上がった。

14 名前:北畠蒼陽:2005/08/08(月) 00:02
シジミがダメならミジンワダチガイでっ!
こんばんは、北畠です。0時00分になった瞬間の投稿を狙ってました! 暇人ですいませんっ!
ちなみにミジンワダチガイは世界最小の貝で直径0.6mm程度らしいです。がんばれ、毋丘倹っ!

最初は『夏』だけをテーマに書いてて『祭り』というファクターをすっかり忘れていたので書き足す羽目になった、という。
……うわー、蛇足っぽーい。

もうこうなったら『フタコマメ』以降は最後にちょこっとだけ書き足す、というパターンでいこうと思います。
……というかもう『サンコマメ』までストーリー出来上がっちゃったの、祭りとはまったく関係ない方向で(ダメ

>劉循かわいいよ劉循
名前ダジャレですか、んむんむ。

(歴史の資料集。ヒゲを書いてご満悦の文欽。ふ、と気づく)
文「王昶〜、王昶〜
王「んあ? なに?
文「あんたが国を作ったらさぁ……
王「王昶の王朝とか言ったらぶっ殺すよ?
文「最後まで言わせろよ……

あぁっ! 文欽可愛いかもっ!(*ノノ

なにはともあれ一番槍は最大の武勲! お疲れ様ですぞー!

>海月 亮様
2番槍こそワタクシの出番ですぞ(笑
というか0時00分になるまで待機してました!
時間合わせまでしてね!

とりあえず花火いいですのぁ〜。おつですよぅ。

15 名前:★教授:2005/08/08(月) 00:21
出遅れた! 前夜祭に神作品が添えられて華やかになってきた所で、納涼中華市祭の開催を宣言します!
皆様、振るってご参加くださいー。

海月 亮様>

 グッジョブ! これこそ祭ですな!
 序盤からトップレベルの花火、盛り上がりますよ!

北畠 北陽様>

 肉球プリントのワンピース!? ハァハァ…
 じゃなくて、シジミ… ハァハァ…
 こんな感じです、ディスプレイ前でひたすらハァハァしてますた…

16 名前:トサカの人■劉表■:2005/08/08(月) 13:20
http://gaksan1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upboard/updir/sum_ryuuhyou.jpg target=_blank>http://gaksan1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upboard/updir/sum_ryuuhyou.jpg
皆様の神作品には一歩といわず42.195km程及びませんが・・・。

17 名前:北畠蒼陽:2005/08/08(月) 13:35
>トサカの人■劉表■様
拡張子確認。
ryuuhyou.jpg
劉表! 劉表かっ!
わくわくしながらクリック!
……(ノ_・。
ページが表示できないそうです(ノ_・。

18 名前:雑号将軍:2005/08/08(月) 19:24
>海月 亮様
まさしく、花火!あんなかにもう孫皓つめて打ち上げてしまいましょう!!…いやいや、さすがにそこまでは無理か…。で、でも!あの人ならやってくれるさ
あ、あの…爽健美茶吹き出されたとのこと…パソコン大丈夫でしょうか?

>北畠蒼陽
文欽もやりますなあ。うん、いっそのこと諸葛誕に無理矢理着せてみるのも…。結局、その水着?でプールを駆け回った毋丘倹はまさに連合生徒会最大の豪傑ですな!

僕の本祭参加、やっぱり遅れそうなので、もう二番槍とは言わず、やっちゃってください!

19 名前:雑号将軍:2005/08/08(月) 19:25
連続ごめんなさい。
ごめんなさい…。北畠蒼陽様。敬称抜けておりました。

20 名前:北畠蒼陽:2005/08/08(月) 21:28
>『様』の中の人などいない!
うふふぅ、お気遣いなく、なのですよ。

毋丘倹、あれで泳いだのかなぁ……
むしろそれを想像してなかった……
毋丘倹、あの世代屈指の『乙女』ってつもりで書いてたんで(笑

21 名前:トサカの人■劉表■:2005/08/08(月) 22:33
>北畠蒼陽様
すみません、”学園あっぷろーだ”からの直リンが出来ないようなので、
改めてgeocitiesにうpしました・・・m(_ _;)m
http://www.geocities.jp/alfasystemfan/sum_ryuuhyou.jpg target=_blank>http://www.geocities.jp/alfasystemfan/sum_ryuuhyou.jpg

22 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 11:19
ミョーにアツい戦隊モノのメドレーを聴きながら、ラストスパートかけている海月であります。

>武田留美子ルック
いや、アレは確かホタテでしたな(←てか、何歳だ俺w
てかヘタするとハダカよりエロいと思うのは…私だけでしょうか…(;´Д`)ハァハァ

そして文欽タンの水着姿を想像して普通に萌えた私がいる(*´Д`*)ハァハァ

>二番槍
何の、2ゲットは私のもの…ちがうか。とうに過ぎてるしw
これで海月が初日に間に合わせたら、空気無視して本番の先陣を切りそうな予感…ううむ、この状況烏賊に、じゃなくて如何にすべきか…

>爽建やらなにやら
いや、愛機は無事だけど着物は着替える羽目になりましたよぅ^^A
あんな笑いの神が降臨してしまったらもう吹くしかないって感じですw

この際だから孫皓だけといわず、孫リンや岑昏、呂壱、曁艶(エンの字は本当は表外だけど…)、魯班一派とかまとめてふっ飛ばしますかね?

>劉表
そしてたった今あぷろだの存在を思い出した海月がいる_| ̄|○

おお、確かに鶏冠ですなこりゃ。
でもあまり違和感なく美人の劉表様ですな(;´Д`)GJ!

23 名前:雑号将軍:2005/08/09(火) 20:01
 〜益州の奇才 in蒼天大花火大会〜 T

 今日は八月八日。蒼天学園きってのお祭り、蒼天大花火大会が開催される。
 蒼天学園三大イベントの一つだけあり、すごい賑わいを見せていた。
 そんな、空も暗み始めた頃、一人の少女が花火大会の入場口に足を踏み入れた。
「ふう、暑いなあ。実際のところ、浴衣と洋服ってどっちが暑いんだろう」
 浴衣姿の少女が顎に手を当て、考えている。彼女の名は張松。本人曰くほとんど呼ぶものはいないらしいが、永年ともよばれる。
 今日は去年買ったばかりの浴衣を纏って、花火大会に参加していた。
「孝直と子度、遅いなあ。やっぱり、早すぎたなあ」
 どうやら、誰かを待っているらしい。その証拠に張松は辺りを見渡していた。
「夜店の方を回ってるのかな?あたしも行ってみるかな」
 そう言うと、白に桜と梅の花をあしらった浴衣姿で、てくてくと夜店の建ち並ぶ、会場内へと歩いていった。
 
 いざ、夜店に入ってみると、かなりの規模に驚かされた。定番のわたあめ、焼きそば、金魚すくい、ヨーヨー釣りを始めとして、みそ汁とか占い、ブロマイドなどといった、祭りとは思えない店も建ち並んでいた。
「まだ、孝直たちも来てないみたいだし、みそ汁でも食べてみるかな」
 どうやら、みそ汁独特の匂いには張松も勝てなかったらしい。赤を基調にした店で立ち止まった。
 店員は二人いて、一人は金髪でちょっと怖そうな人、もう一人は茶髪で髪を後ろで束ね、言うなればパイナップル頭の人だった。
「いらっしゃい!どれがいい?俺たちのみそ汁は天下一品だぞ。なにせこの甘寧様がつくってるんだからな!」
「興覇、そこまでにしときな。彼女が圧倒されてるじゃないの。どうする?どれも、おいしいんだけど、あたくし魯粛のお薦めは大根のおみそ汁だね」
 張松は二人に圧倒されてしまっていて、なにも考えてはいなかった。最初は悪そうに見えたが、どうやらそうではないようだ。
 張松は魯粛と名乗った少女の薦めに従って、大根のおみそ汁を貰うことにした。もちろん、代金は払ったが。
 さっそく、大根を掴み、口に入れてみると、これがまた絶品であった。
大根が硬すぎず柔らかすぎず、さらに大根がいい具合にみそ汁とマッチしているのだ。
夏にもかかわらず、張松はみそ汁の熱さを忘れて、汁まで飲み干してしまっていた・・・・・・。

「さ〜て、次はどこに行こうかなあ」
 そう言って、張松があたりを見渡していると・・・・・・。
「ねえ、彼女。モデルやってみない?」
 不意に張松は後ろから声を掛けられた。声を掛けた張本人の名は・・・。
「あたし簡雍。どうモデルやってくれるなら、ブロマイドもサービスしとくよっ!」
 そう、闇に生まれ、闇に生きる、必撮仕事人こと簡雍である。どうやら、今回のブロマイド販売店もこの女の仕業らしい。
 張松は面倒に巻き込まれたくないのか、振り返ろうとせず、ただただ歩を早めた。
 簡雍はまだ張松の後ろ姿しか見ていないが、確かな確信があった。言うなれば歴戦の勘というヤツだ。
(髪を巻き上げて、うなじを見せるのが、和装するときのポイントであり、一番綺麗に見えるところだって、関羽と趙雲が言ってたしね。あたしが今まで観てきたたなかじゃ、この娘が一番よ)
 簡雍は心の中でそう呟くと、すっと、前に飛び込み、張松の真ん前に立ちふさがった。
「お願いだから、モデルをやっ――」
 簡雍は張松の姿を見て、思わず息をのんだ。
あまりの美貌に目を奪われ・・・たのではない。彼女の飛び出た前歯に思わず息をのんでいたのだ。
 簡雍の勘、恐るるに足らず。しかし、これは簡雍にとって何よりの屈辱であった。
(あ、あたしがはずしたの!?「はずれなしの簡雍」と謳われたこのあたしが・・・・・・)
 簡雍が我に返ったときにはもう、張松の姿はなかった。

24 名前:雑号将軍:2005/08/09(火) 20:03
 〜益州の奇才 in蒼天大花火大会〜 U

「ふう、大変な目にあった。ああゆうのが一番面倒くさい」
 張松は悔しそうにそう呟くと、はだけた浴衣を整え、再び歩き出した。
「ふう、ちょっと疲れたね〜。どっか、落ち着けると・・・・・・あった」
 どうやら、文系の張松には簡雍を振り切るのが答えたらしい。さらに、浴衣姿で走り回るのは想像以上に体力を使うのだ。
 張松は辺りを見わたし、休憩所と書かれた看板にみちびかれるようにとぼとぼと歩いていった。
 そこで張松は缶ジュースを一つもらい、空いていた席に腰を下ろした。
「ふう、疲れたよ、ホント・・・。孝直と子度遅いなあ」
 頭をうつむけ、缶ジュースの栓を指で何度も弾いている。
 そうしていると、よくわからないが、横になぜか男が腰掛けた。なぜか男である。この蒼天学園は言うまでもないが女子校である。にも関わらず男子がいるのはなぜなのだろうか。
そんなことを考えている張松のお構いなしに男は腕を回してきた。
 その男はどうも酒臭い。どうやら、かなりできあがっているらしい。言うまでもないだろうが、この男が二〇才未満だ。
「なあ、俺と今から、蒼天の花火を堪能しね〜か〜?」
 どうやら(これでも)ナンパしている(つもり)らしい。
 張松は鬱陶しそうに方に回された手を振り払うと、男の方に振り返り、睨み付ける。
もちろん、自慢の前歯を見せることも忘れてはいない。
「結構です!先客がおりますのでっ!」
 本来、これだけきっぱり断られたのであれば、正気の人間なら諦めるものなのだが、不幸にもその男は正気ではない。酔っぱらっているのだから。
男はなおも張松を絡んでくる。
「いいじゃあね〜かよぅ。俺と一緒にこの花火会場を彩ろうじゃないか」
 はっきり言って、くさい。いや三流の口説き文句だ。こんなことを言われて、ついて行く者は99%いない。
 さすがの張松も笑いを堪えきれず、大声で笑った。と思ったら次の瞬間、辺りに怒声が響き渡った。
「黙らっしゃい!これ以上無駄口ばっか叩いていると、本気で噛みつくよっ!悪いけど、あたしのはかなり痛いよ」
 張松の一言は凄まじいほどに現実感があった。ハムスター並の前歯で噛みつかれてはいかに強靱な肉体を持っていたとしても、悲鳴を上げ、激痛にもがき苦しむことだろう。
 それにも、男は動じず、むしろ逆上しているのか、顔が真っ赤になってきた。まあ単に酒が回ってきただけなのかもしれないが・・・・・・。
「んだとう、俺に逆らうってのかっ!」
 男は右腕を振り上げ、殴りかかろうとした・・・が、張松が目を開けたときには、反対側のテーブルに叩きつけられていた。
 そのテーブルの真ん前には金髪で顔はこんがりと焼けた(一世代前の)女子高生だった。
 その少女の両目は血走り、こめかみをひくつかせていた。怒っている、かなり怒っている。
「あんた、あたいがいながらナンパたぁ、いったいどういう了見だい!」
「ち、ちがうんだ、ちがうんだよ・・・」
「なにが違うんだい!こっちにきな!たっぷり聞いてやるからよっ!」
「い、痛い、痛いって。み、耳がちぎれるー!!」
 男の悲鳴もなんのその。女子高生は男の耳を掴みぐいぐいと引っ張っていった。
 彼らが、後々の帰宅部連合と激戦を繰り広げる、孟獲と祝融だとはこの休憩所にいる者は誰も知らなかった・・・・・・。

25 名前:北畠蒼陽:2005/08/09(火) 20:03
>萌えの概念
自分で『萌え』ってのを文章で書きづらいなぁ、と苦手意識持ってたので褒めていただけるのは嬉しい限り。
この調子でフタコマメでは王昶&王基&諸葛誕の水着とサンコマメでは楽チンが……!(予告
……フタコマメ、あんまり萌えねぇ〜(推敲中

>劉表
お〜、劉表だ劉表だ〜。
劉表ってビジュアル化されるのはじめてちゃいますのん? 知らんけど。
性格的には……蒼天航路みたいなのがよろしいか、やっぱり!
野心むらふらな人ダイスキです。

26 名前:北畠蒼陽:2005/08/09(火) 20:07
>雑号将軍様
わぁー!
流れぶった切ってごめんなさい!
空気読めなくてごめんなさい!
大丈夫! 私、空気どころか英語も読めないから!(ダメ人間
いやはやとほほ……

27 名前:雑号将軍:2005/08/09(火) 20:08
23,24の続き
 〜益州の奇才 in蒼天大花火大会〜 V  

「なんか今日、悪いことばっかだなあ」
 張松はそう言いながら、会場を何度も行き来していた。そうして、そんなことを繰り返すこと数回、曲がり角に差し掛かった張松は、うつむいていたため、前から来る二人組に気がつかなかった。
 案の定、張松は体当たりする格好となり、しりもちをついてしまった。
「あっ、ごめん・・・って、永年!」
「う〜ん、孝直〜。探してたんだからー。遅いなあ」
「悪いな。孝直が行く途中で、なんでも『小等部の頃、靴踏まれたヤツを見つけたから復讐する』とか意気込んでなあ。そんでそいつが今日履いてた靴を使い物にならなくしてると、まあこうなったと・・・・・・」
 と語るのは張松の数少ない友人、孟達である。
「あらあら、相手もお気の毒なことで。まあ孝直にしたのが運の尽きだあねえ〜」
 張松の言葉に孟達がうんうんと頷く。法正はさっきからひたすらほくそ笑んでいる。よほど恨みを晴らせたのがうれしいのだろう。
「あら、永年、その浴衣新調したの?」
 張松の浴衣姿を見た、法正が言う。それに張松は笑って頷いた。
「じゃあ、行こっか!」
 こうして、張松たち三人の祭りは今始まった・・・・・・。

 参考までに、法正、孟達の服装(浴衣)を紹介しておこう。法正は青地にアザミの(薊)花があしらわれたタイプ。また孟達は黄色に白のチェック柄という珍しい浴衣を着ている。

 張松たち三人はしばらく夜店を回り、食糧を確保したために花火の開始時間ぎりぎりになってしまった。
「す、座れないね」
「しかたないさ」
「見れたらそれでいい」
 三人が焼きそば片手にそう言っていた、その時。
  ヒュ〜〜〜〜〜〜ドン!
 ついに蒼天大花火大会が開幕した。
 次から次へと、無数の花火がうち上がっていく。そして、それが宇宙という平原に花を咲かせていく。
 まさしく夏の風物詩であった。
 張松たちいや、会場に来ていた者たちはみんな、この美しい光景に目を奪われていた。時には「おお〜」という感嘆の声さえ聞こえてくる。
 時間にして50分。しかし、張松たちにとってはあまりにも短く感じた。
・・・・・・最後の大目玉。
大きな音共にうち上がった、花火は暗闇の中を駆けていくただ一つの光明となった。今まで上がってきた花火とは、高さがまるで違う。
そして、今まで上がってきた花火の倍の高さまで駆け上り、華を咲かせた。
その大きさは比類するものなく、落ちていくごとに、赤→青→緑→金色と色を変えていく。そして中央には「蒼天」の二文字が金色に輝き続けていた。

「あ〜よかったー」
 法正が漆黒の大空を見上げて言う。
「見事だった。感動とはこのことを言うんだな」
 いちゃもんをつけるのが基本の孟達も、今回ばかりは文句の付け所がなかったのだろう。しきりに褒め称えている。
「来年はどこであるか、知らないけどさあ。またみんなで見よう!」
「「「おう!」」」
 
 しかし、この約束が果たされることはなかった。
なぜなら来年の二月、劉備に通じ、益州校区を譲ろうとさせていたことが、発覚し、階級章を剥奪されることなる。
そして、張松はいじめに遭い退学。張松の退学と同じくして孟達は法正と共に築き上げた帰宅部連合から離反し、連合生徒会員となった。
こうして三人がこの蒼天学園で再び花火を眺めることはなかったのである・・・・・・。

28 名前:雑号将軍:2005/08/09(火) 20:19
はあ、はあ、はあ…。き、教授様…。な、なんとか先陣、間に合いました…。で、この作品、前夜祭の方がまだマシなような気が…。ぐだぐだしてしまいました…。
こうしてみると今回の僕、益州陣営ばかりじゃないかっ!!

>北畠蒼陽様
いえいえ、なんのこれしき。お気になさらずに。パソコンがフリーズしてた僕の責任ですし…。

>海月様
すみません…。先陣いただいちゃいました…。孫チンたちもやっちゃいましょう!もう一発どでかいのでいきましょう!

>劉表
お見事です!これこそ劉表お姉様ですよっ!42.195キロなんてとんでもない。十分ですよ!

29 名前:北畠蒼陽:2005/08/09(火) 20:58
「……残念無念っていうじゃない?」
「いうね」
クーラーのきいた部屋の中で王昶と王基はだらけた格好でなにやら話していた。
王昶はすでに制服ではなく黒いドクロマークのTシャツとグレーのミニスカートという格好で執務机の上に両足を投げ出し、扇子で涼んでいる。
普段はマジメな王基ですら学校内だというのに胸の辺りまでブラウスのボタンをはずしソファに腰掛けている。
「……『念が残ってるの』と『念が無い』のが同列ってのはおかしくない?」
「あー、なるほどねぇ」
王基の言葉に王昶は感心したような声を上げた。
「じゃ、次、こっちね。『偽』って漢字があるじゃない?」
「……あるね」
今度は王基が王昶の言葉に頷く。
「偽って『人』の『為』になる、って書くじゃない」
「……そうだね」
うんうん、と頷く。
「なんねーよ」
王昶は言い切った。
「それともあれかな? 『嘘つきはその人を傷つけたくないから嘘をつくのだ。優しい人なのだ』って意味なのかな?」
「……かっこいいね、それ」
王基は頷いた。
「あんたら、なにやってんだ?」
「ん、素朴な疑問対決」
呆れたような諸葛誕の言葉に王昶は事もなげに答えた。疑問を出すのが勝負であり、疑問に答えるのが目的の勝負ではないらしい。


夏い暑のフタコマメ


「ぅあーづッ! ぅあーづッ!」
真っ赤な顔の王昶が神速で扇子を動かしていた。
「こ、公休、あんたねぇ……なんでわざわざここまできて……」
校舎の一室……王昶の執務室。
そこは異様な熱気に包まれていた。
クーラーはすでにスイッチを切られ、動く気配もない。
王昶ははしたなく襟元を大きく開けて扇子で胸元に風を送ろうと必死になっていた。
また王基は……
「……ぁっぃ」
下半身はソファに腰掛けたまま上半身は机に突っ伏している。顔面蒼白。あと異様にだらだらと流れる汗。
なぜこのようなことになったのか……
「いや、ごめん。私、冷房に弱い体質だから」
1人、このむしむしとした部屋の中で平然とした顔で、それでもわずかに悪そうに諸葛誕が答えた。
諸葛誕がクーラーを切ってしまったのである。この部屋のボスは王昶なのに! 勝手に!
「……ごめんぶんじょわたしもうだめかも」
「わぁー! 伯輿、死ぬなー!」
もう王基のほうは余裕がなさそうだ。
「……わたしがしんだらうみのみえるおかのうえにうめてくださいひなげしのはながさくおかがいいですあとおかあさんにおうきはゆうかんにたたかいましたとつたえてください」
「伯輿ッ! 伯輿ーッ!」
なんの三文芝居だ、これは
「あー……」。
さすがにバツの悪そうな顔をしていた諸葛誕は……少し考えていいことを考え付いた、というように手を打った。
「プールいかない? いや、おごるわ。悪いことした、みたいだし」
みたいだし、って自覚はないのか。

30 名前:北畠蒼陽:2005/08/09(火) 20:58
王基がなにも言わずに立ち上がりふらふらと部屋の出口に歩きだす。
「……みずぎとってくる」
ふらふらふら。
「ありゃ死んだな」
その後姿を見ながら王昶が呟いた。
死にはしないと思う。

……
……
……
「……生き返ったかも」
プールまでの道のりで干からびていた王基は水の中でようやく息を吹き返した。
ハイネックタイプのワンピースで赤い花柄がちょっとオシャレな雰囲気である。
「いや、いんだけどさ……帰り、大丈夫?」
それを運んだ王昶がげんなりしながら呟く。
白いハーフトップに下半身はネイビーブルーのカーゴパンツ。あと日差しを避けるためにサングラスをかけている。
「……それよりあれ」
「うわ、すげぇ」
王基が指差し、王昶が唖然とする。
「あ、あんまり見ないでよ」
諸葛誕は銀のビキニだった。

プールサイドのパラソルの下で王昶と諸葛誕はぼ〜っとしていた。王昶はジンジャーエールで諸葛誕はメロンソーダ。
ちなみに王基は浮き輪に乗っかったまま流れるプールに流されている。それなりに楽しそうだ。
「いやー、それ女同士3人でプールに来るような水着じゃないって……別にいいんだけどさぁ」
「い、いいじゃない、そんなこと!」
恥ずかしがる諸葛誕。
恥ずかしいなら着なければいいのに。
それを流れるプールの中か狩人のような目で見ていた王基は一言呟く。
「……男ね」
呟いたんだけど流れるプールなのでそのまま流されていった。
「あー、いってらっしゃーい」
王昶が手を振ると王基がはるか向こうでぷかぷか浮かびながら手を振り替えした。平和である。
「で、男なん?」
「な、ち、違うわよ! そ、そんなわけないじゃない!」
諸葛誕、顔真っ赤。
「あやし〜い」
「あ、あや! あやや! 怪しくなんかないわよ!」
あやや、ってなんだ。
「で、公休」
「はぁはぁ……なによ?」
興奮する諸葛誕をどうどう、と宥めるように王昶が声をかける。
「で、その男ってかっこいい? その人の友達のかっこいい男、私に紹介してちょ」
「ちッがーうッ! っていってるでしょーッ!」
諸葛誕が絶叫した。
世界はまだまだ平和である。

「……♪」
王基はまだ流されていた。
世界はまだまだ平和である。

……
……
……
「……遊んだ」
「あんた、流されてただけじゃん」
王昶が王基にツッコみ、諸葛誕は苦笑する。
夕闇が差し迫ったプール。
今日は夏祭りで夜遅くまでプールも開放されている。
「もう、そろそろ、かな」
諸葛誕の言葉に2人は空を見上げる。
この夕闇の空を彩るのは……

花火が上がった。

31 名前:北畠蒼陽:2005/08/09(火) 21:03
うふふぅ、3行省略されてしまいましたよ(ノ_・。
諸葛誕はないすばでぃ希望!
個人的には白いハーフトップすき〜。
あと壊王基が自分の中で雑君保プのイラストみたいな目が異様に大きいような……あー、王基、もうダメだ。

……このペースで祭り参加して大丈夫なのか、自分?
ほんとに? ほんと?
じゃあそれー。

32 名前:★教授:2005/08/09(火) 22:56
◆In the Moonlight -REGRET SIDE-◆


「中々似合うでしょ」
「へぇ…意外と似合うもんだね」
「漢升さんも決まってますよ」
 法正と黄忠はお互いの浴衣を褒め合う。最も法正は禁止ワードの類を避けて会話しているので若干の間が空いているのだが。
 その横では趙雲が厳顔の浴衣を着付けしている。慣れた手付きで帯を腰に巻きつけて結ぶ匠の手腕の前に浴衣は型崩れする事なく厳顔の引き締まった体に纏われた。白地に桔梗柄の浴衣は精悍な厳顔にとてもよく映えている。
「え、もう終わったのか?」
 あっという間に終わった着付けに自分の体を見回す厳顔ににこりと微笑みかける趙雲。ちなみに法正と黄忠の着付けも彼女が手掛けた。赤地に紫陽花柄の浴衣が法正、ベージュ地に笹柄のモダン風味溢れる浴衣が黄忠である。
「ごめんね、助けてもらっちゃった上に着付けまでしてもらって」
 法正、黄忠、厳顔の三人がぺこりと趙雲に頭を下げる。当の彼女は慌てて『大した事してませんから』と狼狽していた。褒められるのはあまり慣れてないのだろうか。
 趙雲の着付け開始から遡る事30分前――

「何だ、これ…えと、これをこうして…」
「何か違うよーな…イタタっ! キツイキツイ!」
「わ、悪い。法正、その着付け解説は本当に合ってるのか?」
 厳顔は帯に悪戦苦闘しながら困った顔をしながら解説書を見つめる法正に尋ねる。
「合ってる…はずだけど、聞いた事ないような言葉もちらほら…」
「しっかりしてよ……って、これは無いでしょ」
「取り敢えずそれでキープしておこう」
「チョウチョ結びなんかしたら帯に皺寄るじゃない!」
「うっさいな、それなら自分でやりな!」
 イライラの限界に達している姐さん方、遂に口喧嘩が勃発した。このままでは格闘に発展するのは時間の問題だ。この口喧嘩の声量に法正のイライラも臨界点を突破する。
「あーーっ! もうっ! 痴話喧嘩なら他所でやれーっ!」
「痴話喧嘩って何だ! アンタこそ憲和とヨロシクやってろ!」
「憲和は…関係ないっての!」
「今の間は何? あーやーしー」
「あ、怪しくない! 何さ、無駄にトシ食えばいいってもんじゃないわよ!」
「何をーっ!」

 …で、ぎゃーぎゃーと三人が喚く修羅場の傍を偶然通りかかった趙雲が冷静に場を処理したという訳である。御三方も冷静になって何度も互いに頭を下げ合う様子は貴重な光景だったとか。


 趙雲も『準備がありますから』と去って、若干日が傾いた頃。窓際でぼんやりと雲の流れを見ていた黄忠と厳顔に浴衣のまま机にかじりついている法正の姿があった。
 厳顔は何となしに柱時計に目を向けると、眠そうな眼に光が灯る。
「えーと、今17時前だから丁度いい時間だと思うわけで」
「そうね…じゃ、行こうか」
 姐さん方は巾着を手に取ると、忙しく筆を動かす法正に向き直る。
「それじゃ、私らは先に行ってるよー」
「んー。いってらっしゃーい」
 書類から目を離さず空いた手を振りながら二人を送る法正、事務仕事が多いのは祭の日も変わらないようだった。ドアの開閉音が耳に届いた後、法正は筆を置いて大きく息を吐き出した。
「浴衣まで着ちゃったけど…私、一人なんだよね…」
 ぼんやりと照明を見つめる法正。友人だった張松はもう学園にいない、そして孟達も傍らにはいない。いつか約束した『また三人で花火を見る』という言葉はもう現実にならない事は法正自身よく分かっていた。
 寂しい気はする。でも、現状に満ち足りてる自分もいる。これでは、もう三人で一緒にいたあの頃は楽しかったと胸を張って言う事が出来ない。
「私は…これでいいのかな…」
 誰とも無くぽつりと呟く。帰宅部を導く為に奔走した張松は階級章を奪われた上に惨めに学園を追い出されると法正達には行方も知らされなかった。孟達も当時に比べると登用される事が多くなったが現実問題で不遇と呼んでもいいかもしれない。
 だが、法正は違った。新体制になってからというものずっと重要視され、漢中アスレチック戦を勝利に導き、あの夏候淵を飛ばす鬼才までも発揮した。今や帰宅部連合に無くてはならない存在になっていた。しかし、それは余りにも対照的な自分と友人達との境遇を厭が応にも考えさせられる事になった。彼女もまた目には見えない心をすり減らしてきたのだ。
 法正はもう一度深い溜息を吐くと、浴衣の袖で目元を拭う。一人になると実際幅よりも広く感じられる会議室に苦笑する。
「これが私の望んだ物だったのかな…」
 書きかけの書類を封筒に差し込むと持参の鞄に詰め込む。…と、鈍い痛みが法正の腹部を内側から襲う。
「う…けほっ!」
 突然の衝撃に思わず蹲り、咳き込む。口の中に広がる赤錆びた鉄の味に口元を押さえていた手を見る。そこには――

「うそ…」

 自身の唾液に混ざっておぞましい程に赤い血が付着していた。驚く間も無く襲い来る鈍痛、そして心の衝撃に法正は意識を失った――

 後編へ!

33 名前:★教授:2005/08/09(火) 22:58
REGRET=悔恨

予定外の雑務の為、感想は明日以降…本当に申し訳ないです o... r2
後編は最終日前日くらいになりそうな予感… or2=3

34 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:20
「じゃあ姉さん、悪いけど後、よろしくね」
「ええ、気をつけてね。世方たちも世洪の言うこと良く聞いて、あと、思奥はまだ小さいんだから、目を離さないようにね」
「は〜い」
思い思いの浴衣を着込んだ妹たちが、その門から嵐のように飛び出していくのを見送って、虞翻は己の現在の境遇を思って溜息を吐かずに居られなかった。
確かに今の彼女は大学受験生である。しかも、家業の診療所を継ぐつもりで居た彼女の目指すは医学部一本。秀才で鳴らした彼女にとっても、何の受験対策もなしに合格できるようなものではないし、彼女自身もそれは良く解っている。
しかし実のところ、彼女は現在のレベルをキープできるなら、最難関といわれた第一志望校にも合格確実の太鼓判を押されるほどの成績を修めていた。この日はたまたま同窓会か何かで両親も不在だが、そもそも高校最期の夏祭りを楽しむ息抜きの時間を取ったところで、誰も異を挟むものは居ないし、何より彼女はその普段の風評に反して祭が大好きだときている。
そんな彼女が敢えて留守番に甘んじている理由、それは…
(もし私なんかに出会ったら、みんなきっといい気はしないわよ…ね)
彼女は心の中で、そうひとりごちた。

−真夏の夜のシンデレラ−

色々理由あって、彼女は夏休みこそ会稽地区の実家に居るのだが、現在は交州学区に籍を置いている。
事務経理に一流の才覚を有し、博学の彼女だったが、皮肉屋で正しいと思ったことは他人の心情を顧慮することなく主張して憚らないその性格が災いして、長湖部の幹部会から追われて左遷させられていた。
もっともこれは表向きのことであって、彼女が長湖部の危難を救うために敢えてそのつらい立場にたった結果ではあるのだが、それでもそのきっかけとなった部の懇親会での行動により、彼女のことを快く思わないものも多いだろう。色々有って「他人の感情を考慮する」ことに、過剰なまでに神経を使うようになった彼女は、なるべくならそういう機会を減らすべく努めていた。
(こんな祭の日に、みんな家でじっとなんてしてるわけないしね…折角楽しんでいるところに、私の顔見たら興ざめするだろうし)
そう自分に言い聞かせてみるも、やっぱり本音はその真逆。祭の中心地である常山神社からは数キロ離れているから、祭囃子やらなにやらが聞こえてこないことが唯一の心の救いではあったが、どうもそちらに気が行ってしまい、参考書を開いてみたところで集中できないでいた。
そして無意識に、彼女は呟いていた。
「はぁ……やっぱり行ってみたいなぁ…」
「ふふ、その願い、叶えて差し上げても宜しいですぞ?」
「え!?あ…うわっ!」
不意にそんな声が聞こえて、彼女は驚いて思わずのけぞり、その勢いで椅子から滑り落ちた。
「っつ…だ、誰っ?」
「こっちこっち」
コンコンと窓を叩く音。その音につられてそちらのほうを観ると、庭木のあたりに生首が…彼女に何ともいえないイイ笑みを向ける…。
「っきゃあああああああああああああああああああああああああああ〜!」
祭のせいで人気のなくなった会稽地区の静寂は、彼女の悲鳴に切り裂かれた。

虞翻はいまだ怒りの冷めやらぬ表情で、その闖入者−諸葛亮を睨めつけている。
「そんな怖い顔をなさらないでください。ほんの冗談ではないですか」
目の前の少女は少し困ったような…いや、大げさに困ったような仕草で悪びれもせずそう言った。横に居る付き添いと思しき少女も「うんうん」と相槌を打つ。
「…大いに心臓に悪いわ。寿命が十二年ほど縮まったわよ」
「それはいけない。寿命を延ばす良い呪いを知っておりますのでお教えいたしても宜しいですよ?」
そう言いながら白衣のポケットから何かを取り出そうとする諸葛亮。
「いらん。てか何しにきたのよアンタは。私も子瑜も受験勉強で忙しい身なんだから、せめて邪魔にならないように祭にでも逝ってなさいよ」
宛がわれた麦茶を一口啜り、その皮肉も何処吹く風。
「そこです先輩。あなたこそ本当は祭りに行きたくて行きたくてしょうがないはず。総ての志望校合格率がA判定というあなたであれば、息抜き程度に祭を見に行く事くらいで誰も文句のつけようがないでしょう。それが留守番役に甘んじているところ、何か理由ありと思われますが…」
一息に、かつ淀みない言葉で己の本心をずばり言い当てられ、虞翻は呆気に取られた。何で自分の模試の結果を知っているのかだとか、どうして今自分が留守番をしていることを知っているのかだとか、色々突っ込んでやりたいところが多すぎて巧く言葉にならない。
「まぁ色々気になるところがあることはお察ししますが、細かいことですので。そんなことより、誰にもあなただと解られずに祭を楽しむ方法をお持ちしたのですが…どうです、お試しになりませんか?」
「…何よ、その方法って」
相手の態度にもうツッコむことをあきらめ、その要点だけ聞いてやってさっさとお帰り願うほうが良い…虞翻はそう思った。
その一言にしたり顔の諸葛亮、白衣の内ポケットから小さな瓶を取り出した。
中には何かの液体が入っている。そっけない無地の小瓶が、なんともいえない怪しさをかえって強調している。
「…………………何よ、これ」
「私が最近開発した変身薬の完成品で、古来より“化ける”と言われるモノのエキスを凝縮して合成したモノです。あ、当然これ内服薬ですんでそこんとこヨロシク」
「いらんわ! 誰がそんな危ないもの飲むのよ!」
「じゃあ、私が」
「え?」
言うが早いか、諸葛亮はそのふたを開け、その一滴を飲み下す。次の瞬間、その身体が光に包まれた。
「あ…」
驚きを隠せない虞翻の目の前で、光は徐々に人の形を取り戻す。
そして諸葛亮だった人物は、なんと孫権の姿に変わっているのだ。
「どうです? 信じていただけましたかな?」
口調こそ諸葛亮のものだが、外見と声は孫権だった。
そして更に爆音ひとつ鳴り、煙の中から元の諸葛亮が姿を見せる。
「一滴程度ならまぁこのくらいですかね。このひと瓶あれば、大体三時間弱もつでしょう。どうですか先輩、あなた以外の人物に化ければ、あなたは気兼ねなくお祭に行けるのでは?」
呆然と事の成り行きを見守っていた虞翻だったが、
「それって…知っている人でなくても化けられるの?」
「勿論。飲むときにイメージしたものに化けますから、人間でないものにも化けることが出来ますし、見た目の一部だけを変えることも可能です」
「解った…お願い、それを譲って。あとで必ずお礼するから」
そう言って、その手を取った。諸葛亮は頭を振って、
「いえ、礼などいりません。その代わりと言っては何ですが、後日写真を取らせて頂きたいのだが」
「そのくらいならお安い御用だわ」
その申し出に、虞翻は二つ返事で返した。

35 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:21
諸葛亮という珍客が去って程なく、彼女は仕舞いこんでいた、家族に内緒で仕立てたばかりの浴衣を引っ張り出し、それを身につけた。時間は午後七時を少し廻っている。これから来るバスに乗っていけば、会場に着くのは七時半と言ったところだろう。
祭は十時までだが、それより少し前に会場を離れれば問題ない。
「よし…!」
彼女は姿見の前に立ち、瓶のふたを開ける。
一体どんな材料を使っているのかは知らないことに不安を覚えたが、予想していたような妙な匂いもない。虞翻は意を決し、その小瓶の中身を一気に口の中に流し込んだ。
味など感じる暇もなかったが、意外にすんなり入っていったのでたいした味もなかったかもしれない。一瞬、身体が浮くような感覚がして…次の瞬間。
「わぁ…」
姿見の前にいたのは、つややかな黒髪で、はしばみ色の瞳を持つ少女だった。彼女は自分のトレードマークとも言える髪と瞳の色だけを変えたのだが、それだけでもこうも変わるものかと、彼女は素直に感動した。
(これなら、絶対に私とは解らない…)
喜びに浸っている間もなく、彼女はバスの時間が近づいていることに気づいた。セミロングの髪をアップに結い上げると、財布や小物を入れた巾着を手に、こんな日のために買っておいた下駄を履き、彼女は近所のバスターミナルへと急いだ。

「待って〜、待ってくださぁぁい!」
バスのドアが閉じ、今まさに走り出そうかと言う刹那にそんな声が聞こえてきた。その方向をちらとみると、ひとりの少女が駆けて来るのが見えた。見かねた虞翻は運転手さんに声をかけた。
「あの、すいません…ちょっと待ってあげてください」
「ああ、いいよ」
年配の運転手さんは、苦笑して手元のスイッチに手を伸ばす。
「っはぁ〜間に合ったぜこんちくしょう…」
「も…もうっ! 慣れない服なんて着ようとするからそうなるんだよっ…義封の馬鹿っ!」
(何ですと?)
ぎょっとしてそちらを向き、よく目を凝らすとそれは確かに知った顔だった。結っていただろう髪を乱れさせ、折角着付けた浴衣もかろうじて“着ている”状態のふたりは陸遜と朱然のふたりだった。
「そいじゃ、そろそろ出すよお嬢さん方。連れはもういいのかい?」
「あ…い、いえ大丈夫です、ありがとうございますっ…わ!」
肩で荒い息をしていた陸遜、運転手さんの一言にお礼を言おうとして慌てて立とうとした拍子に着物の裾をふんずけてこけそうになった。虞翻はとっさにそれを抱きとめた。
「っと…大丈夫?」
「え…あ、大丈夫です…すいません」
その時、バスを動かし始めた運転手さんが更に言った。
「お嬢ちゃんたち、その姉さんにもお礼言っとけよぉ。その姉さんが何も言わなきゃ、出すとこだったんだからねぇ」
「そうだったんですか…助かりました」
「恩にきります」
再びお辞儀する陸遜と朱然。どうやら、声を聞いても虞翻の正体には気がついていない様子だった。
「ううん、当然よ。あなたたちもお祭に行くの?」
「ええ。部…いえ、友達と待ち合わせで」
「つっても、置いてきぼり食っちゃって。もう合流無理そうだから…そうだ、ここであったのも何かの縁、お姉さんご一緒しませんか?」
あっけらかんと笑う朱然に、陸遜は嗜めるように肘で小突く。
虞翻は一瞬迷った。考えてみれば自分ひとりで行ったところで連れの当てなどない。変身している以上、妹たちに会った所でどうしてみようもないし…それに、向こうが自分の正体に気づいていないなら、気兼ねなく話すことも出来よう。
「いいの?」
「ええ、勿論。いいだろ伯言、お姉さんもいいって言ってるぞ」
「もう…強引なんだから。すいません、ご迷惑でないんですか?」
「わけありで、特に待ち合わせもなくってね。折角だから、連れは多いほうが楽しいわ」
「なら問題ないやな。あ、あたしは蒼天学園二年の朱然、字は義封。で、こっちが…」
「同じく二年の陸遜、字は伯言です」
名乗る段になって、虞翻は一瞬言葉に詰まった。流石に本名でも同姓同名で誤魔化しきれるものではない。彼女はふと、脳裏に浮かんだ有名小説の主人公の名前を思い出していた。
「私は…夏っていうの」
案の定、本の虫の陸遜が「あの小説の主人公と同じなんですね」と返してきた。もう虞翻も苦笑するしかなかった。

36 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:21
それから二十分足らずバスに揺られていたが、その先々でも少女たちを拾っていき、終点の常山神社に着く頃にはバスは満員御礼状態。そのあいだも虞翻はその正体に気づくべくもないふたり(というか、八割は朱然)の質問攻めにあっていた。
気分の乗ってきたらしい虞翻も、自然と言葉が弾むようになっていた。自分は今日しかこの地に居れないだとか、ここを去る想い出に祭を見に行くつもりだったとか…そんなこじ付けにも余念がなかった。このあたりは、流石に浮かれているようでもやはり虞翻は虞翻だったと言うべきか。
「よ〜し、到着〜♪」
バスの中できちっと服装を整えた朱然、陸遜に続いて、虞翻もその場に降り立つ。終バスは十時過ぎに一本あるので、その前のバスで帰れば問題なかろう…と虞翻は考えていた。
「まだ花火までだいぶ間があるよね。どうする? 民謡流しにでも参加しとく?」
どうやら朱然の頭の中には「それでも孫権たちと合流すべく悪あがきする」という選択肢は完全にないらしい。恐らく、偶然に鉢合わせれば僥倖、くらいの感覚でしかないのだろう。向こうから彼女たちに連絡を取った気配がないところをみると、多分元歎あたりに占いで探させるか、偶然に鉢合わせというシチュエーションを期待してわざと放っているのだろう…虞翻は、そう考えていた。
「そうねぇ…放送かけて呼び出してもらうのもなんだし…たまには私たちだけで別行動、偶然鉢合わせてラッキー、って言うのもいいかもね」
どうやら陸遜も同じ考えのようである。こういうアバウトなところをとやかく言うものも居るが、そういうのも長湖部ならではのものでる。そして虞翻もそういうものが嫌いではなかった。
「夏さんもいいよね?」
「え? あ…ええ」
一瞬、自分が偽名を使っていることを忘れて答えに詰まったが、虞翻はぼーっとしていたふりをして誤魔化した。
その時、境内のほうから祭囃子の音楽が聞こえてくる。
「あ、もう始まった。ふたりとも、早く早くっ」
矢のように飛び出した朱然に、一拍おいて陸遜が慌てて叫んだ。
「ちょ…そんなに急いだって一曲めはもう…」
「ほら、あたしたちも行こ」
「わ…夏さんまで…もうっ」
虞翻は陸遜の肩をぽんと叩いて、その後に続いて駆け出した。
振り返ったときに観た陸遜の膨れっ面が可笑しくて、虞翻は笑みを隠すことが出来なかった。

一方、そのころ。
「こら世龍に世方、無駄なもん買ってんじゃない! 帰りのバス代なんて立て替えてやんないよっ!」
黒のノースリーブに白のチノパンといういでたちの虞レは、目の前の人混みからたこ焼きを手に飛び出してきたふたりの妹を咎めた。着ているのが橙の振袖と緋の振袖、そして髪型がショートカットとツインテールという違いはあったが顔立ちは瓜二つのこのふたり、虞レとは四ツ歳の離れた虞聳、虞キの双子姉妹である。
「え〜!? これは仲翔お姉ちゃんの分だよ〜」
「あたしたちふたりで出し合ったから大丈夫だよ〜」
その双子は一様に膨れっ面になり、声を揃えて反論する。
「お馬鹿。もう帰るんならまだしも、どうせそのつもりないんでしょ? 帰り際に買えば余計な荷物を増やさなくていいって思わないの?」
「「うぐ…」」
この正論の一撃であっさりと口を噤む双子。その殊勝な行為は褒めてやるべきだが、まだまだ考えが足りないようだ。虞レは苦笑し「やれやれ」と頭を振って、
「まぁ買っちゃったモノは仕方ないわ。包んでもらって袋に入れてもらいなさい。そうすれば落とさなくてすむかもしれないわ」
と助け舟を出してやった。
「…うん」
「わかったぁ…」
悄気てつまらなそうにしていた双子だが、気を取り直して先刻の人混みの中へまぎれていった。そのとき。
「姉さ〜ん、世洪姉さん大変だよっ!」
駆けて来たのはセミロングに白のワンピースを身につけた少女。虞レの年子の妹、虞忠である。
末妹の虞譚がトイレに行くと言い出したので、それに付き添っていたのだ。それが血相変えて戻ってきたものだから、虞レは瞬時のうちに何が起きたか、その七割方察していた。
「思奥が…思奥が居なくなっちゃったんだよ〜!」
うわ、やっぱりか…と彼女は頭を抱えてしまった。
こんな時、自分の頭の回転がもう少しばかり遅ければ良かったのに…と、どうでもいいことを後悔する虞レだった。
「トイレからあの娘出てきたのは観たんだけど…あの娘あたしに気づかないで人混みのほう行っちゃって…どうしよう姉さ〜ん」
「落ち着きなさい世方、とにかく、祭の本営探してみよう? それで放送かけてもらうなり探してもらうなりするしかないわ…」
涙目でおろおろするばかりの妹を宥め、戻ってきた双子姉妹への説明もそこそこに、虞レは妹三人を引き連れて境内のほうへと向かっていった。

「ありゃ…あの娘、迷子なんかな?」
「え、何処に?」
人混みに何か目ざとく見つけたらしい朱然の呟きに、陸遜もそちらに目をやった。
「何処にいるのよ? 見間違いじゃないの?」
「あ、疑ってるわね…こっちだよこっち」
「ちょ…ちょっと」
朱然はそう言って陸遜の浴衣の袖を引っ張った。抗議の言葉も聞いてるんだか聞いていないんだか。虞翻もその後に続く。
「ね、どうしたのお嬢ちゃん。お家の人とはぐれちゃった?」
朱然の声に混じって、しゃくりあげる少女の嗚咽がかすかに聞こえた。人混みから顔を覗かせ、少女の顔を見た瞬間に虞翻は絶句した。
(思奥! あ…あの娘たちあれほど目を離すなって言ったのに〜!)
虞一族の特徴的なプラチナブロンドに、やや紺を帯びた黒の瞳。そこにいたのは虞翻とは十も歳の離れた末妹の虞譚であった。
「まいったなぁ…なんかとんでもない厄介事背負い込んだって感じ?」
「見つけたのは義封でしょ、もうっ。それに見つけた以上、放っておけないじゃない」
「う〜ん…」
両の目からぼろぼろと大粒の涙をこぼし、泣きじゃくる少女への対応に困惑する朱然と陸遜。
火のついたように泣き出した妹の姿に、虞翻も眼前の妹の不憫さに同情するやら、こんな事態を巻き起こした会場のどこかにいるだろう不甲斐無い妹たちへの怒りやらで泣きたい気分だった。当然ながら、現在変身中の長姉が目の前にいるだろうなんてことに、虞譚が気づいている様子もなさそうだ。
「仕方ないなぁ…ここはひとつ、祭の本営まで連れて行ったほうがいいと思うわ」
「あ…そうよ、夏さんの言うとおりよ。それがいいわ」
「え〜、今行ってきたばかりなのに〜? ぐずぐずしてるといい席取られる〜」
朱然の無責任な一言に、虞翻は正体を隠していることを忘れ、思わずその頭に拳骨の一発でも見舞ってやりたい気分になった。
「呆れた…見つけた以上責任とんなさいよ」
「へーへー、解りましたよ〜だ」
陸遜がそう嗜めると、仕方ないなぁ、と言わんばかりの表情で朱然もそれに従った。

37 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:22
「部長〜っ、こっちこっち!」
見晴らしのいい土手の一部を占拠した少女たちが、そこに姿を現した少女たちに呼びかけた。長湖部長・孫権を筆頭とした何名かの食料調達組が合流を果たし、戦利品の分配を開始した。
合宿上がりの着の身着のまま、体操着の半袖にハーフパンツといういでたちは凌統、朱桓、潘璋などの体育会系。
ばっちり浴衣を着付けているのは部長孫権を始め、顧雍、朱拠、薛綜といったお嬢軍団に、意外なところでは周泰がこの仲間に入っていた。普段流すままにしている銀髪を綺麗に結って、いざ着飾ってみればまるで別人のようであった。それで散々からかわれてしまったせいか、彼女は何時も以上に引いた位置にいる。
それでもって思い思いの私服を身につけているのは諸葛瑾、谷利、潘濬、そしてお目付け役の張昭といったあたり。諸葛瑾は白のワンピース、潘濬らも涼しげに軽装になっているのに、何故かごっそりと色々着込んでいる張昭。
「なぁ…なんであのねーさん、あんな暑苦しい格好してやがるんだ?」
ひそひそ声で隣の吾粲に耳打ちする潘璋。
「知りませんよそんなの。あたしらに対するあてつけかなんかじゃないんスか?」
「言えてる、観てるだけで暑っ苦しいわね、アレ」
うんざりした表情の歩隲に、凌統も皮肉たっぷりに相槌を打つ。朱桓もそれに続く。
「こんな蒸し暑い日に、どー観たって冬物のロングスカートに長袖の上掛けだろ? 正気の沙汰じゃないよな〜」
「それとも単に年寄りだから寒がり…げ」
「なぁんですってあんたたちぃ〜!?」
半袖パーカーにキュロットスカートという私服組の全Nがそこまで言いかけたところで、背後にものすごい形相の張昭が睨みつけるように立っていた。たちまちにして、彼女らの周りにいた無関係な少女をも巻き込んで、張昭の怒りの説教が飛ぶ。
「相変わらずねぇ、あの人も」
「連中も面白がって聞こえよがしにいうのも悪いんだけどねぇ…どっちもどっちだわありゃ」
それを離れた位置で眺める諸葛瑾と厳Sも呆れ顔である。
「そういえば、結局伯言たちには会えませんでしたね。承淵たちも何処にいったもんだか」
「ええ…元歎曰く中学生軍団は帰ったようだし、伯言たちは会場の何処かにいるってことなんだけど…」
厳Sの目配せを受け、草の上においたタロットから目を離し、なにやら呟く顧雍。
「居る事は確かだけど、人が多すぎて巧く気配がつかめない、って?」
顧雍がこくり、と頷くのを見て、肩を竦ませる厳S。
「元歎先生の占術を持ってしてもだめとなりゃ、諦めるしかないですかね?」
「だから来るのを待って、合流すればよかったのよ。どうせ急ぐことだってなかったんだし」
「そうだね…でも、いるんだったら帰り際にばったり出会うかもしれないし」
諸葛瑾の尤もらしい意見に、ちょっと残念そうな表情の孫権。
その時、一発目の花火が、轟音を伴って夜空に大輪の花を咲かせた。

そのころ、境内脇の本営に、木々の隙間から花火を眺めてる少女が四名。
言うまでもなく陸遜、朱然、そして変身中の虞翻とその妹虞譚である。結局放送を掛けようにも、虞譚は見ず知らずの娘三人はもとより、運営委員の大人たちにも警戒して口を利こうともしない。目の下を真っ赤に腫らして、不安そうに俯いているままだ。
仕方ないので迷子がいるという放送だけ掛けてもらい、心当たりのある人間が来るのを待つことになった。
「ちっくしょ〜…とんだ災難拾っちゃったな〜」
「あんたのせいだあんたの。それより、私思ったんだけどさ」
不満げの朱然だったが、陸遜が小声で、
「あの娘、よく観ると仲翔先輩に似てない?」
「ん?…あれ、そういえば」
彼女にもようやく思い至ったらしく、次の瞬間にはにんまりと笑みを浮かべる。
不意に自分の名前を呼ばれて、虞翻はどきっとした。
「そうだよ、ランプの光で解り辛かったけど…確かに、あの髪の色に髪型とか…」
「ね、そっくりだよね」
確かに虞譚の髪型は、三つ編みにこそしていないが、両サイドに垂らした髪の先をリボンで結っている。ツリ目かタレ目かの違いもあるが、確かに面影はある。
「この娘もうちょっと大きくなれば、きっと先輩みたいな美人になるのかしらね?」
「あ〜…でも見た目だけにしてもらいたいもんだな。この可愛らしいのからどぎつい言葉が飛んでくるのは遠慮願いたいトコだ」
耳をそばだてて聞いている虞翻。朱然の言うことも恐らくはほとんどの部員が思っていることだろうことは、虞翻も承知していたことだが…やはりそういう風に見られていることを改めて思い知らされ、少し胸が痛んだ。
「確かに…でも、あの人は言われるほど悪い人じゃないような気もするよ? 私はあまり付き合いはないけど、公紀がね」
「知ってるよ、あのふたりが仲いいことくらい。まぁアイツも同類のような気もするけどな」
「…………その同類と従姉妹の私はどうなんのよ」
ジト目で睨む陸遜。朱然はそれを気に止めた風もない。
「結構似たもの同士だと思うぜ? 正しいと思ったことは梃子でも曲げない真面目委員長タイプだよ、あんたも公紀も仲翔先輩もさ」
「…お姉ちゃんのこと…知ってるの?」
「「へ?」」
その時、沈黙を守っていた虞譚が、恐る恐るといった風にその会話に割り込んできた。どうやらひそひそ声で話しているつもりが、何時の間にか普段の調子で喋っていたらしい。
呆気にとられていた陸遜が、
「え…えと、じゃあ…あなた本当に仲翔先輩の…?」
と問うと、虞譚はこくりと頷いた。

38 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:23
「ふたりとも、そろそろ休憩に入ってくれやぁ」
「ど〜も〜」
「じゃあ頼みます〜」
祭り会場の一角、テント張りの大きな休憩所の軒先で焼き鳥をひっくり返す少女たちは、その数本を手前の皿へ盛り付けると、やってきた初老の男性に後事を託して引っ込んだ。
青い半被に豆絞りという格好で、バイトに勤しむのは歩隲と敢沢の長湖部苦学生コンビであった。
「いやぁ、覚悟はしてたけどやっぱ重労働だわこりゃ」
「文句いうなって。祭りも楽しんでお金も入るんだから、上出来だよ」
敢沢は汗をぬぐいながら、裏手に設置されている従業員用の薬缶から注いだ麦茶を一口に飲み干す。
「そういえばさ、結局部長たちって何処いったんだろ?」
「わかんね。もう花火始まったんだし、どっかで集ってみてんじゃないの?」
興味ない、といった感じの敢沢。
「それもそうか。それよりさ、さっきトイレ行ったときに伯言たち見かけたんだけどさ」
「じゃあ部長もいたんじゃないの?」
「ううん。それがね、ひとりは義封だと思うんだけど、もうひとりがね…ちょっと此の辺じゃ見かけない感じの娘だったんだ」
「親戚かなんかじゃないのか? 陸家にしろ朱家にしろ、あの一族蘇州地区にはゴマンといるからなぁ」
「いや…違うと思う。黒髪に緑がかった眼だったから、あの血筋じゃないと思う」
「よくそんな細かいところまで…」
呆れたように呟く敢沢。それを他所に、歩隲はしきりに首をひねっていた。
「でもさ、なんかあの顔、どっかで見たような気がするんだけどね〜」
「気のせい、もしくは他人の空似ってヤツでしょ? あ、ほら花火上がった」
敢沢の指差した先で、三連発の花火が上がった。

「ああ…績がそういえば言ってたな。虞姉妹って五人姉妹か六人姉妹だったっけ?」
「六人よ、確か。親戚やら何やらで親しくしている娘を入れると実質十二人って…そういえばうちも幼節や親戚の娘が仲翔先輩の妹さんと仲良かったから聴いたことあったわ」
うんうんと頷く朱然に相槌を打つ陸遜。
「しっかし、ここまでちっこくなると仲翔先輩の妹って言われても、やっぱりピンとこないわね…」
「…なんだかその人、随分曰くありげな人みたいね」
それまで沈黙を保っていた虞翻が、ようやく会話に割り込めるタイミングをつかんで口を開いた。
「曰く…確かにそうかもな。口の悪さだけなら学園屈指って感じで」
「そんな大げさな…確かに、皮肉屋ではあったけど」
「あのなぁ伯言、お前春先に散々こき下ろされていて頭にきてないの?」
朱然の軽口に、虞翻の顔色が変わった。
彼女が言っているのは、虞翻が交州学区に左遷させられたときのことを言っているのだろうことは間違いなさそうだ。あの日、虞翻は孫権や張昭と示し合わせての狂言とはいえど、陸遜に対して散々に罵声を浴びせてしまった記憶がある。「いちマネージャー風情が、一時の幸運で成り上がって、周瑜の後継者を気取っているだけじゃないか」と。
芝居とはいえ、自分もその才覚を認めた少女を心無い言葉で貶めた罪の意識に、虞翻は未だ苛まれていた。
「う〜ん…でも、公紀も言ってたんだけど、あの人は理由もなくあんなこというような人じゃないような気もするの。きっと何か深いわけがあったのよ」
「うわ、お人よしがいる〜。そんな取り繕ったこというのはみっともないよ伯言?」
「…おねえちゃんたち…仲翔お姉ちゃんのこと、嫌いなの…?」
みると、怒っているとも悲しんでるとも取れる複雑な顔をして、目の端に涙を溜め込んだ虞譚が三人をじっと眺めている。
「い、いや嫌いとかじゃなくってさ…うんっと、なんっつったらいいのかな…なんか近寄りがたいっていうか」
慌てて取り繕おうとする朱然だが、これは却って逆効果だったらしい。
大声で泣き喚きはしなかったものの、ぼろぼろと涙を落としながら俯いてしまった。流石の朱然もばつが悪いと見えて「困ったなぁ
」と頭を掻いている。
後輩たちの本音で相当ダメージも大きかったが、泣き出した妹の姿が虞翻に更なる追い討ちをかけた。こうなったら収まりがつかない。思うより先に、彼女は妹を抱き寄せていた。
「夏…さん?」
怪訝そうな陸遜の声がする。
「私…この娘の気持ちが良く解る…私もね、しばらく前に…あなたたちの言う先輩のように、友達と大喧嘩したの」
「え…」
「私も本当は離れたくなかった…でも私、未練を残したくないからわざと心にもないことを言って…もしかしたら、私がそんな馬鹿なことをしたばかりに、この娘みたいに私のことを考えてくれている友達が辛い思いをしてるかもしれないって…そこまで考えていなかったから…」
正体を明かさないための方便ではあったが、言葉に託した気持ちは紛れもない本心からの言葉だった。
「…大丈夫ですよ。私だって先輩がどういう気持ちであんなことを言ったか、なんとなくだけど解っていましたから…きっと、夏さんのお友達だって、きっと解っているはずです…」
「あたしだってあの人嫌いじゃないよ。あの口の悪ささえどうにかなれば、もっといろんなこと話してみたかったし」
後輩ふたりがそう、慰めてくれた。腕の中で泣いていたはずの虞譚も、それが本当の姉と知らずに頭を撫でてくれた。
「……ありがとう」
虞翻はそれだけでも心が少し軽くなった気がしたが、それと共に、自分が仮初の姿で彼女たちの気持ちを玩んでいるのではないかという罪悪感も覚えていた。

39 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:24
「あ、やっぱり思奥だ!」
「おね〜ちゃ〜ん、思奥いたよ〜!」
天幕にとびこんできた双子の後から、半べその虞忠と慌てた様子の虞レも入ってきた。
「お姉ちゃん!」
それまで虞翻の膝の上にちょこんと腰掛けていた虞譚は、姉たちの姿を認めてぱたぱたとそちらに駆け寄る。
末妹を抱き寄せ、虞忠はその場にへたり込んでしまった。
「良かったわね、あんたたち」
「わ、伯言先輩に義封先輩! もしかして先輩たちがこの娘見つけてくださったんですか!?」
想いもがけぬ人物に出会って、虞レも目を丸くした。
「ああ、あたしが人混みからみつけてやらなかったら今ごろは人波の藻屑だ。感謝しろ娘共」
ふんぞり返ってみせる朱然に、もう苦笑するしかない虞レ。
「あはは…恩にきります。あれ、そちらの方は?」
そう言って虞翻の方に視線を送る。陸遜が簡単に、自分たちが孫権たちとの待ち合わせに間に合わなかったこと、その時、ちょっとしたピンチを救ってくれた彼女に出会い、折角だから祭観覧の同行者に誘ったこと、虞譚の面倒をみてくれたことを説明した。
「そうだったんですか…申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」
やはりというか、虞レも他の妹たちも、自分が彼女らの長姉であることなど気がついている風はない。
「いえ。それよりこの娘はまだちいさいんだから、ちゃんと気をつけてやらなきゃダメよ」
「はい…気をつけます…え?」
頭を上げて一瞬怪訝な表情をする虞レ。
それを読み取った虞翻も「まさか」と思ったが、
「どうかした?」
「あ…い、いえなんでもないです。先輩方も、本当にありがとうございました」
再度、深々と頭をさげる虞姉妹一同に、「気をつけてね」と残すと、虞翻たちもその場を後にした。
その際、虞翻は時計の針が既に九時半を少し回っていることに…即ち、自分が帰るためのタイムリミットが近づいていることに気がついた。

「今日は楽しかったわ。あなたたちのおかげで、この地を発つ前のいい思い出ができた…本当にありがとう」
「いいえ、お誘いしたのも私たちだから、そう言っていただければ幸いです」
「なんだか名残惜しいけど…もしまたこちらに遊びにきたときには連絡くださいな。長湖の周辺であれば、いくらでもご案内しますよ」
そう言って、朱然は自分たちの連絡先を書き込んだメモを押し付けてきた。どうやら自分が虞翻であることに、彼女たちは最後の最後まで気が付いていないようだった。
「うん…じゃあ、君たちも元気でね」
それだけ残すと、虞翻は帰路に着く人混みにまぎれた。
二人の影が見えなくなると、彼女は足早に人混みから離れようとする。
思わぬハプニングのために、彼女は予定外に時間を浪費していた。先ほどから時折視界がぶれる感覚に何度か襲われていたが、どうやらそれが時間切れが迫っていることを示すサインであるのだろう。そして、その間隔は短くなっている。
「あっ!」
やはりというか、バスも相当に混んでいる。現在時刻は十時五分前。薬を飲んだのが七時ちょっとすぎだから、その正確な時間は解らないものの、もう猶予がないことは良く解っていた。
(いけない…もしあの中で変身が解けたら、地方紙の珍事件枠確定だわ…どうしよう…!)
困惑する彼女を眩暈が襲ってきた。
虞翻は数時間前の、諸葛亮の言っていた言葉を思い出していた。
−その薬を一度に飲んでしまうと、変身が解けるときに意識を失うことがあるようです。変身が解ける直前くらいから動悸や眩暈に見舞われるでしょう。時間に余裕を持って行動されることをお勧めしますよ…−
いくら薬の時間切れだからって、ここまで大げさな副作用を用意することもないだろうに…自分が選んだ結果とはいえ、それでも虞翻は諸葛亮を恨まずにはいれなかった。
まさかここまで、前後不覚になるような症状が出るとは考えていなかったのだ。ウマい話には必ず裏がある、ということを今更のように思い知らされていた。
(まだ…意識が途切れる前に…人影の少ないほうへ…)
彼女は気力を振り絞り、人の目を巧みに避けて林の奥深くへと入っていく。
まだ止まぬ祭囃子が遠く聞こえるのは、単にその場から距離を離しているだけではないのだろう。
ふらつく足で、密集する木にもたれながら更に奥へと進んでいくが…俯いていた彼女は気づかなかったが、林は途切れようとしていた。次の瞬間。
「…あ…!」
彼女の視界に飛び込んできたのは、深く沈みこんだ、夜闇で底の見えない涸れた用水路だった。気づいた時、茂みの草に足をとられて彼女は思い切りバランスを崩していた。
「姉さんっ!」
夢か現か、その意識の狭間で彼女は妹の叫び声が聞こえた気がした。
そして、虞翻の視界は暗転する…。

40 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:24
虞翻が目を覚ました時、そこは見慣れない部屋だった。
「え…!?」
慌てて跳ねるように飛び起きる。差し込んできた光に、彼女は既に夜が明けたという事実を信じきれず、一瞬「ここがあの世というヤツか?」と思ったが…見覚えのある少女がそこにいたことに気づき、その考えを即座に否定した。
「あ、気がつかれたんですね! 大丈夫ですか?」
「う…うん。ここは…」
「私の実家…ああ、申し遅れましたが私、この常山神社の神主の娘で…」
「…知ってる。こうして話すのは初めてだけど…帰宅部連合の趙子龍を知らない人間はこの学園にいないでしょうね」
「光栄ですわ」
そのお世辞とも皮肉とも取れない言葉に、趙雲は穏かに微笑んで返した。
まだ意識ははっきりしないところもあったが、虞翻はとりあえずここが彼岸の世界でないことだけは理解した。もしこのとき趙雲が巫女衣装を着ていたらもしかしたらあの世だと思ったかもしれないが、白ブラウスに紺の巻きスカートという、どうみても私服といういでたちなのでここはやはりあの世ではないのだろう…というような根拠のない理論が脳裏をよぎるあたり、虞翻の意識はまだ本調子ではないようだ。
「いったい…私はどうしちゃったのかしら…?」
「私も又聞きの話になるのですが…お祭りの終わりごろになってあなたの妹さんが本営に飛び込んできて…何でも、あなたが用水路のほうへ落ちそうになったのを助けたとのことですが…気を失っているようでしたので、こちらにお連れした次第です」
「そう…」
それで自分の身に何が起きたか、彼女は概ね理解した。やはりあの意識の狭間で聞いたのは、確かに妹…恐らくは虞レか虞忠の声だったに違いないだろう。
しかし、そこでひとつ引っかかるところがあった。即ち彼女が意識を失う間際、彼女の変身が解けていたのか否かだ。
「それで、あの子達は…?」
「一応、気を失っていらっしゃるというか、眠られていたというか…とにかく、あなたが無事だということはお伝えしたんですけど…一番下の妹さんが、あなたの側にいたいと言うことでこちらにお泊り頂いたんです」
「そうだったの…ごめんんさいね、なんだかご迷惑かけたみたいで」
「いえ、うちの家族も賑やかなのが好きなくちですし…立場上、来客も多い家ですから」
「かくいう私も、こちらに一泊させていただいたのですがね」
そこには何時の間にか、諸葛亮の姿があった。黒無地のシャツに短めのデニムスカートという意外にノーマルな取り合わせに、流石に暑いのか腕まくりした白衣を身につけている。
「先に言わせて頂きますが…やはり心配になって後をつけさせていただきました。如何な薬でも体質によって効果や副作用の出方が異なることもありますゆえ…」
「…てか、私ぜんっぜん気がつかなかったけど…」
「気が付かれたら尾行の意味がありますまい?」
そりゃそうだけど、と心でツッコむ虞翻。文句をいいたいのも山々だが、言ったところで効果がないことは解りきっているし、体力の無駄だと思ったのでやめておいた。
「長湖部の皆さんがいらした様なので、あなたがここにいることをお伝えしようと思ってたんですけど…孔明さんから事情をお聞きしましてね。実はその薬、私も二月に使わせていただいたものですから」
余談だが、帰宅部連合の関羽と趙雲はバレンタインデーにおける最大の被害者といって良い。今年は長湖部とのいざこざで関羽が既に一線を退いていたため、“羽厨”が“雲厨”と化して趙雲を襲撃したのだ。幸か不幸か、バレンタインデーの週には騒乱の決着もつき、例年以上の大騒動になっていた。
趙雲はこの日一日、諸葛亮の被写体になるという条件と引き換えに変身薬を開発してもらい、事無きを得たのであった。不幸なのはそういう伝手のなかったために例年通り逃げ回る羽目になった“益州の宝塚”張任や、曹操の謀略により学年生活最期でその標的にさらされた夏候惇であろうか。
それはさておき。
「どうでしたかな仲翔先輩、夏祭りにおけるシンデレラ体験のほどは?」
諸葛亮が、いつもどおりの意味ありげな笑みで問い掛けてきた。
その一言に、虞翻は昨夜の記憶に思いを馳せる。楽しかったこと、寂しかったこと、いろんなことが脳裏に浮かんできて、
「…なんだか、いろいろなことがありすぎて…巧く言葉にできないわ」
とだけ言うのが精一杯だった。

勧められた趙家の朝食をご馳走になって、虞姉妹は常山神社を後にした。
これから一週間の間、学園都市の各所にある神社でも祭が行われる。常山神社でも、これからの一週間祭一色だ。
「ねぇ姉さん。何であんな姿になっていたの?」
「え…?」
帰り道、小声で虞レが耳打ちしてきたその言葉に、虞翻は心臓が飛び出るのではないかというほど驚いた。
「あ…あんた、私のことが…?」
「一体何年、あんたの妹やってると思ってるのよ。余人ならいざ知らず、あたしが姉さんの声を聞き間違えると思ったら大間違いよ」
まさか。そういえば、自分が変えたいと念じたのは髪の色と瞳の色だけだった。まさか声だけで自分の正体を見破る人間がいるなどとは考えもつかなかった。
「それに思奥も、姉さんのこと、ちゃんとわかってたと思うよ? あのあとしきりに、お姉ちゃん可哀相だ、って言ってたから」
「そっか…」
軽口を叩いていた虞レが、不意に真剣な顔をして言った。
「伯言先輩たちが何言ってたか知らないけど、姉さんは姉さんが思っているほど、悪い人じゃないよ」
そんな妹の言葉に、虞翻も嬉しいやら恥ずかしいやらで、苦笑するしかなかった。
「大きなお世話。さ、お昼ごはんに間に合わなくなるから、早く帰るわよ」
青空の下、長湖へ通じる大通りを、少女たちは駆けていった。


後日談。
「う〜ん、イイですよ先輩…幼常、もう少し光を」
「こうですか師匠?」
背後に反射板を持つ少女のひとりが、その角度を微妙に調整する。
「おーけーおーけー。威公はもう少し左に…そうそうその位置」
そのファインダーの先には、なんとも釈然としない表情の虞翻がいた。
「ねぇ孔明…なんで写真一枚取るのにこんな大掛かりなことする必要があるの? それに何でスクール水着?」
祭の日から一週間後、彼女は諸葛亮の呼び出しを食って、益州学区は巴棟の室内プールにきていた。聞けば、全会一致でプールサイドで水着姿の虞翻を撮ると言う事で決定したという。全会、ということは、恐らくここに集った馬謖、楊儀、董厥、樊建、蒋エンといった面々との協議の上であろうが、そんなことはどうでもいい。
「ふむ、良い質問です先輩。かつて赤壁島で蒼天会軍と戦うに際し、あなた方と論を戦わせたことは覚えていらっしゃいましょう?」
「…論議? アレが?」
虞翻は眉間に皺を寄せていた。まぁ、虞翻に限らず、あの日論陣に参加したものにとって“アレは断じて論議ではない、アレは諸葛亮の萌え解説とやらで煙に巻かれた長湖部の厄事だ”というのが共通見解だった。無論、虞翻もその見解を違えていない。
「その時私は思ったのです…この部はこれほどまでのツンデレ眼鏡っ娘の天国と化していたのか、と。あの日以来、私は密かに簡雍先輩の協力を仰いで、秘密裏にその写真を集めていたのでありますが…」
「おいおい…」
「ですがあなたの写真のみ、どうしても納得のいくものが手に入らなかったのです…そういうわけで、こう言う機会を狙っていたのですよ…」
もう何て言ったらいいのか…虞翻は呆れるあまり偏頭痛を起こしていた。
「というわけで今日は存分に撮らせて頂きますよ? それでは一枚目、入ります」
そして、泳ぐ者の居ないプールの一角にフラッシュが光る。

結局、虞翻はその日一日を丸々潰す羽目になったが…幸いにも、夏休み明けの模試で成績が落ちたという話はない。

(終わり)

41 名前:海月 亮:2005/08/09(火) 23:50
ま…間に合ったぜコンチクショウ…(||゚Д゚)
結局四番手か。まぁいいや。
むしろこの急場に間に合ったのは、熱い血潮をたぎらせてくれる特撮&戦隊モノテーマのおかげ。てかギャバン万歳(何

というわけでひと夏のシンデレラ体験を書いてみました。こう言うネタをやる時には諸葛亮の存在は重宝しますね。
ついでに言えば海月は、南蛮平定が夏前、第一次北伐が夏明けという風に考えていました。
本当は長湖の浜辺で何か…とか思ったんだけど、いい奇怪、もとい機会なので舞台を夏祭りにしてみました。

仲翔姉さんの浴衣姿については、祭り終わりにまでに何とかします_| ̄|○


因みに長湖部の面々が勢ぞろいしているところ、一箇所だけミスがありますよ(オイ

42 名前:海月 亮:2005/08/10(水) 00:06
でもって感想コーナー。

>雑号将軍様
一番槍乙! 見事先陣の役を果たされましたな!
そういえば過去ログでも張松の不美人っぷりがいろいろ話題になっとりましたが、髪型で簡雍の目すら欺くとは見事。
これも夏の魔力がなせる業というのですかね?

>北畠蒼陽様
お見事!とにかくお見事ですよ御大将!
何がすばらしいかというとあの王基。しなびる、水漬いて生き返る、そして流れる!
それだけで海月は萌え死に寸前(え
てか遺言めいた台詞と王昶。ああもう、この気持ちを如何にすべき(ry

>教授様
ヽ(´▽`ヾ 三 ゙ノ´▽`;)ノ゙
うおお久しぶりの教授様のSSだぁぁ!
雑号将軍様のストーリーと微妙に関連性が…って、一体どのくらいの時間ででこれを書き上げられたので?(;;゚Д゚)

しかも法正さんが…法正さんがぁぁ!求む後編!

43 名前:北畠蒼陽:2005/08/10(水) 18:24
「うー……」
「あ、あはは……玄沖ちゃん、あんまり気にすることは……」
王渾と王戎が夏の道を歩いていた。
王渾は白のセイラー服に青いバンダナをつけている。まんま水兵さんである。
王戎のほうはピンクのサマーセーターにチェックのスカート。普通に美少女、といった感じである。
2人は図書館での勉強を終え、今はその帰り道であった。
「あの山猿に期末テストで負けるなんて……」
王渾が山猿呼ばわりしたのは王濬。もともとむちゃくちゃ仲が悪い。
「いや、あの……あはは、ほら、士治ちゃん努力っ子だから」
王戎がフォローするがフォローし切れてない。
王渾が王戎を睨みつける。
「私が山猿に比べて努力してないって?」
「あの……あはは、そういうわけじゃないんだけど……」
困ったような笑みを顔に浮かべる。
というかあからさまに困っているのだが。
どの世代でも板ばさみ担当はつらいものがある。
「あー、玄沖ちゃん、まだ暑いし疲れたから、そこの店入らない? このケーキ屋さん、すごくおいしいんだよぉ」
「ん、そうなの?」
話をごまかす王戎。今度は成功した。
そして王戎は店のドアに手をかけ……


夏い暑のサンコマメ


「いらっしゃいませぇ〜♪ 2名様でよろしいです……」
元気なウェイトレスの声が途中で止まる。
「あ」
ウェイトレスが誰か気づいた王戎はびっくりした。
「あ」
王渾もびっくりした。
「あ」
ウェイトレス……楽チンもびっくりしていた。

……
……
……
「へぇ〜、ふ〜ん、ほぉ〜」
王渾があごに手をあてて楽チンを隅々まで眺めている。
「いやいや、あの豪快な楽チンちゃんがこのようなひらひらした服を着ていらっしゃるとは……眼福ですなぁ」
「あ、あんまり見ないでよ……」
真っ赤な顔の楽チン。
どうやら学園関係者に知られたくなかったらしい。当たり前といえば当たり前のような気はするが。

そのケーキ屋の制服は緑のキュロットスカートにYシャツ。胸元には赤いリボンにふりふりのエプロン……と、まぁ、そんな感じで、いかにも可愛い可愛いといった感じのものであった。

44 名前:北畠蒼陽:2005/08/10(水) 18:24
「いや、あの……ほら、楽チン先輩、可愛いですよ、とっても。あはは」
「でも濬沖だって一番最初、『あ』とか言って固まったじゃない」
王戎がフォローしたが王渾が叩き潰した。
空気読めよ、王渾。
まぁ、実際のところ制服が可愛いのは確かで、それを『あの』楽チンが着ている、ということにすさまじいギャップがあるのだが。
「あー、あははー」
困ったような顔で笑う王戎。実際、それくらいしかできないのだが。
「……あの、さ」
真っ赤な顔で楽チンが引きつり笑いを浮かべた。
「あの……できればお姉ちゃんたちには内緒にしておいてほしいかな〜、って」
毋丘倹や胡遵ならともかく、王昶とか文欽なんぞに知られた日にはどんだけ笑われるかわかったものではない。
「楽チンちゃん」
「ん?」
王渾が人差し指を唇に当て純真無垢な……明らかにそれを装った口調で楽チンを呼ぶ。
「あたし、ケーキバイキングがいいなぁ」
ディアブロだ。ディアブロがいる。
楽チンはそう思った。
「玄沖、あんた……間違いなく文舒の後継者だよ……」
楽チンの言葉に王渾は『てへっ』と笑った。
褒めてねぇよ。
落ち込みながらちらっと王戎を見る。
「あ、いいですいいです。あたしはいいですから!」
ぶんぶんと手を横に振った。
「濬沖はいい娘だねぇ」
しみじみと言った。
このディアブロの横にいると天使かと思えてしまう。
「いいよ、2人ともおごり、ね。そのかわり誰にもばらすなよ」
苦笑する楽チン。
「わぁー、楽チンちゃん、ダイスキー」
「あー……あはは。ほんと、すいません先輩」
1人は歓声、1人は謝罪。
つまり1人は悪魔で1人は天使ってことだ。
どっちがどっちかは言うまでもないことなのだが。

……
……
……
「いやぁ〜、ここ、ほんとにおいしいねぇ〜」
王渾の王戎に語りかける。
かなりご満悦のようだ。
「また来たいねぇ♪」
楽チンのほうを見てにやにやと笑いながら言う。
……あんた、そういうプレッシャーのかけ方は姉そっくりだよ。
対する王戎のほうは『あはは』と苦笑しながらコーヒーを飲んでいる。
板ばさみのつらさはよくわかるよ、うん。
「あ、ねぇ」
王戎が不意に腕時計を見た。
空にはそろそろ夕闇のベールが降りようとしていた
「あ、そろそろだっけ? ここから見えるかな」
クーラーのきいた店内から外へは出たくないらしい王渾が窓にへばりつく。
「大丈夫だよ。普通に座ってても見えるはずだから、さ」
楽チンは苦笑しながら王渾に言う。
3人で見る夕方の空。
この薄闇の空を彩るのは……

花火が上がった。

45 名前:北畠蒼陽:2005/08/10(水) 18:40
1日1本ペースか……バカじゃなかろうか、私。仕事しろよ……
あ、してますよしてますよ<上司に
3日連続はやりすぎスメルがぷんぷんするので明日以降自重の雰囲気で。
仕事しないとおこられっちゃうし(笑

王戎初登場です。長湖部ラストバトルの予州の偉い人です。
晋書読んでないのでこういう性格でいいかどうか微妙ですが!

>REGRET=悔恨という意味すらはじめて知った人(1/20)
血、吐くと苦しいのよ、ほんとよ(実体験
感想は後編を読んでからで! 楽しみにいたします!

>虞翻さんかわいいよ
かわいいよ……というだけで乾燥を終えるのはあまりにもあんまりなので。
シンデレラですねぇ……
虞翻、確かにこういうの似合うかも。
正確には虞翻、ミスマッチだから逆にハマるかも、と。
ぐっじょぶぐっじょぶ。

>しなびる、水漬いて生き返る、そして流れる
今回の王基は壊王基♪

46 名前:雑号将軍:2005/08/11(木) 10:21
感想とかいろいろ
>北畠蒼陽様
な、なんとぉ〜!!この短い間に二本もSSをっ!お見事です…。僕には体力と話しが浮かびません…。
ではでは感想を。ついに王昶復活!!「待っていたぜ、このときをっ!」それから自分で悪いことしているのに気づかない諸葛誕がいい味出してます。
二編目はおおっ!王濬初登場ですな。まさか最初から仲が悪かったとは…。なにより、ウェイトレス姿の楽チンがやたらと気になったのは僕だけなのでしょうか?

>教授様
ひさびさに法正見ましたよっ!これこそ法正。それから、ありがとうございます!!自分の作品との関連性までもいただいてしまって…。どうやって簡雍が出てくるのか楽しみです!(てか法正やばいのにそんなこと言ってられるのか?)

>海月 亮様
シンデレラお見事!微妙なところなのですが、浴衣姿の孫権が激しく気になってしまいました。やっぱりその浴衣姿とは絵描きBBSのどこかにある、アサハル画なのでしょうか?それとも新作?
長湖部をツンデレ眼鏡っ娘の天国と評し、喜んでいた諸葛丞相にそれがしは激しく同意し、弟子にして頂きたく思いまする。

47 名前:雑号将軍:2005/08/11(木) 10:24
れ、連続・・・・・・。
しっ、しまったっ!連続ですが…。またもや敬称落ちが…。アサハル様申し訳ないです。これからは一度見直すようにします…。

48 名前:海月 亮:2005/08/11(木) 22:50
|▽ ̄)つhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~flowkurage/natsumatsuri2005_2.jpg target=_blank>http://www5f.biglobe.ne.jp/~flowkurage/natsumatsuri2005_2.jpg
とりあえず長姉と末妹はこんな感じであります。
仲翔姉さんが通常モードなのは気にしないでおくのが吉(は?

>サンコマメ
三日連続!!?
何でそんなにネタがあるんですか?てかこんな短期間でよくこれほどのものを…。

…ああ、とうとう王渾タソの本性が…
楽チンの苦労性はやはり姉貴譲りなんですかね。てかいいひとだ(*´ー`*)

>浴衣の孫権

_| ̄|                              ...○

…ヤバい全っっ然考えてなかった(甥
で絵版過去ログの旭絵にありましたね。あんな感じだと思います。てかそれで決定(は!?


…海月も孔明先生の弟子になって萌え研究します…。

49 名前:雑号将軍:2005/08/13(土) 22:34
うわっ!返事遅くなりました…。

>浴衣の孫権
承知致しました!あの孫権のイメージで好きなんで。その後ろから、すこし照れながら着いてくる周泰(これまた浴衣姿)ってのも見てみたい気がしますが…。

>海月も孔明先生の弟子になって萌え研究します
おお!ではそのときには、海月様はそれがしの兄弟子ということになりますな!といっても僕はツンデレonlyですが…。

50 名前:海月 亮:2005/08/17(水) 00:12
-長湖の夏休み(夏祭り前の風景から)-


長湖。
夏は南国、冬は寒帯と化す、中華学園都市最大のミステリーゾーンである。
そのほとり、揚州学区を縄張りとするのは、多くの水上スポーツ系クラブと少数の文科系クラブから構成される長湖部であり、夏休みもこのあたりで何かしている奴らが居れば、大概は長湖部の人間である。

その校区に面したビーチからやや外れて、丁度海で言えば磯のようになった岩場に、ひとりの少女が釣り糸を垂れている。
年季の入った麦藁帽子を目深に被り、淡い色のパーカーにキュロット、足首までバンドのあるしっかりしたつくりのサンダルを履いて、一見釣り人らしからぬ風体だが、その竿は名のある職人が作ったと思われる竹製の良い品物だ。
不意に釣竿の先が僅かに揺れ、次の瞬間一気にしなる。
「よし来た!」
少女は両の足を、岩の窪みに引っ掛けて固定する。そして手元のリールで糸の長さを細かく調整しながら、湖面を走る影の動きをコントロールしようとする。そして、機を見て一気に引き上げた。
湖面から引きずり出された影は、ゆうに50センチを越える。なかなかの大物であるが…それはなんとナマズだった。
「なんか珍しいの釣れましたね、徳潤さんっ」
少女がその声に振り向くと、ビーチとの境目にひとりの少女が居た。
白い帽子を緑成す黒のセミロングに乗っけて、きちんと着飾れば様になるスタイルの良い肢体にスクール水着を身に着けている。
「よお伯言、泳ぐのが好きじゃないあんたがそんな格好でどうしたんだい?」
「妹たちの付き添いですよ。それに、私泳ぐのが得意じゃないだけで、水遊びは嫌いじゃないですよ」
「ふ〜ん」
岩場に陣取っていた少女…徳潤こと敢沢は、会話に興じつつも手先では釣ったばかりのエモノの処理を同時進行で行っている。なかなか器用なものだが、ナマズの体に容赦なくかつ的確にナイフを突き立てているあたり、キャッチ&リリースという概念は彼女の脳裏に存在しないらしかった。
伯言と呼ばれた少女…長湖部の実働部隊総帥・陸遜も、その光景を目の当たりにしてさして驚いた風を見せていない。基本的に苦学生の敢沢がこうして食料を調達していることを知っていたからだ。
「というか徳潤さん、ナマズって食べられるの?」
「知らんのか。泥臭いのを何とかしさえすれば、味が淡白だからどんな料理にしても結構いけるんだよ、これが」
「へぇ」
程なくして動かなくなったそのエモノをクーラーボックスに仕舞い込むと、敢沢は再び糸を湖中に放ろうとした。
「あ、そうだ。良かったら徳潤さんもご一緒しませんか?」
「あたし? そうだなぁ、どうするかな」
その誘いかけに、彼女は一瞬迷った。
この日は思いのほか好調で、さらに朝から釣りに興じていたお陰もあって、漁果としては十分である。
同じ苦学生仲間の歩隲との交易材料も問題はない。夜には夏祭り会場でのバイトがあったが、祭が始まるまでにも十分時間があったし、彼女自身もひと泳ぎしてから帰る気でいたので、実は水着だって着込んでいたりする。
「う〜ん、バイト行く前にひと泳ぎするつもりだったからな。じゃあ、仲間に入れてもらうかな」
「決まりですね。じゃあ、行きましょう」
「ん」
釣り道具一式を担ぐと、敢沢は岩場を軽々と飛び降りてきた。

51 名前:海月 亮:2005/08/17(水) 00:12
「おらおら、気張って泳げ〜! 正明と承淵が赤壁島廻ってきたぞ〜!」
ビーチから、沖合いの赤壁島の中間くらいの地点に、泳ぐ少女たちの一団がある。その傍らで、ボートをこぎながら檄を飛ばす暗紫髪のショートカットがひとり。今年卒業を控えながら、水泳部長として後輩の育成に余念がない凌統である。
水泳部は毎年この時期になると、長湖部夏合宿とは無関係にほぼ毎日、揚州校区ビーチから赤壁島までの片道3キロを往復する遠泳を行うようになる。無論、学園都市全体で始まる祭の開始日であったとしてもそれは変わらない。
単純計算では6キロの遠泳だが、実際は赤壁島を周回して来るので7キロ強泳ぐことになる。全国に誇る強豪はこのようにして育て上げられるのだが、このハードさゆえに途中で音をあげ、夏の間に部を去るものも決して少なくない。
とはいえ、この年はいまだ脱落者を発生させていなかった。その鍵を握っているだろう二人が、少女たちとすれ違っていった。
僅かに先頭にたつ栗色髪の少女、それに追随する狐色髪の少女。
それぞれ高等部に入って間もない一年生、来年に高等部編入を控えた中学三年生である。水泳部に在籍する少女たちの中でも、その平均年齢からみればずっと下の少女たちである。そのふたりに対する負けん気が、プラスの方向に働いている所以である。とはいえ、それでも他の少女たちとそのふたりの差はかなりのものであった。
「う〜ん…やっぱり二週目となると、あのふたりにはついていけないもんかなぁ」
「ま、あのふたりが異常なのよ、ぶっちゃけた話」
そのふたりを追ってきたらしい一隻のボート。そこに、ポニーテールの少女がひとり乗っている。
「遅かったじゃない、文珪」
「遅いも何も、あのふたりが早すぎるんだ。ボートでついて行くのも精一杯だよまったく」
凌統のボートに自分のボートを横付けすると、その少女…潘璋はボートに仰向けでひっくり返った。
「情けないわねぇ…去年まで部下だった承淵に対してあんたがそんな体たらくじゃ」
「それでもいいよぅ〜、あたしも〜疲れたぁ〜」
呆れ顔の凌統に、ボートにひっくり返ってしまう潘璋。
水泳部の少女たちも、普段滅多に見られない潘璋の情けない姿に、野次馬根性むき出しで遠巻きに眺めている。
「あ、こらあんたたち、止まってないでさっさと泳ぐ! さもないと、完泳のジュースとスイカ、やらないよ!?」
凌統の一言に、慌ててコースに戻る少女たち。その後を、数隻のボートが追いかけていく。
「ったく。あんたもあんたよ文珪。普段のあんたの態度もどうかと思うけど、そんなんじゃ示しつかないわよ?」
「へいへい、解りましたよ〜…って何やってるのよ公績」
ふてくされた様にむっくり起き上がる潘璋。みれば凌統、ボートの艫綱を潘璋のボートに括り付けている。
「あたしも泳いでくる。これ、岸につけといてくれる? 礼ははずむわよ?」
「別にいいけどぉ」
その返答を聞いたか聞かずか、パーカーを脱ぎ捨てて水着だけになり、湖中へ消えた。
その姿を見送ると、やれやれと言わんばかりの表情で肩を竦め…やがてビーチに向けてボートを漕ぎ出した。

52 名前:海月 亮:2005/08/17(水) 00:13
「者ども、準備はいいかぁ!?」
「おー!」
「よーし、総員突撃ぃー! あたしに続けー!」
先頭、跳ね髪の少女がビニール製のイルカともシャチとも取れぬモノを小脇に抱えて湖面へ駆け出すと、そのあとに少女たちがときの声をあげて追随していく。皆、或いは浮き輪を装備し、また或いはビニール製のビーチボールを抱え、次々に沖へ向かって泳いでいった。
先頭切った少女は水色の地に白抜き水玉模様のワンピース、それの真後ろにいた三つ編みの少女は「PARQUIT☆CIRCLE」という白抜き文字が胸元に入っている橙のハイネックワンピースだったが、あとの少女は揃いも揃ってスクール水着だった。
「あんたたちー、あんまり沖のほうまでいっちゃダメだからねー!」
浜にひとり取り残された格好になった陸遜が呼びかけるが、聞いているのかいないのか。
そこへ荷を置いてきたらしい敢沢も合流する。苦学生の彼女ではあったが、着ているのはそれなりに値の張りそうなデニム地のセパレート。彼女はどうやら水着にもそれなりにお金を使うらしい。
「しかしまぁ…あれだけスク水だらけだと学校の授業で来てるみたいだな」
と溜息交じりに言う。
「私も正直な話、徳潤さんがそんな水着持ってるなんて意外でしたけど」
「折角の一張羅だからな、着れる時に着ておいてやらにゃあ。あんたもモノはいいんだから、たまにはお洒落に気を使ってもいいんじゃないか?」
陸遜の皮肉を鮮やかに皮肉で返す敢沢。
「あはは…でも私、どうも着慣れた服じゃないと落ち着かなくて」
「気持ちは解るがね。まぁ、着れる内に着ておくと言うなら、それなんかその典型かもしれないしな」
なんとも女子高生らしからぬ物言いではあるが、敢沢のそれはバイト環境で培われたものであることは想像に難くない。あくまで軽口に過ぎず、どこぞの諸葛亮のような趣味人的な発想ではないし、敢沢自身もそのような考え方は持ち合わせていない。
「それに考えてみれば、うちの制服ってどの学校のと比べても割高なんだよなぁ…そう考えると、多寡がスク水でも着ないのは何か勿体無い気がするなぁ…」
難しい顔をして考え込む敢沢。やはり、最終的にはどこかで苦学生の顔が出てきてしまうらしい。
「まぁ、そんなこと考えてもしょうがないですよ。 それより、バイトの時間は大丈夫なの?」
「夜からだから四時くらいまで余裕だな」
「え…今日の夜に?」
その答えに小首を傾げる陸遜。やっぱり、苦学生の彼女には祭を楽しむ余裕もないだろうか…ということに思い至ったようだ。
「…じゃ、折角だから今のうちに遊んどきましょう、ね?」
手をとって子供のようにはしゃぐ緑髪の少女の笑顔に、敢沢はふと、今年の年明けに起こった出来事を思い出していた。
長湖部と帰宅部連合の全面戦争。
甘寧や韓当を始めとした百戦錬磨の大将ですら成す術ないその危難の矢面に、自分がこの少女を引きずり出したことを、敢沢は未だにそれが正しかったかどうなのか考える時があった。
結果的にその行為は長湖部を救うことになったのだが…そのために嘆き悲しんだ少女がいたことを知っていたから。
だが、彼女は思う。
今こうして、この少女が笑顔で居れるのだから、それならそれでいいじゃないか…と。
「ああ、いくか」
敢沢は陸遜の手に惹かれるまま、水際で遊ぶ少女たちの一団に駆け込んでいった。

53 名前:海月 亮:2005/08/17(水) 00:14
「何やってんのよあんたたち」
祭観覧の準備と言うことで、まだ四時前のこの時間に引き上げにかかっていた陸一家と敢沢。その道中、先頭きって駆けていった数名が何かをもの欲しそうに眺めているのを見て、陸遜は聞きとがめた。
「いいなぁ〜」
「あたしたちも食べたいなぁ…」
陸遜の幼い妹たちはそれを意に介している風がない。
その視線の先には浜辺の休憩所、その中でわいわい言いながら手にとっているものしか目に入っていないらしい。
「ありゃあ水泳部の連中だな。朝から居たみたいだけど奴らも引き上げかな」
「みたいね…ほらあんたたち、こんなところで道草喰ってないで、とっとと帰るわよっ」
そしてとりあえず手前にいた、最年少の妹たち四人の水着を引っ張ってその場から引き剥がそうとする陸遜。だが、必然的に抗議の声があがる。
「嫌っ! あたしたちもスイカ〜!」
「うち帰ったってどうせそんなもんねぇんだし、少しぐらいご馳走になったっていいだろ〜?」
年長組のひとりで跳ね髪の少女−陸凱がそのうち、中央にいた陸機、陸雲の双子を奪い返してしまった。
「馬鹿言わないの! 大体あれは水泳部の差し入れで持ち込まれているモノよ。あんたたちの分があるわけないじゃない!」
傍らにいた陸抗に捕らえた妹たちをあてがい、走り去ろうとした陸凱の首根っこを捕まえる陸遜。
「聞いてみりゃ解るもんか! 大体伯姉だってスイカ大好きのクセして…見た途端に口元、涎垂れてるじゃん!」
「え、嘘ッ!?」
陸遜は慌てて口元に手をあてがうが…それで束縛から脱した陸凱は双子を抱え、まっしぐらに休憩所に向けて駆けていった。
「へっ、嘘に決まってるだろ〜♪」
「…っ…こらあー!」
そして真っ赤な顔をしてそれを追っかけていく陸遜。残された年少組の陸晏、陸景のふたりもそれに続く。
しばらく呆然と眺めていた敢沢も、
「あたしたちも行って見るか、幼節、敬宗?」
「そうですねぇ…」
「いこいこ、もしおこぼれに預かれても、早く行かないとなくなるかもしれないし」
陸抗の返答に苦笑しながらも、残された少女たちを促してその後に続いた。

そしてそれから数刻。
「すいません先輩、私たちまで厄介になって…」
水泳部の面々に混じって、陸遜率いる陸一家の少女たちが、スイカを貪っていた。
陸凱が幼い陸遜の妹たちを扇動して、水泳部長の凌統とマネージャーの吾粲に食い下がった結果である。末妹の陸機、陸雲に何かしら仕込んで、水泳部のお姉さま方の気を引くなどと、この親戚の娘の抜け目なさはかなりのものらしい。
「気にすんなって。余るくらい用意してたから丁度いいくらいだしな」
「そういうこと。折角だから、あんたも喰っときなよ」
陸遜にとっては同窓の友である吾粲に一切れ宛がわれると、遠慮していた素振りだった彼女も反射的に食いついてしまった。遊びつかれて水気と甘味を欲していた身体は正直なものである。
「そういや、今日から祭だけど、伯言たちは行くの?」
「うん。妹たちは妹たちで行くみたいだから、私は部長たちと行くつもり」
「あたしはその会場で子山とバイトだ」
吾粲の質問に対する敢沢の答えに、合点のいった様子の陸遜。
「あ、じゃあ夜のバイトってそれ?」
「ああ。結構いい金になるみたいだし、祭の雰囲気も楽しめて一石二鳥だ」
「あ〜、それってなかなかいいかもしれないなぁ…」
自他ともに認めるケチ(当人は「倹約家」と言って憚らないが)の潘璋もそれに食いついてきた。
「文珪さんもやってみます?」
「う〜ん…ちょっと考えとく」
考え込んだ風を装う潘璋に、凌統が
「やめとけやめとけ、怠け者のあんたじゃ番台の留守番無理だ」
と皮肉を投げ込んできた。
「うわ、何か酷いこと言われた〜」
決して広くない休憩所は、少女たちの笑い声で一杯になった。

−そして、舞台は夜の祭会場へと移る−

54 名前:海月 亮:2005/08/17(水) 00:24
しまった、うぷしたはいいけど、早くも誤字発見。

×聞いてみりゃ→○聞いてみなきゃ

陸凱の台詞です。お手数ですが、読み替えお願いしますm(__)m


実は祭り企画の話を目にしたとき、真っ先に思い浮かんだ夏の長湖です。
単に水着に萌えたかっただけとです。ただ、それだけとです…_| ̄|○

仲翔姉さんの話とリンクさせようかと思いましたが、無駄に長くなりそうな悪寒がしたのでやめました。


>孔明の弟子
いやいや、むしろ私が弟弟子ですよ^^A

ヤツの弟子といえば、馬謖とか楊儀とかあまり話題に上らないなぁ…最近。

55 名前:雑号将軍:2005/08/17(水) 13:06
海月様、二本目お疲れ様です!僕は…あははは、一本でなにとぞ御慈悲を・・・・・・。いやもうクラブの原稿で死にかけ寸前です…。
と、まあ身の上話はこの辺にいたしまして、今回の作品、陸凱ってこのころからこんなキャラだったんですね(よく考えるとこのときの陸凱っていくつくらいなんだ?)。僕はかなり年下に考えちゃってまして、ちっちゃい時から陸凱ってこうだったんだなあ。とか感動していたのですが、よく考えると丁奉と同学年くらいだから…あわわわわ、中三じゃないか!

>奴の弟子談義(私事)
たしかに最近表立ってませんね。私事になるんですが、別冊宝島が出たときはひどかったですよ。友だちと孔明と孔明の弟子(孔明の人材眼)について談義していたら、意見が真っ二つに割れてしまって、ケンカ寸前でしたよ…。

56 名前:北畠蒼陽:2005/08/17(水) 18:58
>海月 亮様
わっほう、お疲れ様です。
とりあえずシンデレラ話との結合は脳内でしておきますね。
水着いいですよなぁ、水着は……今年はもういろいろぐだぐだでそれどこじゃなかったですよとほほ……
プールいきてぇー! とか海月様のバイトに羨望の眼差しを送ってみます(笑

>弟子とかいろいろ
諸葛亮は馬謖の欠点を見抜くことができずに劉備は見抜いた=諸葛亮に見る目がない
とか変な公式ができちゃってますが劉備の人物鑑定眼が異常なだけで諸葛亮がとりわけどう、ってことはないかと思われます。
諸葛亮&馬謖の話はぐっこ様本家HPでのぐっこ様小説でなんか私としては満たされてしまったので(劉禅が勅命を出せば馬謖に再起の機会を与えることができたし諸葛亮もそれを待っていた〜、あたりのくだりですな)えぇ、もう……馬謖はほんと経験をつめばいい将軍になったんじゃないかなぁ、と。
楊儀は……ごめんなさい。ほんとに好きになれません、あのひとは……

57 名前:海月 亮:2005/08/17(水) 23:02
>結合
書き始めの頃本気で考えてますた(´A`)
「無駄に長くなりすぎた(その悪寒がした)」
「書いてみようとしたはいいけど脈絡がなさ過ぎて話が解らなくなった」
「実は単品でその話を書いたほうがいいような錯覚がした」
以上の理由にて削除しますた&別に「蒼梧の空の下から」の補完話を書く予定でつ。

………本気か俺(‖´Д`)

あと室内プールは泳がないでいるのは地獄ですよ…マジで小籠包の感覚ですわ(;´Д`)

>ちうがくせい
ついでに言えば陸抗もこの話の時点では中三ですね。
でも、本当の歴史ではこの頃(二二六)陸抗は生まれていない罠w

>馬謖は斬るかどうか
でも劉備だったとしても、多分馬謖を助ける命を出したかどうか。
それに馬謖と楊儀のインパクト強すぎて、蒋エンや姜維を見出したのも諸葛亮先生だってのも忘れられ気味のような気が…

ついでに言えば海月も楊儀はダメです。
海月の中では郭図、十常侍と並ぶワーストのトップランカーですからw

58 名前:雑号将軍:2005/08/17(水) 23:34
>チュウガクセイ
やや、やはり中三だったのですね!?そうですよね。いや、ね、個人的に小学六年生の生意気な陸凱を勝手に妄想してたので…。でも中三でよかったですよ。小六であんな生意気だとちょっと・・・・・・ですからね。

>弟子さんたち
馬謖…劉備は面倒見がいい人なんでおそらく助ける勅命を出したかと。でもインテリ嫌いなイメージもあるしなあ。たしかにそうですよね。蒋エンはすばらしい政治家でしたし、董厥、樊建もなかなかですよね。
楊儀はごめんなさい。僕、好き嫌い以前にこいつに興味がありませんでした…。

59 名前:★教授:2005/08/18(木) 22:00
◆In the Moonlight -FRIENDSHIP SIDE-◆


「ストレス性の胃潰瘍ですな。よくこんなになるまで放っておいたものじゃ」
 カルテを眺めながら初老の医師は顔を顰める。その横では劉備と諸葛亮の帰宅部2トップが険しい顔をして医師の二の句を待っていた。
 しかし、医師の口から出た言葉は二人を冷たく突き放す内容だった。
「主等の期待しておる答えはない。彼女には暫くの入院、療養が必要なのだ」
「そんな…何とかなりまへんのか?」
「バカモン。吐血するまで体を酷使していた者をまだ使おうと言うのか、お主」
「………」
「ともかく、今は安静にして心のケアが大事じゃ。分かったなら、もう下がりなさい」
 劉備は言い返せなかった、というよりも言葉が浮かばなかった。有能故に重要な任や問題には必ずと言っていい程法正を用いてきた。これからもそのつもりでいたのだから。しかし、病室でベッドに横たわる法正の苦しげな寝顔を見て、言い返せる事など出来ようはずもない。
 己の甘えがまさかこんな形で現れるとは思ってもいなかった。他人を思いやれる劉備が犯した大きなミスだった。初めて人の心を思いやれなかった、法正の体調の変化に気付いてやれなかった…。診察室を出た劉備は唇を強く噛み、拳を固く握り締める。
「総代、気に病む事はないです。一人で背負おうとするのが貴方の悪い癖なのですよ」
「いやに冷静やん…。でもな、説教なら後にしてくれんか…って」
 後ろから語りかける諸葛亮に向き直る劉備。そこにあったのはいつもの涼しげで思考を読みきれない不適な眼差しではなく、白羽扇で顔を隠して肩を不規則に震わせる諸葛亮の姿だった。
「アンタ、まさか…泣…」
「愚問ですぞ、総代。一番冷静にならねばならない者が感情的になる訳はありますまい」
 気を付けて聞かなければ分からない僅かな違い、劉備はそれに気付いた。掠れてトーンが落ちた声、明らかに涙の混ざった感情を篭められた暖かいものに。彼女もまた法正同様、身も心も自分達の為に削っている事に改めて気付いた。そして、彼女にしか出来ないであろう残酷な現実にも。
 しかし、覚悟は出来た。自分達の悲願の為、そして志半ばで倒れた者達に報いる為にそれを諸葛亮に頼む事に迷いはなかった
「孔明。行くで、私らが祭を愉しむのは来年以降や。ホウ統と法正の穴は…アンタに埋めてもらうしかない!」
「…お任せを。我が志に偽りはありませぬ、例えどのような辛苦が待ち受けているとしても必ずや期待に添えて見せましょう」
 二人は互いの顔を見る事無く、踵を返して病院を後にした。新たな決意を胸に――


「………」
 法正が倒れて3日目の夜。彼女は個室の窓から外をぼんやりと眺めていた。
 あれから帰宅部の重鎮や彼女を慕う一般生徒達が見舞いに来てくれた。しかし、その中に孟達、張松の姿は無かった。所在の知れぬ張松ならともかく、孟達には法正が倒れた事が伝わっているはず。なのに、一度も姿を見せる事はおろか、電話伝言といった類もなかった。
「もう…あの頃には戻れないんだね…」
 そう呟く法正の顔は日増しに痩せていた。唯の3日で人はこれ程痩せられるものだろうかと思うくらいに。
 食欲は一番最初に無くなった。固形物が喉を通らなくなったのを皮切りに流動食、飲料水と口に入れるのが億劫になっていった。そして目を閉じれば浮かぶ過去が悪夢を呼び寝不足にも苛まれるようになった。これでは治る物も治らない。今は外している点滴でかろうじて保っていると言っても過言ではない状態なのだ。
「………きっと着る事はもうないんだろうな」
 ベッドの傍らの椅子に几帳面に畳まれた浴衣があった。この浴衣を見る度に法正の胸にはもう友と分かち合う事の出来ない、楽しかった時が蘇る。それがまた辛さを増す要因ともなっていた。その事には法正も気付いている。でも、すぐには片付けるつもりはなかった。せめて祭の期間だけでも傍に置いておきたかった、今だけでもあの頃の思い出に浸っていたかったから――と
 不意に病室のドアがゆっくりと開かれる。法正は担当医か看護婦でも来たのかなと思い、そちらを見遣る――が、違った。
 そこにいたのはぼさぼさの赤い髪を安物の髪留めで結った最近になって見慣れた自分の天敵に等しい存在、簡雍だった。
「孝直、大丈夫?」
「憲和………って、今面会時間じゃない…よね?」
「大変だったけど私の忍び足は一級品だからね」
 事も無げに言い放つ簡雍に思わず頬の筋肉が緩む法正。何時以来だろう、こうやって自然に笑わなくなったのは――そう思った時には既に法正の顔は難しくなっていた。
「…で、何の用なのよ?」
「いやいや、孝直は入院してたから花火見てないでしょ?」
「………まぁね。憲和は見てないってわけじゃないんでしょう?」
「見てたよ。いやぁ、あれは大きかった」
「そう…私は複雑な気分だったから入院してなくても…」
 そこで言葉を切ると俯き暗く沈んだ表情を浮かべる。簡雍は法正の意を知ってか知らずか言葉を続けた。
「まあまあ、そこで憲和ちゃんがいいモノ持ってきたわけよ」
 持参のリュックを背中から下ろすと徐に手を突っ込む。そして引き出された手には、市販されてる花火セットが握られていた。法正の頭にイヤな光景が一瞬で浮かぶ。
「ま、まさか…ここでするつもりじゃ…」
「そのまさか」
「び、病人に鞭打つの…ね」
 法正は観念した様に目を閉じる。だが、それはすぐに簡雍のでこぴんで止める事になった。
「何すんのよ…もう」
「部屋でするわけないっしょ。屋上行こ、いい風吹いてるし…狭い部屋に閉じこもってばっかりじゃ湿っちゃうよ」
「………」
 簡雍の言葉にはっと我に返る事が出来た法正。何故、自分はこんなにマイナス思考になっていたんだろう、と。
「憲和、肩借りられる?」
「お安い御用だね」
 おぼつかない足取りではあるが、法正は簡雍に肩を借りて一歩ずつ歩み始めた。陰はもう背中には見えなかった――

60 名前:★教授:2005/08/18(木) 22:00
「わぁ…」
「気持ちいい風だろ? 月も綺麗だし」
 扉を開いたその先にあった光景に感嘆の声が漏れる法正。夜とは云え日中の暑さが残る、しかしそれを風が和らげてくれているおかげで暑いという感覚ではなく暖かいという感覚が得られた。照明は病院の赤十字もあったが、それ以上に月明かりが眩しかった。無機質な人工物の腕にありながら、いつもの風景が何処と無く幻想的な世界に見えた。
「準備するからちょっと待っててねー」
 そんな中で簡雍は常設されていると知っているのかバケツをあっさりと見つけると、水場もこれまたあっさりと見つけて水を入れている。法正は『何だかなー』と思いながらちょっと現実に帰って来ざるを得なかった。
 そして二人は花火を前にして相談する。取り敢えず音の出る物、打ち上げ系を避けるという事で纏まったのだが…その二つの条件を満たしているのは線香花火だけだった。
「ま…仕方ないか。一応ここ病院だし…」
「そうね…」
 二人は大きな溜息を一回吐くと、線香花火に火を着ける。程なくしてパチパチと火花を散らしながら光のシャワーを地面に降り注ぎ始めた。小さく儚い光を魅入られたように見つめる法正にある思いが過ぎる。

『この線香花火は私自身なんだ』

 弱く小さく儚いその姿に自分を重ねていた。やがて細くなり、落ちていき、消える――自分もそうなのだから、と。
 二本目の線香花火に火を着けてぼんやりと寂しげな瞳でそれを見つめていると、不意に簡雍が口を開いた。
「今年は見れなかったけど、来年は一緒に花火見ようよ」
「……来年?」
 どくんと法正の心臓が跳ね上がる。こんな約束…いつかもした記憶があった。あの約束は果たされる事無く反故になってしまった。もうあんな思いをするのは堪えられない、悪いけど断らなければ…と思った、が口から突いて出た言葉は違った。
「いいよ。来年は浴衣着て祭を楽しんで一緒に花火を見よう」
 何故、こんな事を言ってしまったんだろう。微塵も思ってなかったのにどうして――去来する疑問の中、法正は認めたくない事実に気付く。ふと目の前の簡雍を見ると、彼女は得意気に笑みながら小指を立てていた。
「約束だよ、ゆびきり」
 屈託の無い簡雍の笑顔が法正には眩しく見えた。でも…この子ならもう一度信じてみるのもいいかもしれない、理由なんか思い当たらないけど――そう思った時にはもう既に法正は指を絡ませていた。絡む指を解くと簡雍は自分の頭に手を動かすと、法正の手にそれを握らせる。
「よーし、ゆびきった! 約束だからね、破れないようにこれを持っておくように」
「え、これ…うわ…」
 簡雍が手渡したもの、それは花型の髪留だった。手櫛で髪を均すと柔らかい夜風に流れる赤い髪に法正が感嘆の声を漏らすと同時にこの髪留の意味を悟る。簡雍のこの髪留はいつでも彼女の髪に添えられていた、大事にしているのか大切な誰かからの贈り物なのかは知らない。でも、どんな時でも常に簡雍と共にあった髪留を自分に預けた、それは自分を信用してくれているという事に他ならない。胸が一杯になる、万感の想いが法正の頬を伝い落ちた。
「へへー…来年それ返しに来てね、待ってるからさ」
「………うん、分かった。これは…預かっておくだけだからね! 絶対、返すから!」
 一人は太陽の様な暖かい笑顔で、そしてもう一人は月の様な静かな笑顔で…堅く握手を交わした――

 そして不意に屋上のドアが開いた――



「…で、病室からいなくなった孝直を探してた医者の一個師団に見つかって小一時間ほど説教されて帰ったってワケよ」
 そう言いながら簡雍は林檎飴を舐めながら隣を歩くホウ統を見る。
「ふぅん。先輩ってば、意外と友愛主義なんだな…知らんかった」
「意外は余計。んな可愛くない事ばっか言ってると焼きソバ奢らないよ」
「元々可愛くないし、別に奢って貰って喜ぶ程貧窮してない」
「好意って言葉を知らないのかなぁ、アンタわ」
 溜息を吐いて露店の立ち並ぶ参道を歩く簡雍にしたり顔のホウ統。大雑把な性格同士だったから妙にウマが合った二人。簡雍が学園を卒業してからも先輩後輩の垣根を越えて友達としてよく会っていたのだ。
「おっしゃ、林檎飴制覇。綿飴、金魚すくい…後は射的だな!」
「元気な事。若い子はいいねぇ…私はそろそろ姐さん達をネタに笑えないようなトシになりつつあるのに」
 ラムネを飲みながら毒づく簡雍。それを意に介さずにホウ統が尋ねる。
「…で、法正先輩に連絡付いたワケ? 卒業してから一度も会ってないんでしょ」
「うーん…それがさっぱり。でも、今日ここにいると思うんだけど」
「甘いな、先輩。連絡も寄越さず無しの礫で来ると思うかね?」
「いーんだよ、私は私だし孝直には孝直の人生なんだから。来る来ないじゃないんだ」
 簡雍は自分の髪を撫でながら答えると、ホウ統も口を閉ざして一度だけ頷いた。
 昨年の夏、法正に自分の髪留を渡してから簡雍は一度も髪を結っていない。理由を聞かれても『別に』としか答えずにカメラを構える彼女に深入りしようと思う勇者はいなかった。理由は自分達だけが知っていればそれでいい、簡雍はそう考えていた。幼馴染の劉備と同じくらいに大切な存在になっていたから、彼女にとって不利になりそうな事は言いたくなかったのだ。
「でも…ホントはやっぱり会いたいよ」
 夜空を潤んだ瞳で見上げ、ぽつりと呟く簡雍。
「心中察するわ…先輩」
 二人は何か気まずい雰囲気を感じて黙ったまま参道を歩いていた、が…沈黙を破ったのはホウ統の素っ頓狂な『あ』という一言だった。
「どしたの?」
 簡雍はホウ統の珍しい驚声に顔を上げて尋ねる。ホウ統はちょっと唖然としていたが、ぽむと手を叩くと突然踵を返した。
「ごめーん、先輩! 私はちょっくら用事思い出しましたわ、また明日会いましょ! しーゆー!」
「あ、コラ! 用事って何だ、おーい!」
 瞬く間に参道を駆けていったホウ統に簡雍も溜息を吐くしかなかった。
「全く…私一人で祭を楽しめってか? 寂しい先輩への思いやりがここまで欠如していようとはねぇ…」
「一人? 憲和は私との約束忘れちゃったワケ?」
「忘れるワケないだろー。忘れられるワケな…い?」
 後ろから話しかけられた声に自然と相槌を返していた自分に気付く簡雍。懐かしい、忘れる事の出来ない声…簡雍は振り返り、そこにいるであろう友達に声を掛けた。

『約束、憶えてくれてたんだ』

 そして、彼女もまた手に握る髪留を差し出しながら言葉を紡ぎ出した。

『約束、果たす事が出来たよ』

 二人の声は濡れて霞んでいた。それは互いの想いが如実に表れている事でもあった。


 ――二人の上を一輪の華が夜空に咲き誇った

 ――それは約束の証である髪留にも似ていた

 ――これからも続く二人の友情、決して壊れる事も離れる事もないだろう――

END

61 名前:★教授:2005/08/18(木) 22:03
まとめてレス…といきたいトコロなんですが、実は会社のPCで投稿してます。
あまり長い事占領してるとヒドイ目に遭わされそうですので、感想は後ほど…。

で、祭の最終日を今週末の土曜日と致します。主催してるのに殆ど参加してないこの現状って…。

PS.『FRIENDSHIP=友愛』

62 名前:北畠蒼陽:2005/08/18(木) 22:10
うわはうわは言いながら読みましたうふふぅ。
こういうのダイスキ!
さすがは教授様、もうワタクシなど足元どころか足の親指の指紋の溝にすら及ばないです。
100億のぐっじょぶを!

63 名前:雑号将軍:2005/08/19(金) 18:23
す、すばらしい!!「ええ話しやなあ」と独りでぶつぶつと呟いていた雑号将軍です。
ほんっっっっっとにそれがしごときの駄文とリンクさせて頂いただいて。もう言葉が出ないくらい感動しております。
法正と簡雍を自分で出してみて思ったんですが、あいつらキャラが難しいです…。だから教授様の二人を見ているとすごいなあと思っていました。これからもすばらしい法正と簡雍をよろしくお願いします!
後…この後って岡本様の「邂逅」にリンクするのでしょうか?とか思ってみたり。
長々と失礼致しました。

64 名前:海月 亮:2005/08/20(土) 00:20
(;;゚Д゚)!!
もう感情の置き所が見つからないのれす。もう泣くしかないのれす・゚・(ノД`)・゚・
二番煎じな感想でアレですが、ホンッとええ話やなぁ…(ノー`)´

>祭は土曜まで
じゃあそろそろ締めの絵を一枚…描きたいけど間に合うんかな?

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