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「涼宮府君、先遣した長門隊より伝令です。――敵・厳白虎軍の威力偵察部隊と接触交戦中、とのこと」
声にまで笑顔を貼り付けたような、爽やかで俺にはどうも耳障りな戦況報告が、右隣からきこえてくる。
横目にチラリと見れば、今やすっかり見慣れてしまった軍師スタイルの古泉が白馬に跨り、公園の鳩の羽根でも採集して作ったのかと訊きたくなるようなジュリアナ扇の出来損ないを、意味なくヒラヒラ揺らめかせていた。
報告を受けた人物は、そんな古泉の胡散臭い中華コスプレに何の違和も感じないのか、馬首を返しながら、実に満足げな鼻息を荒く吹き出す。
「OKよ古泉君!いよいよ、わが”SOS団@会稽”軍の初陣の火蓋が、切って落とされるのね!」
いよいよも何も、いま既に交戦中って言ってたじゃねえか。あと、火蓋ってのは火縄銃の部品だ。時代考証を無視した表現をするな。
「うるさいわよ、キョン!」
振り向きざま怒鳴ったその人物は、俺が想像した通りの極上の笑顔を満面に浮かべたまま、眉の角度だけで怒りをあらわした。
「こういう時はね、雰囲気を楽しめばいいのよ!あんた、今のこの状況を見て興奮しないわけ!? この、”SOS”と書かれた旒旗を翻す大軍団を見て、男子の本懐とか思わないわけ!?」
そりゃあ、興奮はするさ。これが日中合作大河ドラマのロケ現場で、俺が当事者でない観客か、せめて他国の観戦武官あたりの役どころだったらな。
「さて、どうでしょう。我が軍は総勢2万7千。対する敵軍は2万1千。敵味方会わせて約5万の人間が、この平原にひしめき展開しているというのですから、壮観と言うより他ありませんね」
と、端で聞いていた古泉が大げさに慨嘆してみせる。
「だいたい、5万の軍勢が衝突する野戦となると、歴史的な決戦にも劣らない規模といえるでしょう。我々は、いま歴史的瞬間に立ち会っているのかも知れません」
そうかよ。5万人程度なら、ちょうど甲子園いっぱいくらいの人数だがな。見慣れているわけじゃないが、そう非日常的な数字でも無いだろう。
「そう、言い方を変えれば、たった5万人。せいぜい球場のスタンドを埋める程度の兵士の群れが、この国や、我々日本のこれまでの歴史を、千年以上にわたって塗り替えてきたんですよ」
いちいち大げさな野郎だ。
そのたかだか数万の兵士の群れを、これからマスゲームみたいに右だの左だのへ移動させて、最終的に敵軍を殲滅し続けなければならない俺たちってのは、一体何様なんだろうね。
「決まってるじゃないですか」
と古泉。
「後世の歴史家は、我々をこう呼ぶでしょう――」
などと芝居がかった口調で続けかけた古泉の声を、絶妙なタイミングで、横合いの声がかっ攫う。
真っ赤な軍馬にまたがる、不釣り合いに小柄な体。史実的に見てどこか違う気もする薄紅色の中国風鎧に身を包んだ17歳の女子校生。
われらが県立北高の非合法組織SOS団の団長にして、今は揚州会稽郡の自称太守である涼宮ハルヒは、腕に巻かれた「超太守」の腕章を見よとばかりに天高く掲げ、そして声高らかにこう僭称しやがったのである。
「英雄!そう、あたし達は、この蒼天の時代に彗星の如く現れた英雄なのよ!」
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■古泉一樹(軍師)
「機関」とやらいう超国家組織に所属する、場所限定・期間限定の使えない超能力者。
いつも爽やかスマイルを絶やさない、ハッキリ言って怪しい奴。
この世界では、知力90代の軍師役だ。
まあ、意思決定はハルヒに任せてるから、結局はいつもの役だな。

■俺(治安回復要員兼雑用係)
いまや普通であることに憧れる、ただの高校生だ。その願望が叶ったのか、この世界内の能力値は、悲しいほどに普通だ。戦闘も内政も謀略も平均以下。実際そうかもしれんが、なんで俺だけこんなにリアルな数値なんだ!?

■涼宮ハルヒ(君主)
世界を改変する力だったか何だったか、でたらめな力を秘めているが、本人は気づいていない天性のトラブルメーカー。
十中八九、今回のマヌケ中華時空の発生源だ。
ためらい無く、己の全能力値を100に設定しているおめでたい野郎である。
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