第2話 「紹興酒トッカータ」

1-2 紹興酒トッカータ

ハルヒ:思うんだけど。

 なんだ。

ハルヒ:今回の敗因よ。あんな凡将ども相手に、あたし達ほどの名将が苦戦した理由よ。

…厳白虎は三国志的には雑魚キャラかもしれんが、16や7の子供にそんな事言われる筋合いは無いと思ってるぞ、きっと。

ハルヒ:いちいちうるさいわね。とにかくよ、能力的に勝る我々が敗れた以上、やはり用兵を誤ったと、認めざるを得ないところだわ。

 所移って、ふたたび治府の中である。
 先ほどの太守の間ではなく、瀟洒な造りの別楼みたいな場所だ。
 俺たちはブリーフィングを終えると、たいていここで茶を飲んでダベったりする。まあ、いつもの駅前の喫茶店みたいなスポットだ。 

みくる:お待たせしましたー。

 ありがとうございます、朝比奈さん。
 
 我らがSOS団の専属メイド、もとい、一年先輩の朝比奈みくるさんが、素焼きの椀に淹れたお茶を盆に載せ、一人一人に配り歩いてくれている。
 舞台が北高の文芸部室であろうと、戦乱の中国大陸であろうと、朝比奈さんの役どころは変わっていない。
 代わっているのは、いつものふわふわのメイド服から、やはりふわふわした絹製の装束になっているくらいだ。
 例によってハルヒが市から買い付けてきたその服は、どうも宮女の装束というより踊子の衣装っぽい気がしないでもないが、なんにせよ朝比奈さんの小柄な体と天使のような童顔と、目眩を覚えるほど見事なプロポーションの肢体を絶妙に際だたせていた。
 この一事に関してのみ言えば、ハルヒを評価してやっていいだろう。

みくる:今度は、キョン君のお口に合えばいいんだけど…

 朝比奈さんが手ずから振る舞ってくれる飲食物に合わない口など、俺が持ち合わせていようはずもなく、一口啜ってみた今度のお茶は、まさしく甘露だった。
 第三者的にみれば、日本で飲み慣れていたそれと違い、少しばかり土臭く、青臭かったかもしれず、嚥下後に残る渋みが少しばかり強かったかもしれないが、それでも俺は心に偽る事なく、こう言えることができた。

 俺 :――美味しいですよ、朝比奈さん。

 こぼれそうな大きな瞳を不安げに揺らめかせて、こちらを凝っと見つめている、この小動物のような美少女に、ほんの僅かでも否定的なニュアンスが滲み出るような言葉をかける奴はこの世から消え去った上に二度と戻ってこなくていい。
 案の定、ぱああっ、っと満面に安堵の笑顔をうかべて、朝比奈さんは笑み崩れた。それは曇天を払って、眩い陽光が天を覆うような温かさを思わせる。
 つられてにっこりと微笑んでしまう俺の隣で、古泉の野郎もコーヒーのTVCMあたりに出てくる違いのわかる男めいた口調で、

古 泉:なるほど。烏龍茶のような香気はありませんが、薬味が強く、質朴の中に喫茶の起源を感じさせる野趣がありますね。中国では古来、茶を烹(に)て薬湯に用いたといいますが、その工夫に従ったのでしょうか

 と、褒めてるのか貶してるのかよくわからんコメントで、朝比奈さんを喜ばせている。巧言令色とはこいつのような奴を差すんだろう。が、薬湯といわれれば、確かにニュアンスはわかるな。

ハルヒ:そう? まだちょっと苦いっていうか渋い味が残ってるわよね。みくるちゃん、まだ及第点とは言えないわ。

みくる:す、すみません…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厳白虎
厳密に言えば太守ではなく、武装勢力の指導者のようなもの。このときの呉郡の実質上の支配者。
ちなみに姓が厳で名前が白虎。偽名っぽいな。

統率:75 武力:70 知力:23
政治:21 魅力: 41

 

 お前は空気を読め。

ハルヒ:このへんはお酒くらいしか特産品ないんだから、せめてお茶とか、もう1アイテムくらい地場産業の目玉が欲しいのよね。なんか高級品らしいし。

みくる;はあ…

 相変わらず太守気取りで無茶を言う。おまけに朝比奈さんになんて重圧をかぶせてやがるんだ。
 と、俺が眉間のあたりから電波を送信していると、ハルヒは朝比奈さんが一日じゅう工夫を凝らして淹れたと思われるお茶を一気に飲み干し、俺の方を向き直った。

ハルヒ:で、さっきの続きなんだけど

続き? ああ、敗因か。問答するまでもないがな。なんなら教えてやろうか。

ハルヒ:あんたの意見なんか聞いてないわ。あたしに具申したければ、所定の申込書を書いて王朗さん経由で提出しなさい。

なんだそりゃ。

ハルヒ:もちろん古泉くんは別よ。副団長だし、軍師だからね。献策があればいつでも言って頂戴。

古 泉:光栄です、府君。――では、お言葉に甘えて、策を献じてよろしいでしょうか?

 古泉、おまえがそういう言い回しをするから、こいつが増長するんだ。

ハルヒ:いいわよ古泉くん。ただし、あたしが納得するような戦術じゃないとだめよ。

古 泉:戦術というより、まず先ほどの敗因についてですが――戦地にあっては、やはり我々の不慣れが、そして戦場の外では、準備不足が祟ったのは否めません。せめてあと10ターン、もとい3ヶ月は戦備に費やしたかったところです。そこで――

ハルヒ:兵法は神速を尊ぶのよ、古泉くん。問題はそこじゃないのよ

 いや、そこだろう。 

ハルヒ:あたしたちは、結構いいところまでいってたはずなのよ。現に敵軍を何度も潰走させている。でも、そのつど城へ戻った敵将が新しい兵を率いて戻ってくる。城に接近すれば矢を撃たれるし。この底なしの消耗戦に引き込まれたのが、戦場での失敗よね。

古 泉:なるほど。確かにそう言われると納得できます。――やはり、消耗戦に備えて、こちらも同程度の兵力を確保するのが得策ということでしょうか。

 古泉のやつ、論破されるふりして、話を内政の方向へ持っていこうとしてるな。
 が、相手は、たまに異常な勘の鋭さを見せるハルヒだ。

ハルヒ:ふふん。駄目よ古泉くん。消極は退嬰につながるの。あたしに保守の2文字はないわ。

 あっさりと古泉の詐略を看破したたらしく、底意地の悪そうなニヤニヤした笑みを古泉に向けた。

古 泉:――涼宮さんには敵いませんね。ここは雌伏の2文字をお耳に入れたかったのですが。

 古泉、悪びれずに肩をすくめてみせる。

ハルヒ:まあいいわ。で、あたしが思うによ。

ここからハルヒのターンらしい。

ハルヒ:我がSOS軍の編成と戦場運用に不備があったのよね。速攻で勝負をつけるため攻めに徹しようとした。古泉くん、「攻め」の反対は?

古 泉:受――「守り」、ですか。

ハルヒ:そう。防御よ。やっぱり、戦場では攻守のバランスが肝要だったと、今にして思えば悔やまれるところだわ。

 さっきと言ってる事が違うじゃねえか。

ハルヒ:戦場での事を言ってんの。いい? このテの戦乱時代は、たいがい先に手を出した方が勝つのよ。道義だ人倫だって鶴首ならべてる弱者から順に征服されていくでしょ? 歴史が証明しているの。だから、大戦略は先手必勝。必ず相手が軍備を整える前に決着をつけるべきよ。――そうでしょう?古泉君。

古 泉:仰るとおりです。

 爽やかなスマイルで、すかさず迎合する古泉。
 ちょっと待て。確かに先に手を出す方が序盤は有利だろうが、それこそ歴史に事例を問うならば、先に手を出した方がたいてい滅んでいる、という解答が得られるぞ。

ハルヒ:だから、戦場での慎重さが要求されるのよ。歴史上の英雄も独裁者も、負けたら駄目、ってところで蹴躓いて、みんなズルズル敗走モードへ引きずり込まれてるわけ。先人の失敗は教訓とすべきよね。要は負けなきゃ負けなかったわけなんだから。

 …誰か、いまの理論を俺に解りやすく説明してくれ。

ハルヒ:あんたは理解しなくていいの。いまは乱世なのよ。あたしが必要としてるのは、団長であるあたしの命令を執行する意思と服従よ。――そうでしょう、古泉くん?

古 泉:仰るとおりかと。

ハルヒ:いい? つぎから、戦場では冷静沈着、戦場の外では猪突猛進。これをもって、わがSOS団の戦略方針とするわ。

 普通、その逆だろう。なんか怪しげなドクトリンが10秒ほどの議論で採択されようとしてるぞ。
 ハルヒはそんな俺を冷ややかにシカトしつつ、ふいに首をひねって、部屋の片隅へ声をかけた。

ハルヒ:有希、異存はないわね。

 その視線の先には、室の隅の方にひっそりと腰掛け、先ほどからひたすらハードカバー本ならぬ竹簡に視線を走らせているショーカット姿の少女がいた。
 ――SOS団の団員にして、文芸部員の長門有希は、ハルヒの問いかけに否とも応とも答えず、一瞬前髪を揺らしただけで、また竹簡の方へ視線を戻した。
 馴れているハルヒは、その反応でも十分に満足だったようだ。  

ハルヒ:満場一致ね。じゃあ、この方針で突っ走るわよ、みんな!

 好きにしてくれ。あと、俺はどうでもいいが、せめて朝比奈さんからも確認とってあげてくれ。 

 



 舞台は、またまた城壁上に戻る。
 なんとなく、来てしまうんだな。特に絶景というわけではないが、眼下に市街を見下ろすせるのと、遠く四方に広がる山野を遠望でき、一人で黄昏れるにはもってこいのスポットなんだが――

古 泉:それにしても涼宮さんには驚かされます。

 こいつがアットランダムで現れるようになってから、俺もおちおちと独り言を呟いていられん日が続いている。
 だから何の用なんだ、古泉。

古 泉:ああ、差し入れです。胡餅といって、ご覧の通り饅頭みたいなものですよ。

 そういって古泉は、湯気上るソフトボール大の物体をよこした。…見たところ屋台あたりの作りたてみたいだが、変な素材が混ざってないだろうな? 可食物以外とか。

古 泉:――成分分析まではしかねますが、まあ大丈夫と思いますよ。この仮想世界は、我々日本人が過ごしやすいような調整を受けていますね。

 日本語が通じるくらいのデタラメ中国だからな。
 で、古泉がよこした饅頭もどきは、多分に穀物臭が強いことを除けば、意外に美味かった。中に入ってるのは、肉じゃなくて、豆のペーストか何かか?

古 泉:胡桃がメインですね。100年以上後ですが、この胡餅は内容物のバリエーションを替えて、この街の名物になるんですよ。我々は、その時代の先取りをしているわけです。

 そう言いながら、古泉は袂のあたりからゴソゴソと一枚の帛を取り出した。 びっしりと、文字が書かれている。
 まだ流通量の少ない紙の代用として、こうやって利用されているが、シルクのハンカチに字を書いてるのと同じだからな。凄い贅沢だぜ。

古 泉:このあたりの文化の再現度は高いですよね。色々と興味深いところです。

 古泉が広げたのは、忘れもしない、というか覚えたくもない、ハルヒ流人物評価――というか、俺たちのこの世界におけるパラメータ一覧表だ。
 白い絹布に勢いよく筆を走らせたと思われる墨痕は、この国の文化をまるで無視した横書きであり、律儀にもところどころ表組みである。

古 泉:さきほどの涼宮さんドクトリンを受けましてね。もういちど、僕たちの戦力をおさらいしておこうと思いまして。

 やくたいもない。
 憮然とする俺のとなりで、古泉は悠然と帛を広げる。A2サイズはあろうかという、けっこう大きなものだ。
 ばかばかしい限りだが、あらためて内容を黙読してやる。

 

お酒
この揚州は会稽郡の治所がある山陰県ってところは、21世紀現在、紹興市と呼ばれている。まあ、紹興酒と魯迅のおかげで、わりとメジャーな観光地だな。

涼宮ハルヒ

統率 武力 知力 政治 魅力 備考
100 100 100 100 100 特技:覇王 / 全兵科Aクラス         

 

いまどき小学生でもやらないだろう、これ。自ら知力20台くらいであることを証明するようなマヌケ能力値だ。

兵科が全Sでないことくらいが唯一の救いだが。

古 泉:根拠のある数値だとは思いますよ。基本的にスポーツ万能、成績優秀。あらゆる障害を力尽くで突破する破壊力、一を聴いて百を知る要領の良さ。すべてにおいて乱世向きの人材です。

 明らかに姦雄のほうだろうな。まあ、ハルヒの能力をマックスとして考えれば、他の連中の能力値にも目処が付くが、強制的にハルヒ以下に能力を引き下げられることになる実在の英雄各位には、同情を禁じ得ないところだ。

 

 


■涼宮ハルヒ(君主)
「時空の歪み」だか「この世界の創造主」だか「情報体としての自律進化の可能性」だかしらんが、とりあえず尋常ではない存在であるとされていて、いまでも未来人と超国家機関所属の超能力者と宇宙人が張り付いて監視中だ。
何より迷惑なのは、本人がそのことを知らないと言うことだな。

朝比奈みくる

統率 武力 知力 政治 魅力 備考
20 20 60 60 100 特技:傾国          

ハルヒが朝比奈さんをどう見てるかがよく解る数値だ。キャラの特徴は出てると思うが、SLGのユニットとしては、相当に使いづらい能力値だな…特殊能力の傾国、って何をさせる気だ!?

古 泉:いつかの草野球大会では、まさにそのような投入のされ方でしたね。

 ああ、あの時のチアガールか。確かに朝比奈さんのおかげで、だいぶ敵投手の動揺を誘えたと言える。
 しかし能力があまりに戦争に向いて無さすぎる。かといって内政官といえるほどの事務能力も与えられていないので、後背地での活躍も期待できそうにない。
 結局、朝比奈さんは俺たち専属のメイドさん、ということで落ち着きそうだ。
 

 

■朝比奈みくる(メイド)
SOS団のメイドとして甲斐甲斐しく働いてくれている愛くるしい先輩だが、その実、遙か未来から、ハルヒを監視するためにやってきた当局の人間らしい。そのわりりにはタイムトラベル用のデバイスをどこかに落として半泣きになったりするお茶目でかわいらしい人である。

古泉一樹

統率 武力 知力 政治 魅力 備考
70 70 95 90 80 特技:論客         

 ハルヒのを見た後だと毒気も抜けるが、やっぱこの能力値もやりすぎだろう。特技の弁舌というのは解るが、知力95・政治の90って何なんだ

古 泉:こんなにも高く評価して貰えたのは、正直嬉しいですが、実際のところ涼宮さんなりのキャラ付けですね。ゲームを始めるに当たって、まず軍師役が必要ですから、そのためのデフォルメが必要だったんでしょう。

 軍師ねえ。わからんでもないが、Aクラスユニットとしては中途半端感があるな。

古 泉:中途半端…ですか。

 万能ユニットというにしては、統率と武力の70代ってのがな。使いではあると思うが、武の主力に据えるのは厳しい数値だ。

古 泉:なるほど。――言われてみると涼宮さんらしい自制が現れてますね。全権を任す事の出来る分身タイプの副将というよりは、補佐役向きのイメージを強調したのでしょう。

 
■古泉一樹(軍師)
「機関」とやらいう超国家組織に所属する、場所限定・期間限定の使えない超能力者。
いつも爽やかスマイルを絶やさない、ハッキリ言って怪しい奴。
この世界では、知力90代の軍師役だが、意思決定はハルヒに任せてるから、結局はいつもの役だな。

長門有希

統率 武力 知力 政治 魅力 備考
60 60 90 95 60 特技:鬼門         

 なかなか反応に困る能力値だ。長門の場合、その正体を知ってる人間にとってみれば、全能力256でも全然足りないくらいなんだが、知らない人間にとっては、たんなる読書好きの無口少女だからな。スポーツ万能といっても、武力とはイメージが異なるわけだし。

古 泉:涼宮さんは、その博識なところと、事務処理能力に強調点を見出しているようですね。知力が僕よりも低く設定されているのは、普段から参謀的な助言を涼宮さんに与える場がないからでしょうね。

 武将としてはおまえに輪を掛けて中途半端感がなくもないが、文官としてみれば最強クラスだな。武力も65536くらいでいいと思うんだが。

古 泉:長門さんは、どちらかと言えばゲームの登場武将ではなく、メモリエディターみたいな存在ですからね。でも、涼宮さんはそれを知り得ない。よって、涼宮さんの世界の中では、読書好きの万能選手どまりにならざるを得ない、と。

 ん? ――長門の特技って、前は「明鏡」じゃなかったか?

古 泉:そうでしたか?

 なんとなくそんな気がしたんだが…気のせいか。

 

■長門有希
文芸部所属で、俺たちと同じ学年だ。
その正体は、宇宙人。より正確に言うと、宇宙的存在(情報生命体?)が、人類とコンタクトするために作り上げたインターフェイスであるという。宇宙を構成する情報そのものにアクセス(?)できるため、事実上、こいつこそ神に等しい能力を任意に行使できるのだ。
この世界では、もちろんそんな能力は再現されていないが。

俺(キョン)

統率 武力 知力 政治 魅力 備考
74 70 61 73 69 特技:捕縛         


   古 泉:…。

 …。なんか言えよ。

古 泉:特に序盤にかけて、政戦両面で重宝しそうな中堅ユニットです。何より特技の「捕縛」は、あらゆる特技の頂点に君臨するスペシャルスキルといっても過言ではありません。

 …ああ。
 C級武将としてのバランスは、悪くないと思うが。しかしだ――何がおかしい、古泉。

古 泉:いや、あなたの能力値だけ、他のメンバーとは決定的に異なる点があるのに気づきましてね。からかってるのではなく、羨望を禁じ得ません。

 …なんだ、それは。

古 泉:見てすぐに解る事なんですけどね。

 その、してやったり感の漂う意味ありげな微笑みはやめろ。もういい、俺は興味ない。

古 泉:そうですか。――まあ、SOS団のメンバーは出揃いましたし、とりあえずこの面々で、中原に鹿を逐う戦いが始まるわけです。涼宮ハルヒ指揮・演奏SOS楽団。とんな物語組曲になるかは、終わってみないとわからないですね。

 とか言いながら、作曲家はおまえだろう、軍師閣下。

古 泉:そうでもありませんよ。僕はこの世界においても、あくまで助言者兼イエスマンにすぎません。

 古泉は肩をすくめた。

古 泉:なぜなら、涼宮さんは軍師に政戦両略を一任して、後方で安穏とするタイプではないからです。僕に要求されるのは、涼宮さんに戦略と戦術を決定するための情報を整理して提供すること。あとは実行フェーズでの駒の一つであること、のみです。――覇道になるか王道になるか、天下統一への道は、あくまで涼宮さんが決める事になるでしょう。

 結局は、作曲無しの風まかせか。指揮者の気侭なタクトを追って、俺たちは必死こいて演奏するってことか。

古 泉:いいじゃありませんか。元の世界のSOS団だって、いきあたりばったりで色々な事態を乗り越えてきたのですから。この即興曲の果てにどんな終章を迎えるか楽しみなくらいですよ。

 はあ… 軍師役がはなから思考放棄とはな。
 いつになったら、元の世界、21世紀の日本に戻れるやら、だ。

古 泉:ま、慌てずにいきましょう。おそらくは終了条件である天下統一にむけて。

―やれやれ。
  


■俺(治安回復要員兼雑用係)
いまや普通であることに憧れる、ただの高校生だ。その願望が叶ったのか、この世界内の能力値は、悲しいほどに普通だ。戦闘も内政も謀略も平均以下。実際そうかもしれんが釈然とせんな。