第3話 「猛将募集中!」

1-3 猛将募集中!

 ――という経緯で「猪突猛進」という、亡国の掛け軸にうってつけのスローガンが掲げられるに至った俺たちSOS団@会稽郡だが、さて猪突しようにもその牙に事欠き、猛進したくともその燃料すら無いのが現状だ。
 総じて、貧乏なのである。金がない。兵糧もない。兵も無い。ハルヒの馬鹿が、ド辺境会稽郡のただでさえ乏しい元資金を、最初っから打上花火のように浪費してしまったため、次の出兵計画作成さえままならない状況である。

 財務方から、以上の報告を聞かされたときも、ハルヒは別段関心がある風でもなくのたまった。

ハルヒ:それよりも武官が足りないのよね。

 …人の話を聞け。

ハルヒ:会稽って文官は有り余ってるのに、武将が居ないのよ。深刻な問題だわ。

 つまらなさそうな顔で一同を見渡すハルヒ。
 ハルヒの傍若無人ぶりには慣れっこのSOS団員と、口ひげの下で苦笑を隠しているらしい王朗さんは別として、他の面々は喉元まで込み上がっている罵声を押し殺すのに必死そうだ。今の一言で忠誠値が20くらい下がったんじゃないかと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武官
システム上、文武官に明確な違いはないが、基本的に見た目で判断できるレベルだろうな。
また武力か統率力が70以上であれば、武官と言わずとも、佐官か将官級の軍事技術者と言える。

しかしまあ、的はずれの指摘ではない。
 いま会稽にいる武将は俺たちを除いて5名だが、王朗さんを筆頭に、見事に文官揃いだ。武力か統率が70以上の人間が一人もいない。
 だが、有り余るとはまた贅沢過ぎる物言いだ。呉の厳白虎が聞けば泣いて悔しがるに違いない。あっちは武官ふたりで切り盛りしてるんだからな。

ハルヒ:事実は事実よ。これから戦争やるってんだから、群がる敵兵を千切っては投げ千切っては投げ――って活躍してくれる猛将が必要なの!

確かに戦時下にあって武官不足というのは深刻ですな。明府が神の如き武勇をお持ちでも、手足となる者に事欠いては、王業もままなりませぬ。

 さすがはオトナというべきか、王朗さんに目配せされた華さんが、恭しく言上した。
 一方、露骨にいやな顔をしたばかりか、中国映画でみかける「フン!」という鼻音も高くそっぽを向いたのは虞翻さんだ。ぎょろりとした瞳、剛い髭、反り返った広い額と、絵に描いたような硬骨漢である。何しろ、ハルヒの太守着任に反発してただひとり下野騒ぎを起こした男だ。 

ハルヒ:何よ。文句あんの?

 ハルヒがおびえた風もなく、そんな強面の虞翻さんを睨み付ける。

ハルヒ:文句があるなら論拠を示して反論したら? いい年して、態度だけで反発を示して終わりなの?

 ドキッとするようなことを、ハルヒは虞翻さんを睨みながら言う。
 お、おい。ハルヒ、いい加減にしろ。
 さすがにこの緊迫した空気はまずいと思ったんだが、この場を納めるべき王朗さんも古泉も、別々の試薬に突っ込んだリトマス紙の色を見比べるような表情で、ハルヒと虞翻さんを交互に観察しているだけだ。
 ――結構長い沈黙の末、先に口を開いたのは虞翻さんだった。

虞 翻:…この件は太守が正しかろう。事実は事実だ。

 虞翻さんが、さすがに大人げないと思い直したのか、ムスッとした顔のまま折れてくれた。
 ハルヒは一瞬頬を弛めたが、すぐに例の獰猛な笑みを浮かべて一言、

ハルヒ:解ればいいのよ!

 と得意げに勝利宣言を掲げ、虞翻さんはいっそう渋面を歪めている。
 …はあ。
 毎回こんな黒ひげ危機一髪みたいな軍議をされては、こっちの胃と精神が保たん。
 げんなりとする俺を一瞥して、古泉が歩み出た。

古 泉:府君、いかがでしょう。この会稽にはまだ名を惜しむべき勇将が眠っているかもしれません。諸県の市井を探索し、勇者を募ってはいかがでしょう。

ハルヒ:いいわね。スカウトってやつね。――で、誰がいけばいいの?

古 泉:他ならぬ人財のこと。やはり、ここは太守自らが御出座しになるべきかと。

 サラリと言う古泉。ハルヒは面倒くさそうな表情を浮かべたが、不意に眉をはねあげ、何か呟いたかと思うと、

ハルヒ:キョン!

 なんだよ。

ハルヒ:あんた暇でしょう。巡察命じるから、ついでについてきなさい。

 勘弁してくれ。


 ――で。
 ハルヒとともに人材探索という名の市井探訪の最中である。
 予想はしていたが、まじめに人材を問うていたのは最初だけで、途中からはもういつもの不思議探しと変わらん風景だ。
 ぶつくさと文句を言っていたかと思えば、次の瞬間には目を輝かせて辻向かいの露商へ駆け寄るなど、相変わらずハルヒは全く次の行動が予測できないため、疲れることこの上ない。
 ああ、隣にいるのがハルヒでなく朝比奈さんだったら、さぞや趣の深い市井巡察になっていただろうに。

ハルヒ:キョン、あれ見なさい! あれじゃないわよバカ!あっちよ!あの緑の!

 などと、こいつは縁日に小学生が親と間違えて知らないオッサンの手を引いて駆け回ってるくらいのテンションだ。情緒もクソもない。
 おまけに方向転換のつど袖だの襟元だの掴みやすそうな部分を引っぱられ、最後の方は面倒くさくなったのか、手首をがっしりと掴まれて引きずり回されていた。この馬鹿力なら武力100というのも頷けるってなもんだ。
 道行く人々も、ハルヒがこの郡の太守であることを知っているらしく、すれ違うたびに奇妙な笑みをこちらに向けてきやがる。そいつらの表情が、掃除時間中ハルヒに捕まってる俺を眺めるクラスメイトのそれに似ている気がしないでもないが、まあそれはどうでもいい。
 おいハルヒ、人材探しはどうなってるんだ。

ハルヒ:やってるわよ。そのうち見つかるわよ

 いい加減だなおい。
 だいたい、人材探しってのは、もっと地味にコツコツと、砂漠の砂から宝石を探すように、市井の噂をつぶさに集めてだな――

ハルヒ:キョン!あれ見て!

 だから人の話を――!
 と俺が怒鳴りかえそうとするのを片手で制して、ハルヒはちょっと真剣な表情を浮かべた。

ハルヒ:あの酒場で管まいてる素浪人みたいな奴。あれ、けっこう強そうじゃない?

 む?
 ――見てみると、なるほど地方巡業中のマイナー団体レスラーめいた大男が、昼間っからイイ感じに出来上がっていた。
 年の頃は20そこそこか、どろどろに垢汚れた熊みたいな顔、鬢もボサボサ、ボロ布と見まごう衣服を腰に巻き付け、どこからどう見ても山賊か職にあぶれた浪人だ。
 目を見張るべきは、肩や首にみっしりと巻き付いている筋肉だろう。
 上半身を半分はだけているため、見事な逆三角形の肉体が露わになっている。

ハルヒ:うわ、臭あっ――

 俺はそうでもないと思うが、ハルヒ的には駄目な体臭らしい。確かに酸っぱい臭いが周りに充満している。
 さすがにこの当時の中国でも、この手合いは珍しいのか、遠巻きに見物客が垣根を作りつつある。

ハルヒ:キョン、あんたついてきなさい。

 臭いに馴れたらしいハルヒが、また俺の手を引いてズンズンと男へ歩み寄ってゆく。
 たちまち奇異の視線が俺とハルヒにも集中する。なかには「おお、太守だ」とか呟いてる声も聞こえた。

ハルヒ:ちょっと、そこの人。いいかしら。

 そんな周囲の視線を意識しないのか、ハルヒは男のすぐ隣の席に、横ざまに腰掛けた。俺は半歩離れた後ろに突っ立ったままだ。
 男は、うろんな顔でハルヒを見たが、小さく首を振った。

   男 :子供が昼間っからこんな店に来てちゃいけねえ。帰んな。

 意外に良識あるまっとうな台詞を吐いて、しっし、とハルヒを追い払う。無論それで怯むハルヒではなく、むしろ面白そうなオモチャを見つけた子供のように目を輝かせ始めたのは、そのリアクションが気に入ったせいだろう。

ハルヒ:あたし、この郡の太守の涼宮ハルヒ。こいつが手下その1。で、あなたの名前は?

 ハルヒが対人スキルの低そうな名乗りをあげると、男はきょとんとした表情で俺とハルヒを見比べる。
 が、ハルヒの高価そうな装束と、俺が身にまとっている郡吏の束帯を見て、嘘ではないと即断したらしい。
 すぐに姿勢を正し、

    :董襲と申す。

 と、錆のある声で答えた。


 

有り余る文官
ちなみに王朗さんの他、華さん、虞翻さん、許靖さん、許貢さんという顔ぶれだ。
孫策に処刑された許貢さんはともかく、王朗さんも華さんも後の魏王朝の元老だし、虞翻さんは呉王朝の御意見番、許靖さんは蜀王朝の名誉大臣になる人物だ。
 要するに、色んな国の宰相級の人材が最初から4人もいる、この会稽こそ異常なのである。

ハルヒ:――董襲さん…ねえ。何かで聞いたことあるわねえ。

 そりゃそうだろう。一応、地味ながら後の孫呉を代表する部将の一人だ。

ハルヒ:で、董襲さん。あなた、私に仕えなさい。

 いきなりかよ。
 周囲の人垣からも失笑が漏れる。

董 襲:……。

ハルヒ:見たところ定職もなさそうだし、どうせ暇してるんでしょ。

 ハルヒはあっさり決めつけると、上機嫌そうに卓上の酒瓶を取り、まだ中身のある董襲さんの杯に酒をつぎ足した。無礼きわまる奴だな。ついでに言えば、それは普通に董襲さんの酒だ。
 真意を測りかねているというより、あきらかに呆れた表情で、董襲さんはハルヒを眺めている。

ハルヒ:ここで会ったのも何かの縁だわ。あなたなら我が軍のトップバッターになれるわ。その後の働き次第では、さらなる高みを目指せるかも!高禄は保証するわよ!

 などと手を取らんばかりにまくし立てる。
 対する董襲さんのほうも、見た目よりはずっと取っ付きやすいタイプだったようだ。
 呆気にとられていたのは最初だけで、やがて速射砲のようなハルヒのペースに馴れたか、ぼつぼつと己の事を語り始めた。

 董襲さんの弁によると――今は浪人しているが、ゆくゆく天下国家のために己を活かしたいと思う、と。今は生涯を託せる主を捜しながら、各地の豪傑たちと交わっている最中である、と。故に、今は特定の主に仕えるを良しとしないと――

 ふーむ。
 なるほど、無頼めいているが、その志操は高い人物のようだ。
 忠義とは、大志とは…と、男子の本懐について、俺さえも深く考え込まざるを得ない、そんな気持ちにさせられる。

董 襲:ははは。まァ長くなったが、要はそれよ。俺の力は唯この身の為だけにあるのではない、と俺は思いたいわけだ。こう言っちゃ悪いが、一郡の部将なんかでは、天下の為に活かせない、とな。

 誇大妄想と嗤わば嗤え。身代こそ単家の素浪人だが、志は常に天を向いている――と。
 …まさに漢だな。
 俺だって、第三者としてはこういう型の男に憧れなくもない。自分でなろうとは思わんが。
 などと、そこはかとなくシンパシィを覚え始めたまさにその瞬間――

ハルヒ:何それ? 俺が本気を出せば凄いんだ、って部屋に閉じこもってるニートと同じじゃない。

 お前はいったい何を聞いていたんだ!?
 冷え切ったハルヒの声を聴き、さすがの俺も本気で目眩を覚えた。
 まして董襲さんは目眩どころではないだろう。みれば、羊飼いに石をぶつけられたペリシテの巨人のように、唖然と硬直している。
 ハルヒは、つまらなさそうに、しかも多少トゲを含めたため息をついてみせた。

ハルヒ:悪いけど董襲さん。それワナビーってやつだから。それも公募とかコンテストとかに出ないタイプのね。

董 襲:なに…?

ハルヒ:あんた、その腕自慢を自分以上の責任で使ったことがある? 気まぐれの人助けって意味じゃないわよ。それは自己責任の範疇だから。

 董襲さんの底響きのする呻り声を、ハルヒはぴしりとへし折った。

ハルヒ:あたしはあるわよ。団長やってるし、太守もやってるもの。どっちも最高責任者よ最高責任者。毎日決断して、人を動かしてるのよ。みんなそれに従って働いてくれるのよね。

董 襲:…それがどうした。

ハルヒ:郡のみんなから集めた税金がぐるっと還元されて郡政になって、その集合で国が運用されるのは知ってるわよね。その税金を末端で運用する人たちも、規則や上司の命令に従ってるとはいえ、都度都度の機能と責任は自分で負ってるのよ。…その意味わかる?

董 襲:…何が言いたいのだ?

ハルヒ:つまりよ。

 ハルヒは、だん!と卓を叩くと、董襲さんにビシッと指をつきつけた。

ハルヒ:あんたが後々の天下の為とか言いって、いま出し渋ってる力よりも、今この瞬間もあたしの下で働いている官吏や兵士たちみんなの方が、百万倍も天下に有用だってこと!

 一刀両断に、ハルヒは董襲という男の生き様を否定した。

ハルヒ;あんたは自分の力こぶだけ面倒見てればいいんだろうけど、他のみんなは、間接的にこの県の、この郡の、この国の未来を担いで生きてるのよ!その決定的な違い、まだ解んない!?

董 襲:む…むむ…!

ハルヒ:なぁにがむ…むむよ! 今のままじゃ、あんたの言う「一郡の部将なんか」どころじゃないくらい、自分の人生無駄遣いしてるってことなのよ!?

 董襲さんの上体が、なんと、落雷でも受けたかの如くグラリと泳いだ。
 正直学生の俺にはピンとこない話なんだが、董襲さんには堪えているのか? そりゃあ今だけ見ればそうかもしれんが、ゆくゆく董襲さんも天下に力を尽くしたいと思ってるわけで、ハルヒの一方的な弾劾は酷なんじゃないか。

ハルヒ:董襲さん、あなたが思ってるような君主と、もし若いうちに出会えなかったら? 一生フリーターで過ごすの? それとも40前くらいに焦って適当な就職に走るクチ? 60過ぎて振り返るわけ? 俺は本分を出せなかった、主君に恵まれなかった、って。

董 襲:ム…ム…!

 董襲さんがぶるぶると震えている。それは怒りではなく、己が立っていた大地が突然裂けた怯えか。
 …って、んなアホな!おいおい、こんなペラっペラに薄い口車に乗せられちゃだめだぞ、董襲さん。あんたの志を思い出すんだ!

ハルヒ:バカキョン!あんたどっちの味方なのよ!

 これ以上お前に人生を狂わされる犠牲者を出したくないんだよ。

ハルヒ:アホ言ってないで手伝いなさいよ!もう董襲さんのゲージはあとわずかよっ!

 お前は何を言ってるんだ。
 などと俺とハルヒが咬み合ってる端で、ゆっくりと、董襲さんの巨体がくずおれた。

董 襲:嗚呼…われ誤てり。俺は自らの青雲をむなしくするところであった。明府、この愚物でよければ、今日より存分に使い潰してくれい!

 なんと。
 董襲さんが、墜ちた!
 その途端、

 ――どおおおおお!

 っと、周囲のギャラリーから歓声がわき起こる。…いつの間にこんなに増えてんだ!?


董襲さん
史実だと、孫策の代から孫家に仕えた猛将で、武勇だけじゃなく言動も立派な人だったらしいな。
鎧二領を着込んで矢嵐の中に突進したり、潜水して敵艦の繋留ロープを水中で切ったりと、なんというかこう、肉体的なエピソードに事欠かない。
自分の旗艦が転覆しかけたとき、退艦を潔しとせず、結局艦と命運を共にしたという、最期までドラマティックな人物だったらしい。

統率:80 武力:84 知力:53
政治:51 魅力: 69

うなだれている董襲さんに歩み寄ると、ハルヒはその手を取って立ち上がらせる。ああ、なんかそういうアスキーアートも一時期よく見かけたよな。

ハルヒ:立つがいいわ、董襲さん! あなたは今からわがSOS団の斬り込み隊長なんだから! 今日から毎日、明日にさえ悔いを残さないくらいにガンガン活躍してよね!

 ハルヒがびしっと北の方を指さして宣言するや、ふたたび周囲から大喝采だ。

ハルヒ;みんな!わが会稽郡に頼もしい戦力が加わってくれたわ! ともに乾杯しましょう!あたしの奢りよっ!

 ハルヒが高らかに叫ぶと、ふたたび歓声がわき起こる。
 おいおい、いいのかよ。と俺の突っ込みは例によって無視される。その場のノリというやつだ。この場に居合わせた一同の手から手へ、次々と盃がリレーされ、また数の足りない分は近所の市場から大至急調達され、その全てへありったけの濁り酒が振る舞われた。

ハルヒ:未成年はお酒飲んじゃだめよ!あたしと同じ黍のやつを取りなさーい!

 手をぐるぐる回しながら怒鳴っているハルヒを後目に、なぜか俺が盃の買い出しとかツケの交渉をやらされてるわけだが。
 そして200名くらいの人垣に一通り盃が行き渡ったところで、ハルヒの馬鹿でかい声が、夕暮れ迫る会稽の空へ響きわたった。

ハルヒ:乾 ッ 杯 ぃ ー !

 それに唱和して突き上げられた盃。飛び散る酒。
 なんだかお祭りみたいだ。
 嘘みたいに緋い夕日のなか、降り注ぐ酒のしぶきを、笑いながら避けようとするハルヒと、いつのまにかハルヒに手を掴まれて振り回されてる俺と、重そうな大鼎を持ち上げて喝采を浴びている董襲さんと、次々と盃を干すかぶち撒けるかして呵々と大笑する市の人々と。

 みんなが明日知れぬ乱世ってことを忘れて、まあ、心底楽しめたんじゃないかと思う。
 まったく。人材探しが、えらい騒ぎになっちまったもんだ。
 やれやれ、と言わせてくれ。


……………………
…………………
……………
………


 ――西暦194年、9月。
 会稽郡太守のハルヒは、郡兵のほぼ動員限界にあたる2万2千を率い、ふたたび北上を開始した。
 中軍に太守直下の弩弓手6千を配するほか、槍兵、戟兵がそれぞれ6千余。
 先鋒の大将に董襲さんを抜擢し、左右の軍を率いるのは俺と古泉。また軽兵3千を率いて遊撃しているのは長門だ。

 渡渉地点に敵影無し――という知らせを受けた会稽軍は、未明に浙江を一挙に押し渡り、銭唐より進路を東へ転じて呉郡へなだれ込む。

 対する呉郡の支配者・厳白虎は、県城の守りに1万を留め、残りの1万6千を率いて呉近郊に布陣した。
 いよいよ、呉越相争う二度目の会戦が始まろうとしていた。

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