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■ 【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】

1 名前:★惟新:2004/01/16(金) 14:26
『この萌えがいいね』と君が言ったから1月18日は旭記念日

と、いうわけで旭記念日祭りの開催を告知します!
旭記念日は神の光臨された1月18日にあやかる、何かゴリゴリ作ろーぜの日です。
学三暦内に設けられた謎の休日「旭記念日」を巡る創作物を中心とした、創作活動の推進を目的とします。
記念日制定の経緯
お祭り開催の経緯

そんなわけで、皆様、ゴリゴリ作ってくださいませーっ!
学三に関連していればSS、イラスト、漫画、音楽、設定等々、何でも構いません。
参加の際には「学三世界での旭記念日」(1月18日)をテーマにしていただけると幸いですが、
何かと制限を受けますので、どうもアイデアが沸かない、などの場合も大いにありえます。
その際はテーマに関わらず、ご自由に創作なさってください。そこは創作の神の命じるままに! です。
多数のご参加、心よりお待ちしております。

具体的な事項は>>2に。

190 名前:北畠蒼陽:2006/01/24(火) 19:40
ナース!ナース!うっはー!
やぁ、これはいいコスプレですね!
感動のあまり熱と鼻水が出そうです!
会社休めとかいう話ですか、すいません……

25日を目安に!? まだあるの!?
うっはー、明日までもんもんと過ごしましょう(笑

191 名前:雑号将軍:2006/01/25(水) 19:58
  ▲跳躍▲

 帰宅部連合の劉備が益州校区を手中に収めてから間もない頃、各地では連合に反抗する蜂起が相次いでいたそんな時。ここ南充棟でも反対派が蜂起していた・・・・・・。

「急ぐのよ!反乱軍は目の前まで迫ってきているわ!」
 棟長が半ば叫ぶようにして、辺りを駆け回っている。
 多少なりとも錯乱しているのだろう。元来、武道を鍛錬するよりも本を読むのが好きな文学少女だ。こんな山賊まがいの連中とまともにやりやったことなどあるはずもない。
 まあ、焦るのも無理ないか・・・・・・。
「棟長、少しは落ち着いたらどうです?あなたがそれでは皆の士気にかかわります」
「・・・うっ、でもぉー」
「デモは反乱軍に殲滅させられましたよ・・・。とにかく今は・・・・・・うん?どうした?」
 私は半ベソの棟長に軽口を交わし、善後策を講じようとしたとき放っておいた斥候が血相を変えて戻ってきた。
「なに!副棟長が敵に捕らえられたっていうのっ!」
 私は灰色の天井を仰ぎ見るよりほかになかった。横では棟長がぺたりとへばりこんでしまっている。
 無理もないかな。棟長と副棟長、仲良かったから。
 文の棟長に対して武の副棟長。あの人はそんなに弱い人じゃない。
 まあそんなに強い人ではなかったけど。
 それでも単身棟内に残って私たちを逃がしてくれた・・・・・・。
助けないと・・・・・・絶対助けないと・・・・・・っ!
 なんだろう。この感じ。なんだか胸が熱い。
体中が炎に包まれているみたいに。
――なんでもできる
なんの根拠もない自信が私の心の中に満ちあふれてくる。
 気がついたとき、私はもう木刀を手に取っていた。
 身体が勝手に動いていた。
そう。それが一番近い表現。
「は、伯岐さん?一体どこに行くつもり?」
 伯岐・・・親しい人にしか呼ばせない私のもう一つの名。この名で呼んでくれる人はここにいる棟長と後一人だけ。
 副棟長。あの人は私を「伯岐」と呼んでくれる。
「そうですね。囚われた姫将軍を助けに行く・・・・・・そんなところでしょうか?」
 私は肩をすくめ、ちょっとおどけてみせた。
 棟長は何も言おうとしない。どうやら私の無謀極まりない行動に絶句しているようだ。
『私だって、バカだと思う。それでも私は副棟長を助けたい!』
 もはや火のついていない部分は私の心の中には存在しない。
さあ、行こう!
「棟長。副棟長は私が必ず助け出してきます。必ず!」
 わたしはそれだけ言うと、引き揚げてきた道を今度は攻め上っていった。
 夕暮れ時に吹く風はまだ冷たかった。

『ここまでたどり着いたはいいが、どうやって侵入するか・・・・・・』
 私は南充棟の裏門前の草陰に隠れ、潜入の機会を窺っていた。
 昨日まで自分が登校していた所に入れない・・・バカらしい話だ。だが、れっきとした現実だ。
だからこそ、今はこの危機をなんとか切り抜けなければならない。
さて、どうしたものかな・・・・・・。
 私は半時くらいそこで丸まっていただろうか。棟内を白光が照らし始めた頃、運動場の方から歓声が聞こえてきた。
それだけではない。
校舎の方からもなにやら、驚喜の雄叫びらしきものが聞こえてくる。
『なんとまあ、節操のない・・・・・・。あれでも女?』
 私はそう毒づきながらもこれらの情報から現在の状況を分析する。そこかから導き出される答えは・・・・・・。
 宴会である。
『ふふ、なるほど・・・私たちを追い出せたことを肴に祝勝会ねぇ。だったら私も参加してみよっかな』
 私は心の底から再び燃えたぎってくる炎を感じていた。そして同時にこれから行う手順が流れる川のように形作られていった。
 決断してからの行動は素早かった。
私は六〇センチばかりの木刀を握り直し、裏門に詰める柔道着姿の女生徒に斬り込んでいった。
闇の中を駆けた。かっこよく言えばそんな感じ。
私の斬撃の前に女生徒は助けを呼ぶ暇もなく、地面に倒れ伏していた。
正直言うと、なぜ柔道着なのか突っ込みたくなったけど、生憎そんな暇はなかった。
まあ、聞かなくても大方検討はつくし・・・。
 ここからはスピード勝負だと感じた私は、女生徒からサブマシンガン(エアガン)と弾倉だけを引ったくり、棟を囲む壁に手を掛け、登った。
『さて、どこから忍び込むかだけど、やっぱり突入は美術室からよね』
 私は最近、美術室の窓ガラスが割れているという情報を入手していたので、そこから乗り込むことにした。もちろん一階にあるというのも重要な理由なのだが。
 私は小、中、高とガールスカウトに所属して、数々の山をベッドにしてきた。崩れ落ちそうな橋を何度も渡ってきた。そんな私にとって、塀の上を走ることは難しいことではなかった。
 どうやら、本当に運動場に集まって宴会をしているようだ。ここまでいくら裏道を通ってきたとはいえど、誰一人として顔を合わせていないとは。
『ま、交代の時間までが勝負かな』
 私は早くも光り始めた月明かりをバックに時計を確認すると、美術室に突入した。
「作戦・・・スタートよ!」

192 名前:雑号将軍:2006/01/25(水) 20:02
 ▲跳躍▲

 美術室に飛び込んだ私は敵が隠れていないか、辺りを見回す。だが、どこにも人の姿は見かけられない。
「まったく。私らもなめられたものね」
 私は思わずそう呟いてしまったが、冷静さを失ったわけじゃない。現に今だってこの山賊の首領が楽しんでいるアジトをトレースしている。
 私の心当たりがあたっていれば場所は一つ・・・・・・。
間違いない。きっとそこに副棟長と一緒にいる。
『あの首領なら必ずあそこに・・・・・・いる!副棟長と一緒に』
 自分の勘に確固たる確信を持ち得た私は美術室を飛び出し、真横にある廊下を駆け抜け、はなれの方へと歩を進めた。

 はなれへとたどり着いた私は自らの作戦が誤りでなかったことを悟った。
 その証拠に渡り廊下の先にはノースリーブタイプの拳法着に身を包んだ二人の女生徒が背筋をピンと立てて文字通り直立していた。更にその後ろには弓道部の部室への入り口があるのだ。
『ふふ、私の読み通り、親玉は弓道室にいるみたいね』
そして今、私は微笑を浮かべながら、目的地へと続く渡り廊下の角に隠れて様子を窺っているところだった。
 「ほんとに『ここ』とはね。この先の光景はあんまり見たくないわね・・・・・・」
 私はこれから眼に飛び込んで来るであろう情景を想像し苦笑してしまった。確かに、それ程見たいものではない。
でも副棟長を助けるためには仕方がない。間違いなく副棟長もここにいるのだから・・・・・・。
私は前へ進む決心をして、大きな深呼吸をした。
そして・・・・・・。
「レディ!ゴー!」
 私の一人舞台は今開幕した。

 私はいま、渡り廊下を歩いている。もちろん、目標は正面の重厚さを押し上げる、黒塗りの木門だ。
「な、何者です!この『道義衆』では胴衣を着ることが義務づけられているはずです!」
 私は自分の想像が確信から真実に変わっていくのを感じた。そう思うと私は笑いが止まらなくなってしまった。
「な、何が可笑しいのですか!な、名前をお名乗りなさい!」
 門をかためていたもう一人の女生徒がムキになって食いついてきた。
「ふふ、聞きたいなら教えてやる!私は張伯岐!お前らに奪われた南充棟の生徒よ!」
 私はそう言い放つのと同時進行で二人をきっと睨み付けてやった。
「た、たった一人でなにしにきたのよっ?」
「ふっ・・・愚問ね。南充棟の生徒が来たというのなら目的はただ一つ。あんたらに囚われた副棟長を助け出す・・・それだけだろうが・・・・・・」
 私がそう言って、やっと彼女らははっとしてエアガンを構えた。
「潰すぞ!!」
 彼女ら二人が引き金を引こうとトリガーに手を掛けたとき、彼女らの身体には数十発のBB弾が叩き込まれていた。
 二人はあまりの痛みに声を上げることもできずに失神してしまった。
「じゃ、親玉の顔を拝見するとしますか」
 私はそう呟き、倒れている少女たちを見下ろし、門を開いた。
 ドアの向こうに広がっていた光景は・・・・・・。
「あらぁ〜あなた弓道着も似合うのねぇ〜。もっと、ここを、こうしてっ」
「い、いや、やめてください!」
 広がっていた光景は驚くほどに官能的であった。弓道着を着せられた副棟長の胸元を開こうと女の手が伸びているのだ。
 その女はジャージに竹刀を持った昔のスポ根アニメに出てくるコーチの様な出で立ちであった。
 どうやら奴がこの賊の親玉のようだが私は身体が動かなかった。この状況を真実としたくないと、心から願ってしまったのだろう。
しかし、それは間違いであった。
私は副棟長を助けに来たのではなかったのか。現に副棟長は弓道着をはだけさせられ、嫌がっているではないか。
「早く助けないと」その感情が私を決起させた。
「おい、そこの女。その汚い手を放せ!」
 言うが早いか、私は気がついたとき親玉の顔をグーで殴っていた。
 親玉は頬を右手で押さえているが、これは反射的なもので、どうやらまだ事態を飲み込めてないらしい。
「副棟長。大丈夫ですか?無理はしないで下さい」
「はっ、伯岐なのか!?ごめん・・・迷惑かけて・・・・・・」
 副棟長が私の顔をまじまじと見つめてくる。なんというのか、とにかく恥ずかしい。私は、思わずそっぽを向いてしまった。
「とにかくっ!あのバカが正気に戻る前にここから脱出しましょう!」
「『バカ』っていうのはあたしのことかしら?まったく、痛いわね!この美しい顔に傷でも付いたらどう責任を取ってくださるのかしら!」
 なんと、さっきぶん殴った女が鬼のような形相で私たちの方へのしのしと歩いてきたのだ。
 私はとにかくここから逃げだそうと副棟長の手を取ろうとした。
「そうはさせませんことよ!」
 怒り狂った頭領はそう言い放つと、胴着姿の女生徒がわらわらと私たちを取り囲んだ。
 どうやら、何が起こってもいいように頭領があらかじめ戸棚の奥に伏せさせていたようだ。
「ざっと見て、二、三十人・・・。副棟長、私から離れないでくださいよ!」
「わ、わかった。あたしも援護する。そのエアガンを貸して」
 少し脅え気味で声が上擦っている副棟長にエアガンを渡すと、副棟長の後ろに控える。
 そして次の瞬間――
 私は跳躍した。副棟長の肩を踏み台にして。
「今です!」
「あいよ。任せな!」
 私と副棟長は絶妙のコンビネーションを魅せた。私のジャンプに気を取られていた女生徒に向け、副棟長の容赦ない弾丸が放たれる。
 その破壊力は凄まじく私とは反対側に立っていた女生徒五人を失神させた。
同時に私は着陸した。相手の胴体を滑走路にして。みごとなまでに私の跳び蹴りが剣道着の腹に直撃したのである。
 さらに、横から向かってきた柔道着の脇腹に回し蹴りをいれ、着地した脚を360度回転させ、後ろから斬りかかってきた薙刀娘の懐に飛び込み、木刀で肩を打ち据えてやった。
「副棟長!こっちです」
 私はそう言って副棟長を引き寄せると、空いてる左手を掴んで走り出した。
 もちろんだが、賊の数が減ったわけではない。まだ20人弱はいるはずだ。
 正直、さすがに一斉にかかられてはこっちとしても防ぎきれない。だったら、一点突破するだけ。
 副棟長は私の作戦に感づいてくれたのか、エアガンを連射して、後ろから向かってくる賊を牽制してくれていた。
 その甲斐あってか、私たちは弓道部の練習場のある裏庭に飛び出すことができた。

193 名前:雑号将軍:2006/01/25(水) 20:06
  ▲跳躍▲

 それでも賊は追ってくる。さらに悪いことに増えているではないか。もちろん、その先頭にいるのは右の頬を倍以上に膨らませたあの女だ。
『まったく、嫉妬深い女だこと』
 私はそう侮辱しながらもこの先の作戦に一抹の不安がよぎっていた。
壁を乗り越え、棟長の待つ本陣へと帰る。それがベストだ。
だが、不幸なことに副棟長の服装は制服ではなく弓道着であり、足にはご丁寧にも足袋をはかせてある。
これでは壁が乗り越えられない。それ以前にこのまま走ってたら、袴に足を取られて転んでしまうかもしれない。
張嶷が危惧した矢先であった。
「あっ!」
数歩後ろで副棟長を素っ頓狂な声をあげた。
そして、私が振り返ったときには無数の女生徒と、尻餅をついた副棟長が対峙していた。
「おーほほほ!あなたたちもこれで終わりのようね。今です!その制服を剥いでさしあげなさい!」
 下卑な笑みを浮かべた親玉の合図と同時に7、8人の女生徒が副棟長に群がろうとした。
 私は正直、もうおしまいだと半ば諦めていた。ならば、せめて、護りたいと思った者のために戦って果てよう。
 そう決意した。
 しかし、私が副棟長の前に飛び出そうとした時にはもう遅かった。
「ふ、副棟長―!」
 私は叫んでいた。
もう副棟長の姿は見えなくなっていた。
今まで燃えたぎっていた焔が一気に灰になってしまった気分だ。
 もう護る物は何もない。
 私は絶望の淵にいた。もう好きにすればいい。自棄に陥っていたのだろうか。とにかく、何も考えられなかった。
 しかし、ある一言が私の現実へと引き戻した。
「勇者よ!まだ諦めるのは早いぞ!貴女が護ったものはここにいる。さあ、存分に戦うが良い!」
 私は声の主を確かめるため、辺りを見渡した。すると、屋根の上には白衣姿に扇子という出で立ちのかなり怪しげな女が立っていた。
 そして、目をこらしてみてみればそこには副棟長が寝そべっているではないか。
 私はどうやってあそこに移動させたかをつっこむことを忘れ、副棟長の無事に感激していた。
 そして同時に副棟長をあんな目に遭わせた賊共に対する憎悪の炎が再び燃え上がってきた。
「どなたか知りませんが、感謝します。これからちょっと暴れてきますので副棟長をつれていって頂けませんか?」
「ふふ、わかりました。それでは、ご武運を・・・」
 そう言うと科学者らしき女は副棟長を抱えて闇の中へと消え去った。
「ま、待ちなさいよ!」
「待つのはお前だ。よくもまあ、副棟長をあんなめに合わせてくれたな!たっぷりと礼をさせてもらうよ!」
 私はもう我慢の限界だった。それだけ言うと奴に詰め寄り、体当たりを行おうとしたが、二人の女生徒がそれを阻んだ。
「どけ!潰すぞ!」
 私が威嚇するが二人はぴくりともしない。だから私は見せしめのために、二人を飛ばすことにした。
 まず、がら空きになっていたスネにローキックを入れ、体勢を崩し、そのまま後頭部を手刀でしたたかにうった。
 同時に背後から斬りかかってきた竹刀女には木刀を土手っ腹に叩き込んである。
 そして、倒れた二人の肩から、階級章を剥がしとった。さらに私は目の前で突っ立っている下衆共に怒号を浴びせた。
 持てる限りの怒りを込めて・・・・・・。
「この二人のようになりたくなかったら・・・消えな!」
 私の一喝にびびったらしく、賊の多くは辺りへと散らばっていた。
 こうなってしまえば賊というのはもろいものだ。反対派といってもほとんどのメンバーは傭兵だろう。
 だからこそ、勝てないと思った相手ははなから相手にはしない。その証拠に、群れを成していた賊が今では頭領を護る弓道着の女生徒二人だけだ。
「さあ!決めさせてもらうぞ!」
 私は地面を力強くける。正面では二人の女生徒が慌てて矢をつがえるが・・・・・・もう遅い。
「はあ!たぁっ!」
 私は右側の女生徒の真横に並んで刺突。私の太刀は彼女の脇腹を見事に射抜いていた。
 私はそのまま、左にいる女生徒目掛けて走り出した。そのときやっと照準があったのか女生徒から鏃がゴムボール使用の矢が放たれた。
 しかし、もはや私を止めることなどできはしなかった。
 私は木刀で向かってきた矢をたたき割り、そのまま跳躍する。
 そして相手の弓をたたき割り、勢いそのままに肩口へと木刀で打ち抜いた。
 私が地面に降り立ったとき、その女生徒は激痛に涙を流しながらグシャリと崩れ落ちていた。
 それを見送った私はキッと正面を見据えた。風が私の前髪をなびかせる。
「後は、あんただけよ・・・・・・。潰す!あんただけは絶対に潰す!」
 私は身体から殺気をほとばしらせながら、一歩ずつ奴の方へと近づいていく。
 一歩、また一歩と奴との距離が近まってゆく。
「いっ!いやああああああああああああああああああああ!」
 ついに奴との距離が1メートルとなったとき、奴は恐怖のあまり絶叫した。
「ふっ、無様なものね。でも気絶するのはまだ早い・・・私の大事な人にしたことへの代償を払ってからだ!」
 奴の膝がガタガタと震えだしている。今にも失神してしまいそうなほどに・・・・・・。
 そうはさせない。
 心の中のボルテージが一気に高まる。そんな感じがした。
 知らずのうちに私は走り出していた。
 そして・・・・・・一閃。
 私は奴の右肩を打ち抜いた。さらに横に流れてきたのを一蹴。相手の脇腹目掛けて回し蹴りを見舞ってやった。
 奴は三回転ほどして止まった。もちろん、奴の意識はもうなかった。そして階級章も・・・・・・。
 そう、私は頭領を飛ばしたのだ。

「ふう・・・・・・終わったわね」
 私の身体を凄まじい疲労感が襲った。それは心地の良い疲労感でもあった。いや、達成感と言い換えた方が良かったのかもしれない。
『護りたい人を護れた・・・だから満足』そんな感情が私の心を満たしていた。
空を見上げる。
そこにはあまたの星々が光り輝いていた。
 そんなとき――
「さすがは勇者!お見事な戦ぶり」
「うわっ!」
 突如として空が人の顔に移り変わったのだ。私は突然のことに驚いてしまい、しりもちをついてしまった。
 思考が一瞬フリーズしていたが、すぐに彼女がついさっき副棟長を助けてくれた白衣の女生徒であることに気がついた。
「・・・あっ。えっと、さっきはどうも」
 私は今だ落ち着かずそのままの姿勢でただお礼を言った。
「なんのなんの。同志を助けるのは当然のこと」
 いつから私が同志になったのだろうか?そもそも私は彼女の名前すら知らない。なんともつっこみたいとこだらけだ。
「申し遅れました。私、諸葛亮と申します。孔明でかまいません」
 聞いてないのに・・・・・・。私は妙な脱力感に襲われていた。
この人は私の天敵に違いない。そんな意味深な確信が芽生えつつあった。
 まさか、この人が私の上司になろうとは思いも寄らなかった。
「それで、勇者よ。お名前は?」
「私・・・私の名は張嶷」


…遅くなりました。金曜日のはずが水曜日しかも最終日に・・・・・・。旭日祭りは僕のとって新しい出発かなあと思い、張嶷の初舞台みたいなものにしてみました。
 

194 名前:雑号将軍:2006/01/25(水) 20:09
   ▲跳躍▲

それでも賊は追ってくる。さらに悪いことに増えているではないか。もちろん、その先頭にいるのは右の頬を倍以上に膨らませたあの女だ。
『まったく、嫉妬深い女だこと』
 私はそう侮辱しながらもこの先の作戦に一抹の不安がよぎっていた。
壁を乗り越え、棟長の待つ本陣へと帰る。それがベストだ。
だが、不幸なことに副棟長の服装は制服ではなく弓道着であり、足にはご丁寧にも足袋をはかせてある。
これでは壁が乗り越えられない。それ以前にこのまま走ってたら、袴に足を取られて転んでしまうかもしれない。
張嶷が危惧した矢先であった。
「あっ!」
数歩後ろで副棟長を素っ頓狂な声をあげた。
そして、私が振り返ったときには無数の女生徒と、尻餅をついた副棟長が対峙していた。
「おーほほほ!あなたたちもこれで終わりのようね。今です!その制服を剥いでさしあげなさい!」
 下卑な笑みを浮かべた親玉の合図と同時に7、8人の女生徒が副棟長に群がろうとした。
 私は正直、もうおしまいだと半ば諦めていた。ならば、せめて、護りたいと思った者のために戦って果てよう。
 そう決意した。
 しかし、私が副棟長の前に飛び出そうとした時にはもう遅かった。
「ふ、副棟長―!」
 私は叫んでいた。
もう副棟長の姿は見えなくなっていた。
今まで燃えたぎっていた焔が一気に灰になってしまった気分だ。
 もう護る物は何もない。
 私は絶望の淵にいた。もう好きにすればいい。自棄に陥っていたのだろうか。とにかく、何も考えられなかった。
 しかし、ある一言が私の現実へと引き戻した。
「勇者よ!まだ諦めるのは早いぞ!貴女が護ったものはここにいる。さあ、存分に戦うが良い!」
 私は声の主を確かめるため、辺りを見渡した。すると、屋根の上には白衣姿に扇子という出で立ちのかなり怪しげな女が立っていた。
 そして、目をこらしてみてみればそこには副棟長が寝そべっているではないか。
 私はどうやってあそこに移動させたかをつっこむことを忘れ、副棟長の無事に感激していた。
 そして同時に副棟長をあんな目に遭わせた賊共に対する憎悪の炎が再び燃え上がってきた。
「どなたか知りませんが、感謝します。これからちょっと暴れてきますので副棟長をつれていって頂けませんか?」
「ふふ、わかりました。それでは、ご武運を・・・」
 そう言うと科学者らしき女は副棟長を抱えて闇の中へと消え去った。
「ま、待ちなさいよ!」
「待つのはお前だ。よくもまあ、副棟長をあんなめに合わせてくれたな!たっぷりと礼をさせてもらうよ!」
 私はもう我慢の限界だった。それだけ言うと奴に詰め寄り、体当たりを行おうとしたが、二人の女生徒がそれを阻んだ。
「どけ!潰すぞ!」
 私が威嚇するが二人はぴくりともしない。だから私は見せしめのために、二人を飛ばすことにした。
 まず、がら空きになっていたスネにローキックを入れ、体勢を崩し、そのまま後頭部を手刀でしたたかにうった。
 同時に背後から斬りかかってきた竹刀女には木刀を土手っ腹に叩き込んである。
 そして、倒れた二人の肩から、階級章を剥がしとった。さらに私は目の前で突っ立っている下衆共に怒号を浴びせた。
 持てる限りの怒りを込めて・・・・・・。
「この二人のようになりたくなかったら・・・消えな!」
 私の一喝にびびったらしく、賊の多くは辺りへと散らばっていた。
 こうなってしまえば賊というのはもろいものだ。反対派といってもほとんどのメンバーは傭兵だろう。
 だからこそ、勝てないと思った相手ははなから相手にはしない。その証拠に、群れを成していた賊が今では頭領を護る弓道着の女生徒二人だけだ。
「さあ!決めさせてもらうぞ!」
 私は地面を力強くける。正面では二人の女生徒が慌てて矢をつがえるが・・・・・・もう遅い。
「はあ!たぁっ!」
 私は右側の女生徒の真横に並んで刺突。私の太刀は彼女の脇腹を見事に射抜いていた。
 私はそのまま、左にいる女生徒目掛けて走り出した。そのときやっと照準があったのか女生徒から鏃がゴムボール使用の矢が放たれた。
 しかし、もはや私を止めることなどできはしなかった。
 私は木刀で向かってきた矢をたたき割り、そのまま跳躍する。
 そして相手の弓をたたき割り、勢いそのままに肩口へと木刀で打ち抜いた。
 私が地面に降り立ったとき、その女生徒は激痛に涙を流しながらグシャリと崩れ落ちていた。
 それを見送った私はキッと正面を見据えた。風が私の前髪をなびかせる。
「後は、あんただけよ・・・・・・。潰す!あんただけは絶対に潰す!」
 私は身体から殺気をほとばしらせながら、一歩ずつ奴の方へと近づいていく。
 一歩、また一歩と奴との距離が近まってゆく。
「いっ!いやああああああああああああああああああああ!」
 ついに奴との距離が1メートルとなったとき、奴は恐怖のあまり絶叫した。
「ふっ、無様なものね。でも気絶するのはまだ早い・・・私の大事な人にしたことへの代償を払ってからだ!」
 奴の膝がガタガタと震えだしている。今にも失神してしまいそうなほどに・・・・・・。
 そうはさせない。
 心の中のボルテージが一気に高まる。そんな感じがした。
 知らずのうちに私は走り出していた。
 そして・・・・・・一閃。
 私は奴の右肩を打ち抜いた。さらに横に流れてきたのを一蹴。相手の脇腹目掛けて回し蹴りを見舞ってやった。
 奴は三回転ほどして止まった。もちろん、奴の意識はもうなかった。そして階級章も・・・・・・。
 そう、私は頭領を飛ばしたのだ。

「ふう・・・・・・終わったわね」
 私の身体を凄まじい疲労感が襲った。それは心地の良い疲労感でもあった。いや、達成感と言い換えた方が良かったのかもしれない。
『護りたい人を護れた・・・だから満足』そんな感情が私の心を満たしていた。
空を見上げる。
そこにはあまたの星々が光り輝いていた。
 そんなとき――
「さすがは勇者!お見事な戦ぶり」
「うわっ!」
 突如として空が人の顔に移り変わったのだ。私は突然のことに驚いてしまい、しりもちをついてしまった。
 思考が一瞬フリーズしていたが、すぐに彼女がついさっき副棟長を助けてくれた白衣の女生徒であることに気がついた。
「・・・あっ。えっと、さっきはどうも」
 私は今だ落ち着かずそのままの姿勢でただお礼を言った。
「なんのなんの。同志を助けるのは当然のこと」
 いつから私が同志になったのだろうか?そもそも私は彼女の名前すら知らない。なんともつっこみたいとこだらけだ。
「申し遅れました。私、諸葛亮と申します。孔明でかまいません」
 聞いてないのに・・・・・・。私は妙な脱力感に襲われていた。
この人は私の天敵に違いない。そんな意味深な確信が芽生えつつあった。
 まさか、この人が私の上司になろうとは思いも寄らなかった。
「それで、勇者よ。お名前は?」
「私・・・私の名は張嶷」

…遅くなりました…。最終日になってしまうとは…。面目次第もございませぬ。
今回の旭日祭りはそれがしの新しい出発点となるような気がしたので張嶷の初舞台みたいなものにしてみました。

195 名前:雑号将軍:2006/01/25(水) 20:13
あら?さっきはなかったのに・・・・・・。
す、すみません…。同じの二回書き込んでしまいました。両方ともほとんど同じなので、お好きな方を…。

感想の方なのですが、今、現在、仕事が山積みになっておりまして…。後日、まとめて書き込ませて頂きます。申し訳ありません。

196 名前:海月 亮:2006/01/26(木) 18:30
>雑号将軍様
キテタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!

レス遅れてすいません_| ̄|             ...○
何よりこの場をほったらかしててごめんなs(ry


そして張嶷キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!! (<いい加減しつこい…
各キャラクターの特徴も巧く出てて、読み応えは十分でした^^GJ!

197 名前:海月 亮:2006/01/26(木) 18:38
…そして私めの怠慢により一日伸ばしになってしまいましたが…


僭越ながら。
この時点を持ちまして、旭日祭の終了を宣言させていただきます ̄∇ ̄)ノ


いやぁ今年も濃い内容でしたというかニューフェイスの皆様方のパワーに圧倒されまくりな私がいる^^A
しかし、古参常連の皆様方が居られぬのに、比較的新参者の私如きが音頭とって良かったんでしょうか…?

そして後夜祭はしばらく続くと思われますので、出し逃しという概念はナシの方向でよろです ̄∇ ̄)ノ

198 名前:7th:2006/01/26(木) 21:34
魔女。
一般的には中世以前の欧州で、ドルイド・シャーマンの流れを汲んだ民間医術・占い師を生業とした人々の事を指す。
現在の魔女のイメージは、スラヴの魔女、ババ・ヤガーを基にして中世魔女狩り期に成立したもので、黒いウィッチドレスに三角帽、と云ったアレである。そしてもう一つ、忘れてはならぬものが……

セーラー襟つきのピンク色の服。レースのフリルつきミニスカート。星型の飾りつきの、これまたピンク色の帽子。背負ったナップザックにはご丁寧にも白い羽根の意匠が。トドメとばかりに、手に持った魔法のステッキはハート型をあしらった実にファンシーな物である。言うまでもなくコレもピンク色だ。
リリカルでラディカル、ファンタスティックにルナティック。このショッキングなコスチュームこそ、かの魔女っ娘、もしくは魔法少女と呼ばれるモノである。
その異常にファンタジックか衣装を身にまとうのは簡雍。ゴスロリは恥ずかしかった。スク水はもっと恥ずかしかった。ナースはまだマシだった。しかし、コレの恥ずかしさは、それらを超えて余りある。
何なんだこのビビッド過ぎる色彩は。加えて意匠・小物の一つ一つが無闇にファンシー。正気の沙汰とは思えない。
恨めしそうに隣の法正を見遣る簡雍。なるほど確かに法正も魔法少女的なコスチュームを身にまとっているものの、見た目は大分違う。
漆黒ののウィッチドレスに、白いエプロンを追加。頭には裏地にフリルをあしらった三角帽。手に持つは魔法の箒である。
細部こそファンシーであるものの、簡雍のものより大分落ち着いてシックな感じの仕上がりだ。まだ羞恥心が許せる範囲にある。
「差別だぞ玄徳! 何でアタシはコレで、法正はアレなんだ! 明確な説明を要求する!」
納得いかぬ、とばかりに抗議の声をあげる簡雍。それを聞いた劉備はニヤリと不敵にほくそ笑み、
「よしよし、そこまで言うなら回答したろやないか。耳の穴かかっぽじってって良く聞き」
「なら400字詰め原稿用紙で5枚以内、制限時間120分で答えなさい!」
「似合うから。」
「即答でしかも6文字かよ! 小論文の試験なら採点対象外だぞコラ!!」
いきり立つ簡雍だが、劉備は呵呵と笑って相手にしない。
まぁ回答が横着なだけで、劉備が言っていることも正論ではある。法正のようなクールでシャープな人間が着るよりも、簡雍のように少し抜けた、暖色味のある人間が着るほうが、あの服が似合うのは確かだ。
だからといって引き下がる訳にもいかない。良いから止めろと腕を振り回して力説するも、手に持ったステッキからピロパロと訳の解らぬ音が流れ出るため、全く迫力がない。
「何のオモチャよあれ…」
法正の呟きも尤もだ。安っぽい音に加え、電飾が発光しているあたり、幼児向けのオモチャにしか見えないのだが、
「あぁ、アレなら私がちょちょいと作りました。…本当はもっとこう、マジカルな兵装も内蔵したかったのですが、時間が無くて泣く泣くオミットしました。返す返すも残念でなりません」
どうやら諸葛亮謹製のアイテムらしい。しかし妙に不穏当な発言が有ったのは気のせいか。
「法正殿の箒にも、レーザー発振装置とか搭載したかったんですけどねぇ……」
何処の魔砲だ。
ついでに言うと、それは最早兵器だ。そんなモン作ってはいけません。
今更ながら、法正は薄ら寒くなった。普通の服を着させられるならまだ良い。しかしそれに孔明が関わっているとなると、妙なところで安心できない。
大きな不安をはらみつつ、改造計画は続くのだった。



メイド服。
メイドとは、主に清掃、洗濯、炊事などの家事労働を行う女性使用人を指す。
19世紀後半の英国、ハノーヴァー朝ヴィクトリア女王時代に於いて、使用人を雇うことはステータスシンボルの一つであった。しかし、第一次世界大戦を契機として女性労働力の再評価が始まると、女性の社会進出と共に急激に減少、メイドは消滅を余儀なくされた。だがメイドとその精神は滅んではいなかった。21世紀、メイドは別の側面を以って日本に復活したのである……。

濃紺のエプロンドレス。純白の袖カフス。すらりとした脚を包むは、これも白いオーバーニーソックス。ホワイトブリムを頭に載せたその出で立ちは、どう見てもメイドさんです。本当にありがとうございました。
「絶妙や…絶妙なメイドさんがおる…。このツン分とデレ分の見事過ぎる配合っ……! 想像以上の破壊力や…」
半ば放心しながら感嘆の声を上げる劉備。当の二人は、訳が解らないといった顔で、そんな彼女を眺めていた。
だが無理も無い。当人たちは自覚していないようだが、劉備が放心する程までに、二人のメイド姿は完璧だった。
メイドとは即ち家庭内労働者。主人との関係に存在するのは、主従関係ではなく、あくまで現実的な雇用関係である。それ故に、メイドにデレは不要。昨今のデレデレメイドとは一線を画した、ツン分9・デレ分1の黄金比。これこそがパーフェクトメイド。深遠なるメイド道、その極意である。
「ナイスですぞお二方。あまりの感激に、私、鼻血が出そうです」
鼻を押さえながら賞賛する諸葛亮。その後ろ、ギャラリーの中にも鼻を押さえている面々がちらほらと。その誰もが、鼻を押さえていないほうの手でサムズアップ。
「しかし良いのですか総帥。次がラストの予定ですが、これ程の破壊力を見せ付けられては、何をやっても見劣りするのでは?」
正論である。写真や動画は後で編集できても、この場にいる観衆を満足させることは難しいだろう。
「ふっふっふ、まぁ見とき。トリはトリらしく、最終兵器を投入せんとな」
我に秘策有り。そういった体で不敵にほくそ笑む劉備。これを超えるコスプレとは、果たして何なのか……?



最後の着せ替えを終えた二人を迎えたのは、雷の如き喝采と、一面の溜息。
足下には赤い絨毯が敷かれ、居並ぶ人々が紙吹雪を撒く。
そして二人の向かう先、少し高い壇上には、神父の格好をした劉備が、人の悪い笑顔で二人を眺めている。
これは、まるで……
「結婚式じゃねーか!!」
まるででも何でもなく結婚式である。
それもその筈。二人の衣装は、法正がタキシード姿、簡雍が純白のウェディングドレスである。結婚式にならない理由がない。
「え、ちょ、何で……? 何で私が新郎役な訳!?」
わたわたと狼狽する法正。結婚式っぽい演出もそうだが、何より自分が新郎役になっていることが納得いかないらしい。
「だって憲和の方が背ぇ低いやん。新婦の方が背が高いのはちょっとマヌケっぽいしな」
別に背格好など結婚する当人たちにとっては些細な要素であるが、今回はコスプレをさせて遊びつつ、部費も稼ごうと云う趣旨である。当然、しっかり様になっている方が望ましい。
「じゃあ二人とも、此処まで来て愛の誓約やってもらおうかいな。動画で撮ってることやし、しっかり演技してや〜」
「「何ぃーー!!」」
まさかそこまでさせる気か、と正気を疑うように抗議する二人。
「部長命令や。簡雍、法正、別に指輪交換せぇ言う訳でなし、さっさとやりぃ」
部長命令では仕方がない。まぁ確かに本当の結婚式ではないのだ。演技だと割り切れば、別段腹も立たない。
腹の中はさておき、演技に徹してしずしずと壇上に向かう簡雍と法正。両端にいる観衆の祝福が、なんとも不愉快だ。
そうして壇上まで来た二人に、劉備は大仰に聖書を広げ、厳かに問うた。観衆が静かになる中、ちゃっかりかけられた、メンデルスゾーン『結婚行進曲』が耳障りだ。
「汝、法正。この者を妻とし、一生愛することを誓いますか?」
「…………誓います」
答える法正。こんな奴を嫁にする者の気が知れぬ、と云うのが本音であるが。
「では汝、簡雍。この者を夫とし、一生愛することを誓いますか?」
「…………誓います」
答える簡雍。女同士に何させてんだバカヤロー、と云うのが本音ではあるが。
「此処に誓約は結ばれました。では皆の衆、拍手で祝福を!!」
劉備の宣言に従うように沸き起こる大拍手。そして、キスコール。
「うん、観衆の皆様も言っていることやし、期待に応えて誓いのキス、いっとこか?」
「「何ぃーー!!!」」
今回二回目の唱和。本気でソレをさせる気か、と意識が遠くなる二人。
なおも止まぬキスコールに、満足げに微笑む劉備。さては謀られたか、と気付くも、最早どうにもなりそうに無い。全ては、最初に劉備にしてやれれた時からケチがつき始めたのだ。
ちらり、とお互いの意思を目で確かめ合う。やるしかない。奇しくも同時にそんな悲愴な決意にたどり着いた二人であった。

しばし見詰め合う二人。そして、どちらからとも無く唇が近付いていき…………

全てをやり終えた二人。最早感動しない者など此処にはいない。大喝采が飛び交う中、目元をハンカチでぬぐいつつ、劉備は宣言した。
「これにて簡雍改造計画、及び法正改造計画の全工程を終了する! 我々の心に素晴らしい感動を与えてくれた二人に、盛大な拍手を!!」
燃え尽きた二人に対し、いっそう盛大に喝采が上がる。満足そうに頷いた劉備は、へたりこむ二人に対しおもむろにマイクを向けると、コメントを求めた。
返ってきた返事はこうだ。

「「次は絶対アンタの番だ」」

その言が実現したかどうかは、また別のお話。
ともあれ簡雍+法正改造計画、此処に閉幕と相成るのでした―――

199 名前:7th:2006/01/26(木) 21:42
絶賛後夜祭中、7thです。

……
………
御免なさい。こんな駄文の癖に宣言通り25日までに仕上がりませんでした。
ともあれ、此処まで私如きの駄文に付き合って頂いた皆様に深く御礼申し上げると共に、旭祭に参加された皆様に万のGJを捧げたいと思います。


では後始末。嘘吐きの私に極刑。誰か介錯御頼み申す_| ̄|○

200 名前:北畠蒼陽:2006/01/26(木) 21:55
>7th様
介錯はいたしませんことよ。いい物に時間がかかるのは当然なのです。
それはともかくすべての方々、旭祭お疲れ様でしたっ!

201 名前:海月 亮:2006/01/26(木) 21:57
そして>>189で陳べたとおり、傍観者に徹した挙句何時の間にか祭りの存在を忘れていた海月めにも介錯(≠愛の手)を_| ̄|         ...○
然らば私めも刑場の露と消える所存であります。以後は彼岸よりお送りする形で(何

>7th様
…だから先生……狼をひつj(ry

魔法少女キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
メイドキタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!

そ、そ、それに結婚式だとぉぉぉぉ━━━━━━(;´Д`)━━━━━━ !!!!
つか萌え殺す気ですか(;;゚Д゚)!?
むむ、トリに相応しき破壊力抜群の展開!まさにお見事!!!

202 名前:冷霊:2006/01/26(木) 23:10
旭祭、皆様お疲れ様でしたー。
只今、こっそりと合間に読破中であります。
簡×法があれば、審×逢もあり、張嶷まで登場……まさに豪華なお祭りでした。
特に北畠様、劉度&ケイ道栄の登場には驚きました!
じっくりと読み返さねばですー。

実はこっそりともう一作投下したかったのですが、
予定外のアクシデントに見舞われ投下出来ず……
いつかリベンジを誓いつつお疲れ様でしたですー……(ぐっ)

203 名前:★教授:2006/01/27(金) 21:53
祭乙でしたー!(拍手喝采)
参加者の皆様も乙でしたー!(歓声)
古参が沈黙を保ってる状態でここまで盛り上がれるのは、やはり新規参入の皆様の力だと思います。
一古参メンバーとして恥ずかしながら名を連ねられております私も、負けずに頑張ろうと思いますです。
今年は旭祭を機に学三を盛り上げていきましょう!

7th様>

 簡×法キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
 凄い、素晴らしい、清清しいの3Sを見事達成っす!
 この機会に私から簡×法シリーズを引き継いでくださいー(*゚∀゚)
 アッシですか? 逃げます (-_-)

204 名前:弐師:2006/01/28(土) 08:03
どうも、受験でしばらくこれない間にこんなにも多くのすばらしい作品が!

北畠蒼陽様>

これはいい劉度さんですねw
格好良すぎです!さらに刑道栄の友情が・・・もう・・・
感動です!

海月 亮様>

乙でしたー!
そして審配さんと逢紀さんいいです
確かに彼女たちが居なければ、袁氏もあれだけの隆盛を得られなかったでしょう

ってそんな話はおいといて・・・激しく萌えさせていただきましたー!

雑号将軍様>

張嶷キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!!
もう格好良くて素敵でなんと言えばいいか
そして孔明の怪しさが相変わらずでw


7th様>

あああああああ!!!!!!!!!
萌ええええええええええ!!!!!!!!!

すいません、あまりの破壊力に壊れてしまいましたw
すべてがツボにはまって凄まじかったです!

と、いうわけで!皆様方本当にお疲れさまでした
たいへん勉強になりましたー!
私もまたもう一本程書きたいのですが・・・那御様が以前に素晴らしい易京話を書いていらっしゃるので難しいですね

205 名前:北畠蒼陽:2006/01/28(土) 21:43
>弐師様
他のひとはともかく私のは読み飛ばしてください。なんか色が明らかに違うのでー(笑
それはともかく今の時期だと大学でしょうか? それとも高校……? もし高校だとすると先恐ろしいほどのこの才能はなんだ……(苦笑

海月 亮様もいっておられましたけど出し惜しみはなし、の方向で。
易京話ぜひ読みたいですよ。受験が落ち着いたら書いてくださいね(笑

……以上、三国志大戦メインデッキにはガチで刑道栄がレギュラー化している北畠でした!

206 名前:海月 亮:2006/01/28(土) 23:22
>弐師様
いやいや、貴君こそ乙ですた^^

そして易京で躊躇われているなら、多分大丈夫でつ。
何しろ初めての投稿で夷陵を書いた人間が、此処でのうのうとやってるわけで…。
ええ、私が書いた夷陵SSこそ、むしろ歴史の闇の彼方へ葬り去ってやってくだせぇ(何

受験の苦しみもあと僅かですぞ! 貴君に幸あらんことを!


…というわけで私はポプ熱帯の将軍部屋でひと暴れして来まさぁ^^A

207 名前:海月 亮:2007/01/07(日) 20:32
さて、今年も後10日ほどでこのスレの出番がるのかどうか知らんですが…



一応ageておきます。
我こそはと思う方はこぞってご参加のほどを…。

さておいらはどうするかな( ´・ω・`)

208 名前:韓芳:2007/01/09(火) 23:49
旭祭ちょっと期待してたけど、皆さんサイトが完全復活してから改めてって感じなんでしょうか。
もし参加する方は、是非頑張ってください!
私は文章力が無いので書けませんが…

とりあえず私は、3年ほど泥沼化している漢中防衛を頑張ります…(三国志11

209 名前:弐師:2007/01/10(水) 00:41
昨年に旭祭で学三に初参加した自分にとっては感慨深い物がありますねぇ・・・
今書いてる物が間に合うかどうか微妙なところですが、頑張ってみます。明日からテストですけど(ぉ

210 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:22
「だんすぱーてぃー?」

存在自体は知っていた。あたしだって一応高三だし、今までに何回も旭記念日――この蒼天学園の創立記念日――は体験しているのだから。
そしてその日は学園を上げて式典――例えば、そう、ダンスパーティーといったものなど――を執り行っていることももちろん知っていた。
だがそれは限られた一部の「お偉いさん」だけの事であって、今まではあたしの様な一般生徒にとっては単なる何処の学校にもある「創立記念日」と言う名のたなぼた休日にしか過ぎなかった。
だから、今、憧れの伯珪さまからダンスパーティーに誘われてもとぼけた反応(まあいつものことなんだけど)しかできなかった、というわけだ。

「そう、ダンスパーティー。今までは範と踊っていたのだが、今年は運悪く足をくじいてしまってね。貴女も受験勉強ばかりでは気が滅入るだろうと思って・・・迷惑だったか?」
「め、迷惑だなんてそんな!とっても嬉しいです!でも・・・あたしダンスなんて一度も・・・」
「ああ、それはもちろんこれからみっちりと特別レッスンを・・・って、ほんとに迷惑じゃないの?」
「が、頑張りますっ!」

だって・・・これが伯珪さまと此処で過ごせる最後の「旭記念日」だから。

だけど、その事実はあまりにも今のあたし達には残酷なように思えて、あたしは喉元まで出かけたその言葉を飲み込んだ――――――――

211 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:23
「ダンス・・・パーティー・・・?」


唐突な、誘いだった。
ふむ・・・ダンスパーティー・・・か。
正直、興味はない。ダンスは一応出来るが、そんな場に堂々出られる程までではない。第一、今私達は受験生だったと思うが。


「本気か?田揩?」


そう目の前の少女に問い返す。彼女が自ら何かを私に提案することすら非常に希有だというのに、その用件が「一緒に踊りませんか?」ときている。問い返すなと言う方が無理ではないだろうか。
確かに、二人とも志望校の判定には余裕があると言っても良い。少なくとも、一日くらいなら息抜きできるほどには。だが、それでもこの時期の受験生、しかも真面目で知られる田揩がそのようなことを本気で言うとは思わなかった。

「・・・本気です!私、単経さんと踊りたいんです!」
「君は・・・踊れたか?」
「う゛・・・き、気合いがあれば何とかなります!とにかくっ!私は単経さんと踊りたいんですっ!」
「何でそんなにこだわる?いつもの君らしくもない。」

そうまた聞き返す。そうすると、田揩は何故か急に真っ赤になって俯いてしまった。
まあ、彼女が赤くなるのは良くあることではあるのだが、今回は何やら様子がおかしい。
そう思ったのは、彼女がどうやら涙をこらえているようだったからだ。


「だって・・・」
「・・・だって?」
「だって・・・これが、最後のチャンスだからぁっ・・・!」


彼女がこらえていたものが、零れ落ちた。
これが――――――――最後。
それは今まで私の頭からすっぽり抜け落ちていた――――いや、あえて考えようとしなかったこと。彼女の涙は私にそれを強く、印象づけた。
――――――――「女の涙は武器」とは、故人もよく言ったものだ。


「分かった、踊ろう。」
「え・・・ほんとですか!」
「ああ、本当だ。だからとりあえず涙を拭くと良い。」
「え・・・あ・・・あはは・・・ごめんなさい・・・」


彼女はそう言って半泣きのままへへぇと困ったように笑ってみせる。
その笑い顔に、曇り空からゆっくりと降り注ぐ粉雪が触れては溶けていった。

212 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:24
「ふぅ・・・じゃあ続ちゃん、これを向こうに持っていっておいてくれないかしら。」
「はいはい、向こうね。」


今夜あるパーティー、その準備は着々と進められている。幽州校区ではこんなイベントはなかなか無い為、毎年の事ながら、私を含めた準備役員は相当張り切っている。このパーティーは引退組のみで開催されるので(もちろん現役で課外活動に参加している人は別に催しがある)、日頃の憂さ晴らしという面も大きいのだが。
今準備に取り組んでいる人たちは、このパーティーのメインとなるダンスを出来ない、しない、という人たちの中からの有志だ。
(主として私の手伝いをしてくれている続ちゃんは二番目のタイプだ。曰く「お姉ちゃん以上の相手なんていないもん」だ、そうな。)


「じゃあ、これはどうすればいいのかしら?範さん?」
「ああ、それはそっちに・・・って、伯安さんじゃないですか!」
「ええそうですけど・・・なにか私まずいことでもしてしまいましたかしら・・・?」


目の前で困り顔をして首を傾げているのは、劉虞伯安さんであった。
気品にあふれる立ち振る舞いで、常に穏やかな笑みを絶やさないどこか世間からずれたところのある可憐なお嬢様で、蒼天会長とも血縁があるという方だ。
そんな由緒正しいお嬢様なので、もちろんダンスには参加するものだと思っていたから私は彼女に声を掛けられて不覚にも驚いてしまったというわけだ。


「伯安さん・・・あの、ダンスの方は?」
「あら、それで先ほどはあんなに驚かれたのですか。・・・いつも御相手していただいていた魏攸さんが病気で引退してしまいましたからね・・・それで、今年は遠慮させていただくことに致しましたの。」
「ああ・・・これは酷なことを聞いてしまいましたね・・・」


魏攸さんというのは、彼女が幽州総代を務めていた頃の参謀で、病気が原因で課外活動を引退したのだ。彼女さえいれば、伯珪姉と伯安さんがあれ程までに争うこともなかったであろうと言われている。伯安さんと魏攸さんはとても仲が良く、伯珪姉が魏攸さんを闇討ちしたから戦いが始まったなどとふざけた噂すら流れたこともある。


「いえいえ、お気になさらず。そんなことより範さん、急がないと準備が間に合わないのではないでのですか?」
「あ・・・」


その通りだった。今年は例年と比べてダンスの参加者が多く(おそらく一般生徒の間で人気があった伯珪姉と伯安さんが今年で見納めという点からであろう)、それに伴い準備の人数も減少してしまったのだ。


「そ、そうでしたねぇ。じゃ、とっととやっちゃいますか!」
「ええ、そうしましょう。」


そう言って伯安さんはにっこりと微笑む。
上品で、それでいてあたたかい。まさに「乙女百合」といったところだ。
その笑みを見ていると私も心が暖まる気がした。この人が見ていてくれるなら、何でも出来そうな気がする。そんな笑顔だった。

213 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:25
何とかあたしは伯珪さまの「特別レッスン」の甲斐あって、それなりには踊れるようになった。
それなりといっても、正に必要最低限といった感じで、到底周りの人たちからしたら見られる物ではなかったのだけど。


「うん、上手くなったよ。ばっちり、とまでは言えないけどね。」


伯珪さまも苦笑しながらそう言ってくださる。もうパーティーの始まりまで時間がない、そろそろ会場であるホールに向かわなければならない。正直めちゃめちゃ不安だ。だけどそんなことも言ってられない、伯珪さまの言葉を信じて、せめて恥をかかないように頑張ろう。


「よし、じゃあいこうか、士起?」
「はいっ!い、いざ、しゅ、出陣!」


そんな緊張してこわばっているあたしの顔をみて伯珪さまは思わず吹き出した。
うぅ・・・いきなり恥をかいてしまった・・・先が思いやられるなぁ・・・


「ごめんごめん・・・くくっ・・・いやほんとごめん・・・そんなに緊張しなくて良いんだよ。貴女はそのままで充分可愛いんだからね。」
「ふぇ!?」
「さ、行くよ。ほんとに遅刻しちゃう。ほら、士起、出陣!」


先程以上の間抜け面をしている上に真っ赤になったあたしを後目に伯珪さまはまるで遠足に行く子供のように楽しげに歩き出した。置いていかれた形になったあたしは、その背中を一呼吸遅れて追いかけた。
よし、頑張るぞ!

214 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:27
流石に、立派な会場だな。公孫範さんたちが設営をしただけのことはある。
私は今まで一応幹部という立場にありながら、何かと理由を付けて旭記念日のパーティーはさぼっていたので、驚きも大きな物であった。普段はがらんとしているホールに、多くのテーブル、その上の料理、大勢の生徒達。こんな時でなければ見ることもない光景に、ただただ驚嘆するのみだった。
そんな私の袖を、田揩が引いた。


「ね、来て良かったでしょう?」


満面の笑み、私も最高の笑みを返す。とは言っても、こんな私に出来る範囲で、だが。


「ああ、そうだな。なかなか見られる物でもない。有り難う、田揩。」


彼女は無言で微笑み返す。幸せいっぱいといった風情だ。そして、それは私も同じ事だった。
来て良かった。少なくとも、彼女のこの笑みを見られただけでもここに来た価値は充分あったと言っていい。

ダンスが始まるまでにはまだ時間がある、それまでは立食をしている事になる。しかしあまりそういったのは得意ではない、それは田揩も同じだった。まあ、私に話しかけてくるような変わり者などはいないだろうから、その点は安心なのだが。

・・・どうやら、世の中は物好きが多いらしい。
パーティーが始まって物の10分ほどで私は多数の生徒に囲まれてしまった。同じ様な状態になっている伯珪様、劉虞さんは慣れているようで上手く応対しているが、私はこのような状況は初めてなのでそうもいかない。人の輪の外から田揩が心配しているような、何やらよく分からないが不満そうな顔をしてこちらを見つめていた。
そんな時、私を救うアナウンスが流れる。公孫範さんの声。


――――――――これよりダンスの部に移ります。参加される方は準備の程をよろしくお願いいたします――――――――

「じゃぁ、単経さんはダンスの準備があるので失礼しま〜す。ごめんあそばせ〜。おほほほほ・・・」


田揩が妙な口調で挨拶しながら私を輪の中から引き出した。何やら、いつもの彼女らしくもない不自然な笑いと、私の腕をつかむ力が妙に強いというか、怒りを感じる気さえするのが気にかかるところだが、まあ、この際それはいい。
輪から離れて、控え室に向かう道すがら、私は彼女に礼を言った。


「有り難う。おかげで助かった。」


だが、返事が返ってこない。
彼女は少し怒っているようだった。一体どうしたというのだろう?


「なあ、田・・・」
「なんですか!?」
「・・・何を怒ってるんだ?」
「怒ってなんて無いです!」
「・・・充分怒ってるじゃないか。」
「・・・だって!単経さんが私を無視して他の人とばっかり話しちゃって!私の事なんて忘れちゃってるみたいで!」


よく分からないが、さっきのことに腹を立てているようだ。
確かに放って置いてしまった感はあったな。反省せねば。
だが、私が彼女のことを忘れるなど、そんなことは決してないと言い切れる。だから、そのことを彼女に伝えなければ、と思った。


「そんなわけないだろう?私の親友は君だけだ。」
「え・・・」


呆気にとられたような顔。さっきまで膨らんでいた頬が今度は赤くなる。
私にとっては何を今更という感のあることであったが、よく考えてみれば言葉にして伝えたことは殆ど無かったように思う。


「聞こえなかったか?私の親友は君だけだといっている。」
「あの・・・もう一回・・・お願いできます?」
「・・・私の親友は、君だけだ。」
「・・・嬉しい・・・」


今日は、きっと良い踊りが出来るだろう。
理由もないけれど、そう思った。

215 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:28
「うわ・・・お腹がきつい・・・」


でも・・・胸のところは逆に・・・まあいいか、言わないでおこう・・・恥ずかしいし。
その点、伯珪さまは流石だ。白いタキシードを見事に着こなしている。毎年恒例だそうだが、あたしが見たのは初めてだ。


「大丈夫?何なら別なのでもいいけど。」
「いえ、これでお願いします!」


だって、これは伯珪さまがあたしの為に選んで下さったドレスだから。
あたしは全然服のセンスとか無いけど、でも、このドレスがあたしに似合っているのだろうと、なんとなくわかる。


「もう時間がないから、行くよ?」
「はい・・・行きましょう」


胸がどきどきする。頭が、ぼーっとするみたい。
でも、もうそんなこと言っていられない。これが、あたしの学園生活一世一代の大勝負だ。

216 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:28
ホールに、色とりどりの華が咲いている。ひらひらと、ひらひらと、美しく舞っていく。
自分で踊るのも良いけど、こうやって舞台裏的な場所からマジックミラー越しに見ているだけというのもまたいいものだ。まあ、見ているだけ、と言えども音楽など仕事は結構あるのだが。
そうして、幻想的に照らし出される多数の華々をうっとりと見つめていると、この放送室のドアを誰かがこつこつと叩いた。

「は〜い?どうぞ〜?」
「失礼しますわ。」
「ぬわっ!伯安さん!」
「・・・私、何か致しましたでしょうか・・・?」

何故か、彼女の登場の仕方にはどうしても慣れない・・・
彼女のようなお嬢様には不釣り合いなところにばかり登場しているからだろうか。
に、しても・・・

「伯安さん・・・どうしてこんな所に?」
「いえ、ここがダンスを見る穴場だと聞いたので・・・ああ、本当に綺麗ですね。」

伯安さんも、ずっと踊る側だったから、恐らく私と似たような思いで見つめているのだろう。
端正な顔が、ミラー越しに一点を見つめていた。その視線の先を追っていくと、そこにはたどたどしいステップながらも一生懸命踊っている士起ちゃんと、本当に幸せそうな顔をしている伯珪姉の姿があった。
・・・正直、私と踊っていたときにはもっと堅い顔だったように思う。単に踊りのうまさというなら私の方が士起ちゃんより上だろう。しかし、士起ちゃんでなければ・・・士起ちゃんがいなければ伯珪姉があんな顔をすることもなかっただろう。

「伯珪さん・・・本当に楽しそうな顔・・・」
「ええ、そうですね。」
「関靖さん・・・だったかしら?彼女のおかげなのかしらね。いや、彼女だけじゃないわね、妹さんや部下の方々・・・そして、範さん、貴女が有ってのことですわ。
・・少なくとも私達が戦っていたときには間違ってもあんな顔は出来なかったでしょうね。」
「本当に・・・伯珪姉・・・じゃなくて、伯珪様は穏やかになられました。憑き物が落ちたようです。」

――――――――ダンスは、クライマックスを過ぎ、終焉へと向かっていた。

217 名前:弐師 :2007/01/20(土) 22:29
「お疲れさまだったね。」
「いえ、伯珪さまこそお疲れさまでした。」


これまでの人生で一番緊張したが、何とか大過なく踊りきることが出来た。死ぬほど嬉しかったが、寿命が縮んだ気さえする。まあ、何だかんだ言って、最高だった。
そういうわけで、ダンスは無事に終わり、私達は寮へ帰り道を二人きりで歩いていた。
範さまは片付けがあるらしく(あたしも手伝おうとしたのだが、見事に断られてしまった)、単経さんと田揩さんは二人で別にもう帰ってしまっていた。
昼間降っていた雪は、今は止んでいる。が、また何時降り出してもおかしくはない。厚い雲が、あたしたちの頭上に広がっていた。


「これで旭記念日も最後か。うん、今までで一番楽しかったよ。ありがとうね。」


――――――――最後。
わざと、意識しないようにしていた。
もうすぐ、伯珪さまとは違う学校に行くことになる。当然と言えば当然のこと、「出会いが有れば別れもある」のだ。だけど、そんな悟ったようなことを言っても、淋しいものは・・・淋しい。
だけど、目の前の伯珪さまは何というか・・・実にあっけらかんとしている。


「・・・伯珪さまは、淋しくないんですか?これが・・・最後なんですよ?」


思わず、非難するような口調になってしまった、と反省する。しかし、伯珪さまは特に気分を害された様子もなく、むしろ、少し驚いたような顔をしている。


「そうだな・・・私も、もちろん淋しいさ。だけど、淋しさに身をゆだねるより、残り少ないみんなと・・・貴女と過ごせる時間を大切にしたい。だから、私は出来るだけ笑っていたい、淋しそうな格好も我慢する・・・変かな?」
「いえ・・・あたしの考えが足りませんでした・・・」
「いや、私も素直じゃなかったかもしれないね。出来ることなら、みんなとずっと一緒にいたいし、これが最後だということを淋しくも思う。」


しばし、沈黙が二人の間に流れる。
気が付けば、雪がひとひら、またひとひらと降っていた。幽州はこの学園内でも最も寒いと言われる。今も手が寒くて仕方ない。せめて手袋でもあれば良かったのだが、今日に限って忘れてしまっていた。そんな自分の間抜けさを恨みつつ、真っ赤になってしまった手に息を吐き掛ける。


「士起、寒くないか?手が真っ赤だよ。」
「え、あはは・・・」


あたしが誤魔化すように笑うと、伯珪さまも少し頬をゆるめた。
そしていきなり、あたしの手を握った。いきなりの事態に混乱する、が、さっきの伯珪さまの言葉を思い出し、あたしは何も言わずに握り返した。


冷え切った手に、伯珪さまの暖かな感触が伝わってくる。


雪が、ひらひらと、あたしに――――――あたしたちに、舞い降りる。


もう、言葉は何もいらなかった。
ただ、お互い側にいる。

それだけで、最高に幸せだ――――――――――――――――

218 名前:弐師:2007/01/20(土) 22:40
どうも、激しくお久しぶりでございます。何か落としてみました。
開催宣言・・・はしても良いのかな?いまいち判断が出来ないので保留しておきます。

偉そうなことを言っておきながら遅れてしまって申し訳ございませんでした、言い訳の言葉もございませぬorz

219 名前:韓芳:2007/01/21(日) 00:16
>弐師様
長編お疲れ様です。
この寒い時期に心温まるストーリー、いいですね〜。
自然に笑みがこぼれて来ました。

一応私も話の構成(妄想)は出来てるんですけど、おもいっきり『祭り』のイメージとはかけ離れているのでやめときます。

220 名前:雑号将軍:2007/01/27(土) 17:32
■やまない雨なんてない■

「ほんとにいいの?」
 白塗りの部屋で透き通るソプラノ声が響く。見舞いに来ていたライムグリーンの髪をした少女―盧植―はベッドに横たわる朱儁に尋ねた。
「うん。まだ、肩治ってないしね。多分これじゃあ、まともに動けないだろうし…。だから、子幹と建陽の二人で楽しんできてよ」
 そう言って朱儁はぎこちなく笑った。無理矢理笑顔を作っているのは誰の目にも明らかであった。
 今日は蒼天学園最大の行事の一つである「旭記念日祭」通称「旭祭り」の最終日だった。
だからこそ、盧植と傍らでつまらなそうに座る小柄な少女―丁原―は朱儁を祭りへと連れだそうと入院中の朱儁を訪ねてきたのである。
「でもでも!こーちゃん(朱儁)、毎年、旭祭り行ってるじゃない。あたいたち今年で最後なんだよ?」
 ついに場の荘厳な雰囲気に我慢出来なくなった丁原が朱儁に詰め寄るように言った。

 
丁原の言う通り、朱儁は高等部に入学してから、旭祭りに参加しなかったことは一度もない。ましてや彼らはもう三年である。これが最後の機会なのだ。
しかし、朱儁は気持ちを入れ替えることはなく、ただ、力なく首を横に振った。
「ごめん。建陽。でも行けない…」
「こーちゃん…」
 場に重々しい空気が立ちこめる。個室であることも影響してか、外部の音が全く聞こえてこない。まるで、この空間だけ孤立してしまったかのように…。
 それから、少ししてからだろうか。
 盧植はパイプ椅子から腰を上げた。
「・・・・・・わかったわ。ごめんなさいね。無理に誘ったりしちゃって。じゃあ、わたしたち、行くわ」
 そう朱儁に言ったときの盧植の顔は苦笑が浮かんでいた。
「ありがとう。子幹…」
 朱儁が呟くようにそう言うと、またも盧植は困ったように笑った。そしてそのまま踵を返し、病室から出て行った。
「ちょ、ちょっと待ってってば!お〜い!しーちゃん(盧植)!じゃ、じゃあ!こーちゃん、また来るから!」
 丁原はそれだけ言うと、力強く地面を蹴り上げ、矢のような速さで病室から飛びだしていった。
 場がまた静寂に包まれる。
「はあ・・・つまんないの」
 朱儁は寂しそうに目を細めてそう言うと、自らをまどろみの中へと押し込んでいった。

221 名前:雑号将軍:2007/01/27(土) 17:36
 彼女には親友がいた。何者にも代え難い親友が。
 しかし、彼女とは二カ月前にある事件が元で絶縁関係にあった。そしてそれは、学園を巻き込んだ大事件へと発展した。
 結果として、その事件をきっかけに二人は仲直りをした。しかし、その代償として彼女は親友の刃で肩の骨を折られることになった。
 そして親友は一度も彼女の見舞いに来ることはなかった。
 
 それから、何時間経っただろうか。目を開けた朱儁の見える景色はいかんせん暗い。
「もう・・・・・・旭祭り、はじまっちゃったな」
 俯いたまま朱儁は呟く。いつも天に向かって逆立っているはずの一握りの赤髪さえも、力なくしおれている。
 そんなとき、朱儁の耳に足音が飛び込んできた。
 ことん、ことん、とまるで前進することを戸惑うかのような重い足取り。
そしてその足音は少しづつ、大きくなってきていた。
もう面会時間は窓の外を見る限りとっくに過ぎているし、朱儁の病室の周りは空室だ。
朱儁は近くにある青いアナログの腕時計に目をやった。
「やっぱり、看護師の巡回には早い・・・・・・」
 朱儁はまだはっきりしない頭で思考を巡らす。彼女はつい最近まで生徒会の中で、かなりの地位にいた。それ故に飛ばしてきた人間も多い。
それらを総合してたどり着く答えは一つだった。
朱儁は慌てて身体を起こそうとするが、思ったように動いてくれない。
やはり片手しか使えないことと、しばらく運動らしい運動をしなかったのが問題らしい。
 そして、足音は止まる。朱儁の直感が正しければその足音は朱儁の病室の前で途切れている。
かろうじて身体を起こす朱儁は病室のドアに目を向けた。
そのさきにはぼんやりと一人の人影が映る。
場が張りつめた弓のように緊張している。朱儁の身体から冷たい汗が流れる。
ついにがちゃりと音を立て、扉が開かれた。
「・・・義真!?」
 朱儁は目に映る光景を信じることが出来なかった。
 しかし、彼女の目にははっきりと見えていた。いつもと変わらぬ、碧色のリボンで結ばれたポニーテールをもつ長身の女性が。
「・・・・・・」
 朱儁の言葉に彼女は答えなかった。しかし、朱儁のベッドの前まで近づく。
 そんなそっけない態度に朱儁はますます疑心暗鬼に陥る。
「久しぶりだな。公偉・・・・・・。少し痩せたんじゃないか」
 彼女を見間違うはずなどないのだ。
 仲違いを起こすまでは何をするのも一緒だった彼女を。
 最も信頼し、最も憧憬した彼女のことを・・・・・・。
 彼女は皇甫嵩。
 そう、一番の友達。

222 名前:雑号将軍:2007/01/27(土) 17:41
朱儁は涙が溢れそうになった。しかし、泣いてるところを見せたくなかった彼女は顔を背けて拗ねた声で言った。
「そりゃそうだよ・・・。義真が遊びに連れってくれないから」
 言いたいことはこんなことじゃない。
 というより、遊びに連れて行かないからと行って痩せるわけではない。
 それは朱儁自身が一番よく知っていた。しかし、朱儁は素直になれなかった。
「そうだな。すまん・・・」
 それでも、皇甫嵩は素直に謝った。
 朱儁はどうして皇甫嵩が一度も見舞いに来てくれないかを知っていた。
「公偉に怪我を負わせたのが自分であるから」そんな負い目を彼女は感じているのだ。
 しかし、今、彼女はここにいる。
 朱儁はそれだけでうれしかった。しかし、どうにも素直になれない。
 そんな彼女を知ってか知らずか、皇甫嵩は苦笑を浮かべた。
「お詫びといっては何だが、これから旭祭りを楽しまないか?と言っても、この時間だと花火大会くらいしか残ってないが・・・・・・」
 朱儁はびっくりして、目を丸くしながら、皇甫嵩の方を見た。
「でも、あたしは外出禁止だし・・・・・・」
 そんなことは誰にも言われていない。むしろ少しは歩けと言われているくらいだ。でも、今日の朱儁は自分の気持ちに素直ではなかった。
 そんな朱儁の態度に皇甫嵩は困っていたが、やがてこう付け足した。
「しかし、私は公偉と行きたい。毎年、お前と行っているのだ。やはり、公偉がいないとどうも落ち着かない・・・・・・」
 そしてさらに皇甫嵩は目を泳がせながら続けた。
「それに・・・・・・今まで、私は公偉の我が儘に何度付き合ってきたと思っているんだ。一度くらい、私の我が儘をきいてくれたっていいだろう?」
 そう言った皇甫嵩の声はところどころ裏返っていた。
 朱儁はいつもと違う彼女の態度や言動に、戸惑っていたが、やがて声を上げて笑うと、皇甫嵩の目を見て答えた。
「もう、しょうがないなあ、義真は。わかった。付き合ってあげるよ」
 そう言って、朱儁はもう一度、笑った。
 その笑みは出会った頃と変わらぬ、裏のない素直な笑み。
 ずっと見ていなかった彼女の本来の姿。
 それは皇甫嵩が大好きな彼女の姿。
「そうと決まれば・・・・・・」
 皇甫嵩はそう呟くとお姫様だっこの要領で朱儁を抱き上げた。
「ちょ、ちょっと!な、なにするのよ!」
 朱儁が不満をあらわにすると、皇甫嵩はうっすらと笑みを浮かべて答えた。
「外出禁止と言うことは要するに運動するなということだ。だから、これが一番だろう」
皇甫嵩は不敵に笑うと、朱儁を抱きかかえたまま、病室から抜け出していったのだった。
「もう〜!義真のいじわる〜!」
 そう言った朱儁の顔は笑っていた。まるで雨上がりに咲く朝顔のように。
「これからも、よろしく頼むぞ、公偉!」
「うん!こっちこそ、よろしくねっ、義真!」
 朱儁の髪の一房はピンと跳ね上がっていた。

 
余談だが、この日、長身の男にお姫様だっこされた純白のドレスに身を包んだ少女が生徒に混ざって花火を見ていたという目撃情報が多く寄せられたが、真偽のほどは定かではない・・・・・・。



受験戦争に見事に敗北した雑号将軍、帰還致しました。まあ人生長いんでゆっくりやります。
ということで、旭記念日作品。なんとか仕上げました。もしかすると、もう閉祭してたり…。まあいいか。
とりあえず、一年近く書いていなかったので文章力が落ちてます。無かったのがさらに落ちてます…orz。また勉強し直しですね。
今度は卒業式だ〜!!

223 名前:韓芳:2007/01/31(水) 00:41
>雑号将軍様
敗北しましたか… まあ、私も敗北寸前ですが…(−−;
お互い卒業出来るよう頑張りましょう!(心配してるの私だけ?
まあ、それはおいといて。

一筆お疲れ様です。
皇甫嵩と朱儁のコンビ、いいですね〜。
本当に信頼できるものは、そう簡単には切れないですからね。
心が温まります。

試験まであと1週間か… orz

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